コンテンツにスキップ

バーチャルメトロロジとは

バーチャルメトロロジとは、加工装置のデータや中間の出来栄えデータから、加工寸法やデバイス特性の計測値を予測する技術です。 計測には時間と費用がかかるので実際のウェーハは抜き取りで測りますが、VMを使えば測らなかった枚にも値が付きます。価値を決めるのは予測の当たる範囲で、モデルを作り、当たり具合を確かめ、条件の移りに追随させるための実測は、VMを入れても残ります。

抜き取りで空いた枚の値を、装置データからの推定で埋める

Section titled “抜き取りで空いた枚の値を、装置データからの推定で埋める”

通常のインライン計測では、計測コストの増加とサイクルタイムが長くなる点から、抜き取りによる計測を実施しています1。測った枚だけに値が付き、残りは空欄のままです。VMは、加工装置データや中間の製品出来栄えデータなどから加工寸法やデバイス特性などの計測値を予測し、仮想的な全数計測を行います。岡崎隼也氏の解説は、これでコスト抑制と品質保証の両立に届くとしています。実測を増やさずに、値の付いた枚だけが増えます。

抜き取りの隙間を推定で埋める
通常のインライン計測装置データVMモデル正解として学習推定値VMを足した後実測した枚推定した枚空欄の枚
実測するのは抜き取った枚だけで、その値はモデルの正解に回ります。装置データから推定した値が残りの枚に付き、仮想的な全数計測になります。

業界のロードマップも同じ利点を挙げています。IRDSのVMホワイトペーパーは、VMの第一の利点を設備投資とサイクルタイムの両方にわたるコスト削減とし2、導入上の課題は主に、IRDSのFactory Integrationの担当チームがAPCの利用者・導入担当者・管理者に行った調査から整理しています。リアルタイムに監視・制御する仕組みとしては、FDC・VM・APCの三つが挙げられています。

工程の途中で、出来上がりの特性を先に読む

Section titled “工程の途中で、出来上がりの特性を先に読む”

従来は製造工程が終了したあとで計測されるデバイス特性を、工程の途中で予測することも可能です1。同じ解説は、その予測値を利用した品質異常の早期検知と安定化にも有効だとしています。最後まで作ってから気づくのと、途中で気づくのとでは、失う枚数に大きな開きが出ます。

解説の活用事例では、トランジスタの閾値電圧 Vth を予測しました。適用後に Vth 予測値の下降傾向が検知され、要因を追うとゲート酸化膜の厚膜化が判明しました。

工程の途中で読む
工程の開始VMでVthを予測工程終了後の計測先に読める区間Vth予測値時間 →下降傾向を検知要因を追うゲート酸化膜の厚膜化
工程終了後に測るデバイス特性を、VMは工程の途中で予測します。Vth予測値の下降傾向から要因を追い、ゲート酸化膜の厚膜化を突き止めた事例があります。

モデルは、データを整え、変数を選び、要求精度まで作り直す

Section titled “モデルは、データを整え、変数を選び、要求精度まで作り直す”

モデルの作製は、データを整える、入力変数を選ぶ、PLS 回帰で予測式を作る、母集団を逐次更新しながら検証用データで精度を測る、という順で進みます。精度が要求に届かなければ、入力変数の選定や企画構想の段階から作り直します。

データを整える段では、分散がゼロに近いパラメータと、極端な値や異常値・欠損データを含むサンプルデータを排除します1。3シグマ法では極端な値そのものが平均値と標準偏差に影響し、適切に極端な値を排除しにくいため、中央値と MADN を使う Hampel フィルターを適用します。

極端な値の外し方
3σ法(平均±3σ)平均Hampelフィルター(中央値とMADN)中央値極端な値も内側除外できる
3σ法では極端な値そのものが平均と標準偏差を引っ張り、帯が広がってその値を外しにくくなります。中央値とMADNを使うHampelフィルターを適用すると、外すべき値が帯の外に出ます。

変数選択の基準には PLS 回帰の VIP 指標を使い、この値が 0.8 より大きな入力変数を重要な変数として選ぶことが多くあります。PLS 回帰は、目的変数との共分散が最大になる潜在変数を作って回帰する手法です。最終的な変数の決定には、現場エンジニアの知見も取り入れます。

入力になるデータは装置の運転記録に限りません。Fraunhofer ENASのプラズマ診断の研究では、スペクトルどうしや、スペクトルと加工結果の間に隠れた相関を共分散解析で探し、時間とともに測ったスペクトルから加工結果を数学的に推定します。対象の例には、多孔質SiCOHを四フッ化炭素のプラズマでエッチングする工程の四重極質量分析(QMS)スペクトルがあります。狙いは、高価で破壊的で時間のかかる分析を減らすこととしています3。

どこで測るか、in-situとex-situという別の軸がある

Section titled “どこで測るか、in-situとex-situという別の軸がある”

プロセスチャンバ内で状況を測ることを in-situ、チャンバ外で測ることを ex-situ と呼びます4。SEAJ の用語集は、実時間制御に適用する場合、測るタイミングはプロセス中であることが望ましいとしています。済んでから測るほど、手の打ちどころが減ります。CMPの研磨中に区画ごとの膜厚を測り、その場で圧力を直す閉ループ制御は、in-situ計測を実時間制御に使う例です。

ウェーハ温度を直接測る代わりに反応室近傍の温度を測り、その結果をもとにシミュレーションでウェーハ温度を推定する方法は、バーチャルセンサと呼ばれます。VM と同じ発想が、装置の中にもあります。

推定値は、モデルが当たる範囲でしか信用できない

Section titled “推定値は、モデルが当たる範囲でしか信用できない”

推定で埋めれば、実測を増やさずに全数ぶんの値が手に入ります。その代わりモデルが当たる範囲でしか信用できず、作ったときと条件が移れば的を失います。母集団を逐次更新すれば追随できるものの、更新のための実測と検証の手間が続きます。抜き取りを薄くすればコストとサイクルタイムは縮みますが、モデルを直すための正解データも同時に減ります。

バーチャルメトロロジとは何ですか?

加工装置のデータや中間の出来栄えデータから、加工寸法やデバイス特性の計測値を予測する技術です。抜き取りで測らなかったウェーハにも値が付き、仮想的な全数計測になります。

なぜ抜き取りで測るのですか?

計測コストの増加と、サイクルタイムが長くなる点から、抜き取りで計測しています。

何が嬉しいのですか?

仮想的な全数計測によって、コスト抑制と品質保証の両立に届くとされています。IRDSのホワイトペーパーは、設備投資とサイクルタイムの両方のコスト削減を第一の利点に挙げています。

工程の途中でも使えますか?

使えます。工程の終了後に計測されるデバイス特性を工程の途中で予測でき、その予測値を品質異常の早期検知にも使えます。

何と組み合わせますか?

リアルタイムに監視・制御する仕組みとして、FDC・VM・APC の三つが挙げられています。

バーチャルセンサとは何が異なりますか?

近い考え方です。反応室近傍の温度を測り、そこからシミュレーションでウェーハ温度を推定する方法をバーチャルセンサと呼び、装置の中の量を推定する点でVMと発想が同じです。

実測はいらなくなりますか?

実測は残り続けます。モデルを作るにも精度を測るにも、正解となる実測が要ります。

4件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4