LDOレギュレータとは
LDOレギュレータとは、入力電圧と出力電圧の差が小さい状態でも安定化動作を続けられるリニアレギュレータです。 LDOという名前は、この入出力の差をどこまで詰められるかを指しています。リニアレギュレータは入出力の差と電流の積をそのまま熱として捨てるので、差を詰められること自体が効率と発熱を決めます。その代わりにスイッチングノイズがなく、静かな電源をつくれます。
入力と出力の間のトランジスタが、電圧差を損失として受け持つ
Section titled “入力と出力の間のトランジスタが、電圧差を損失として受け持つ”電池やUSBから来た電圧を、そのままICへ渡す場面はまれです。マイコンやセンサが求める3.3Vや1.8Vへ落とす部品が要り、そのうちいちばん構造が単純な系統がリニアレギュレータです。
内部は、エラーアンプ(誤差検出用のオペアンプ)、基準電圧源、出力トランジスタで構成されます。出力トランジスタにはPchのMOSFETのほか、NchのMOSFETやバイポーラのPNP、NPNトランジスタも使われます。入力や負荷が変わって出力電圧が動き始めても、エラーアンプが出力電圧から取り出した帰還電圧と基準電圧を連続して比べ、差がゼロになるように出力トランジスタを調整して出力を一定に保ちます1。動作は完全にアナログで、入力から出力までは1本の通り道です。この通り道に入力と出力の電圧差がかかるため、その差と電流の積は損失になります。
LDOはLow Dropoutの略で、入出力間の電位差が低い状態でも動作するリニアレギュレータです2。低損失型や低飽和型とも呼ばれます。入出力間の電位差に数値の定義はありませんが、一般に、安定して動く最低の電位差が1V以下へ抑えられたものを指します。
ドロップアウト電圧が、入力電圧の下限を決める
Section titled “ドロップアウト電圧が、入力電圧の下限を決める”ドロップアウト電圧は、出力トランジスタが安定化動作を続けるために要る、入力と出力の最小の電圧差です。入出力の差がこの値を下回ると、トランジスタは安定化動作を保てなくなって出力電圧が下がっていき、最低動作電圧は「出力電圧+ドロップアウト電圧」になります3。有効な入力範囲は、この最低動作電圧から最大入力電圧までです。
ロームは具体例として、3.3Vを作る場面で入力が5Vの場合に、入出力間電位差の低いLDOが要るとしています。入力が3.6Vなら入出力の差は0.3Vで、選べるのはドロップアウト電圧が0.3V以下のLDOに限られます。ドロップアウト電圧が大きい標準型では、その差を確保するために、より高い入力電圧を用意する必要が出てきます。
ドロップアウト電圧は電流とセットで書かれる値です。Texas Instrumentsは、自社のTPS799の最大ドロップアウト電圧を200mAを流すときに175mVと規定しています4。出力トランジスタにNMOSを使う多くのLDOは、VBIASと呼ぶ補助の電源レールを別に持ちます。
効率を決めるのは、実際の入出力差
Section titled “効率を決めるのは、実際の入出力差”負荷電流が大きい場面ではIC自身の消費電流を無視でき、効率は出力電圧÷入力電圧で近似できます5。ロームの計算例では、5Vから3.3Vを作ると効率は64%、入力を3.6Vへ下げると89%です。入力5Vはシステム側の電源電圧、3.6Vはリチウムイオン二次電池を想定した値です。ドロップアウト電圧を3Vとした標準型で同じ3.3Vを作る場合、入力は6.3V以上が要り、効率は52%まで下がります。
ロームは、近ごろのスイッチングレギュレータの効率を80%から90%以上とし、条件を整えたリニアレギュレータがその水準へ届くとしています。一方、12Vから5Vを作るような場面では、LDOでも標準型でも効率と損失は同じ水準にとどまります。
同社は、効率がリニアレギュレータの入出力電圧差に依存し、式にドロップアウト電圧の項がないことから、ドロップアウト電圧は効率に直接関係しないとしています。ドロップアウト電圧が関わるのは、入出力の差をどこまで小さくできるかです。効率の高い動作点へ入れるかどうかを決める値、と読むのが正確です。
回路は手軽でも、熱の計算が設計の中心になる
Section titled “回路は手軽でも、熱の計算が設計の中心になる”リニアレギュレータの長所は、入力と出力にコンデンサを1個ずつ足すだけで動く6手軽さです。ロームは、回路設計よりも放熱設計のほうが手間になる場合もあるとしています。短所は、入出力の電圧差が大きい場面で損失がふくらみ、そのほとんどが熱になる点で、条件によっては発熱が非常に大きくなります。ロームは、数ワット以上の電力で使う場合には熱の問題を常に解決する必要があるとしています。
熱の計算に要るのは、損失電力、パッケージの熱抵抗、周囲温度の3つです。損失電力は入出力の電圧差と入力電流の積で、熱抵抗はデータシートのθjaを使います。ここから求めたチップ温度が最大定格Tjmaxの内側へ収まる条件を探す作業が、LDOを使う設計の中心です。ロームは、Tjmaxを超えた場合の手立てとして、負荷電流の削減、周囲温度の低減、放熱板の追加、そしてスイッチングレギュレータへの切り替えを挙げています。
リップル除去は、周波数が上がるほど弱まる
Section titled “リップル除去は、周波数が上がるほど弱まる”LDOのもう1つの持ち場は、静けさです。リニアレギュレータにはスイッチング電源のようなスイッチングノイズがなく、リップル除去特性や電圧ノイズも小さいので、AV、通信、医療、計測など、ノイズを嫌うアプリケーションで好まれる傾向があります6。
リップル除去比は、入力のリップルをどこまで小さくできるかを表す値です。60dBであれば入力のリップルが1000分の1へ、100mVが0.1mVへ小さくなります。ただし周波数が上がるほど除去比は下がります。ロームが挙げる計算例では、一般的なリニアレギュレータの80kHzでの除去比は約8dB、つまり2.5分の1にとどまり、スイッチング周波数が600kHz、リップルが100mVという条件では40mVが残ります。周波数特性を改良した品では600kHzで28dBあり、25分の1の4mVまで小さくなります。
日清紡マイクロデバイスは、リップル除去率90dB(typ.、f=1kHz)、低出力雑音、高速応答特性、低消費電流を実現した7とする品種を、LDOリニアレギュレータの製品群に挙げています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”LDOレギュレータとは何ですか?
Low Dropoutの略で、入力と出力の電位差が小さい状態でも動作を続けられるリニアレギュレータです。低損失型リニアレギュレータや低飽和型リニアレギュレータとも呼ばれ、数値の定義はないものの、一般に安定して動く最低の電位差が1V以下へ抑えられたものを指します。
ドロップアウト電圧とは何ですか?
入力と出力の間に入る出力トランジスタが安定化動作を続けるために要る、入力電圧と出力電圧の最小の差です。入出力の差がこの値を下回ると出力電圧が下がっていくため、最低動作電圧は「出力電圧+ドロップアウト電圧」になります。
LDOの効率はどのくらいですか?
入力電圧と出力電圧の比でおおよそ決まります。ロームの計算例では、5Vから3.3Vを作ると64%、3.6Vから3.3Vを作ると89%です。同社は、近ごろのスイッチングレギュレータの効率を80%から90%以上としています。
ドロップアウト電圧が小さいと効率が上がりますか?
効率の式は入力電圧と出力電圧で書けるため、ドロップアウト電圧そのものは式に入りません。ドロップアウト電圧は入出力の差をどこまで小さくできるかに関わる値で、差を詰めた結果として効率が上がります。
スイッチングレギュレータとどう使い分けますか?
入出力の差が小さい場面と、静けさを求める場面がLDOの持ち場です。入力と出力にコンデンサを1個ずつ足すだけで動き、スイッチングノイズがなくリップル除去特性と電圧ノイズが小さいため、AV、通信、医療、計測で使われます。
なぜ発熱が問題になるのですか?
入出力の電圧差と電流の積がそのまま損失になり、ほとんどが熱になるためです。数ワット以上で使う場合は熱の解決が常に要り、損失電力、パッケージの熱抵抗、周囲温度からチップ温度を求めます。
スイッチングレギュレータの後ろにLDOを入れるのはなぜですか?
スイッチングで生じたリップルを小さくするためです。リップル除去比が60dBなら入力のリップルは1000分の1になり、100mVが0.1mVまで下がります。周波数が上がるほど除去比は下がります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- PMIC(電源管理IC)とは── LDOやDC/DCコンバータを順序の制御ごと1チップへ載せた集積回路
- パワーMOSFETとは── スイッチングで電力を通す側の素子
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- 1ローム:リニアレギュレータの動作原理(TechWeb)techweb.rohm.co.jp ↩
- 2ローム:LDOとは?(TechWeb)techweb.rohm.co.jp ↩
- 3ローム:リニアレギュレータの重要スペック(TechWeb)techweb.rohm.co.jp ↩
- 4Texas Instruments:slyy151ati.com ↩
- 5ローム:効率と熱計算(TechWeb)techweb.rohm.co.jp ↩
- 6ローム:長所と短所、アプリケーション(TechWeb)techweb.rohm.co.jp ab
- 7日清紡マイクロデバイス:LDOリニアレギュレータnisshinbo-microdevices.co.jp ↩