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加速係数とは

加速係数とは、加速試験の条件での寿命と、実使用条件での寿命の比です。 試験の1時間が実使用の何時間にあたるかを表します。

寿命の対数は温度の逆数に対して直線に乗るので、高い温度で短時間試験した結果をその直線に沿って実使用条件へ換算します。10年の寿命を確かめるのに10年かけずに済むのは、この換算があるからです。式は簡単でも、中に入れる活性化エネルギーと、加速しても故障の仕組みが変わらない範囲の見極めが、答えのほとんどを決めます。

寿命の対数は温度の逆数に対して直線になり、傾きはEa/k

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アレニウスの式1は反応速度をKKとしてK=Λexp⁡(−EakT)K=\Lambda\exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)と表し、故障に至るまでの時間をLLとするとL=Aexp⁡(EakT)L=A \exp\left(\frac{E_\mathrm{a}}{kT}\right)となります。両辺の対数を取るとln⁡L=ln⁡A+EakT\ln L=\ln A+\frac{E_\mathrm{a}}{kT}になり、寿命の対数と温度の逆数が直線で結ばれます。横軸を1/T1/T(K⁻¹)とすれば傾きはEa/kE_\mathrm{a}/kで、傾きにボルツマン定数kkを掛けると活性化エネルギーEaE_\mathrm{a}が得られます。

この直線の上で、2つの温度に対応する寿命の比が加速係数です。加速係数は、2つの温度での反応の進む速さの比2と定義することもできます。試験の温度を上げるほど、比は大きくなります。アレニウスモデルは、化学反応や拡散、マイグレーションに支配される故障の仕組みで実績があります3。

必要なのは2つの絶対温度と活性化エネルギーだけで、Eaを倍にすると係数は2乗になる

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Eaの置き方と加速係数
寿命(対数)温度の逆数 1/T試験温度使用 65℃Ea=0.5 eV31.5倍Ea=1.0 eV約990倍
同じ2つの温度でも、傾きにあたるEaを0.5 eVと置けば加速係数は31.5倍、1.0 eVと置けば、式から31.5の2乗の約990倍になります。

温度T1T_1とT2T_2における寿命を各々L1L_1、L2L_2とすると、ln⁡(L1/L2)=11606(1T1−1T2)Ea\ln(L_1/L_2)=11606\left(\frac{1}{T_1} - \frac{1}{T_2}\right)E_\mathrm{a}です。必要な値は2つの絶対温度と活性化エネルギーの3つだけで、ボルツマン定数は8.6157×10⁻⁵ eV/Kです。ルネサス エレクトロニクスは、Ea=0.5E_\mathrm{a}=0.5 eV、市場温度65℃と仮定した例で、加速係数を31.5と計算しています1。

式の右辺はEaE_\mathrm{a}に比例するので、同じ2つの温度のままEaE_\mathrm{a}を2倍に置くと、ln⁡(L1/L2)\ln(L_1/L_2)が2倍になり、加速係数は2乗になります。ルネサスの例の31.5に当てはめると、EaE_\mathrm{a}を1.0 eVと置けば約990倍です。活性化エネルギーは故障の仕組みごとに異なり、それぞれの故障メカニズムに対して代表的な値が求められています。この例では、EaE_\mathrm{a}の置き方ひとつで係数が31.5倍違います。

加速係数31.5の使い方
時間試験時間実使用での時間(×31.5)故障率試験条件の故障率実使用の故障率(÷31.5)試験条件実使用条件
加速係数が31.5なら、試験時間は31.5倍して実使用の時間になり、試験条件の故障率は31.5で割って実使用の故障率になります。

温度加速試験では、試験時間に温度加速係数を掛けた時間が、実使用条件での使用時間にあたります1。故障率は逆に割ります。JIS-C5003に沿って試験結果から故障率を求めるときは、信頼水準60%の係数0.92を使い、総試験時間で割ります。こうして算出した値は加速された試験条件下での故障率で、実使用条件での故障率はこれを加速係数で割って求めます。

そのため加速係数を実値のcc倍に見積もると、実使用条件の故障率は実値の1/c1/c倍になります。活性化エネルギーの選び方が、そのまま結論を左右します。ルネサスは、信頼性試験の条件での試験時間が、加速係数を考慮したうえで実使用時間より厳しくなっていることを必ず確かめてから使うよう求めています。

一般的な加速係数は求めにくく、温度だけでは足りないことが多い

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ルネサスは、加速性が樹脂材料、パッケージ構造、メタライゼーション、パッシベーションなどで異なり、一般的な加速係数を求めるのは非常に困難1だとしています。

温度加速だけでは十分な加速率が得られないのが一般的で1、電圧や温度差の加速率と組み合わせて使います。温度以外のストレスへは、アイリングモデルが湿度や電圧を含めて一般化します。

GaNのような新しい素子では、試験から加速係数を作り直す

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ロームはGaN HEMTについて、DHTOLとSALTという2つの試験を挙げ、SALTから加速係数を導いています4。最終的には電圧、電流、スイッチング周波数、ジャンクション温度の加速係数を求めて寿命を予測する必要があるとしています。同社は電流ID=±5 A、TJ=95℃、FSW=500 kHzの条件で印加電圧を変えて加速係数を導いた例を示し、400 V/5 A/500 kHzでのMTTFを約2000年と導いています4。

JEDECのJEP182は、GaN HEMT向けの動的オン抵抗試験法の指針を示しています。標準の試験に加えて、専用の試験で補う形です。材料と構造が変われば、支配的な故障の仕組みも変わります。加速係数の式は同じでも、その中に入れる活性化エネルギーは測り直しになります。

加速を強めるほど試験は速く、見積もりは不確かになる

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加速条件を強めれば短時間で故障を観測でき、日程と費用が減ります。その代わり実使用とは別の仕組みが支配的になり、得た加速係数が使えなくなる危険が上がります。ルネサスは温度について加速の限界を十分に吟味するよう求めており、プラスチック材料のガラス転移のように、常温とは異なる反応に律速される故障モードで誤った判断をする可能性があるとしています1。活性化エネルギーを大きく仮定すれば加速係数は大きく出て、寿命の見積もりが甘くなります。試験を速くする操作は、そのまま見積もりの確からしさを削ります。

加速係数とは何ですか?

加速試験の条件での寿命と、実使用条件での寿命の比です。試験の1時間が実使用の何時間にあたるかを表します。

どうやって計算しますか?

温度T1とT2における寿命をL1、L2として、ln(L1/L2)=11606(1/T1 − 1/T2)Eaで計算します。ルネサスは、Ea=0.5 eV、市場温度65℃と仮定した例で31.5と計算しています。

Ea は何ですか?

活性化エネルギーです。故障の仕組みごとに値が異なり、温度でどれだけ加速するかを決めます。同じ2つの温度でEaを2倍に置くと、加速係数は2乗になります。

ボルツマン定数はいくつですか?

8.6157×10⁻⁵ eV/Kです。式の11606はその逆数にあたります。

温度以外でも加速しますか?

します。アイリングモデルが、湿度や電圧といった温度以外のストレスを含めて一般化します。温度加速だけでは十分な加速率が得られないことが多く、電圧や温度差の加速と組み合わせて使います。

故障率の計算にどう使いますか?

加速条件下で求めた故障率を、試験条件と実使用条件の間の加速係数で割ると、実使用の故障率になります。

GaN のような新しい素子でも使いますか?

使います。ロームはGaN HEMTについて、SALTという試験から加速係数を導いて寿命を予測する手順を示しています。電圧、電流、スイッチング周波数、ジャンクション温度の加速係数を求める必要があるとしています。

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