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シングルイベントアップセットとは

シングルイベントアップセットとは、放射線の粒子 1 個がメモリセルへ入り、蓄えられた電荷量が変わって値が反転する現象です。 回路そのものは健全なままです。故障といえば、素子が壊れる現象を指します。値の反転を別枠に分けるのは、素子そのものは健全で、書き直せばそのまま動くため、対策の打ち方がまったく異なるからです。反転への耐性はセルが蓄えている電荷の量で決まり、微細化と低消費電力化がその余裕を削ってきました。

粒子が当たると蓄積電荷が変わり、値だけが書き換わる

Section titled “粒子が当たると蓄積電荷が変わり、値だけが書き換わる”
ビット反転の起き方
粒子が入る前シリコン1蓄積電荷粒子が通った後0粒子
粒子が通ると飛跡に沿って電荷が生まれ、記憶ノードの蓄積電荷が変わって、1は0に、0は1に書き換わります。セルそのものの形は変わりません。

ソフトエラーは、電子機器が放射線に曝された際に生じる一過性の誤作動や故障で、回路が健全なまま値だけが書き換わります1。宇宙線がメモリセルに衝突すると蓄積電荷量が変化し、0 が 1 に、あるいは 1 が 0 に書き換わります。このビット反転がシングルイベントアップセットで、メモリの誤作動の原因の一つです。

地表では、ミュオンが荷電粒子の約 75% を占める

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地上でソフトエラーを起こす大きな要因は、地上まで届く二次宇宙線で、主に中性子です1。一方で、地表に到達する二次宇宙線中で、ミュオンは荷電粒子の約 75% を占めます1。従来は中性子が主な懸念でしたが、半導体デバイスの微細化と低消費電力化が進むにつれて放射線耐性が下がり、ミュオンの影響も指摘されるようになりました。

負ミュオンは原子核に捕獲され、SRAMの測定で正ミュオンの約 4 倍反転を起こした

Section titled “負ミュオンは原子核に捕獲され、SRAMの測定で正ミュオンの約 4 倍反転を起こした”
負ミュオンの原子核捕獲
μ⁻物質中で停止ミュオン原子最内殻へ移る陽子ヘリウム反跳核中性子原子核が捕獲Siで約65%負ミュオン正ミュオン約4倍反転の発生確率
負ミュオンは止まった場所で原子に束縛され、最内殻へ移ってから原子核に捕獲されます。励起された原子核が出す二次イオンが局所に大きな電荷を与えるため、反転の確率は正ミュオンの約4倍になります。

日本原子力研究開発機構は、設計ルール 65 ナノメートルの 12 メガビット SRAM に低エネルギーミュオン(運動量 34〜44 MeV/c)を照射し1、入射運動量とデバイスの印加電圧を変えて、メモリセルのビット反転の発生確率を測りました。対象はSOTB(silicon on a thin buried oxide)構造のSRAMで、動作電圧は 0.5 ボルトです。成果は2018年5月24日にIEEE Transactions on Nuclear Scienceの電子版に掲載されました。

運動量38 MeV/cで入射したミュオンは、メモリセルのトランジスタ領域の近くで止まり、大きな電荷を与えてビット反転を起こします。負ミュオンは正ミュオンと比べて約 4 倍大きな発生確率を示し、その理由は、停止位置での原子核捕獲反応により二次イオンが生成されるためです1。

物質中で止まった負ミュオンは原子核のまわりの軌道に束縛されてミュオン原子をつくり、最内殻の軌道へ移ったあと、シリコンでは約65%の割合で原子核に捕獲されます1。励起された原子核からは中性子や陽子などの二次粒子が出ます。粒子・重イオン輸送計算コードPHITSでデバイス内のミュオンの振る舞いを計算して比べると、捕獲反応で生じる陽子やヘリウムの二次軽イオンと反跳核イオンが局所に与える電荷は、ミュオン自身の直接電離による電荷より十分大きいことが分かりました。正負の差はここから生まれます。

パッケージ材料の α 線は、別の源で対策も別

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α線と宇宙線の入り方
パッケージ材チップα線宇宙線(外から)表面コーティング材料の高純度化
α線はパッケージや配線の材料から出るので、材料を高純度化して量を減らし、チップ表面のコーティングで止めます。宇宙線は外から入ってくる別の源です。

ルネサスは、メモリの α 線によるソフトエラーを、メモリの信頼性の主要なテーマとしています2。対策は、パッケージや配線材料の高純度化で発生する α 線の量を減らすことと、チップ表面をコーティングしてパッケージ材からの α 線を阻止することです2。外から来る宇宙線と、内側の材料から出る α 線は別の源で、対策も別々になります。

蓄えた電荷の量が、反転への耐性を決める

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メモリデバイスの α 線に対する強度を上げるには、メモリセルが情報として蓄えている蓄積電荷量を確保することが要点です2。蓄えた電荷が多いほど、粒子が落とす電荷で反転するまでの余裕が広くなります。微細化で蓄積電荷が減ると、この余裕が狭まります。反転の起きやすさはソフトエラー率として数えます。

日本原子力研究開発機構の試験も、65 nmのSRAMを0.5 Vという低い電圧で動かして測っています。微細化と低消費電力化が進むほど、放射線への耐性は下がります。

どの対策も、集積度か速度か費用を差し出す

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蓄積電荷を増やせば反転しにくくなりますが、セルの面積と消費電力で払います。誤り訂正を載せれば反転を回復できる代わりに、面積と遅延が増えます。パッケージ材料を高純度化すれば α 線は減るものの、材料の価格が上がります。どの手も、集積度か速度か費用のどれかを差し出します。

シングルイベントアップセットとは何ですか?

放射線の粒子 1 個がメモリセルへ入り、蓄えられた電荷量が変わって値が反転する現象です。

回路は壊れますか?

回路は健全なままで、値だけが書き換わります。電子機器が放射線に曝された際に生じる一過性の誤作動や故障です。

何が原因ですか?

地表では二次宇宙線で、主に中性子が大きな要因です。地表に到達する二次宇宙線中で、ミュオンは荷電粒子の約 75% を占めます。

ミュオンはなぜ注目されますか?

微細化と低消費電力化で放射線耐性が下がり、従来の中性子に加えてミュオンの影響も指摘されるようになったためです。負ミュオンは、正ミュオンと比べて約 4 倍大きな発生確率を示しました。

なぜ負ミュオンが多いのですか?

停止位置で原子核に捕獲され、二次イオンが生成されるためです。シリコンでは約65%の割合で捕獲され、二次イオンが局所に与える電荷はミュオン自身の直接電離より十分大きくなります。

どんな条件で測りましたか?

設計ルール 65 ナノメートルの 12 メガビット SRAM を動作電圧 0.5 ボルトで照射し、ミュオンの運動量を 34〜44 MeV/c としました。入射運動量と印加電圧を変えて、ビット反転の発生確率を測っています。

α 線でも起きますか?

起きます。パッケージ材料から出る α 線によるソフトエラーは、メモリの信頼性の主要なテーマです。材料の高純度化とチップ表面のコーティングで対策します。

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