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故障率とバスタブ曲線とは

故障率とは、ある時点で動いているもののうち、単位時間あたりに壊れる割合です。 時間に対して描くと両端が高く中央が低い浴槽のような形になり、これをバスタブ曲線と呼びます。大事なのは、故障率が時間とともに上下することです。使い始めと寿命の末期では壊れ方も原因も入れ替わり、3つの期間で対策の種類が違います。どの期間の、どの集団の値なのかを決めないまま数字を比べても、判断の材料にはなりません。

故障率は、初期・偶発・摩耗の3期間に分かれる

Section titled “故障率は、初期・偶発・摩耗の3期間に分かれる”

時間の経過にともなう機械や装置の故障の割合の変化を示すグラフのうち、形が浴槽に似ている曲線1がバスタブ曲線です。機械・装置では、初期故障期が一般に約1年間とされています。

電子部品の故障率は、初期故障期・偶発故障期・摩耗故障期2の3つの期間に分かれます。初期故障はデバイスを使い始めてから比較的短時間で起きるもの3、偶発故障は長期間にわたって起きるもの、摩耗故障は寿命の末期に近づくにつれて増えるものです。

バスタブ曲線の3期間
故障率時間初期故障期偶発故障期摩耗故障期ワイブル m≈1ほとんどの製品の使用期間製造欠陥外来ストレスTDDB・BTI・EM選別・工程改善保護・使い方設計で寿命確保
初期故障は製造欠陥が原因で選別と工程改善で減らし、偶発故障は外来ストレスによることが多く保護と使い方で抑え、摩耗故障は設計で耐用寿命の外側へ追いやります。

初期故障は、製造工程で入った欠陥があとから出てくる

Section titled “初期故障は、製造工程で入った欠陥があとから出てくる”

初期故障はデバイスの動作を開始した早い段階で起きる故障で、初期故障率は時間の経過とともに減少する傾向があります4。半導体デバイスでは、ほとんどの初期故障が製造工程で生じた欠陥(たとえばウェーハに付着した微細なごみ)と不良な材料に起因します。スクリーニング工程で取り除かれなかった潜在的な故障も初期故障に含まれ、動作開始後の温度や電圧といったストレスのもとで、短時間のうちに故障として出てきます。

もともと悪いものがあとから出てくるので、対策は2方向になります。初期故障期には、スクリーニング(バーンイン、エージング、ヒートランなど)や工程改善によって故障率を減少させられます2。欠陥そのものを減らす道と、欠陥のある個体を出荷前に選び分ける道です。

偶発故障は、残った良品に外から来るストレスで起きる

Section titled “偶発故障は、残った良品に外から来るストレスで起きる”

偶発故障期は、潜在的な欠陥を持つデバイスがすでに故障して取り除かれたあとの期間で3、残った高品質なデバイスが安定して動作します。この期間の故障は、電源サージのような偶発的に起きる過大なストレスに起因することが多いとされています。製品そのものの弱さより外から来るものが原因なので、対策の場は製造工程を離れ、使い方や周辺回路の側へ移ります。偶発不良の主要故障モードになるのは5、SER(ソフトエラー)やESD(静電気破壊)不良で、ESD対策やサージ保護が故障率を下げるのはこの領域です。

この期間の故障をワイブル分布で表すと、形状パラメータmはおよそ1になり、故障率は指数分布に近づきます3。ただし半導体製品では、偶発故障期にも故障率の減少傾向が見られることがあります2。キオクシアは、この期間の故障は軽微で加速性が低く、初期故障期のスクリーニングで取り除けなかった残存故障が長い時間を経て出てきたものと考えられるとしています。教科書どおりの水平線というより、ゆるやかに下がる線になります。

摩耗故障は、耐用寿命の外側へ設計で追いやる

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摩耗故障は、摩耗と疲労によるデバイス固有の寿命で起きる故障で、この期間に入ると故障率は急に上がる傾向があり、その進み方は使用条件に左右されます3。TDDB、BTI、エレクトロマイグレーションといった機構は、いずれもこの領域に属します。ただし、実際にそこへ到達する製品はごく一部です。ほとんどの半導体製品は摩耗故障期の手前にとどまり2、設計対策や予防保全によって摩耗故障の発生を抑制しています。

目標は、摩耗故障が耐用寿命の外側に来るように設計することです。素子レベルで故障メカニズムの寿命分布と加速パラメータを取得し、それらの故障が耐用寿命を超えた先で起きる条件下で設計していれば、原理的に使用期間中は摩耗不良モードの故障を避けられます5。TDDBやBTIの寿命を「10年」で見積もるのは、この考え方に沿っています。摩耗故障は、起きたあとに直すものというより、耐用寿命の外側へ設計で追いやる対象です。

故障率は瞬間の値で定義し、期間の平均で表す

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冒頭の定義どおりの故障率は時刻ごとに変わる値で、故障率関数は瞬間故障率とも呼ばれます3。時々刻々の値は扱いにくいので、実務では1,000時間、1か月、1年といった期間を1つ選び、その期間の総故障数を総動作時間で割った平均故障率3を使います。

瞬間故障率と平均故障率
故障率時間瞬間故障率平均故障率選ぶ期間(1,000h・1か月・1年)総故障数 ÷ 総動作時間
瞬間故障率は時刻ごとに変わるので、1,000時間や1か月、1年などの期間を選び、その期間の総故障数を総動作時間で割った平均故障率で表します。

故障率は、MIL規格などでは1,000hを単位時間として「%/1000h」で表します。半導体製品では一般に故障率が非常に低いためFITという単位を使い、10⁻⁹(故障/時間)= 10⁻⁴(%/1000h)= 1FITです2。

故障率が100FITなら、故障が発生する確率は動作時間10⁷分の1になります3。この10⁷は集団に対する故障割合を指し、1個がどれだけもつかはMTTFが受け持ちます。1万個を1年動かして何個壊れるか、という話です。「10⁷時間もつ部品」と受け取ると、桁の意味が入れ替わってしまいます。修理できない部品にはMTTF(Mean Time To Failure)、修理できる装置にはMTBF(Mean Time Between Failures)を使います。

故障が0個でも、信頼水準を決めれば故障率は推定できる

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信頼性試験には「時間とコスト」の壁があります。半導体製品は平均寿命が長く、低い故障率を求められるので、市場の使用条件のままで試験すると、試験時間も試験数も膨大になります2。試験データから市場の故障率を予測するときも、故障数は非常に少ないことが多く、0個のこともよくあります。

故障数が0でも、ある信頼水準を決めれば故障率は推定できます2。キオクシアの計算例は、半導体デバイス100個に周囲温度125℃・定格印加の高温動作試験を2,000時間行い、故障が0個だった場合の故障率を予測するものです。

故障率の推定は、分布の形を仮定しないノンパラメトリックな方法と、分布の形を仮定するパラメトリックな方法の2通りに分かれます。後者では確率紙に時間と累積故障率を打ち、点が直線に並べばその確率紙の分布に従うと判断します2。

歩留まりは作った時点、故障率は出荷後の時間を測る

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歩留まりは、作った時点で良品がどれだけあったかの割合です。故障率は、出荷したあとに時間とともにどれだけ壊れるかの割合です。測っている時点が違います。

歩留まりと故障率の測る時点
作り終えた時点出荷後の時間歩留まり故障率工程改善改善前改善後
歩留まりは作り終えた時点で一度測る割合、故障率は出荷したあとの時間に対する割合です。初期故障の原因が工程の欠陥なので、同じ工程改善が歩留まりを上げ、初期故障率を下げます。

ただし2つは同じ工程を共有します。初期故障の原因が製造工程の欠陥である以上、工程がきれいになれば歩留まりも上がり、初期故障率も下がります。1つの工程改善が、2つの指標を同時に動かす関係です。

バスタブ曲線とは何ですか?

時間に対する故障率の変化を表した曲線で、初期故障期・偶発故障期・摩耗故障期の3つの期間に分かれます。両端が高く中央が低い形が浴槽に似ていることから、この名前で呼ばれます。

なぜ「バスタブ」と呼ぶのですか?

時間の経過にともなう故障の割合の変化を示すグラフのうち、その形が浴槽の形に似ている曲線をバスタブ曲線と呼ぶからです。

初期故障期はどのくらい続きますか?

機械・装置では、初期故障期は一般に約1年間とされています。

初期故障はなぜ起きるのですか?

半導体デバイスの初期故障のほとんどは、製造工程で生じた欠陥(たとえばウェーハに付着した微細なごみ)や不良な材料に起因します。

偶発故障期には何が起きますか?

潜在的な欠陥を持つデバイスがすでに故障して取り除かれたあとの期間で、残った高品質なデバイスが安定して動作します。この期間の故障は、電源サージのような偶発的な過大ストレスに起因することが多いとされ、故障率はワイブル分布の形状パラメータが約1の指数分布に近づきます。

摩耗故障期には必ず到達するのですか?

ほとんどの半導体製品は摩耗故障期の手前にとどまり、設計対策や予防保全によって摩耗故障の発生を抑制しています。摩耗故障期に入ると故障率は急に上がる傾向があり、その進み方は使用条件に左右されます。

FITとは何ですか?

故障率の単位です。半導体製品では故障率が非常に低いため、10⁻⁹(故障/時間)= 10⁻⁴(%/1000h)= 1FITという単位で表します。

100FITなら1個が10⁷時間もつということですか?

違います。故障率が100FITなら故障が発生する確率は動作時間10⁷分の1ですが、この10⁷は集団に対する故障割合を指します。個々の部品の寿命は、MTTFという別の量で表します。

MTTFとMTBFの違いは何ですか?

修理不能な装置や部品ではMTTF(Mean Time To Failure)、修理可能な装置ではMTBF(Mean Time Between Failures)を用います。部品は修理不能なので、MTTFが用いられます。

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