ワイブル分布とは
ワイブル分布とは、故障が起きる時間のばらつきを表す確率分布です。 形状パラメータ m の値で、故障率が下がる期間か、一定の期間か、上がる期間かが分かります。試験で得られるのは、何個がいつ壊れたかという数字の列です。その列を 1 つの形状パラメータへ畳むと、いまどの期間にいるかが 1 目盛りで読めます。
形状パラメータ m は、1 未満・約 1・1 超で 3 つの期間を分ける
Section titled “形状パラメータ m は、1 未満・約 1・1 超で 3 つの期間を分ける”半導体デバイスの信頼性は、故障率曲線、すなわちバスタブカーブで表され、初期故障、偶発故障、摩耗故障の 3 領域に分かれます1。初期故障期間では が 1 未満になり、時間とともに故障率が下がります。偶発故障期間では となり、故障率関数は指数分布にほぼ一致します1。摩耗故障期間では が 1 超になります。
一つの分布で 3 つの区間を書き分けられます。ワイブル分布は、スウェーデンの W.Weibull が金属疲労寿命の研究に使った分布で、指数分布を拡張したものと考えられます1。テキサス・インスツルメンツは、ワイブル分布は、通常は形状 と特性寿命 の 2 つの調整パラメータだけで、バスタブカーブの 3 つの区間すべてを表せる柔軟な関数だとしています2。
ワイブルプロットでは直線になり、傾きが m、F=0.632 の時間が η になる
Section titled “ワイブルプロットでは直線になり、傾きが m、F=0.632 の時間が η になる”横軸に故障時間の対数、縦軸に を取ると、ワイブル分布に従うデータは直線に並びます。この描き方をワイブルプロットと呼び、直線の傾きが形状パラメータ です。 は とも書かれ、TI は を「ワイブルの傾き」、 を分布の「特性寿命」と呼んでいます2。傾きが大きいほど故障の時期がそろっており、小さいほど時間軸に散らばっています。
プロットする点は、サンプルの総数を 、時間 までの累積故障数を として、平均ランク法で と求めます1。ワイブル確率紙の上に両対数目盛りで と累積ハザード を取れば両者は直線関係になり、 と が求まります1。この関係を使えば、表計算ソフトでもパラメータを導けます。 のとき 、 になります1。 は、 によらず累積故障確率が 0.632 に達する時間です。どのパラメータも、試料を故障するまでストレス試験して決めます2。
摩耗故障は、故障率ではなく累積故障に至る時間で寿命を決める
Section titled “摩耗故障は、故障率ではなく累積故障に至る時間で寿命を決める”偶発故障期間の故障率は一定なので、FITのような故障率の単位で表せます。摩耗故障の予測は基本的に なので、故障率を予測するより、ある累積故障に至る時間で定義する耐用寿命を予測するほうが適切です1。たとえば累積故障確率 0.1% に至る時間を耐用寿命と定義し、個々の製品で耐用年数を確かめます1。
故障の仕組みごとに分布が違い、混ざると点が 1 本の直線から外れる
Section titled “故障の仕組みごとに分布が違い、混ざると点が 1 本の直線から外れる”初期故障は、選別工程で取り除けなかった潜在故障によるもので、主にマイクロダストのウエハ付着など製造上の欠陥や材料不良に起因します1。偶発故障の原因は、偶発的なオーバーストレス、ソフトエラー、初期故障の残存分です。放射線によるソフトエラーや静電破壊が、真に一定の故障率になるモードです。摩耗故障は、ホットキャリア・エレクトロマイグレーション・TDDB といった故障モードの寿命を意味し、実使用時のストレスの違いで変わります1。
原因が違えば、分布も違うと考えられます。劣化現象や故障メカニズムはそれぞれ固有の故障分布をもつと考えられ、故障モードやメカニズム、ストレスが変わると と が変わります1。そのため、直線から離れる点があれば、複数の故障の仕組みが混ざっている合図です。1 本の直線から離れたデータは、分けて数えます。
限られた試験数から、分布と加速係数の 2 段で母集団を推定する
Section titled “限られた試験数から、分布と加速係数の 2 段で母集団を推定する”試験にかけられる個数と時間は限られています。得られた故障時間へ分布を当てはめると、試験の外側にある母集団の様子を見積もれます。
ロームは、DHTOL と SALT という 2 種類の加速試験を挙げ、後者から加速係数を導いて寿命を推定する手順3を示しています。
分布の当てはめと加速係数は、2 段構えで使います。分布でばらつきの形を掴み、加速係数で試験条件から実使用条件へ移します。後者は、故障を早める条件で測った結果を使用条件へ外挿する手順です。
試験を増やせば費用が増え、加速を強めれば別の故障の仕組みが入り込む
Section titled “試験を増やせば費用が増え、加速を強めれば別の故障の仕組みが入り込む”試験の個数と時間を増やせば分布の推定は確かになりますが、費用と日程で払います。加速条件を強めれば短時間で故障を観測できる代わりに、実使用とは別の仕組みが支配的になる危険が出ます。形状パラメータが 1 本の直線に乗るかどうかは、その危険が出ているかどうかの手掛かりでもあります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ワイブル分布とは何ですか?
故障が起きる時間のばらつきを表す確率分布です。形状パラメータ m の値で、故障率が下がる期間か、一定の期間か、上がる期間かが分かります。
形状パラメータは何を示しますか?
初期故障期間で m が 1 未満、偶発故障期間で m が約 1、摩耗故障期間で m が 1 超になります。故障モードやストレスが変わると m も変わります。
m = 1 のときは何ですか?
故障率が時間によらず一定になり、指数分布とほぼ一致します。偶発故障期間がこの状態です。
バスタブカーブとの関係は何ですか?
同じものを別の言葉で見ています。バスタブカーブは故障率の時間変化、ワイブル分布はその背後にある分布です。TIは、通常は β(m)と η の2つのパラメータで3つの区間すべてを表せるとしています。
どうやってプロットしますか?
各故障時間の累積故障確率を平均ランク法 F(t)=r/(n+1) で求め、横軸に故障時間の対数、縦軸に ln(-ln(1-F(t))) を取ります。ワイブル分布に従うデータは、この紙の上で直線になります。
傾きは何を表しますか?
形状パラメータ m です。傾きが大きいほど故障の時期がそろっており、小さいほど散らばっています。直線が F=0.632 を横切る時間が特性寿命 η です。
何のために使いますか?
少数の試験結果から母集団の故障の分布を推定し、実使用での故障率や、累積故障確率 0.1% に至る時間のような耐用寿命を見積もるためです。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- FIT(故障率単位)とは── 偶発故障期間の故障率を表す単位
- バーンインスクリーニングとは── m が 1 未満の期間を刈り取る工程
- 寿命外挿とは── 分布を実使用条件へ移す手順
- 加速試験とは── 分布を得るためのデータの取り方