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ADC(A/Dコンバータ)とは

ADC(A/Dコンバータ)とは、アナログ信号をデジタル信号へ変換する回路です。 変換は標本化・量子化・符号化という一連のステップ1で進みます。方式を比べる軸は、1秒に何回値を切り出すかを表すサンプリング周波数と、1回の値を何段に分けるかを表す分解能の2つで、方式ごとにこの2つが入れ替わります。用途が速さと細かさのどちらを求めるかで、選ぶ方式が決まります。

連続した波を、切り出し、丸め、0と1の符号にする

Section titled “連続した波を、切り出し、丸め、0と1の符号にする”

温度も音も光も大きさが連続して変わりますが、マイコンやDSPが扱えるのは0と1の並びだけです。この2つをつなぐ入口がA/Dコンバータで、出口を受け持つのがD/Aコンバータです。

標本化は、連続した波形の振幅をサンプリング周期Tsごとに切り出す段で2、担当する回路をサンプル&ホールド回路と呼びます。量子化は切り出した振幅を離散的な値へ近づける段、符号化はその値を0と1の2値の符号へ置き換える段で、符号化はエンコーダが担当します。

3ビットの標本化と量子化
000001010011100101110111時間量子化誤差1LSB標本化周期Ts入力の波量子化後
標本化で切り出した点を、量子化で8段のうち近い段へ丸めます。段の間隔が1LSBで、点と段の差が量子化誤差として残ります。

変換後のデジタル信号のビット数が分解能で、最上位ビットをMSB、最下位ビットをLSBと呼びます。デジタル信号の違いとして区別できる入力の最小振幅が1LSBで、切り出した値と量子化した値の差が量子化誤差です。最初のデジタル信号の変化点(000から001)の0.5LSB下をゼロスケール、最後の変化点(110から111)の0.5LSB上をフルスケールと呼び、その間隔がフルスケールレンジです。3ビットなら、この範囲を000から111までの8通りの符号で表します。

標本化周波数の半分を超える入力は、低い周波数の波に化ける

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切り出す回数にも上限の目安があります。Texas Instrumentsは、入力の周波数Finが標本化周波数Fsの半分より低いとき、その入力を正確に表せるとしています3。このFs/2をナイキスト周波数と呼びます。Finがナイキスト周波数を超えると、ADCの出力には入力が実際より低い周波数の信号として写り、この周波数の移り変わりをエイリアシングと呼びます。

裏返すと、扱いたい入力の最高周波数の2倍より高い周波数で標本化しなければ、その入力は正しく表せません。サンプリング周波数の要求は、変換したい信号の帯域から決まります。同社は、ADCの性能を測るには周波数領域で見るのが最もよいとしています。

基準電圧が範囲を、分解能がその分割数を決める

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A/D変換を左右する要素4は2つで、どこからどこまでを変換するかにあたる基準電圧(VREF)と、その範囲を何分割するかにあたる分解能です。分解能が10ビットなら2の10乗で1024分割となり、最小の分解能幅はVREF電圧を1024で割った値、つまり1LSBになります。

分解能には8ビット、10ビット、12ビット、16ビットなどがあり、数字が大きいほど入力を細かく区別します。分解能は出力するデジタル信号の本数で決まり、8ビットのA/Dコンバータでは出力が8本で、VREF電圧を2の8乗の256に分割します。

速い方式ほど、分解能が下がる

Section titled “速い方式ほど、分解能が下がる”

分解能をどこまで上げられるかは、方式ごとの変換速度と抱き合わせで決まります。ロームが挙げる基本形は4つです。

フラッシュ型は5、あらかじめ分圧した基準電圧とアナログ信号を比較器で同時に比べ、結果をエンコーダで符号にします。一度に変換するのでサンプル&ホールド回路が要らず、基本形の中で最も高速です。そのかわりNビットの分解能には2のN乗から1を引いた数の比較器が要り、8ビットに当てはめると255個になります。回路規模と消費電力が膨らむことが、分解能の上限を決めます。

パイプライン型は6、段ごとに粗く変換し、標本化した電圧からDAC出力電圧を引いた残りを2倍に増幅して次の段へ渡します。LSBを決める最後の段まで処理が済むと、各段の間の遅延を補正してそれぞれのデジタル出力を足し合わせ、変換を終えます。デジタル出力までにこの待ち時間が要るため、制御などリアルタイム性が要る用途には向きません。

逐次比較(SAR)型は7、標本化した電圧とD/Aコンバータの出力が一致するよう、MSBから順に大小を比べます。変換に分解能プラスαのクロックサイクルが要るため、変換速度は中程度です。応答性が良く、入力のマルチプレクサでアナログ信号を切り替えやすい点も特徴です。

ΔΣ型は8、本来より高い周波数で標本化(オーバーサンプリング)し、ΔΣ変調で1ビットなどの低ビットデータに直したうえで、デジタルフィルタで帯域外のノイズを取り除いて間引きます。出力データを1サンプル遅らせて入力へ戻すと、比較器で生じる量子化誤差が低い周波数で小さく、高い周波数で大きくなるよう変調がかかります。量子化誤差を高い周波数の側へ追いやってから取り除くので、基本形の中で最も高分解能です。変換は逐次比較型より遅く、入力を高速に切り替える用途は不得手です。

方式ごとの速さと分解能
8163210MHz200MHz1GHz分解能(ビット)サンプリング周波数(対数)逐次比較型 18ビット程度パイプライン型 16ビット程度フラッシュ型 8ビット程度ΔΣ型 32ビット程度
右へ行くほど速く、下へ行くほど粗くなります。32ビットのΔΣ型から1GHz以上で8ビットのフラッシュ型まで、4つの基本形は速さと分解能を引き換えに並びます。

ロームが示す目安では、フラッシュ型はサンプリング周波数1GHz以上も可能な一方で分解能は8ビット程度が限界、パイプライン型は16ビット程度の分解能と200MHz程度のサンプリング周波数を両立し、逐次比較型は18ビット程度で10MHz程度まで、ΔΣ型は32ビット程度まで届きます。製品の並びも同じ分かれ方をしていて、ルネサスのデータコンバータ製品には9、高精度のSAR型およびΔΣ型のA/Dコンバータと、500MSPSに対応する高速A/Dコンバータが別の系列として並びます。

マイコンに載るのは、1回の比較で範囲を半分に絞る逐次比較型

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マイコンに最も使用されるA/Dコンバータは逐次比較型です4。3ビットの例では、入力が16分の9のVREF電圧のとき、まず中間の8分の4のVREF電圧と比べ、入力の方が大きいので1が出ます。次に8分の6と比べると入力の方が小さいので0、続いて8分の5と比べても小さいので0となり、100という3ビットの値が得られます。1回の比較で入力のありかを半分に絞る動作を、LSBまで繰り返します。

逐次比較で範囲を半分に絞る
VREF04/81比較16/80比較25/80比較3100結果入力 9/16
比較のたびに候補の範囲が半分になり、3回で入力9/16を含む1目盛りに絞られて100が決まります。

組み込みで選ばれる理由は、応答性の良さです。入力を切り替えてもすぐ次の変換に移れるため、1個のA/Dコンバータの前にマルチプレクサを置き、複数のセンサを順番に取り込む使い方に向きます。温度が上がったらファンを回すといった制御は、この取り込みの上に成り立っています。電源も制御の中でA/D変換を使い、出力電圧を調整する普通のLLC電源では、スイッチング周期ごとに電圧と電流を高速のA/D変換で取り込んで帰還制御を回します。

イメージセンサーは、画素の列ごとにA/D変換器を並べる

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変換器を何個どこへ配置するかも設計の一部です。ソニーセミコンダクタソリューションズのカラムA/D変換回路は10、イメージセンサー内のA/D変換器を画素の垂直列ごとに並列に配置します。垂直信号線から各列の変換器までアナログのまま伝わる距離が最短で済むので、その区間で乗るノイズが画質を落とす度合いを抑えたまま、読み出しの速さも確保します。同社は、アナログとデジタルの両方の回路でノイズを打ち消すデュアルノイズキャンセル方式と併せて、低ノイズを実現したとしています。

ADC(A/Dコンバータ)とは何ですか?

アナログ信号をデジタル信号へ変換する回路です。変換は標本化・量子化・符号化という一連のステップで進みます。方式を比べるときは、速さを表すサンプリング周波数と細かさを表す分解能が軸になります。

標本化・量子化・符号化はそれぞれ何をしていますか?

標本化は、サンプル&ホールド回路が連続した波形の振幅をサンプリング周期ごとに切り出す段です。量子化は切り出した振幅を離散的な値へ近づけ、符号化はエンコーダがその値を0と1の2値の符号へ置き換えます。

分解能とは何ですか?

変換後のデジタル信号のビット数です。分解能が10ビットなら基準電圧の範囲が2の10乗すなわち1024に分割され、その1目盛りが1LSBです。数字が大きいほど入力を細かく区別します。

量子化誤差とは何ですか?

切り出した値と、それを近い目盛りへ丸めた値との差です。目盛りの間隔が1LSBなので、分解能を上げるほど誤差の取りうる幅は小さくなります。ΔΣ型は、この誤差を高い周波数の側へ寄せてからデジタルフィルタで取り除きます。

どの方式が一番良いのですか?

用途によって変わります。ロームが示す目安では、フラッシュ型はサンプリング周波数1GHz以上も可能な一方で分解能は8ビット程度が限界、ΔΣ型は32ビット程度まで届く一方で変換速度は遅くなります。パイプライン型は16ビット程度と200MHz程度を両立しますが、出力までの待ち時間があるので制御には向きません。

マイコンに入っているのはどの方式ですか?

逐次比較型が最も使われています。応答性が良く、入力のマルチプレクサでアナログ信号を切り替えやすいため、1個の変換器で複数のセンサを順に取り込む使い方に向きます。

D/Aコンバータとどう違いますか?

向きが逆です。A/Dコンバータはアナログ量をデジタル量へ、D/Aコンバータはデジタル量をアナログ量へ変換します。デジタルで演算する機器では、入口をA/Dコンバータ、出口をD/Aコンバータが受け持ちます。

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