コンテンツにスキップ

加速試験とは

加速試験とは、実使用条件では何年もかかる故障を、高い温度や電圧で短時間に起こし、そこから実使用条件へ引き延ばして寿命を見積もる方法です。 10年もつことを、10年かけずに確かめるための手段です。1,000時間の試験が数十年分の動作に化けるのは、活性化エネルギーの見積もりと、試験でも実使用でも同じ故障機構で壊れるという前提があるからです。どちらかが崩れれば、換算した寿命も崩れます。

試験時間に加速係数を掛けると、実使用の動作時間になる

Section titled “試験時間に加速係数を掛けると、実使用の動作時間になる”
1,000時間の試験が表す時間
加速試験 1,000時間(1マス)実使用 560,000時間(約64年)
ルネサスの例では、加速試験の1,000時間の連続動作が、実使用条件での560,000時間、約64年の連続動作に相当します。

半導体の信頼性は、周囲温度・湿度・電圧・電流といった実際の動作環境の要因で大きく左右されます1。加速寿命試験は、実使用時の部品の故障率を推定する方法です。使用環境のストレスに着目し、そのストレスの条件をパラメータとして試験を行います。温度、電圧、湿度を上げて短時間で壊し、得られた結果を実使用条件へ換算します。

温度加速試験は、半導体デバイスの内部で起きる故障の反応を熱ストレスで速め、実使用の環境より短い期間で故障を起こします1。換算は掛け算で、試験時間に温度の加速率を掛けたものが実使用での動作時間にあたります。ルネサス エレクトロニクスの例では、1,000時間の連続動作の温度加速試験が、実使用条件での560,000時間、およそ64年の連続動作に相当します。故障率は逆向きで、加速試験の条件で得た故障率を、試験条件と実使用条件から求めた加速係数で割ると実使用での値になります。

温度が上がると、活性化エネルギーの山を越える反応が速くなる

Section titled “温度が上がると、活性化エネルギーの山を越える反応が速くなる”

正常な状態から劣化した状態へ移るために超える必要のあるしきい値のエネルギーが、活性化エネルギーです。材料の中で起きる劣化はこの山を越える反応にあたり、温度が高いほど山を越えられる粒子の割合が増えます。

反応速度の温度依存はアレニウスが見いだし、反応速度をKKとするとK=Λexp⁡(−EakT)K = \Lambda \exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)と表せます。EaE_\mathrm{a}は活性化エネルギー(eV)、kkはボルツマン定数(8.617×10⁻⁵ eV/K)、TTは絶対温度です。故障までの時間をLLとすればL=Aexp⁡(EakT)L = A \exp\left(\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)となり、温度を上げるとLLが短くなります。活性化エネルギーが大きいほど、温度を上げたときの加速係数は大きくなります。

外挿した寿命は、傾きにあたる活性化エネルギー次第

Section titled “外挿した寿命は、傾きにあたる活性化エネルギー次第”
傾きと外挿の先
1つの温度で測る2つの温度で測る寿命(対数)試験温度使用温度温度の逆数寿命(対数)外挿した寿命試験温度使用温度温度の逆数
1つの温度の測定点を通る直線は傾きの数だけ引け、使用温度での寿命が決まりません。温度を変えて2点を測ると傾き、つまり活性化エネルギーが決まり、引き延ばした先が1つに定まります。

寿命の対数を温度の逆数に対してプロットすると直線になり、その傾きが活性化エネルギーを表します。高温で2点測れば直線が1本引け、その直線を使用温度まで引き延ばした先が求めたい寿命です。この引き延ばしが寿命外挿(Extrapolation)です。

1つの温度で測っただけなら、その点を通る直線は無数にあり、どれを選ぶかで引き延ばした先は大きく変わります。直線を1本に絞るには傾きが要るので、加速試験では活性化エネルギーをいくつと見積もったかが結論の一部になります。

TDDBも同じ構造で、加速性モデルは複数の案が提案されている段階にとどまります2。加速の式が1本に決まって初めて、加速試験の答えも1つに定まります。どのモデルで、活性化エネルギーをいくつと置き、どの温度域から外挿したかまで揃って、加速試験の結果ははじめて比較できる値になります。

温度以外のストレスは、アイリングモデルでべき乗として掛ける

Section titled “温度以外のストレスは、アイリングモデルでべき乗として掛ける”

現実の故障を起こすストレスは温度のほかにもあり、湿度で腐食が進むもの、電圧で絶縁が壊れるもの、機械的な力で剥がれるものがあります。アレニウスモデルが反応の温度依存を表すのに対し、機械的ストレス、湿度、電圧といった温度以外のストレス因子への依存を示すには、アイリング(Eyring)モデルが一般に使われます1。

式の形はK=a(kTh)⋅exp⁡(−EakT)⋅SαK = a\left(\frac{kT}{h}\right)\cdot\exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)\cdot S^\alphaで、SSが温度以外のストレス因子です。温度の項にストレスのべき乗が掛かる構造で、温度範囲TTが小さければK=Λexp⁡(−EakT)⋅SαK = \Lambda \exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)\cdot S^\alphaと近似されます。

湿度の加速では、85℃・85%RHのバイアス試験と、100℃以上・1気圧以上で行うHAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)が代表的な条件です1。キオクシアは、市場での耐湿性寿命を予測するとき、温度、相対湿度、電圧印加条件と不良メカニズムを考慮すれば、加速試験の結果から寿命を推定できるとしています2。放射線によるソフトエラーにも加速の考え方があり、製造プロセスの代表製品で行うフィールド試験と並んで、α線源を当てて短時間で評価する加速試験があります。

故障機構ごとに寿命を左右するストレスが別々なので、信頼性試験は1種類では済まず、高温動作・温度サイクル・高温高湿といった複数の試験に分けて行います。

加速しすぎると別の故障機構を呼び込むので、定格内で足りなければTEGで測る

Section titled “加速しすぎると別の故障機構を呼び込むので、定格内で足りなければTEGで測る”

温度を上げるほど試験は短くなりますが、温度が高すぎると実使用では起きない故障を起こすことがあります1。実使用で見つかるものとはまったく別の故障機構で壊れてしまえば、換算した寿命は実使用の寿命を表しません。加速の上限は、故障機構が実使用と同じに保たれる範囲で決まります。

製品の最大定格の範囲内では、加速係数が不足する場合や、短時間の試験で検出できる故障が限られる場合があります。そうした場合は、TEG(Test Element Group)を用いた、故障機構に基づく信頼性試験が欠かせません。製品の代わりに、故障機構を測るための専用の試験構造を作って測定します。

製品設計の段階で信頼性を確保するには、製品と同じプロセスで故障機構に応じた試験を行い、温度・電界などの加速係数を明らかにして、製品設計に用いる設計ルールへ反映します。加速試験は、出来上がったものを測る道具であると同時に、設計ルールを定めるために先に加速の度合いを知っておく作業でもあります。

加速試験とは何ですか?

実使用時の部品の故障率を推定するための方法です。使用環境のストレスに着目し、そのストレスの条件をパラメータとして試験を行い、試験時間に加速係数を掛けて実使用の時間へ換算します。

なぜ温度を上げると早く壊れるのですか?

反応が進む速さが温度で上がるためです。反応速度の温度依存はアレニウスが見いだし、アレニウスの式が広く使われています。

活性化エネルギーとは何ですか?

正常な状態から劣化した状態へ移るために超える必要のあるしきい値のエネルギーです。この値が大きいほど、温度を上げたときの加速係数は大きくなります。

どうやって実使用条件の寿命を求めるのですか?

外挿します。寿命の対数を温度の逆数に対してプロットすると直線になり、その傾きが活性化エネルギーを表します。この直線を使用温度まで引き延ばします。

活性化エネルギーが未知のときはどうしますか?

外挿には、傾きにあたる活性化エネルギーの値が要ります。1つの温度で測っただけでは傾きが決まらないので、温度を変えて2点以上を測り、傾きを求めてから引き延ばします。

温度以外のストレスはどう見積もるのですか?

アイリング(Eyring)モデルが一般に使われます。機械的ストレス、湿度、電圧など、温度以外のストレス因子への依存を表すモデルです。

加速には限界がありますか?

あります。温度を上げすぎると、実使用では起きない別の故障機構で壊れることがあります。製品の最大定格の範囲内で加速係数が不足する場合や、短時間の試験で検出できる故障が限られる場合は、TEG(Test Element Group)を用いた、故障機構に基づく信頼性試験が欠かせません。

2件を表示
  1. 1
  2. 2