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ダイナミックレンジとは

ダイナミックレンジとは、一度に扱える信号の、いちばん大きいところからいちばん小さいところまでの幅です。 カメラで言えば、白飛びの手前の明るさと、黒つぶれの手前の暗さに挟まれた範囲にあたります。

身のまわりの明るさには、日中の太陽から夜の星明かりまで非常に大きな幅があります。イメージセンサーが一度に受け止められる範囲はそれより狭いため、人の眼とは異なる写り方になります。明るい側へ合わせれば暗い部分が黒く沈み、暗い側へ合わせれば明るい部分が白く飛びます。

幅の上端は飽和、下端はノイズが決める

Section titled “幅の上端は飽和、下端はノイズが決める”

上端は、画素がそれ以上の光を受けても値が増えなくなる飽和の限界です。下端は、信号がノイズに埋もれて区別できなくなる限界です。この2つに挟まれた範囲より明るい部分は白飛びし、暗い部分は黒つぶれします。

幅は、上端の飽和と下端のノイズが決めます
シーンの明暗の幅明るい(太陽)暗い(星明かり)センサーが捉えられる幅白飛びします捉えられます黒つぶれします広げたあとの幅飽和信号量を増やして上を伸ばしますこの幅がダイナミックレンジですノイズを減らして下を伸ばします幅の外側にある明るさは、白飛びか黒つぶれのどちらかになります
ダイナミックレンジは、上端の飽和と下端のノイズに挟まれた幅です。したがって幅を広げる手は、上端を押し上げる方向と、下端を押し下げる方向の2つです。

上端は、画素にためられる電子の数で決まる

Section titled “上端は、画素にためられる電子の数で決まる”

1つの画素が蓄積できる電子の最大値を飽和信号量と呼びます。限られた面積の中でこの値をどこまで伸ばせるかが、幅の広い高画質な撮影には重要です。

ソニーセミコンダクタソリューションズは2021年12月、フォトダイオードと画素トランジスタを別々の基板に形成して積層する2層トランジスタ画素積層型の技術1を発表しました。1マイクロメートル角に換算した同社製品どうしの比較で、従来型の裏面照射型の約2倍の飽和信号量を確保したとしています。それぞれの層を最適な構造にできたことが、この差につながっています。

同社が2026年6月に発表したモバイル用イメージセンサーは2、フォトダイオードから溢れた電荷をためておける横型オーバフロー蓄積容量(LOFIC)を採り入れ、飽和電荷量を広げました。あふれた分を捨てずに取り込む入れ物を画素に足す形です。

下端は、ノイズをどこまで抑えられるかで決まる

Section titled “下端は、ノイズをどこまで抑えられるかで決まる”

2層トランジスタ画素では、転送ゲート以外の画素トランジスタをフォトダイオードとは別の層へ移したことでアンプトランジスタを大きくでき、夜景などの暗所撮影で出やすいノイズを大幅に低減したとされています。上端と下端が同じ技術で同時に動きます。

2026年6月のモバイル用イメージセンサーは、電荷から電圧への変換効率を高めるUHCGという回路技術で、ランダムノイズの発生を同社の同型サイズの従来品より約30パーセント減らしたと発表されています。上端を押し上げる工夫と下端を押し下げる工夫を、1つの製品の中で組み合わせています。

画素を小さくすると、幅は狭くなる

Section titled “画素を小さくすると、幅は狭くなる”

画素サイズが小さくなると1画素当たりの入射光量が減るため、微細化が進むほど感度やダイナミックレンジが低下します3。幅を広げる努力が続くのは、この流れがあるからです。

小型化が求められるスマートフォン用のイメージセンサーでは、受光する力が落ち、写せる明るさの範囲がいっそう狭まります4。逆光の場面をスマートフォンで撮ると肉眼の見え方とは異なる結果になることがあるのは、この狭さによります。画素を増やして解像度を上げるほど、1画素あたりの幅は苦しくなります。

HDRは、明るさの異なる画像を合成して幅を広げる

Section titled “HDRは、明るさの異なる画像を合成して幅を広げる”

画素そのものを変えずに幅を広げる道が、明るさの異なる画像を合成するHDRです。露光時間や増幅の度合いを変えて明暗の異なる画像信号を何枚か撮り、それらを1つのデータへまとめて幅の広い信号を作ります。そのうえで画面の明るさの分布をもとに調整をかけ、人間が見たイメージに近い画像を得ます。

長時間露光のフレームを、変換効率の高い読み出しと低い読み出しで合成し、その結果と非常に短い露光のフレームを後段の演算で重ねる方式もあります5。非常に短い露光のフレームが高輝度の領域を受け持つため、幅を明るい側へ広げられるとされています。

車載向けでは、時間を合わせた合成が選ばれています。性質が異なる2種類の画素から得られる信号を足し合わせる方式について6、同社は、2つの画素が同じタイミングで撮像するので合成するときに時間的なずれが生じず、物体検知や認識に適した信号が得られるとしています。逆光やトンネルの出入り口のような場面で、白飛びと黒つぶれの両方を減らすためです。

合成の代償は時間のずれで、単露光は幅を譲って動く被写体を取る

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ソニーセミコンダクタソリューションズは、HDRを得るには露光時間を変えて撮った何枚かの画像を重ねる多重露光方式が一般に要るとし、特に動くものを撮ったときにAIの誤認識を招くアーティファクトが出る課題7があるとしています。

同社のセキュリティカメラ向けイメージセンサーIMX585は、この課題への答えとして単露光方式で88dBのダイナミックレンジを示し、同じ製品の多重露光方式で106dBを併記しています。単露光は動く被写体に強く、多重露光は幅が広いという正反対の長所を、使用環境に応じて使い分けられる点が特徴とされています。

2026年6月のモバイル用イメージセンサーは、露光1回ぶんの電荷を3通りの変換効率で読み取るTCG-HDRという技術で、単一の露光で100dBを達成したとされています。露光をひとまとめにするため、動く被写体のブレや照明のちらつきも抑えられると述べられています。合成の枚数を減らしながら幅を保つ方向へ、設計が進んでいることが読み取れます。

幅を取るか、動く被写体を取るかの選択になります
露光のしかた得られる幅(IMX585の公表値)単露光方式1回だけ露光します88dB動く被写体のアーティファクトを抑えます多重露光方式露光時間を変えて複数回、そのあと重ねます106dB動く被写体でアーティファクトが生じます棒の長さはdBの数値に比例させています
同じイメージセンサーでも、単露光方式は88dB、多重露光方式は106dBです。幅の広さと動く被写体への強さが逆を向くため、用途によって使い分けます。
ダイナミックレンジとは何ですか?

一度に扱える信号の、いちばん大きいところからいちばん小さいところまでの幅です。カメラで言えば、白飛びの手前の明るさと、黒つぶれの手前の暗さに挟まれた範囲にあたります。身のまわりの明るさには、日中の太陽から夜の星明かりまで非常に大きな幅があります。

単位のdBは何を表していますか?

幅の広さを示す目盛りで、数字が大きいほど一度に扱える明暗の幅が広くなります。ソニーセミコンダクタソリューションズの製品では、単露光方式で88dB、多重露光方式で106dB、別の製品の単一露光で100dBです。

白飛びと黒つぶれは何が違いますか?

はみ出る向きが別です。明るい側がセンサーの上限を超えると白飛びになり、暗い側が下限に埋もれると黒つぶれになります。明るい側へ露出を合わせれば暗い部分が沈み、暗い側へ合わせれば明るい部分が飛びます。

なぜスマートフォンのカメラは幅が狭いのですか?

センサーを小さくする必要があるためです。小型化が求められるスマートフォン用のイメージセンサーでは受光する力が落ち、写せる明るさの範囲がいっそう狭まります。逆光の場面で肉眼の見え方とは異なる写真になるのは、この狭さが理由です。

HDRはどうやって幅を広げているのですか?

露光時間や増幅の度合いを変えて明暗の異なる画像信号を何枚か撮り、それらを1つのデータへまとめて幅の広い信号を作ります。

単露光と多重露光はどちらが良いのですか?

撮る対象で変わります。多重露光方式は、動くものを撮るとAIの誤認識を招くアーティファクトが出ます。IMX585では単露光方式が88dB、多重露光方式が106dBなので、動くものを撮るなら単露光、幅を優先するなら多重露光という選び方になります。

画素を小さくすると何が起きますか?

幅が狭くなります。画素サイズが小さくなると1画素当たりの入射光量が減るため、微細化が進むほど感度やダイナミックレンジが低下します。

  • 帯域幅とは── ダイナミックレンジが信号の大きさの幅を測るのに対し、帯域幅は周波数の幅を測ります
  • ADC(A/Dコンバータ)とは── 分解能は決まった範囲を何段に刻むかを表し、ダイナミックレンジはその範囲の広さそのものを表します
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