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予防保全とシーズニングとは

予防保全とシーズニングとは、装置が故障する前に計画で停止させて手入れをすることと、その手入れの直後に装置の内側を普段の生産中と同じ状態まで慣らす運転のことです。 前者は停め方の話で、後者は動かし直し方の話です。半導体の前工程では、掃除した直後の装置は普段と別の装置になるので、二つは一組で動きます。どこまで厚く保全するかは、停止時間とウェーハを払うか、測定の遅れの分だけ不良を作る危険を払うかの選択です。

予防保全は、故障の前に決めた時期で部品を替える停め方

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SEAJは予防保全(PM)を、生産装置の予防保全の全般を指す言葉とし、装置の品質改善で最も重要な業務のひとつに数えています1。中身は、部品ごとに耐用年数や耐用時間を定めておき、一定期間使ったら故障していなくても交換する方法です2。故障の可能性を下げ、作業も計画どおりに進められるので、装置が停まるのをメンテナンスの時間だけに抑えられる、とキーエンスは説明しています。類義語に時間基準保全(TBM)や定期保全があります。

これが広まる前は、故障してから直す対処療法的な事後保全(RM)が一般的でした。突然の故障と停止は、生産計画に大きく響きます。

米国エネルギー省の運用・保守ガイドは、予防保全で壊滅的な故障そのものは防げないものの、故障の件数は減らせるとしています3。保全の予定表は、運転記録、保全と修理・交換の履歴、メーカーの推奨から組むよう求めています。

時間で替えるか、状態で替えるかで、払う代償が変わる

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富士電機は化学プラント向けに、保全方式を事後保全、予防保全、改良保全の3つに区分し4、事後保全をさらに緊急保全と計画事後保全に分けています。この区分では、予防保全は稼働時間を基準にする時間基準保全と、装置の状態を基準にする状態基準保全(CBM)の2つを含みます。

時間基準保全は、一定時間動いた設備は故障率が高まる傾向にあるという考えから、状態にかかわらず定期的に手入れをします。富士電機は、装置の状態によっては過度な保全になる可能性と、想定以上に劣化している可能性の両方を考える必要があるとしています。

状態基準保全は、異常や故障の手前に閾値を決めておき、それを越えたら手入れをします。必要なときだけ手入れをするので回数を最適化できる一方、閾値の決め方に経験とノウハウが要る、というのが同社の見方です。同社はさらに、IoTセンサーなどで集めたデータを統計処理やAI・機械学習で処理して予測モデルを作り、故障が起きる状態の判定を標準化する方式を、従来の状態基準保全と区別しています。米国エネルギー省のガイドは、きちんと機能する予知保全の仕組みは予防保全だけの場合より8〜12%の節約になるという過去の研究の見積もりを挙げています。

手入れを省くと、内壁にたまった膜が結果を動かす

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2004年の大陽日酸の報告では、プラズマCVDのチャンバー内には膜になる成分を主とした固体状の堆積物がたまり、成膜状態の異常やパーティクルの発生を招くため、成膜の頻度に応じて内部をクリーニングする必要があります5。広く普及しているのは、活性なフッ素原子で堆積物を四フッ化ケイ素に変え、ガスとして排気するドライクリーニングです。

たまった膜が悪さをする経路は2つあります。ひとつは剥がれて異物になる経路で、パーティクルはICに構造欠陥を生み、特性と信頼性の劣化や歩留りの低下を引き起こします6。もうひとつは、膜がある状態そのものが結果を左右する経路です。CVD炉では反応管の内壁やウェーハボート、排気管への生成物の付着によって成膜結果が変動することが知られており7、バッチを連続して重ねると膜厚が少しずつ動いていきます。

装置は、同じレシピを流し続けているだけで、内側が日ごとに動いていきます。

掃除で落とした膜を、製品の前にわざと付け直す

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成膜からシーズニングまで
内壁の膜60秒45秒25秒10秒成膜 約820nm高圧クリーニング電極まわり低圧クリーニング壁と排気系シーズニング
45秒と25秒のクリーニングで内壁の膜を落としたあと、成膜と同じレシピのシーズニングを10秒流して膜を薄く付け直します。

掃除で内壁の膜を落とすと、装置は連続生産中よりもきれいな側へ振り切れます。同じレシピを流しても、出てくる結果は普段と別のものになります。

大陽日酸の量産型プラズマCVD装置での実験では、まず約820nmの成膜を60秒行い、次に電極まわりへ向けた高圧クリーニングを45秒、チャンバー壁と排気系へ向けた低圧クリーニングを25秒かけ、最後にシーズニングを10秒行っています。4工程を足すと140秒で、そのうちシーズニングは10秒です。シーズニングのレシピは成膜条件と同じで、掃除で落とした膜を、製品を流す前にわざと薄く付け直しています。

このとき使うウェーハは、製品以外の枠に入ります。NPW(Non Product Wafer)は製品デバイスの製造に使うウェーハ以外のダミーウェーハとQCウェーハの総称で、定期的に装置の品質を測るためのウェーハや、製品の前後に装填するウェーハがここに含まれます。

モニタウェーハで測り、許容幅を外れたら次の回で直す

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バッチを重ねたときの膜厚
上限 101nm目標 100nm下限 99nm成膜時間を伸ばす調整あり調整なし1回目11213143回目実行回数
同じレシピを流し続けると膜厚は少しずつ薄くなり、2本の線は最初の調整までほぼ重なります。下限に触れた回で成膜時間を伸ばせば目標へ戻り、伸ばさなければ下限の外へ出たウェーハが作り直しの対象になります。

日立国際電気が2002年時点で示したところでは、成膜のときには、製品用のウェーハとは別に、測定専用のモニタウェーハを一緒に入れるのが一般的です。成膜後にこのウェーハを膜厚測定器やパーティクルモニタで測れば、その回の成膜について良否判定が付きます。

同社の例では、判定基準が数字で引かれています。目標の膜厚を100nm、許容の幅をプラスマイナス1nmとしたとき、バッチの実行回数が増えるにつれて膜厚は薄くなっていきます。そこで上限と下限を超えた時点で、成膜時間を伸ばす向きにプロセスパラメータを調整し、結果を目標へ引き上げます。ウェーハボートを5つのゾーンに分けた温度制御では、中央ゾーンと下部ゾーンの膜厚差が0.5nmの許容幅を超えた時点で、下部の温度を上げます。

1枚あるいは1バッチ分の成膜を終えた時点で膜厚分布などの結果を測り、次の回での偏差が小さくなるようにレシピへ修正を加える制御がRun-to-Run制御です。装置そのものの調子は、稼働データを細かく取ってリアルタイムに解析し、故障の予兆をつかんでダウンの前に保全を行うFDCで見ます。

厚くすれば時間とウェーハを、緩めれば気付く速さを失う

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保全を厚くする側の代償は、停止している時間とウェーハです。SEAJの用語集では、OEE(設備の総合効率)は装置の稼働時間のうち製品の生産に使われる時間の比率を高めることで、そのためには故障とメンテナンスに加えてNPWに費やす時間も減らす必要があります1。掃除の時間も、シーズニングに使うウェーハも、この比率を下げる側に入ります。

測定待ちのあいだの成膜
装置測定器n回目の成膜次の成膜不良の可能性搬送・測定良否判定時間2〜3時間
測り終えるまでの2〜3時間に次の成膜を流すと、前の回の異常が分かる前に同じ装置でまた不良を作る可能性があります。

緩める側の代償は、気付くのが遅れることです。日立国際電気は2002年時点で、ウェーハを装置の外の測定器へ運んで測り終えるまでに最低でも2時間から3時間かかり、結果が出る前に次の成膜を実行すると、同じ装置でまた不良のウェーハを作ってしまう可能性があるとしています。測ってから直すまでに時間差があるという構図は今も同じです。この時間差の分だけ、良否判定を待たずに流したロットが後追い調査の対象になります。

保全そのものも人に依存します。日立製作所は2024年に、自動化が進んだ半導体工場でも人手が要る作業は多く、装置メンテナンスもそのひとつ8だとしています。メンテナンスの成否がサービスエンジニアの技量に大きく左右されるため、熟練者の不足への対策としてもスマートメンテナンスの需要が増えている、というのが同社の見方です。周期を詰めるという判断は、その作業を担う人の手を詰めるという判断でもあります。

予防保全とは何ですか?

故障の前に、計画にもとづいて点検や部品交換を行う保全方式です。部品ごとに耐用年数や耐用時間を定めておき、一定期間使ったら故障していなくても交換します。SEAJは予防保全を、装置の品質改善で最も重要な業務のひとつに数えています。

事後保全との差はどこにありますか?

事後保全は、異常や不具合が起きてから直す方式で、予防保全が広まる前はこの対処療法的なやり方が一般的でした。突然の故障と停止が生産計画に大きく響きます。富士電機は事後保全を、緊急保全と計画事後保全の2つに区分しています。

シーズニングとは何ですか?

チャンバーの内側を掃除したあとに、製品以外のウェーハや空運転でプロセスを短く回し、内壁の状態を普段の生産中と同じところまで慣らす手順です。大陽日酸の実験では、成膜60秒、クリーニング45秒と25秒のあとにシーズニングを10秒行い、レシピは成膜と同じものを使っています。

なぜ掃除した直後にそのまま製品を流すのを避けるのですか?

内壁の状態そのものが結果を左右するためです。CVD炉では、反応管の内壁やウェーハボート、排気管への生成物の付着によって成膜結果が変動することが知られています。掃除で付着物を落とすと、その状態は連続生産中と別のものになります。

保全を省くと何が起きますか?

プラズマCVDではチャンバー内に固体状の堆積物がたまり、成膜状態の異常やパーティクルの発生を招くため、成膜の頻度に応じた内部のクリーニングが要ります。パーティクルはICに構造欠陥を生み、特性と信頼性の劣化や歩留りの低下を引き起こします。

保全の周期は何を基準に決めますか?

稼働時間を基準にする時間基準保全(TBM)と、装置の状態を基準にする状態基準保全(CBM)があります。半導体の装置では、これに加えてモニタウェーハで測った膜厚やパーティクル数の推移も材料になります。

保全を厚くすると何を失いますか?

停止している時間と、製品以外に回るウェーハが増えます。OEE(設備の総合効率)を高めるには、故障とメンテナンスに加えてNPWに費やす時間も減らす必要があります。富士電機は、時間基準保全が過度な保全になる可能性を指摘しています。

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