オペアンプとは
オペアンプとは、2つの入力端子にかかった電圧の差だけを大きくして出力するアナログICです。 入力抵抗が高く出力抵抗が低いので、信号を送る側に余分な負担をかけずに次の回路を動かせます1。素子そのものの利得は数十万倍から数百万倍に達するので、負帰還でその利得をわざと捨て、増幅率を外付け抵抗2本の比へ移して使います。その代わりに、利得を上げるほど使える周波数が下がり、入力側の誤差も同じ倍率で出力へ出ます。
小さなセンサ信号を、A/D変換の前に整える
Section titled “小さなセンサ信号を、A/D変換の前に整える”端子は1回路につき正側電源端子と負側電源端子、+入力端子と−入力端子、出力端子の5本です。信号が入るのは+入力と−入力の2本で、出力を左右するのは、その2本にかかった電圧そのものよりも、2本の間の差のほうです。
この部品が要る理由は、センサから届く信号の小ささにあります。自然界の情報のほとんどがアナログ信号で、それを読み取るセンサの出力信号のほとんどが低電力です2。その小さな信号をそのままデジタルへ置き換えると信号が歪むので、オペアンプで適切な大きさの歪みの少ない信号へ整えてからA/Dコンバータへ渡します。
内部は役割の違う段に分かれます。入力段は差動増幅段で、+入力と−入力の差電圧を受け取ります。両端子に等しい電圧が入る同相信号は理想的には抑えられますが、実際のICでは同相信号除去比として有限の特性を持ちます。その後ろの利得段が、差動増幅段だけでは足りない利得を補って開放利得を高めます。一般的なオペアンプでは、負帰還回路で安定して使えるように、利得段の周辺に発振を防ぐ位相補償容量がつながっています。コンパレータは、この容量を持たない構成が一般的です。
開放利得は大きすぎて、出力が電源電圧に張り付く
Section titled “開放利得は大きすぎて、出力が電源電圧に張り付く”オペアンプ単体の増幅率は、数十万倍から数百万倍という桁に達するといわれます。理想的には、増幅率が無限大の差動増幅器です3。
入力の差1mVに開放利得10万倍を掛けて計算すると、出力は100Vを目指すことになります。実際の電源電圧はこれよりずっと低いため、出力は上限か下限のどちらかに張り付きます。開放利得がそれだけ大きいので、負帰還を省いたまま使えば出力は電源電圧の近くまで振り切れやすくなります。
負帰還をかけると、増幅率は抵抗2本の比で決まる
Section titled “負帰還をかけると、増幅率は抵抗2本の比で決まる”負帰還は、出力の一部を−入力端子へ返す配線です。負帰還が働いて線形に動いている間、出力は2つの入力端子の電位差が縮まる向きへ動きます。差が縮まった結果、配線が別々のままの2本の入力端子を、電位のそろったものとして計算に使えます。この近似がバーチャルショートで、負帰還が働いていること、ループ利得が足りていること、入力同相電圧範囲と出力振幅範囲の内側にあることが、使える条件です。
この状態でつり合う先が、外付け抵抗の比です。非反転増幅回路の利得は 1 + Rf/Rin、反転増幅回路の利得は −Rf/Rin です4。反転増幅回路のマイナス符号は出力の位相が入力に対して反転することを示し、非反転増幅回路では位相が同じで、利得は1以上になります。同じ非反転増幅回路で、R1が1kΩでR2が10kΩなら11倍のアンプになり、抵抗値を変えるだけで増幅率を設定できます。
電圧をそのまま次の回路へ渡すバッファには、出力端子を−入力端子へ直接返したボルテージフォロアを使います。条件を満たす範囲では出力が+入力端子の電圧に追従し、電圧利得はほぼ1倍です。
負帰還が変えるものは、数字を自分で選べる点に加えて、もう1つあります。ループ利得が十分に大きい範囲では、閉ループ利得が帰還率でほぼ決まります。製造ばらつきや温度で開放利得が動いても、閉ループ利得はその影響を受けにくくなり、素子のばらつきが増幅率へ届きにくくなります。
利得を上げるほど、使える周波数が下がる
Section titled “利得を上げるほど、使える周波数が下がる”オペアンプの利得と使える周波数範囲は、一般に反比例の関係にあります2。増幅率を大きくするほど帯域幅は狭くなり、両者の積が利得帯域幅積です。ロームは利得帯域幅積を、電圧帰還型オペアンプで単一極近似が成り立つ範囲において、ノイズゲインと小信号帯域幅の関係を見積もるための目安と位置づけています。
利得帯域幅積は通常10kHzで規定します。開放利得の特性図から10kHzで126倍と読み取ると、利得帯域幅積は1.26MHzです3。このオペアンプでは、100kHzで20dBの増幅回路は成り立ちますが、60dBの増幅回路は設計できる範囲の外になります。1.26MHzを20dBの10倍で割ると帯域は約126kHz、60dBの1000倍で割ると約1.26kHzになる計算で、100kHzは前者の内側、後者の外側です。増幅率を先に決め、その増幅率のまま扱える周波数を確かめる順番になります。
大きい振幅を速く動かすときには、もう1つの上限としてスルーレートが加わります。スルーレートは、出力電圧が一定の時間にどれだけ動けるかを表す値で、1V/µsなら1µsで1V動かせます4。出力波形の立ち上がりと立ち下がりで、電圧の変化量を変化時間で割って求め、3.5µsで10V変化した波形からは約2.9V/µsという値が求まります。正弦波を出すときに要るスルーレートは振幅と周波数で決まり、どちらかが大きくなるほど出力電圧の変化は急になります。スルーレートが足りないと、出力波形が入力に追いつかず歪みます。
信号と一緒に、誤差も同じ倍率で増える
Section titled “信号と一緒に、誤差も同じ倍率で増える”オペアンプは信号を増やしますが、誤差も同じ倍率で増やします。理想的なオペアンプなら2つの入力端子の電位差が0Vのとき出力も0Vですが、実際のオペアンプでは入力段の素子ばらつきなどで、電位差が0Vでも出力にずれが出ることがあります。このずれを0Vにするために入力端子間へ加える補正電圧が入力オフセット電圧です5。日清紡マイクロデバイスは、入力オフセット電圧が製造プロセスの微細な不均衡や素子のマッチングの不完全さから生じ、µVからmVのオーダーになるとしています。
入力オフセット電圧による出力誤差は、入力オフセット電圧とノイズゲインの積で見積もれます。RF/RGが100の反転増幅回路ではノイズゲインが101倍になるため、入力オフセット電圧1mVに対して出力誤差は約101mVです。入力側の1mVが、出力側では100mVの桁になります。温度でも誤差は動き、入力オフセット電圧ドリフトが1µV/℃で温度変化が50℃なら、入力換算の誤差は約50µVです。
入力端子へ出入りする電流も誤差になります。ロームの例では、入力バイアス電流100nA、信号源抵抗10kΩで入力換算の誤差は約1mVです。ルネサスの例では、入力抵抗が1MΩで入力バイアス電流が100nAのとき、両者の積である0.1Vが入力の誤差です。信号源の抵抗が大きいときほど、入力バイアス電流の小さい品種が要ります。
入力の保護にも同じ引き換えがあります。絶対最大定格は通常動作を保証する条件ではなく、超えてはならない限界値で、瞬間的な超過でもICの特性劣化や破壊につながる可能性があります。入力に直列抵抗を入れて大きくすると、定格外の入力が来たときの電流は小さくできますが、通常動作では信号源抵抗が増えたのと同じになり、入力バイアス電流による誤差、熱雑音、入力容量との時定数が増える場合があります。
理想オペアンプの入力抵抗は無限大、出力抵抗は0です。実際の製品はこの理想へ近づける方向で設計され、日清紡マイクロデバイスのNJM4558は入力インピーダンスが5MΩ(typ.)、NJMOP177は出力インピーダンスが60Ω(typ.)です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”オペアンプとは何ですか?
2つの入力端子にかかった電圧の差だけを大きくして出力するアナログICです。入力抵抗が高く出力抵抗が低いため、信号を送る側に余分な負担をかけずに次の回路を動かせます。
なぜ負帰還をかけるのですか?
素子そのものの利得が数十万倍から数百万倍と大きすぎるためです。この開放利得のまま使えば出力が電源電圧の近くまで振り切れやすいので、外付け抵抗で負帰還を組んで必要な利得へ整えます。
バーチャルショートとは何ですか?
負帰還が働いている間、2つの入力端子の電位をそろったものとして計算できる近似です。十分なループ利得があり、入力同相電圧範囲と出力振幅範囲の内側で線形に動いていることが前提です。
増幅率はどうやって決まりますか?
外付け抵抗の比で決まります。非反転増幅回路の利得は 1 + Rf/Rin、反転増幅回路の利得は −Rf/Rin で、マイナス符号は出力の位相が反転することを示します。R1が1kΩでR2が10kΩなら11倍のアンプになります。
利得帯域幅積とは何ですか?
利得と帯域の積で、おおよそ一定になる値です。10kHzで126倍と読み取れるオペアンプの利得帯域幅積は1.26MHzで、100kHzで20dBの増幅回路は成り立ちますが、60dBの増幅回路は設計できる範囲の外になります。
ボルテージフォロアは何に使いますか?
電圧をそのまま次の回路へ渡すバッファに使います。出力端子を−入力端子へ直接返した回路で電圧利得がほぼ1倍になり、高入力抵抗と低出力抵抗を生かして信号を次段へ受け渡せます。
コンパレータとどう違いますか?
内部の位相補正コンデンサの有無と出力形式が違います。オペアンプは負帰還で安定動作するための位相補正コンデンサを内蔵しプッシュプル出力を持ちますが、コンパレータは位相補正コンデンサを持たずオープンコレクタ出力です。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- コンパレータとは── 同じ5端子で、位相補正コンデンサを外して大小の比較へ振った部品
- ADC(A/Dコンバータ)とは── オペアンプが整えた信号を受け取り、数値へ置き換える部品
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- 1ローム TechWeb:オペアンプとは?仕組み・役割・選び方・コンパレータとの違いtechweb.rohm.co.jp ↩
- 2日清紡マイクロデバイス:オペアンプ基礎講座nisshinbo-microdevices.co.jp ab
- 3ルネサスエレクトロニクス:オペアンプ・コンパレータQ&A集(2007年8月)renesas.com ab
- 4ローム TechWeb:オペアンプの増幅と帰還|利得設計からスルーレートまでtechweb.rohm.co.jp ab
- 5ローム TechWeb:オペアンプの入力特性とは?入力精度と安全定格を解説techweb.rohm.co.jp ↩