再付着(リデポジション)とは
再付着(リデポジション)とは、エッチングで出た生成物やマスクのスパッタ物、プラズマ中で生成した重合成分が、揮発して排気されるまえに側壁や加工面へ貼りつく現象です。 側壁に付けば垂直形状に役立ち、加工面や底に戻れば面荒れとレート低下の原因になります。同じ付着物が場所によって保護膜にも欠陥の種にもなるので、付着を減らすだけでは解決しません。側壁の膜は薄すぎればボーイング、厚すぎれば縦筋を生むため、どこにどれだけ付けるかを両側から挟んで合わせ込む必要があります。
側壁に付けば保護膜、加工面に戻れば面荒れになる
Section titled “側壁に付けば保護膜、加工面に戻れば面荒れになる”関根誠氏によると、中性種と反応しやすい材料を削る場合、エッチング生成物とレジストの分解物がパターンの側面に積もり、中性種による横方向の反応を抑えます1。パターンの底ではイオンが当たってこの薄い膜が剥がされるので、異方性の加工になります。塩素系で多結晶シリコンを削る例では、生成物のSiClxがこの側壁保護膜の役割を果たします。ドライエッチングの垂直性は、この付着と剥離の差で生まれます。
加工面に戻ると、同じ貼りつきが面荒れになります。名古屋大学の林俊雄氏は、加工面が粗くなる原因に、重合物を作りやすい物質でチャンバー壁へ膜が付いてダストになること、マスクがスパッタされて戻る分、蒸気圧の低い生成物が戻る分を挙げています。生成物に不揮発性物質を含むLiNbO3やPZTなどは主に化学スパッタ機構で削ります。圧力が高く、基板の近くで分子同士がよくぶつかる状態だと、不揮発の生成物が基板へ戻って加工面が荒れます。
膜の厚さはイオンのエネルギーにも影響します。ソニー半導体事業本部の辰巳哲也氏によると、酸化シリコンの表面に定常的にできるC-Fポリマーは、その厚さに応じてイオンを減速します。マスクの材料選びにも同じ関係が出ます。林氏によると、ニッケルやクロムのフッ化物は蒸気圧を持たないので高い選択比が得られますが、クロムのエッチングでは有効な側壁保護膜を作りにくく、寸法が設計値より大きく後退するCDシフトが出やすくなります。選択比を上げるための材料選びが、寸法の後退につながります。
側壁に付いても害になるのが、金属の再付着です。scia Systemsは、TMRセンサの構造加工で、MgOバリアに金属が再付着してできるバイパスを避けるため、65°の浅い角度を意図して選んだとしています2。MgOバリアの側面に付いた金属は、電流の抜け道になります。
側壁の膜がアスペクト比3で途切れ、4でボーイングが出る
Section titled “側壁の膜がアスペクト比3で途切れ、4でボーイングが出る”日立製作所中央研究所の根岸伸幸氏と伊澤勝氏は、微細ホールの絶縁膜エッチングで中間部が樽型に膨らむボーイングを、パターン間のショートマージン低下の要因に挙げています。同氏らは同社のUHF-ECR装置でアルゴンとC5F8と酸素の混合ガスを使い、ボーイング位置の寸法シフト量からホール間口の寸法シフト量を引いた値をボーイング量として、ホール径が細るほどボーイング量が急激に増えたとしています3。
原因を探るため、同氏らは加工済みのホールを低ウエハバイアス条件のプラズマにさらし、側壁に堆積したデポ厚さを断面SEMで測りました。ホール径が小さくなるほど側壁堆積量は直線的に減りました。一方で、堆積膜が途切れる位置のアスペクト比は3程度、ボーイングが出る位置のアスペクト比は4程度で、どちらもホール径によらずほぼ一定でした。ホールに入るイオンフラックスはアスペクト比で決まるので、ホール径が細るほど、ボーイング位置では入射イオン量に対する側壁の堆積速度の割合が下がると考えられています。マスクのファセット部やネッキング部で反射したイオンや、チャージアップで向きを変えたイオンが、その側壁を削ります。
対策として同氏らは、ホール中間部の堆積を担うCF2ラジカルを増やす方法と、ホール上部で止まってしまうCラジカルの付着係数を下げて奥まで堆積成分を運ぶ方法を検討しました。前者はアルゴン流量によるC5F8分圧の制御、後者は電極温度の高温化です。アルゴン流量が800ミリリットル毎分ではホール中間部の側壁に堆積が見られず、500、200ミリリットル毎分と下げると側壁堆積量が増えました。低流量化で、付着係数の低いCF2系ラジカルが増えたと考えられています。電極温度が低く付着係数が高いままだと、アスペクト比3〜4のあたりに側壁保護膜が付かずボーイングが出ると見込まれます。電極温度を上げるとラジカルがホールの奥まで届き、ボーイング位置の付近で堆積速度が上がって保護膜ができます。2つを組み合わせ、同氏らはホールのトップ寸法を保ったまま、ボーイング量を56.3ナノメートルから15.2ナノメートルに減らしました。
ガスの解離のバランスでも、堆積と寸法の引き換えが起きます。UHF-ECR方式の絶縁膜エッチング装置では、ウェーハとシャワープレートのギャップを狭めるとCF2/F比が上がって対レジスト選択比を大きくとれる一方、ギャップを広げるとCF2/F比が下がり、CD制御性と垂直性に優れたプラズマになります4。この装置では、0.1マイクロメートルのホールでアスペクト比20以上の加工例が示されています。エッチングガスの解離のバランスは、堆積と寸法のどちらを優先するかで決まります。
膜が厚すぎると、側壁に縦筋が刻まれる
Section titled “膜が厚すぎると、側壁に縦筋が刻まれる”膜を厚くすればボーイングは抑えられますが、同じ膜が一定の厚さを超えると縦筋状の形状異常(ストライエーション)が悪化します。キオクシアの大村光広氏らは、高アスペクトホールでは、縦筋が出るホール上部の側壁フルオロカーボン膜の厚さが約3ナノメートルで、側壁が平滑な深い領域より厚かったとしています。同氏らは、この膜がある厚さを超えて厚くなるほど縦筋がひどくなると考えています。酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、フルオロカーボン膜に800エレクトロンボルトのアルゴンイオンビームを垂直から85度の浅い角度で照射した実験では、フルオロカーボン膜にビームの入射方向と平行な鮮明な縦筋が見られ、無機の膜より有機の膜の上で縦筋ができやすいとされています。この縦筋は、そのままラインエッジラフネス(LER)の数値に現れます。
同氏らは絶縁膜側壁のフルオロカーボン膜の厚さをTEM(透過電子顕微鏡)で観察し、加工深さに対してプロットしています。界面反応層は大気開放で変質しやすい一方、表面のフルオロカーボン膜は安定なため解析しやすいとしています。縦筋が絶縁膜へ転写される段階は、膜を剥がしてから比べると切り分けられます。加工50秒後のサンプルは酸素アッシングでカーボン膜とフルオロカーボン膜を除去するとストライエーションが消え、150秒後のサンプルではアッシング後にも残りました。ストライエーション下端のアスペクト比は、加工時間50秒から700秒までのすべてで約23になっており、同氏らは形成領域がアスペクト比に強く依存するとしています。
穴底の丸さにも影響します。同氏らが引いた報告では、コンタクトホール加工後のサンプルをCMPで削って真円度のアスペクト比依存を求め、アスペクト比10以上で真円度が急激に悪化する一方、オーバーエッチングの段でポリマーを落とすステップを挟むと真円度が7パーセント良くなりました。
圧力、排気、時分割、レイアウトで付着の量と場所を動かす
Section titled “圧力、排気、時分割、レイアウトで付着の量と場所を動かす”関根氏は、エッチング生成物の再吸着を抑えて高速エッチングを可能にする技術として、高ガス流量や高速排気が提案されているとしています。林氏によると、MEMS分野のシリコン深掘りでは、高いエッチ速度を得るために3〜100パスカルの高い圧力が使われ、ガラスのエッチングでは、イオンが基板に届く効率の良い0.2〜2パスカルが使われます。石英の深掘り加工の例では、C4F8を50立方センチメートル毎分、バイアスパワー400ワット、圧力0.67パスカルで、深さ120マイクロメートルの形状が得られています。低圧にすれば再付着は減り、高圧にすればラジカル供給によるレートが上がります。
時分割は、再付着を工程として積極的に作る方法です。ボッシュプロセスは、シリコンの等方性エッチング、保護膜の堆積、底面の保護膜を除去する異方性エッチングの3ステップの繰り返しで5、エッチングにSF6、保護膜にC4F8を主に使い、高い選択比を保ちながら高異方性のエッチングができるとされています。サムコは、RIE-800iPB6がボッシュプロセス専用ICPコイルで5,000ワットの高RFパワーを効率よく印加でき、ガスを0.1秒で切り替えられるのでスカロップを小さく抑えられるとしています。同社はレジストとシリコンの選択比を1対500以上、シリコン深掘りを45マイクロメートル毎分以上とし、アスペクト比100以上の加工に対応するとしています。切り替えを速くするほど側壁の段差は小さくなり、段差そのものを避ける方法として、同機は非ボッシュプロセスでの順テーパー加工やスカロップのない加工にも対応します。この方式はDRIE(深堀り反応性イオンエッチング)やTSV(シリコン貫通電極)の穴あけで使われます。関根氏は、堆積性ガスとエッチングガスを数秒ごとに切り替え、エッチング時にバイアスRFを加えるTime-modulated etching法も挙げています。
レイアウトでも付着量は動きます。ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井信行氏らは、加工特性が振れる要因に、ポリマーの再堆積量を左右するウェハ内とチップ内の開口率を挙げ、ダミーパターンの配置も含めてマスクレイアウトを緻密に設計する必要があるとしています。ここから先はローディング効果と同じ話になります。
壁や部材に付いた膜は、異物になって歩留まりを下げる
Section titled “壁や部材に付いた膜は、異物になって歩留まりを下げる”パターン側壁に保護膜を形成するデポジション性の強いガスを添加すると、そのガスがエッチング室の内壁にも付着し、ウェーハを連続で流す過程でウェーハ上の異物が増えて、デバイスの歩留まり低下の一因になります7。林氏によると、光導波路などの深溝加工では、形状を制御しながらのエッチング速度が0.5マイクロメートル毎分前後で、50マイクロメートルの加工に100分前後を要します。この間にチャンバー壁へ付いた膜がダスト源となり、加工中に加工面へ舞い降りると粗い加工表面になります。チャンバ内壁の状態とパーティクルの管理は、同じ現象の別の出口です。深い溝の途中が膨らむボーイングなどの形は、ガスの反応種と保護膜の釣り合いで原因を分けられます。
イオンビーム装置では、ビームが当たった部材そのものが再付着の源になります。Oxford Instruments Plasma Technologyは、イオンビーム成膜(IBD)向けの遮蔽板について、Ionfabターゲットから飛んだスパッタ物が30cmのエッチソースのグリッドへ付くのを防ぐ、または減らすとしています8。ターゲットからはみ出した周辺のビームが後壁やライナーをスパッタし、その材料が基板へ届くのを防ぐ設計だとしています。同社は、エッチソースと成膜ソースを1つのレシピで使う場合でも、工程中や合間のソースのクリーニングとコンディショニングが要らなくなり、スループットが上がるとしています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”再付着(リデポジション)とは何ですか?
エッチングで出た生成物やマスクのスパッタ物、プラズマ中で生成した重合成分が、揮発して排気されるまえに側壁や加工面へ貼りつく現象です。パターンの側面に積もった生成物とレジストの分解物は、中性種による横方向の反応を抑えます。
再付着は害だけですか?
付く場所で役割が変わります。側壁の膜は底だけイオンに剥がされるので異方性の加工を支え、加工面や底に戻れば面荒れとレート低下の原因になります。MgOバリアに付く金属のように、側壁に付いてバイパスを作る付着物もあります。
現場ではどんな形状異常として出ますか?
ホール中腹の樽型(ボーイング)と、側壁の縦筋(ストライエーション)です。日立製作所中央研究所の根岸伸幸氏らは、同社のUHF-ECR装置での検討で、側壁堆積膜が途切れる位置のアスペクト比が3程度、ボーイング位置が4程度で、どちらもホール径によらずほぼ一定だとしています。キオクシアの大村光広氏らは、ホール上部の側壁フルオロカーボン膜が約3ナノメートルで、平滑な深い領域より厚かったとしています。
側壁の膜厚は何で調整しますか?
希釈ガス流量と電極温度です。根岸氏らは、アルゴン流量を800から500、200ミリリットル毎分へ下げると側壁堆積量が増え、電極温度を上げるとラジカルがホールの奥まで届くとしています。両者の組み合わせで、ボーイング量を56.3ナノメートルから15.2ナノメートルへ減らしました。
膜を厚くすると何が悪化しますか?
側壁の縦筋です。大村氏らは、高アスペクトのホール側壁でフルオロカーボン膜がある厚さを超えて厚くなるほど縦筋がひどくなると見ています。800エレクトロンボルトのアルゴンイオンビームを垂直から85度で照射した同氏らの実験では、フルオロカーボン膜にビームの入射方向と平行な鮮明な縦筋が出ました。
何を測ると堆積量が出ますか?
断面で見たホールの側壁です。根岸氏らは加工済みのホールを低ウエハバイアス条件のプラズマへさらし、側壁のデポ厚さと堆積膜が途切れる位置のアスペクト比を断面SEMで求めています。大村氏らはTEMで膜厚を加工深さに対してプロットし、表面のフルオロカーボン膜は安定なため解析しやすいとしています。
ボッシュプロセスは再付着とどう関係しますか?
再付着を工程として時分割で作る方式です。シリコンの等方性エッチング、保護膜の堆積、底面の保護膜を除去する異方性エッチングの3ステップを繰り返し、エッチングにSF6、保護膜にC4F8を主に使います。サムコは、RIE-800iPBがガスを0.1秒で切り替えられるので、スカロップを小さく抑えられるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ローディング効果とは── 開口率で再堆積量が変わる現象
- 選択比(エッチング)とは── 不揮発のフッ化物で選択比を上げる材料は、側壁保護膜を作りにくくCDシフトが出やすい
- パーティクルとは── 壁に付いた堆積物が剥がれて加工面に落ちる経路
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- 1
- 2scia Systems:Structuring of TMR Sensorsscia-systems.com ↩
- 3
- 4日立評論:Vol.85 No.4 次世代プロセス対応のUHF-ECR方式絶縁膜エッチング装置(2003年4月)hitachihyoron.com ↩
- 5サムコ:高速シリコンディープエッチング装置samco.co.jp ↩
- 6サムコ:高速シリコンディープエッチング装置 RIE-800iPBsamco.co.jp ↩
- 7日立評論:Vol.71 No.5 特集 半導体製造技術 ドライエッチング装置(1989年5月)hitachihyoron.com ↩
- 8Oxford Instruments Plasma Technology:Ion Beam Anti-Contamination Shieldplasma.oxinst.com ↩