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電圧加速とは

電圧加速とは、印加電圧を実使用より高くして故障を早め、短い時間で寿命を見積もる手法です。 温度による加速と組み合わせて使います。温度を上げるだけでも寿命は縮みます。それでも電圧を加えるのは、絶縁膜の破壊のように、温度より電界のほうが強く影響する故障の仕組みがあるからです。換算の確かさを決めるのは、試験の電圧で壊れている仕組みが実使用と同じかどうかです。

温度は指数の中に入り、電圧はべき乗で寿命に掛かる

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温度と電圧の掛かり方
温度は指数の中電圧はべき乗寿命(対数)温度の逆数 1/T傾き=Ea/k寿命(対数)電圧(対数)傾き=−α
寿命の対数は、温度の逆数に対して傾きEa/kの直線になり、電圧の対数に対して傾き−αの直線になります。温度は指数の中に入り、電圧はべき乗で掛かるためです。

アレニウスのモデルは反応の温度依存性に着目したもので、K=Λexp⁡(−Ea/kT)K=\Lambda\exp(-E_\mathrm{a}/kT)と書きます1。EaE_\mathrm{a}は活性化エネルギーです。機械的ストレス・湿度・電圧のような温度以外の依存性まで含めて一般化したものがアイリングのモデルで、一般式はK=a(kTh)⋅exp⁡(−EakT)⋅SαK=a\left(\frac{kT}{h}\right)\cdot\exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)\cdot S^\alphaです。SSは温度以外のストレス因子で、温度TTの狭い領域であればK=Λexp⁡(−EakT)⋅SαK=\Lambda\exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)\cdot S^\alphaと簡略化できます。

耐湿性では、湿度・温度・電圧が加速要因で、寿命はL=C⋅eEa/kTb⋅(RH)−n⋅V−αL=C\cdot e^{E_\mathrm{a}/kT_\mathrm{b}}\cdot(\mathrm{RH})^{-n}\cdot V^{-\alpha}と書けます1。VVが印加電圧、α\alphaが印加電圧係数です。温度は指数の中に入り、電圧はべき乗で影響するので、加速のしかたが違います。この式の両辺の対数を取ると、寿命の対数は温度の逆数に対しても電圧の対数に対しても直線になり、傾きがEa/kE_\mathrm{a}/kと−α-\alphaにあたります。

二つの効果は分けて扱えます。NASAジェット推進研究所(JPL)のWhiteらは、加速係数について、温度の加速係数AFT\mathrm{AF}_\mathrm{T}と電圧の加速係数AFV\mathrm{AF}_\mathrm{V}は別々に計算でき、信頼性物理の研究の多くがこれを扱うとしています2。

αは故障の仕組みごとに違い、複数の電圧で寿命を測って決める

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試験結果から実使用条件での故障率を予測するには、EaE_\mathrm{a}、nn、α\alphaが不可欠な情報です。これらの値は故障モードにより異なります。α\alphaを決めるには、複数の電圧で寿命を測り、寿命の対数と電圧の対数の傾きを読みます。

材料が違っても電圧加速がそろう例があります。インフィニオンは、200°CでのPBTIの電圧加速について、SiCとSiのどちらの技術のデバイスも同じ電圧加速を示し、変動の絶対量だけが違うとしています3。配線では構造で係数が変わり、imecのRu配線ではair gapの電界加速係数がlow-kのdual damasceneより高く出ています。

湿度と電圧を実使用にそろえれば、換算は温度だけで済む

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条件のそろえ方
温度温度加速だけを換算相対湿度試験と実使用が同一印加電圧試験と実使用が同一実使用条件試験条件
湿度と印加電圧を実使用と同一にそろえると、試験条件が実使用から離れるのは温度だけになり、相対湿度係数nと印加電圧係数αを使わずに換算できます。

マイコン製品の高温高湿バイアス試験を例にした計算では、湿度と外部印加電圧を実使用条件と試験条件で同一と仮定します。この仮定のもとでは、相対湿度係数nnと印加電圧係数α\alphaを計算する必要がなく、温度加速性だけを検討すれば済みます1。

試験の設計で電圧と湿度を実使用に合わせておけば、換算の不確かさは温度だけに絞れます。係数を測る手間を省く代わりに、加速は温度の分しか得られません。電圧加速を使うかどうかは、係数を測る手間と加速の強さの引き換えです。

ロームのGaN HEMTの例では、スイッチングさせたまま電圧を変えて係数を求める

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ロームは、GaN HEMTの実アプリケーションが高電圧・大電流・高周波・高温でスイッチングする条件にあり、その条件での検証が要るとしています4。同社は、JEDECのJEP182がGaN HEMT向けの試験法の指針を示しているとしています。加速の条件そのものを標準化する取り組みです。

ロームは、電流ID=±5A、TJ=95℃、FSW=500kHzで印加電圧を変えて加速係数を導き、寿命を求めた例4を示しています。SALTと呼ぶスイッチング試験で電圧ごとの平均故障時間(MTTF)を求め、その傾きから得た電圧の加速係数で、400V/5A/500kHzでのMTTFを約2000年と導いています4。テキサス・インスツルメンツも、パワーデバイスの評価回路で供給電圧を上げて電圧加速をかけています5。

電圧を上げすぎると、実使用とは別の仕組みで壊れる

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壊れ方の入れ替わり
試験電圧の範囲寿命(対数)電圧(対数)使用電圧求めたい寿命実使用の仕組み別の仕組み
試験電圧の範囲で別の仕組みが先に壊すと、故障点は実使用の仕組みの直線に乗らず、その点から使用電圧での寿命を読めなくなります。

電圧を上げれば試験は短く済み、費用も下がります。その代わり実使用とは別の仕組みが支配的になって壊れる危険が上がり、得た結果から実使用の寿命へ換算できなくなります。JPLのWhiteらは、一つの故障の仕組みでも、加速は温度や電圧の強い非線形の関数であるとしています2。

ゲート酸化膜では、膜厚によって加速則そのものが合わなくなるおそれがあります。同じ報告は、膜厚が5 nmより薄くなると、従来の電圧と温度の加速則が正確でなくなるおそれを示す研究2を挙げています。電圧のべき乗則と非アレニウス型の温度加速を組んだWuのモデルは、UIUCとIBMが共同開発した、プロセッサーの長期信頼性を予測するRAMPモデルに組み込まれています2。

実使用に近い電圧で試験すれば換算は確かですが、時間がかかります。係数α\alphaを実測すれば精度は上がるものの、複数の電圧で加速試験を組む手間が増えます。

電圧加速とは何ですか?

印加電圧を実使用より高くして故障を早め、短い時間で寿命を見積もる手法です。温度による加速と組み合わせて使います。

どんな式で表しますか?

耐湿性寿命は L=C・e^(Ea/kTb)・(RH)^−n・V^−α と書けます。V は印加電圧、α は印加電圧係数で、寿命は電圧の −α 乗に比例します。

アイリングモデルとは何ですか?

アレニウスのモデルを、温度以外の依存性まで含めて一般化したものです。一般式は K=a(kT/h)・exp(−Ea/kT)・S^α で、温度の狭い領域では K=Λexp(−Ea/kT)・S^α と簡略化できます。

温度と何が違いますか?

掛かり方です。温度は指数の中に入り、電圧はべき乗で影響します。寿命の対数を取ると、温度は逆数に対して、電圧は対数に対して直線になります。

係数はどうやって決めますか?

複数の電圧で寿命を測り、寿命の対数と電圧の対数の傾きから求めます。故障の仕組みごとに値が異なり、ロームはGaN HEMTで電圧を変えた試験から加速係数を導いています。

何が要りますか?

耐湿性試験の結果から実使用条件での故障率を予測するには、Ea、n、α が不可欠な情報です。湿度と電圧を実使用と同一にそろえた試験なら、温度加速性だけを検討すれば済みます。

危険はありますか?

あります。電圧を上げすぎると、実使用とは別の仕組みで壊れることがあります。その結果は実使用の寿命から切り離されます。

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