ラインエッジラフネス(LER)とは
ラインエッジラフネス(LER)とは、出来上がったパターンの縁が、まっすぐな線からどれだけ細かく揺れているかを表す量です。 平均の太さとは別に、1本の線の中の揺れを測ります。線幅の平均が規格内でも、縁が揺れていればトランジスタの特性はばらつきます。ところが揺れの元はレジストの感度を上げる仕組みそのものにあり、LERを減らすと感度か露光時間を差し出すことになります。エッチングで短い周期の凹凸は減る傾向がありますが、特性を左右する長い周期のうねりは残ります。
LERは片側の縁の揺れ、LWRは線幅の揺れで、どちらも3σで表す
Section titled “LERは片側の縁の揺れ、LWRは線幅の揺れで、どちらも3σで表す”パターンを転写したあと、現像後とエッチング後のパターンエッジのラフネスが問題になり、これをLERと呼びます1。ばらつきは3σ値、つまり標準偏差の3倍で表すことが多いです。
似た指標にLWRがあります。基準線から片側のエッジまでの寸法のばらつきを3σで表したものがLERの指標で、パターンの寸法そのものを測ってばらつきを3σで表す方法はLWRとも呼ばれます2。片側の縁だけを基準線と比べるのがLER、両側の縁に挟まれた線幅から求めるのがLWRです。
どちらも平均の寸法とは別の指標です。露光と現像を終えたラインの平均の太さが規格に入っていても、縁が大きく揺れていれば場所ごとに太さが違います。寸法の管理だけでは合格に見えるのに、素子の出来上がりがばらつくという食い違いが起きます。
ゲートでは、細かな凹凸より長い周期のうねりが特性を変える
Section titled “ゲートでは、細かな凹凸より長い周期のうねりが特性を変える”影響が最も大きいのはゲートです。ゲートではゲート長の揺らぎが問題になるため、LWRを指標に使います2。トランジスタ内のLWRによる局所的な短チャネル効果よりも、長い周期のラフネスでトランジスタ内のゲート長が全体的に短くなる効果のほうが大きくなります。細かな凹凸より、緩やかなうねりのほうが素子の特性を大きく変えます。
LWRのばらつきはトランジスタ特性のばらつきに影響するため、LWRのばらつきの抑制がCD制御で大きな比重を占めます3。ITRS2011の要求値では、ゲート長のCD制御の3σとして、LWRとチップ内、ウェーハ内、ウェーハ間、ロット間のランダムなばらつきを合わせて物理ゲート長の12パーセント以下が求められます。ラフネスは、この寸法の予算の一部を食っています。
配線では、抵抗率とTDDB特性を悪くする
Section titled “配線では、抵抗率とTDDB特性を悪くする”配線のLERは、抵抗率を増やし、TDDB特性を劣化させます2。特に銅とlow-k膜の配線では、後者のTDDBの問題が顕在化すると考えられています。縁の揺れは、細いところで電気を通しにくくし、絶縁膜の寿命を削ります。
LERの値は、測る長さと箇所数で変わる
Section titled “LERの値は、測る長さと箇所数で変わる”測る装置はCD-SEMです。LER計測は、対象パターンの長さ方向に多点分割してCD計測を行い、統計解析で長さ方向のCDばらつきの分布解析、周波数解析、平均寸法計測を行う機能です4。
厄介なのは、測り方で値が変わる点です。LERやLWRの値に最も大きく影響する計測パラメータは、測定するパターンの長さと測定箇所数です2。標準的なゲートのLWRの指標として、パターン長2マイクロメートル、測定箇所200箇所、つまり測定間隔10ナノメートルという提案があります。長さを大きく取ると短い周期の成分が長い周期の成分に埋もれるので、何を知りたいかで仕様を変える必要があります。
長さと周期の関係を数値で扱うのが周波数解析です。imecは、レジストのライン上のラフネスを数値化して異なるレジストプロセスを比べる新しい指標として、パワー密度スペクトル(PSD)を使いました5。周波数は長さの逆数なので、高い周波数は短い長さの揺れ、低い周波数は長い長さの揺れを表します。
装置側の誤差も加わります。パターンエッジを抽出するときに画像ノイズで観測エッジが真の位置からずれ、観測されるLERやLWRの値は真の値より大きくなります。これを画像ノイズ起因のバイアスと呼びます2。信号の積算回数を増やせばノイズは減らせますが、レジストが収縮する場合には難しく、特に3ナノメートル以下の計測では注意が必要です。SEMとは別の測り方に原子間力顕微鏡(AFM)があり、NISTは2種類のAFMと2種類の探針でLERの測定値を比べています6。試料には、振幅と波長の異なるラフネスをあらかじめ刻んだ専用のものを使いました。
日立製作所は、2006年当時のArFレジストでの実際のLWRが3から6ナノメートルで、通常のCD計測再現性より約1桁大きいため、プロセスの安定性を監視する目的の計測では誤った判断の原因になるとしています4。同社の対策は、広い範囲を低倍率で撮り、複数パターンの測定値を平均化してラフネスによる誤差を除く機能で、レジストへの電子線ダメージの低減にもなるとしています。
酸の拡散とレジスト分子の大きさが、縁を揺らす
Section titled “酸の拡散とレジスト分子の大きさが、縁を揺らす”LERを引き起こす最も大きな要因は、レジストのベース樹脂を構成する分子のサイズ、反応サイトの位置と数のばらつき、化学増幅系レジストにおける酸拡散プロセスと考えられています2。ほかに、現像時の膨潤や収縮、雰囲気汚染による酸濃度の変化も指摘されています。
酸の拡散が影響する理由は、レジストの仕組みにあります。化学増幅レジストは光酸発生剤で作った酸による触媒反応を使い、触媒反応で感度を上げられますが、そのためには酸の拡散が必要です7。露光後現像前には、露光後ベークと呼ばれる加熱を行うのが通例です。感度を上げる仕組みそのものが、縁をぼかす原因にもなります。
EUV世代では、光子の数も問題になります。確率的影響とは、パターンの微細化とともに、光子数の揺らぎ、レジスト構成材料の不均一性、露光装置のコントラスト低下によってパターン欠陥が確率的に生じる現象で、EUV露光で顕在化しました1。確率的欠陥には、パターンがつながるブリッジ欠陥、断線するブレーク欠陥、欠損するミッシング欠陥などがあります。揺れが大きくなると、やがて線が切れます。
像のコントラストも影響します。パターンエッジでの光学コントラストを表すイメージ・ログ・スロープが大きいほど、解像性が優れ、LWRも小さくなります1。縁で光の強さが急に立ち上がるほど、縁の揺れは小さくなります。
LERを減らす手は、感度と時間を削るか、短い周期しか直せない
Section titled “LERを減らす手は、感度と時間を削るか、短い周期しか直せない”レジストプロセスでも現像条件やベーク温度の最適化が試みられていますが、LERは一般にレジストの感度とトレードオフの関係にあり、材料とプロセスの開発は非常に難しくなっています2。EUVレジストでは解像力、感度、LWRが相反関係にあることが知られており、EUVレジスト開発の大きな課題です。露光量を増やせば1時間の処理枚数が減り、酸の拡散を抑えれば感度が下がります。
材料の分子の大きさも制約になります。ITRSのロードマップでは、ハーフピッチ22ナノメートル世代に要求されるLWRは2ナノメートル以下です。一般的な化学増幅型レジストのベースポリマーなどの平均粒塊は数十ナノメートル程度とされるため、従来のポリマー系では目標の達成が難しいという意見もあります。粒塊の径を小さくするため、分子量1000から2000程度の低分子ガラスタイプのレジストが提案されています。
エッチングで整える効果は、周期によって分かれます。ドライエッチングでは側壁の凹凸が均一化されて短い周期のLERが減る傾向がありますが、トランジスタ性能のばらつきに大きく影響するゲートの長い周期のLERは解消されません2。
レジストのトリミングからハードマスクのエッチングまでの工程では、LERを維持し、可能であれば減らしながらマスクを作ることが求められます3。ArFレジストでは、堆積性の強いプロセスでイオンエネルギーを高めることで、垂直形状とLERの低減が図れるという報告があります。
一方で、ドライエッチングはデバイスに物理的・電気的な損傷を与える可能性があり7、プラズマが発生する紫外線によるLERの増大も指摘されています。エッチングは、条件によって縁を整える場合も荒らす場合もあります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ラインエッジラフネスとは何ですか?
パターンの縁が、まっすぐな線からどれだけ細かく揺れているかを表す量です。現像後とエッチング後のパターンエッジのラフネスをLERと呼び、ばらつきは標準偏差の3倍である3σ値で表すことが多いです。
LERとLWRの違いは何ですか?
求め方が違います。片側の縁が基準線からどれだけずれるかのばらつきがLER、両側の縁に挟まれた線幅そのもののばらつきがLWRです。ゲートではゲート長の揺らぎが問題になるので、LWRを指標に使います。
平均の寸法が規格内でも、なぜ管理するのですか?
平均の寸法とラフネスは別の指標で、同じ平均でも縁が大きく揺れていれば1本の中で場所ごとに太さが変わるからです。ゲートでは、長い周期のラフネスでゲート長が全体的に短くなる効果が、局所的な短チャネル効果より大きくなります。
何が原因で生まれるのですか?
最も大きな要因は、レジストのベース樹脂を構成する分子のサイズ、反応サイトの位置と数のばらつき、化学増幅系レジストの酸拡散プロセスと考えられています。現像時の膨潤や収縮、雰囲気汚染による酸濃度の変化も指摘されています。
どうやって測るのですか?
CD-SEMで、対象パターンを長さ方向に多点分割してCDを測り、長さ方向のばらつきの分布と周波数を統計解析で調べます。NISTは、原子間力顕微鏡を使ったLER計測も比べています。
測り方で値は変わりますか?
変わります。最も影響の大きい計測パラメータは測定するパターンの長さと測定箇所数で、ゲートのLWRではパターン長2マイクロメートル、測定箇所200箇所という提案があります。画像ノイズのため、観測値は真の値より大きく出ます。
LERを下げると、何が犠牲になりますか?
感度か時間です。LERは一般にレジストの感度とトレードオフの関係にあり、EUVレジストでは解像力、感度、LWRが相反関係にあることが知られています。露光量を増やせば、1時間に処理できる枚数が減ります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”7件を表示
- 1SEAJ:半導体製造装置用語集(リソグラフィ)seaj.or.jp abc
- 2
- 3SEAJ:半導体製造装置技術ロードマップ ウェーハプロセス 2012年版seaj.or.jp ab
- 4日立評論:設計データを活用したCD-SEMの新しい世界(2006年3月)hitachihyoron.com ab
- 5imec Magazine EUV単一露光の限界を押し広げる取り組み(2018年3月)imec-int.com ↩
- 6NIST:原子間力顕微鏡を使ったラインエッジラフネス計測(論文)nist.gov ↩
- 7電子情報通信学会:知識ベース 10群2編3章 プロセス要素技術ieice-hbkb.org ab