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PMIC(電源管理IC)とは

PMIC(電源管理IC)とは、DC/DCコンバータやLDOなど複数の電源と、それらの起動・停止の順序や電圧を制御する回路を1つのチップにまとめた集積回路です。 スマートフォンや車載機器の中心にあるSoCは、内部の機能ブロックごとに異なる電圧を同時に要求し、ブロックごとに電源を入れる順番も決まっています。PMICが受け持つのは電源の数よりも、この順番と時間の配分です。順序と初期電圧は採用するSoCに合わせて書き込まれ、PMICは相手のSoCと組みで選ばれる部品です。

中身は2種類のレギュレータと、その順序を決める回路

Section titled “中身は2種類のレギュレータと、その順序を決める回路”

PMICは、特定のシステムに要るDC/DCコンバータやLDOなどの電源を複数載せ、各電源のパワーオンシーケンス、パワーオフシーケンス、電圧の動的変更を制御する機能を1チップに収めたものです1。電源ICは大きくリニアレギュレータとスイッチングレギュレータの2種類に分かれます2。リニアレギュレータの出力形式は降圧のみで、スイッチングレギュレータには降圧・昇圧・昇降圧・反転の4つがあります。PMICの内側にあるのはこの2種類の組み合わせで、効率を優先する系統へDC/DCコンバータを、静けさを優先する系統へLDOを割り当て、その上に順序の制御を重ねた製品だと言えます。

ルネサス エレクトロニクスは、自社のPMICがDC/DC変換、バッテリ充電、電源シーケンス制御、電圧レギュレーションなどの機能を統合するとしています3。同社は故障保護機能、自己起動機能、機能安全機能も特徴に挙げています。日清紡マイクロデバイスは、複数の電源ICとロジック回路を1チップに集積するので、同数の単品電源ICを使う場合より実装面積を小さくできるとしています4。

SoCのブロックには電源を入れる順番があり、外れると起動に失敗する

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SoCの各ブロックは電源の起動順序が決められていて、PMICの各電源はその順序に従って供給する必要があり、これがシーケンス制御の主な目的です4。PMICが制御する順序は、パワーオン時に供給を始める順序、パワーオフ時に止める順序、スリープに入るときに電源を切る順序、スリープから戻るときに入れる順序の4つです。

FPGAやDSPのように複数の電源を要するICや電子機器でも、電源の投入と遮断の順番が仕様で決まっている場合があり、守らないと正常に起動しないうえ、デバイスを損傷させることもあります5。順序が仕様になる理由の1つは、ブロック同士が信号線を共有していることです。適切な投入と切断を行えば、バスの競合を防げます。電源の来たブロックと、電源を待っているブロックが同じ線に同時につながると、余計な電流の行き来が起こります。順番は、その状態を避けながら全体を立ち上げるための道順です。

順序はPMICを使わなくてもつくれます。ロームは、出力のオンオフ機能だけを持つ汎用電源ICと外部回路でシーケンスを実現する回路例を示しています。基板の上に抵抗やトランジスタを足して順番をつくる形で、PMICはこの外付け部分をチップの中へ取り込んだ製品にあたります。

一斉に立ち上げると入力側の電圧が落ちるので、起動をずらして突入電流を分ける

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起動タイミングと突入電流
一斉に起動順にずらす電源1電源2電源3入力電流遅延 0.5ms/2ms時間
3つの電源を同時に立ち上げると突入電流が1か所に重なり、入力側の電圧が落ちます。遅延ステップずつ起動をずらすと、突入は時間方向に分かれます。

PMICの各電源には、ソフトスタート機能や電流制限機能で突入電流を抑える仕組みがありますが、すべてが同時に立ち上がると入力側の電源ラインの電圧ドロップは避けられず、誤動作の恐れがあります4。各電源の起動タイミングをずらして突入電流を分散させることも、シーケンス制御の目的です。日清紡マイクロデバイスのPMICでは、起動をずらす遅延ステップの間隔をOTPで0.5msまたは2msから選べ、この間隔はレジスタでは変えられません。

順序と初期電圧はOTPに書かれ、起動後はプロセッサが書き換える

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設定値の流れ
PMICOTP起動順序初期電圧ステップ間隔レジスタシーケンス設定出力電圧設定電源投入時DC/DC・LDOプロセッサ起動後 I2CSoCの各ブロック
起動順序と初期電圧はOTPから電源投入時にレジスタへ読み込まれ、起動後はプロセッサがI2Cで書き換えることもできます。遅延のステップ間隔はOTPでしか選べません。

PMICのOTPには、顧客の要求や採用するSoCに合わせて、DC/DCコンバータやLDOの起動順序と起動時の出力電圧の初期値があらかじめ書き込まれています4。電源投入時にOTPのデータが読み出され、シーケンスを設定するレジスタと出力電圧を設定するレジスタに反映されます。起動後は、プロセッサがI2Cでレジスタにアクセスして、初期電圧や起動シーケンスを変えることもできます4。日清紡マイクロデバイスのPMICは、用途に合わせて入出力を選べるマルチファンクションGPIOも備えています。

外とのつながり方もピンとレジスタで決まります。Texas InstrumentsのTPS6522005-EPでは、EN/PB/VSENSEピンでPMICを有効にし、このピンは3通りに設定できます6。ENとして使うときはピンを高く引くと動作し、低く引くと止まります。PBとして使うときは、通常、グランドへつなぐ押しボタンと外付けのプルアップ抵抗を接続して起動の入力にします。1つのPMICで足りないほど系統が多いときはGPIOで複数のTPS6522005-EPを同期させ、I2Cのデバイスアドレスも必要なら既定の0x30から変えて、複数のPMICを並べられます。LDOをバイパスモードやロードスイッチモードで使うと、その系統では低電圧検出が働きません。

供給を続けたまま電圧を段階的に下げ、待機中の消費電流を減らす

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DVSの電圧遷移
一度に下げる段階的に下げる電圧電圧時間時間リップル動作中待機
電圧を一度に下げると切り替わりの直後にリップルが出ます。供給を続けたまま階段状に下げると、動作中の電圧から待機の電圧へ滑らかに移ります。

DVS(Dynamic Voltage Scaling)は、供給先のSoCやFPGAへ電源を届けたまま、その動作状態に合わせて電圧を動的に変える機能です。日清紡マイクロデバイスは、後段のSoCやFPGAがスタンバイやスリープで消費電流を減らしたいとき、電源を印加したまま階段状に電圧を下げることで、リップルを抑えたスムーズな遷移になるとしています4。待機中のロジック回路へ低い電圧を送れば、その分だけ消費電流が小さくなります。電圧を下げるほかに、SoC全体の動作モードに合わせて各電源のオンとオフをピンやレジスタで切り替え、消費電流を抑える4こともできます。

PMICの品種は、組み合わせるSoCやMCUの系列ごとにそろう

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ルネサス エレクトロニクスは、自社のPMICを自社のMCU/MPUとの連携を前提に最適化したとしています3。製品ポートフォリオはSoC向け、MCU向け、MPU向け、Vcore/Sub-PMIC、高電圧、低電圧に分かれ、R-Car SoCやRH850車載用MCUの系列ごとに対応するPMICの型名が並びます。車載向けにはASIL-BとASIL-Dの機能安全に対応した品種があります。

PMICがSoCと対で語られるのは、順序と電圧の組み合わせが相手のチップごとに固有だからです。OTPに書かれる起動順序と初期電圧も、採用するSoCに合わせて決まります。PMICを選ぶことは、相手のSoCが求める順番と電圧を再現できる品種を選ぶことでもあります。

PMICとは何ですか?

DC/DCコンバータやLDOなど複数の電源と、それらをどの順番で立ち上げて止めるかを制御する回路を、1つのチップにまとめた集積回路です。パワーオンシーケンス、パワーオフシーケンス、電圧の動的変更までを1チップで受け持ちます。

電源シーケンスとは何ですか?

複数の電源を投入する順番と、停止する順番のことです。PMICはパワーオンとパワーオフに加えて、SoCがスリープに入るときに電源を切る順番と、スリープから戻るときに入れる順番も制御します。

なぜ順序が問題になるのですか?

SoCの各ブロックには電源を入れる順番が決められていて、FPGAやDSPでも順番が仕様になっている場合があるためです。守らないと正常に起動せず、デバイスを損傷させることもあります。適切な投入と切断でバスの競合も防げます。

すべての電源を同時に立ち上げるとどうなりますか?

各電源にソフトスタートや電流制限があっても、PMICの入力側の電源ラインで電圧が落ち、誤動作の恐れがあるとされています。起動タイミングをずらして突入電流を分散させることが、シーケンス制御のもう1つの目的です。

DVSとは何ですか?

Dynamic Voltage Scalingの略で、供給先のSoCやFPGAへ電源を届けたまま、その動作状態に合わせて電圧を動的に変える機能です。電圧を階段状に下げるとリップルの小さい遷移になり、待機中の消費電流を減らせます。

単品の電源ICを組み合わせる場合と何が違いますか?

順序をつくる回路の置き場所が違います。単品では出力のオンオフ機能だけを持つ汎用電源ICと外部回路で順番をつくり、PMICはこの部分をチップの中へ取り込みます。日清紡マイクロデバイスは、1チップ化により同数の単品電源ICを使う場合より実装面積が小さくなるとしています。

PMICはどんな機器に入っていますか?

複数の電圧を同時に要するSoCやMCUを積んだ機器です。ルネサス エレクトロニクスは車載システムのほか、民生機器、産業機器、ネットワーク機器を挙げ、車載向けにはASIL-BとASIL-Dの機能安全に対応した品種を掲げています。

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