コンパレータとは
コンパレータとは、2つの電圧を比べて、どちらが高いかをHighかLowで返す集積回路です。 片方の入力に基準電圧を与え、連続した電圧を境目1本でデジタルの2値へ落とすので、1ビットのA/Dコンバータとみなすこともできます。中身はオペアンプに近く、位相補償容量を持たない分だけ応答を速くしやすい部品です。弱点は境目のそばで、入力がゆっくり動いたりノイズが乗ったりすると出力がばたつくため、ヒステリシスで境目を2本に分けて使います。
5本の端子で、+入力が高ければHigh、低ければLowを返す
Section titled “5本の端子で、+入力が高ければHigh、低ければLowを返す”端子の並びはオペアンプと同じで、非反転入力端子と反転入力端子、プラス側とマイナス側の電源端子、出力端子の5本です1。片方の入力端子を基準端子として基準電圧に固定し、もう片方の入力電圧との差を増幅して、HighかLowを出力します。+入力端子の電位が−入力端子より高ければHigh、逆であればLowを出力します2。
判定の誤差になるのが、入力側の小さな電圧のずれです。コンパレータでは、入力オフセット電圧が監視したい電圧に足し引きされ、そのまま検出誤差になります3。
用途は、HighとLowの答えを素早く得たい場面です。温度センサのしきい値検出、バッテリーモニターの電圧監視、過電圧保護での異常検出に使われます。ミネベアミツミは、電圧レベル検出、オーバーシュートやアンダーシュートの検出、ゼロクロッシング検出、データ変換、パルス幅変調を用途に挙げています。
オペアンプとの差は、位相補償容量の有無と出力形式
Section titled “オペアンプとの差は、位相補償容量の有無と出力形式”端子も入力段も同じ形でありながら、2つは別の部品として売り分けられています。ルネサスはQ&A集で4、基本回路は同じだとしたうえで、違いを内部位相補正コンデンサの有無と出力形式の2点に絞っています。
オペアンプの位相補正コンデンサは、負帰還をかけて使ったときに安定動作させるためのものです。コンパレータは負帰還をかけずに使うので、このコンデンサを省いています。ロームも、コンパレータは位相補償容量を持たない構成が一般的で、そのぶんオペアンプより応答時間を短くしやすく、しきい値判定に向くとしています。出力段はオペアンプがNPN-PNPプッシュプル、コンパレータがオープンコレクタで、コンパレータの出力はデジタルのインタフェースに向きます。
取り替えはどちら向きでも代償が出ます。オペアンプを比較に使うと、出力レベルがデジタルのインタフェースからずれ、たとえばロウ・レベルの出力電圧が1V〜2V程度生じます。位相補正用のコンデンサを内蔵している分だけ、速度も落ちます。逆にコンパレータをオペアンプとして使うと、位相補正用のコンデンサを省いた構造のため、負帰還をかけると発振します。発振を抑えるにはµFオーダのコンデンサを出力端子へ足す必要があり、その場合はスピードが極端に遅くなります。
速さを決める要素は位相補償容量1つではありません。ロームは、応答速度が入力段、出力段、飽和からの回復、出力形式などにも依存するとしています。
しきい値のそばのばたつきは、ヒステリシスで抑える
Section titled “しきい値のそばのばたつきは、ヒステリシスで抑える”境目1本でデジタルへ落とす仕組みには、入力が境目のすぐそばにとどまったときという弱点があります。しきい値付近で入力がゆっくり変化するときや、ノイズが重なるときに、出力が不安定に切り替わることがあります。そこで上がるときと下がるときでしきい値を別々に持たせ、一度切り替わった出力は、入力がもう片方のしきい値を越えるまで戻らないようにします。
2本のしきい値の間隔がヒステリシス幅です。非反転式のヒステリシスコンパレータをオープンコレクタ出力で組む場合は、しきい値を設定する抵抗値を決め、求めた2つのしきい値からヒステリシス幅を計算します5。境目の位置と間隔は、外付け抵抗で設計者が選ぶ数字になります。
ヒステリシスの要る用途や、HighとLowの切り替えの速さが要る用途では、コンパレータを前提に検討します。オペアンプで代用すると応答が遅くなるという先の話が、ここで製品選びの理由になります。
応答時間と消費電流は、条件込みの数字で比べる
Section titled “応答時間と消費電流は、条件込みの数字で比べる”コンパレータの速さは、入力がどれだけ境目を行き過ぎたかで変わります。基準入力を超えて余分にかかる差動入力電圧をオーバドライブと呼びます。入力振幅100mVの例では、オーバドライブを20mVから100mVへ増やすと出力の遅延時間も動くので、設計時に注意が要ります。データシートの応答時間は条件とセットの数字で、特性を比べるときは条件をそろえる必要があります。
製品は電源電圧・消費電流・速さの3軸で分かれます。日清紡マイクロデバイスは、NJM2903に代表される幅広い電源電圧で動作する汎用品、バッテリー駆動向けの消費電流100µA以下の低消費品、過電圧・過電流検出向けの応答時間200ns以下の高速品6をそろえています。同社は絞り込みの区分で、高耐圧を12V〜36Vの電源動作、高速を伝搬遅延200ns typ.以下、低消費を消費電流10µA typ.以下と定め、0.6µA/chの超低消費品も掲げています。エイブリックはCMOSコンパレータの特長に動作電圧0.9V、消費電流1.4µA max.、入出力のRail-to-Rail動作を挙げ、0.9Vから動くので乾電池1本の電圧から動作できるとしています7。
プルアップの上限と入力範囲は、回路形式で決まる
Section titled “プルアップの上限と入力範囲は、回路形式で決まる”出力段には、オープンコレクタ(CMOSではオープンドレイン)とプッシュプルの2種類があります3。プッシュプル出力は2個のトランジスタを縦に積んだ構成で、出力電流を吸い込む向きにも流し出す向きにも流せます。オープンコレクタ出力はプルアップ電圧を外から与えて使い、その上限が回路形式で変わります。
高耐圧品に多い文字どおりのオープンコレクタ回路では、多くが電源電圧を超えるプルアップ電圧を与えられます8。耐圧の低い製品に多い、出力端子から電源端子へ向かう保護ダイオードを備えた形式では、電源電圧を超えるプルアップでサージ保護ダイオードが導通し、出力電圧に影響が出る恐れがあります。日清紡マイクロデバイスのNJM12901はこの保護ダイオード付きの形式で、NJM2901から置き換えると正しい出力電圧が出なくなる事例があります。
入力側では、片方の入力端子が同相入力電圧範囲に収まってさえいれば、もう片方が範囲を外れても正常な出力を得られます9。2本とも範囲を外れると、正常な出力は期待できません。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”コンパレータとは何ですか?
2つの電圧を比べて、どちらが高いかをHighかLowで返す集積回路です。基準電圧に対して入力信号が高いか低いかを比較してHighかLowを出力するので、1ビットのA/Dコンバータとみなすこともできます。
オペアンプとどう違いますか?
基本回路は同じで、内部の位相補正コンデンサの有無と出力形式が違います。オペアンプは負帰還で安定動作するための位相補正コンデンサを持ちNPN-PNPプッシュプル出力、コンパレータは位相補正コンデンサを持たずオープンコレクタ出力です。
大小を比べる用途にオペアンプを代わりに使えますか?
動作はしますが、ルネサスは避けるよう案内しています。出力レベルがデジタルのインタフェースからずれてロウ・レベルの出力電圧が1V〜2V程度まで浮き、位相補正用のコンデンサを内蔵している分だけ速度も落ちるためです。
増幅にコンパレータを代わりに使えますか?
こちらもルネサスは避けるよう案内しています。位相補正用のコンデンサを省いた構造のため負帰還をかけると発振し、発振を抑えるためにµFオーダのコンデンサを出力端子へ足すと、スピードが極端に遅くなります。
ヒステリシスとは何ですか?
上がるときと下がるときで、しきい値を別々に持たせる工夫です。境目のすぐそばを入力がゆっくり動くときやノイズが乗ったときの出力のばたつきを抑え、2本のしきい値の間隔は外付け抵抗で決めます。
オーバドライブとは何ですか?
基準入力を超えて余分にかかる差動入力電圧です。入力振幅100mVに対してオーバドライブを20mVから100mVへ増やすと出力の遅延時間も動くため、応答時間は条件をそろえて比べます。
オープンコレクタ出力のプルアップ電圧はどこまで上げられますか?
製品の回路形式によって変わります。高耐圧品に多い文字どおりのオープンコレクタ回路では電源電圧を超えたプルアップ電圧を与えられ、出力端子から電源端子へ向かう保護ダイオードを備えた形式では、電源電圧を超えると保護ダイオードが導通して出力電圧に影響が出ます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- オペアンプとは── 同じ5端子で、位相補正コンデンサを内蔵して負帰還での増幅へ振った部品
- ADC(A/Dコンバータ)とは── 境目1本でなく、多数の段階へ分けてアナログを数値に置き換える部品
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- 1ミネベアミツミ:用語集「コンパレータとは」product.minebeamitsumi.com ↩
- 2ローム TechWeb:オペアンプとは?仕組み・役割・選び方・コンパレータとの違いtechweb.rohm.co.jp ↩
- 3東芝デバイス&ストレージ:TC75S58FU アプリケーションノートtoshiba-semicon-storage.com ab
- 4ルネサスエレクトロニクス:オペアンプ・コンパレータQ&A集(2007年8月)renesas.com ↩
- 5日清紡マイクロデバイス:非反転式ヒステリシスコンパレータのヒステリシス幅の計算方法nisshinbo-microdevices.co.jp ↩
- 6日清紡マイクロデバイス:コンパレータのご紹介nisshinbo-microdevices.co.jp ↩
- 7エイブリック:CMOSコンパレータのご紹介ablic.com ↩
- 8日清紡マイクロデバイス:NJM2901をNJM12901に置き換えたところ正しい出力電圧が出なくなりましたnisshinbo-microdevices.co.jp ↩
- 9日清紡マイクロデバイス:コンパレータは同相入力電圧範囲外の入力電圧を印加しても正常に出力しますか?nisshinbo-microdevices.co.jp ↩