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ソニーイメージセンサ、飽和信号量が約2倍|2層トランジスタ画素で暗所ノイズも低減

Sonyの2層トランジスタ画素(2-Layer Transistor Pixel)とは、1画素の中で同じ面積を分け合っていたフォトダイオードと画素トランジスタを、上下の別の層に分けた画素構造を指す。Sonyは、自社の従来の裏面照射型CMOSイメージセンサーと1 µm角換算で比べて、飽和信号量が約2倍になる1と説明する。飽和信号量は1画素がためられる電子の最大数で、これが増えると明るい部分が白く飛ぶまでの余裕が広がる。同時に、空いた層で増幅トランジスタを大きくでき、暗い場面のノイズが下がる。

この技術が変えるのは、明るさの上限と暗さの下限を同じ画素で両立させる幅だ。Sonyが2021年12月の発表2で挙げた効果も、ダイナミックレンジの拡大とノイズの低減で、逆光の場面で白飛びと黒つぶれを抑えることを用途に挙げている。2023年のXperia 1 Vについて、Sony Electronicsは暗所性能が約2倍、飽和信号量が約3倍3と説明する。どちらも前機種Xperia 1 IVの24 mmレンズ用センサーとの比較で、新しいセンサーは約1.7倍大きい。画素構造だけの効果を表す数字は、Sony Semiconductor Solutionsの1 µm角換算の約2倍のほうだ。

1画素は、光をためるフォトダイオードと信号を読み出す画素トランジスタでできている

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CMOSイメージセンサーの1画素では、フォトダイオードが光を電荷に変えてためる。ためた電荷は、転送ゲート(TRG)がフローティングディフュージョンと呼ぶ小さな容量へ渡す。そこから先は、増幅トランジスタ(AMP)が電荷を電圧に変え、選択トランジスタ(SEL)が読み出す行を選び、リセットトランジスタ(RST)が次の露光の前に電荷を捨てる。この4種類をまとめて画素トランジスタと呼ぶ。

画素の性能は2つの数で表せる。1つは飽和信号量で、明るい側の上限を決める。もう1つは読み出しのノイズで、暗い側の下限を決める。この上限と下限の比がダイナミックレンジだ。

図1画素を上下の層に分ける
従来の積層CMOS画素 光 フォトダイオード 画素トランジスタ ロジックチップ 同じ層で面積を取り合う 2層トランジスタ画素 光 フォトダイオード層 画素トランジスタ層 増幅 リセット 選択 ロジックチップ 飽和信号量 約2倍 従来の裏面照射型比・1 μm角換算
従来の積層画素は1つの層でフォトダイオードと画素トランジスタが面積を取り合い、2層トランジスタ画素は両者を上下の別の層に置く。

従来の積層型イメージセンサーでも、画素チップの下には信号処理のロジックチップを重ねていた。Sonyの積層構造の解説は4、画素部と回路部を別のチップにすると、それぞれに合った製造工程を選べると説明する。ただし画素チップの中では、フォトダイオードと画素トランジスタが同じシリコン基板に横に並んでいた。画素を小さくすると、この2つが同じ面積を取り合う。

2層トランジスタ画素は、転送ゲート以外の画素トランジスタを別の層へ移す

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Sonyの技術ページによれば1、2層トランジスタ画素では、フォトダイオードの層の上に、フォトダイオードを持たない画素トランジスタの層を重ねる。転送ゲートはフォトダイオードの層に残り、RST、SEL、AMPが別の層へ移る。フォトダイオードの層では画素トランジスタに譲っていた面積が空き、画素トランジスタの層では増幅トランジスタに広い面積を割ける。

図2同じ画素面積をどこへ配るか
1つの層で配る 2層に分ける フォトダイオードを広げる フォトダイオード AMP 電荷をためる面積が広い AMPの面積が狭い 増幅トランジスタを広げる フォト ダイオード AMP AMPの面積が広い 電荷をためる面積が狭い 両方を広げられる フォトダイオード層 画素トランジスタ層 飽和信号量 約2倍 暗所ノイズも低減
1つの層で面積を配ると片方を広げた分だけもう片方が縮み、2層に分けると両方に面積を割ける。

この構造の画素は、上下2枚のシリコン層と、その下のロジックチップの3段になる。Sonyの学会発表によれば5、上の層を貼り合わせてからその上にトランジスタを作る製造法を使い、層どうしを深いコンタクトでつなぐ。製造の難所は2層トランジスタ画素の製造工程の記事にまとめた。画素チップとロジックチップを銅の端子で直接つなぐSonyの量産技術は、hybrid bondingの量産の記事で扱っている。

約2倍になる飽和信号量は、白飛びまでの余裕を広げる

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Sonyは、フォトダイオードと画素トランジスタを別の層に分けた結果、フォトダイオードの容量が増え、飽和信号量が約2倍になった1と説明する。比べる相手はSony自身の従来の裏面照射型CMOSイメージセンサーで、比較は1 µm角に換算した値だ。

飽和信号量が増えると、強い光が当たっても画素がすぐには満杯にならない。スマートフォンのセンサーは一眼レフ用ほど大きくできず、取り込める光の量と明るさの幅が限られる。Sonyは、センサーを大きくしなくてもダイナミックレンジを広げられ、逆光のように明暗が混ざる場面で白飛びと黒つぶれを抑えられるとしている1。

飽和信号量は、光を受けたときに出る信号の大きさ、つまり感度とは別の量だ。約2倍になるのは画素がためられる電子の最大数で1、同じ光から得られる信号ではない。2層トランジスタ画素で画像が明るくなるのではなく、明るい部分の階調を失わずに露光できる範囲が広がる。

暗所ノイズを下げるのは、大きくなった増幅トランジスタ

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暗い場面では、光から得られる信号が小さい。露出を上げて明るく撮ろうとすると、読み出しで乗るノイズがざらつきとして目立つ。Sonyは、フォトダイオードのない層で増幅トランジスタを大きくした結果、夜間や暗所の画像で目立つノイズを大幅に減らした2と説明する。

図3光が信号になるまでの流れ
光 フォトダイオード層 光を電荷にためる 転送ゲート 電荷を渡す 画素トランジスタ層 AMP・RST・SEL ロジックチップ 画像データへ変換 飽和信号量 明部の階調の上限を決める 読み出しノイズ AMPの面積が暗部を左右
明部の上限はフォトダイオードの飽和信号量が、暗部のざらつきは増幅トランジスタの大きさが左右する。

Sonyの技術者によるIEDM 2021の論文も5、この構造で増幅トランジスタを大きくでき、画素ピッチ0.7 µmで6752×4928画素の裏面照射型センサーを試作して動作を確かめたと報告している。2023年のVLSIシンポジウムでは、画素トランジスタをフィン型にしてランダムノイズを15%減らした6と報告している。論文の流れは製品化の記事にまとめた。

1つの層で面積を分け合う画素では、フォトダイオードを広げると増幅トランジスタに割ける面積が狭くなり、増幅トランジスタを広げると電荷をためる面積が狭くなる。Sonyの技術者もIISW 2023の論文で7、画素を小さくするとフォトダイオードの面積を確保できず飽和信号量を保ちにくくなり、画素トランジスタが縮むので低ノイズも保ちにくくなると書いている。2層トランジスタ画素は層を分けて、両方に面積を割いた。

製品では2023年のXperia 1 Vの主カメラに載った

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Sony Electronicsは2023年5月、2層トランジスタ画素の積層CMOSイメージセンサー「Exmor T for mobile」を載せたXperia 1 Vを発表した3。24 mmのレンズの主カメラで、センサーはXperia 1 IVの約1.7倍の大きさだ。発表から製品までの経過と、Sonyのスマートフォン向けセンサーの品ぞろえの中での位置は、2層トランジスタ画素の製品化の記事にまとめた。

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