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トレーサビリティとは

トレーサビリティとは、手元の製品が、いつ・どこで・何を使って作られたのかを、後から遡ってたどれる状態のことです。 半導体では、パッケージ表面に捺印された数文字が、たどり始める入口になります。この記録が値打ちを持つのは異常が見つかったときで、どこまで遡れてどこまで追えるかが、隔離する製品の量を決めます。

半導体は完成した時点で樹脂やセラミックの中に封じられ、外へ出ている情報は表面の印字と包装に貼られたラベルだけです。そのため各社は、この印字そのものを記録の入口として設計しています。

捺印したロット番号が、製造履歴を開く鍵になる

Section titled “捺印したロット番号が、製造履歴を開く鍵になる”

ソニーセミコンダクタソリューションズは、出荷した製品のトレーサビリティを、最終製品に捺印されたマークロットナンバーを鍵として、使用部材ロットと製造履歴を紐付ける仕組みにしています1。出荷梱包箱のラベルにも製品名とマークロットナンバーが載るため、梱包のままでも製造履歴へたどれます。手元の1個から遡る道は、製品の捺印と箱のラベルの2本で、どちらも同じ番号を指しています。

番号の先にどんな記録をつなぐかについて、シーメンスは、ロットのトレーサビリティに消費した材料、使った工程と装置、集めたパラメータと品質データ、例外、手直し、日時、電子署名2が含まれるとし、材料・人・機械・方法・測定の「5M」をたどるものと説明しています。

たどる向きは2つあります。シーメンスは、不良の部材ロットが見つかったときにその部材が入った全ての中間組立品と最終製品を示すのが前方トレースで2、あるロットや製品に関わった全ての部品、中間組立品、装置、工程、作業者を示すのが後方トレースだとしています。管理の単位はバッチ、ロット、シリアル番号とその組み合わせまで多段にできるとしています。

前方トレースと後方トレース
部材ロット製品ロット最終製品部材A部材B部材Cロット1ロット2ロット3ロット4製品1製品2製品3製品4前方:不良部材の使用先後方:不良品の構成要素
不良の部材ロットからは、その部材が入った製品ロットと最終製品を前方へたどります。不良が出た製品からは、そのロットと使った部材を後方へたどります。

異常が出たとき、隔離する範囲を決める

Section titled “異常が出たとき、隔離する範囲を決める”

ロームでは、管理基準の外に出る異常が見つかると3、エンジニアが速やかに原因を調べ、あわせて波及範囲を特定します。異常と判断された製品は隔離され、次の工程の手前でシステム上のロックがかかります。顧客への流出が分かった場合は、速やかに報告し、処置を協議します。

1個の不良が出ると、同じ条件で作られた仲間も同じ疑いを負います。仲間がどこまで広がっているかを言えれば、そのロットだけを隔離すれば済みます。範囲を言えなければ、取れる手は全部を隔離することだけです。

ロームは統計的な管理も、ロットや生産単位を単位にしています。出荷テストの特定項目に不良率の規格を設けてロットの異常を監視するSBLと、歩留まりのカットリミットで生産単位を切るSYLでは、実力値から±3シグマを逸脱すると異常のフラグを立ててロットや生産単位を識別管理し、±4シグマを逸脱すると良品群から隔離して、技術的な検証が済むまで出荷を保留します。処置の単位が1個からロットへ広がるところで、トレーサビリティが働いています。

ソニーセミコンダクタソリューションズも、部材の購入から製造工程の品質管理、検査、入庫、出荷情報までを1つのデータ収集システムで管理し、万一トラブルが起きた場合に波及範囲を迅速に特定するために使っています。

半導体の記録で一番細いのは、番号を刻む面

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マークロット番号の7桁と省略の順
7桁そろう① 製造週を省く② 年を2進表記2進③ 組立場所を省く2進省く順製造年1桁製造週2桁通し記号3桁組立場所記号1桁
ソニーセミコンダクタソリューションズのマークロット番号は、7桁に製造年・製造週・通し記号・組立場所を収めます。印字面が狭いときは、製造週、製造年の表し方、組立場所記号の順に削ります。

記録の連なりは、最も細いところより先へは届きません。半導体でそこにあたるのは、鍵を書き込む場所です。

ソニーセミコンダクタソリューションズのマークロット番号は7桁で、製造年1桁、製造週2桁、通し記号3桁、組立場所記号1桁で構成されます。製造年は西暦年の下1桁の数字、製造週は年初から数えた捺印時の週に対応する01から53までの数字、通し記号はサイト内の製品名単位の通し番号に対応する英字、組立場所記号は封止工程の組立場所を表す記号です。製造年が西暦年の下1桁なので、同じ数字は10年ごとに戻ってきます。

印字スペースの都合で桁数を削る場合には、省略の順番が決まっています。まず製造週を省き、次に製造年を2進法で符号表記し、最後に組立場所記号を省きます。小さなパッケージほど、鍵に残る情報が少なくなります。

識別の捺印ができるのはパッケージ製品に限られるため、ベアダイ製品では品質問題が生じたときに波及範囲の明示が困難になります。ソニーセミコンダクタソリューションズは、購入する側にもトレーサビリティを確保できる管理システムなどの協力を求めています。鍵を刻む面がパッケージにしかない以上、そこから先は買う側の仕事になります。

計量トレーサビリティは、測定器の校正を国家標準まで遡る

Section titled “計量トレーサビリティは、測定器の校正を国家標準まで遡る”
校正の連鎖
不確かさ国家計量標準上位の標準器標準器工場の測定器校正他国の国家計量標準CIPM MRA1999年10月認定校正機関(JCSS)校正
測定器は標準器で、標準器はより不確かさの小さい標準器で校正され、上位をたどると国家計量標準に行き着きます。認定校正機関を使えば、途中の連鎖を意識せずにこの遡りが確保されます。

同じ言葉が、まったく別の連なりにも使われています。測定器は標準器によって校正され、その標準器も不確かさのより小さい標準器によって校正されます4。上位をたどると、最後は国家計量標準に行き着きます。校正の連鎖によって国家標準を基準に校正されたとたどれる場合、その測定器で得た結果は国家標準にトレーサブルであるといいます。食品や製造の分野でもトレーサビリティが重要になっているため、計量標準の分野のものであることを明確にするために計量トレーサビリティと呼ぶことがあります。

日本の国家標準は、計量法で特定標準器・特定標準物質と定められ、個々に経済産業大臣が指定・告示しています5。測定器や分析装置を国家標準にトレーサブルとするには、関係する全ての国家標準の整備が前提になります。国境の先へも連鎖はつながっています。1999年10月、各国の国家計量標準機関の間で、計量標準の同等性を相互承認する協定(CIPM MRA)が締結されました5。標準に関わる国際通商上の障壁を軽くすることが主な目的です。

利用する側の手間は、制度の側で軽くなります。認定された校正機関を使えば、途中の校正の連鎖を意識せずに計量トレーサビリティが確保されます4。その仕組みがJCSSで、JCSSは計量法トレーサビリティ制度の略称です6。NITEの認定センター(IAJapan)が、そのうちの校正事業者登録制度を運営しています。JCSSは計量標準供給制度と校正事業者登録制度の2本柱から成り、後者はISO/IEC 17025(JIS Q 17025)の要求事項に適合している校正事業者を登録する制度です。

2本の連鎖は工場で交わり、そろって初めて証拠になる

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半導体の合否は、測って決まります。ロームは、信頼性試験の結果を、かけたストレス条件(温度・湿度・電圧・電流など)と測定値に基づいて評価するとしています3。測る道具が狂えば、良品として出した箱の中身の判定も一緒に狂います。

そのため校正の記録も、製品の記録と同じように残されます。ロームは、車載用途の製品の開発・評価・信頼性試験ではISO/IEC 17025に準じた校正を適用し、校正結果を証明できるよう管理しています3。外部委託では認定校正機関か、同社の基準で認定した校正業者や装置メーカーを選び、校正証明書等の記録を入手・保管してトレーサビリティを確保します3。社内で校正する場合も、トレーサビリティを確保できる基準器を使い、社内規定に基づく作業手順と力量管理のもとで行い、同様に記録を保管します。

ソニーセミコンダクタソリューションズは、計測器の精度管理として、購入時の受け入れ検査と使用時の定期点検を行い、定期的に校正を実施することで、故障や精度の低下を未然に防ぐ予防保全の体制を築いています。この定期的な校正が、計量トレーサビリティの連鎖の末端にあたります。

半導体1個の品質を後から示すには、どの製造条件で作られたのかを示す遡りと、そのとき測った値がどこまで信用できるのかを示す遡りの2つが要り、2本そろって初めて証拠になります。偽造半導体が問題になるのは、この2本の連鎖がどちらも切れた品物が市場に混じるためです。機能安全が求める故障率の数値も、遡れる記録の上に立っています。

トレーサビリティとは何ですか?

手元の製品が、いつ・どこで・何を使って作られたのかを、後から遡ってたどれる状態のことです。半導体では、パッケージ表面に捺印された番号がその入口になります。

半導体では何が鍵になるのですか?

パッケージに捺印されたロット番号です。ソニーセミコンダクタソリューションズは、最終製品に捺印されたマークロットナンバーを鍵にして、使用部材のロットと製造履歴を紐付けています。

何のために必要なのですか?

異常が見つかったときに、影響が及ぶ範囲を絞り込むためです。ロームでは、管理基準の外に出る異常が見つかるとエンジニアが原因調査と波及範囲の特定を行い、異常と判断された製品を隔離して、次の工程の手前でシステム上のロックをかけます。

ロット番号の桁には何が入っているのですか?

各社が意味を決めています。ソニーセミコンダクタソリューションズのマークロット番号は7桁で、製造年1桁・製造週2桁・通し記号3桁・組立場所記号1桁で構成されます。

印字が短い製品もありますが、なぜですか?

印字できる面積に限りがあるためです。ソニーセミコンダクタソリューションズは桁数を削る場合、製造週を省く、製造年を2進法で符号表記する、組立場所記号を省く、という順で省きます。

ベアダイでも同じようにたどれますか?

たどる役目が買う側へ移ります。識別の捺印ができるのはパッケージ製品に限られ、ベアダイ製品では波及範囲の明示が困難になるため、ソニーセミコンダクタソリューションズは購入する側にもトレーサビリティを確保できる管理システムなどの協力を求めています。

計量トレーサビリティも同じ言葉ですか?

遡る対象が別です。測定器が校正の連鎖によって国家標準を基準に校正されたとたどれる状態を計量トレーサビリティと呼び、食品や製造分野のトレーサビリティと区別するためにこの言い方を使うことがあります。

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