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ソフトエラー率とは

ソフトエラー率とは、放射線による値の反転がどれだけの頻度で起きるかを表す指標です。 素子が壊れる故障と同じFITという単位で数え、メモリに注目するときはFIT/Mbitで表します1。テキサス・インスツルメンツは、発生頻度で見るとソフトエラー率はほかのすべての故障メカニズムを合わせたハード故障率の何倍にもなるとしています。素子が健全なまま起きる誤作動なので検出しにくく、数百FITという低い頻度を統計として掴むには、大量のサンプルを長時間動かすだけの総動作時間が要ります。

実装試験は最も正確だが、500個で20,000時間以上かかる

Section titled “実装試験は最も正確だが、500個で20,000時間以上かかる”
試験の規模
実装試験1,000万個・時間500個20,000時間以上加速試験α線源テストチップ
500個のサンプルを20,000時間以上動かす実装試験は、掛け合わせて1,000万個・時間の規模になります。加速試験はα線源をテストチップの上面に置き、短時間で評価します。

メモリのソフトエラー故障率を測るには、実装試験が最も精度の良い方法です2。この方法では大量のサンプルを長時間モニタ試験する必要があり、500個のサンプルで数百FITの実力を測る場合、試験時間は20,000時間以上になります2。500個と20,000時間を掛け合わせると、1,000万個・時間です。全品種へ広げるには大きすぎる規模なので、ルネサス エレクトロニクスは実装試験によるソフトエラー率の測定を、製品プロセスを代表する品種で実施しています。

短時間で測るには、α線源をテストチップの上面へ載せて測る、α線源による加速試験法2を使います。加速試験で測れるのはα線の寄与で、外から来る宇宙線の寄与は別に測ることになります。

率を決めるのは、守られていないメモリの量と電圧

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テキサス・インスツルメンツは、製品の技術もある程度効くものの、はるかに大きく効くのはデバイスに載っているSRAMと順序回路の量だとしています1。保護のない大きなメモリを持つデバイスほど、ソフトエラー率は高くなる傾向があるともしています。SRAMとフリップフロップのビット数を数え、そのうち誤り訂正で守られていない分を見るのが、チップの率を読む出発点です。

電圧も効きます。データの状態は電圧で決まるので、低消費電力のために電圧を下げた技術では信号電荷が減り、放射線が作る電荷の過渡に敏感になる1とテキサス・インスツルメンツはしています。耐α線強度を高める要点も、メモリセルが情報として蓄えている蓄積電荷量の確保です。蓄えた電荷が多いほど、粒子が落とす電荷で反転するまでの余裕が広がります。微細化で蓄積電荷が減れば、余裕は狭まります。

動作の速さも率に入ります。サイクルタイムが短くなるほど、ビット線モデルでの発生率は増えます。速く動かすほど、反転を拾う機会が増えます。

α線は減らして遮れるが、中性子線はほとんど遮れない

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源ごとの止め方
宇宙線(中性子線)パッケージ材チップチップコートU・Thα線
α線の源はパッケージ材の中のウランとトリウムで、材料の高純度化で減らし、チップコートで止められます。宇宙線の中性子線はパッケージの外から来て、遮る手立てがほとんどありません。

対策は3点です。パッケージや配線材料の高純度化で発生するα線の量を減らすこと、チップ表面をコートしてα線を阻止すること、メモリデバイスの耐α線強度を高めることです。ルネサスはポリイミドコートでα線対策を行い、UやThの放射性元素を除いたコーティング材を使っています。コート膜を厚くしていくに従い、エラーの発生率は減少します2。低α線(ULA)材料を使うとソフトエラー率のα線成分が減り、メモリに誤り訂正を付けるとソフトエラー率を大きく下げられます1。

材料とコートが減らすのは、α線の成分です。テキサス・インスツルメンツは、残りのソフトエラー率を生む中性子線を遮るためにできることはほとんどないとしています1。中性子束が地上の数百倍から数千倍になる航空機用途では、ソフトエラー率もはるかに高くなるとしています。

負ミュオンは原子核に捕まり、照射実験で正ミュオンの約4倍の確率で反転を起こした

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ミュオンが反転を起こす仕組み
Si(メモリセル)正ミュオン38 MeV/c止まって電荷を付与負ミュオン38 MeV/c原子核に捕獲約65%中性子・陽子などの二次粒子反転確率約4倍
同じ38 MeV/cで入射しても、負ミュオンは止まった位置で一定の割合でシリコンの原子核に捕獲され、二次イオンを生みます。日本原子力研究開発機構の照射では、反転の発生確率が正ミュオンの約4倍でした。

α線はパッケージ材料の内側から出ます。いっぽう宇宙線は外から来るため、対策も測定も別枠になります。地表に到達する二次宇宙線中では、ミュオンが荷電粒子の約75%を占めます3。日本原子力研究開発機構は、設計ルール65ナノメートルの12メガビットSRAMに運動量34〜44 MeV/cの低エネルギーミュオンを照射し、入射運動量とデバイス印加電圧を変えてビット反転の発生確率を測りました3。動作電圧は0.5ボルトです。低い電圧ほど、反転までの余裕が狭くなります。

38 MeV/cで入射したミュオンは、メモリセルのトランジスタ領域近傍に止まり、大きな電荷を付与してビット反転を起こします。負ミュオンは止まった位置で原子核に捕獲され二次イオンを生むため、正ミュオンの約4倍の発生確率を示しました3。物質中で止まった負ミュオンは原子軌道に束縛されてミュオン原子をつくり、最内殻へ移ったあと、シリコンでは約65%の割合で原子核に捕獲されます。励起された原子核からは、中性子や陽子などの二次粒子が出ます。この成果は2018年5月24日、IEEE Transactions on Nuclear Science誌の電子版に掲載されました。

許容できる率の標準はなく、用途と置き場所で決まる

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テキサス・インスツルメンツは、ソフトエラー率に標準や「許容レベル」はないとしています1。許容できる率は、用途、載っているメモリの量、メモリが保護されているか、地上か航空機の高度かといった動作場所で変わるからです。同じFIT値でも、守られたメモリの多い地上の機器と、守られていないメモリの多い航空機の機器では重みが違います。

測る側にも代償があります。実装試験の精度は、大きな規模の設備と日程で得ます。α線源の加速試験なら短時間で済むものの、外から来る宇宙線の寄与は別に測ることになります。蓄積電荷を増やせば耐性は上がりますが、セルの面積で払います。精度、時間、集積度は、それぞれ別の方向を向きます。

ソフトエラー率とは何ですか?

放射線による値の反転がどれだけの頻度で起きるかを表す指標です。FITと同じ単位で数え、メモリではFIT/Mbitで表すこともあります。

どうやって測りますか?

実装試験が最も精度の良い方法です。大量のサンプルを長時間動かして監視します。

どのくらいの規模が要りますか?

500個のサンプルで数百FITの実力を測る場合、試験に要する時間は20,000時間以上になります。

短時間で測る方法はありますか?

α線源による加速試験法があり、α線源をテストチップの上面へ載せて測ります。

対策は何ですか?

材料の高純度化でα線の量を減らす、チップコートで遮る、蓄積電荷量を確保して耐性を上げる、の3点です。メモリに誤り訂正を付ければ、ソフトエラー率を大きく下げられます。

コートはどのくらい影響しますか?

ポリイミドコートの膜を厚くしていくに従い、エラーの発生率が減少します。コートが止めるのはパッケージ材から来るα線です。

宇宙線はどう数えますか?

α線とは別の源なので、別に測ります。地表ではミュオンが荷電粒子の約75%を占め、中性子線はほとんど遮れません。

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