SN比とは
SN比とは、取り出したい信号の大きさと、そこへ混ざり込むノイズの大きさの比です。 比なので、信号を大きくしても、ノイズを小さくしても上がります。ただし信号を増やすための構造変更がノイズも増やす場合があるため、分子と分母の両方を測る必要があります。
駅のホームで隣の人の声が聞き取れるかどうかは、その人の声の大きさと、電車の音の大きさの両方で決まります。声が同じでも、電車が通れば声は埋もれ、電車が去れば聞き取れます。
dBで表すのは、信号のダイナミックレンジが広いから
Section titled “dBで表すのは、信号のダイナミックレンジが広いから”圧縮した画像に生じる雑音を測る場面では、原画像の信号分散と雑音電力の比をSNR(信号対雑音比、Signal to Noise Ratio)と呼びます1。この比を対数へ直してデシベル(dB)で表すのは、信号のダイナミックレンジが広いためです。人間の視覚はウェバー・フェヒナー則に従うので、対数にした値のほうが人の感じる画質と合いやすいという効果もあります。輝度信号が8ビットなら値は0から255の範囲になり、その最大振幅を使う指標をPSNRと呼びます。
ノイズ側だけを下げても、比は広がる
Section titled “ノイズ側だけを下げても、比は広がる”東京で45cmのアンテナを晴天時に使う衛星放送の受信計算例では2、アンテナの出力レベルは3つの場合とも−111.8dBWです。受信コンバータの雑音指数が1.2dBなら受信アンテナの熱雑音は−131.5dBWで、C/N(搬送波対雑音比)は19.7dBになります。雑音指数が0.8dBなら熱雑音は−132.6dBWでC/Nは20.8dB、0.5dBなら熱雑音は−133.5dBWでC/Nは21.7dBです。信号側は動かさず、ノイズ側を下げただけで比が広がります。
この計算例の式は「C/N=アンテナ出力レベル-アンテナ熱雑音」という引き算です。デシベルは対数の目盛りなので、比を求める割り算を引き算として書けます。
上げ方は、信号側とノイズ側の2通り
Section titled “上げ方は、信号側とノイズ側の2通り”信号側から上げる例が、ソニーセミコンダクタソリューションズの裏面照射構造です。シリコン基板の裏側から光を当てることで、配線やトランジスタに邪魔されずに1つの画素へ入る光の量を増やせます3。同社は2009年に裏面照射型CMOSイメージセンサーを商品化し、従来の表面照射型に比べて約2倍の感度と低ノイズを実現したとしています。
ノイズ側から上げる例が、同社の2層トランジスタ画素です。フォトダイオードと画素トランジスタの層を別々の基板に作って積層し、アンプトランジスタを大きくして、夜景などの暗い場所の撮影で出やすいノイズを大幅に低減したとしています4。同じ技術で飽和信号量も従来比約2倍になるため、分子と分母が同時に動く例でもあります。
信号を増やす手が、ノイズも増やす
Section titled “信号を増やす手が、ノイズも増やす”裏面照射型では、構造や工程に起因したノイズ、暗電流、欠陥画素、混色といった画質低下の要因が生じ、S/N比を低下させてしまう課題がありました3。光をたくさん取り込む構造にした時点で、分母のノイズも膨らんでいました。ソニーセミコンダクタソリューションズは、裏面照射型に最適化した独自のフォトダイオード構造を発明し、感度の改善とノイズ・暗電流・欠陥画素の低減によって暗時ランダムノイズを改善したとしています。
アナログのまま長く運ぶほど、ノイズを拾う
Section titled “アナログのまま長く運ぶほど、ノイズを拾う”変換器を回路のどこへ配置するかも、ノイズの量を左右します。同社のカラムA/D変換回路は、A/D変換器を画素の垂直列ごとに並列配置し、読み出したアナログ信号を最短で各列の変換器へ直接伝えます5。これで、アナログ伝送中に混入するノイズが画質を落とす度合いを抑えられるとしています。アナログとデジタルの両方の回路でノイズを打ち消すデュアルノイズキャンセル方式で、低ノイズを実現したともしています。
アナログのまま長い距離を運ぶほど、途中でノイズを拾います。早めにデジタルへ変えることが、分母を小さく保つ手になります。
A/D変換そのものも、量子化誤差を持ち込む
Section titled “A/D変換そのものも、量子化誤差を持ち込む”ノイズは変換の内側でも生まれます。A/D変換のときにアナログ信号とデジタル信号の間に生じる誤差を量子化誤差と呼び、デジタル信号の差として判別できるアナログ信号の最小振幅を1LSBとします6。目盛りが粗いほど丸めで捨てる分は大きくなり、分解能を上げることがこの持ち込み分を抑える手にあたります。
製品の仕様欄にも、SN比がそのまま並ぶ
Section titled “製品の仕様欄にも、SN比がそのまま並ぶ”ロームは2021年2月4日、オーディオデバイスの重要特性に低雑音(SN比)と低歪率(THD+N特性)を挙げ、高音質オーディオ機器向け32ビットD/AコンバータIC「BD34301EKV」が業界最高クラスの性能としてSN比130dB、THD+N−115dBを達成したとしています7。数字が大きいほど、同じ信号に対してノイズが小さいことを表します。
PSNRが著しく低いと、人の感じ方とずれる
Section titled “PSNRが著しく低いと、人の感じ方とずれる”PSNRが高い画像、すなわち劣化の程度が低い画像では、PSNRが主観画質とよく相関することが知られています1。一方で、PSNRが著しく低い画像や、画面内で品質に偏りがある場合には、主観画質との乖離が生じる場合があります。比の数字は読み取りやすさの目安になり、人が感じる良し悪しとは別に決まります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”SN比とは何ですか?
取り出したい信号の大きさと、そこへ混ざり込むノイズの大きさの比です。信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)とも呼び、信号の分散と雑音の電力の比で表します。
なぜデシベル(dB)で表すのですか?
信号のダイナミックレンジが広いためです。人間の視覚はウェバー・フェヒナー則に従うので、対数にした値のほうが人の感じる画質と合いやすいという効果もあります。
SN比を上げるには、どうすればよいですか?
信号を大きくするか、ノイズを小さくするかの2通りがあります。ソニーセミコンダクタソリューションズの裏面照射構造は1つの画素へ入る光の量を増やす例で、同社の2層トランジスタ画素はアンプトランジスタを大きくしてノイズを下げる例です。
信号を大きくすれば、SN比は必ず上がりますか?
信号を増やす構造変更が、ノイズも増やす場合があります。裏面照射型では構造や工程に起因したノイズ、暗電流、欠陥画素、混色といった要因が生じ、S/N比を下げる課題がありました。分子と分母が同時に動くため、両方を測る必要があります。
SN比と分解能は何が違いますか?
SN比は信号とノイズの大きさの比を表し、分解能は区別できる最小の変化幅を表します。目盛りをどれだけ細かくしても、その目盛りより大きなノイズが乗れば、読み取り値はノイズの分だけ揺れます。
SN比の数字は、どのくらいが良いのですか?
用途によって変わります。ロームは2021年2月4日、高音質オーディオ機器向けD/AコンバータICでSN比130dBを達成したとしています。衛星放送の受信計算例では、20dB前後のC/Nが並びます。
SN比が高ければ、見え方や聞こえ方は必ず良くなりますか?
数字と人の感じ方はずれる場合があります。PSNRが高い画像は主観画質とよく相関しますが、PSNRが著しく低い画像や画面内で品質に偏りがある場合には、主観画質との乖離が生じる場合があります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 分解能とは── 区別できる最小の変化幅を表す指標です
- ダイナミックレンジとは── 扱える信号の上端と下端の幅を表す指標です
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- 1電子情報通信学会:知識の森 2群5編9章 符号化画質ieice-hbkb.org ab
- 2電子情報技術産業協会(JEITA)受信システム事業委員会:受信システム計算事例集home.jeita.or.jp ↩
- 3ソニーセミコンダクタソリューションズ:裏面照射構造sony-semicon.com ab
- 4ソニーセミコンダクタソリューションズ:2層トランジスタ画素sony-semicon.com ↩
- 5ソニーセミコンダクタソリューションズ:カラムA/D変換回路sony-semicon.com ↩
- 6ローム:A/Dコンバータ 基本動作rohm.co.jp ↩
- 7