偽造半導体とは
偽造半導体とは、正規のメーカーが作った製品として売られながら、中身がその型番の正規品と別のものになっている半導体です。 業界では模倣品とも呼ばれます。半導体はパッケージの中に封止されているため、買う側へ外から届く情報は、表面の捺印(マーキング)と包装に貼られたラベルだけです。捺印を書き替えれば、外見は別の型番の製品になります。偽造への備えの入口は、どこから買ったかという流通履歴です。
だます意図があるかどうかが、偽造品と不良品を分ける
Section titled “だます意図があるかどうかが、偽造品と不良品を分ける”NASAは、「だます意図」が偽造部品を定義し、メーカーや流通業者が知らない欠陥を持つ不良部品と区別するとしています1。不良品の欠陥はメーカーも流通業者も知らないもので、偽造品はだます意図を持って正規品として出されたものです。
テキサス・インスツルメンツは、多くの偽造品が同社の正規品に似た捺印とラベルを付け、客に本物だと思わせているとしています2。偽造品は同社の基準に沿って製造・包装・ラベル付け・保管・出荷されておらず、性能・安全・信頼性に大きなリスクがあるとしています。外から見える二つの情報がそのまま偽装の対象になるので、見た目だけでは判定が完結しません。
模倣品は世界中で増え、機器の故障と安全への脅威になっている
Section titled “模倣品は世界中で増え、機器の故障と安全への脅威になっている”JEITA半導体部会は、模倣品が世界中で増加の一途をたどり、半導体業界も深刻な脅威に直面しているとしています3。同部会は、欧米の税関当局が過去に行った合同検査で40万個を超える模倣半導体製品が検挙され、その一部に日本の半導体メーカーのブランドを騙ったものが含まれていた事例を挙げています。電子機器などの故障が模倣半導体に起因したという報告や、多くの場合に模倣半導体が知的財産権を侵害し、求められる性能・信頼性を欠くという指摘も、同部会は挙げています。
半導体製品は携帯電話、医療機器、自動車、衛星に至るまで中核機能を支えています。そのため同部会は、模倣品を企業の損害や産業への信頼の毀損にとどまらず、消費者や一般市民の健康・安全・安心への脅威と位置づけています。
劣化品・使用済み品・模倣品は由来が別で、型番と中身がずれる点が共通する
Section titled “劣化品・使用済み品・模倣品は由来が別で、型番と中身がずれる点が共通する”OKIエンジニアリングは、ICやトランジスタなどの市場流通品で、劣化品(保管が悪い部品)、使用済み品(リマーク品)、模倣品が急増しているとしています。劣化品は、正規品として作られたものの、保管の条件が悪かった品です。樹脂封止のパッケージなら、吸湿レベル(MSL)の期限を超えた保管が、そのまま品質の低下を招きます。使用済み品(リマーク品)は、一度使われた部品の捺印を書き替えたものです。模倣品は、中身がそもそも別物です。由来は3つとも別ですが、買う側にとっての結果は共通し、型番の表示とパッケージの中身がずれます。
正規ルートを外れた市場流通品に、履歴の分からない品が混じる
Section titled “正規ルートを外れた市場流通品に、履歴の分からない品が混じる”製造中止や品薄などで正規ルートから入手できず、半導体メーカーや正規代理店以外の仕入先から調達した市場流通品は、流通履歴が不明なため、品質の裏づけを欠く製品や模倣品が混じる場合があり、OKIエンジニアリングはこの背景から真贋調査の需要が高まっているとしています4。流通履歴をたどれるかどうかが、正規ルートと市場流通品の本当の差です。
新電元工業は、同社製品の模倣品が東アジア地域を中心に世界各地で数多く出回り、正規代理店以外の商社や、同社と無関係のインターネット取引サイトなどで売られていると公表しています5。同社は、模倣品が同社の品質基準を満たさず、使用する機器に重大な欠陥や不具合が生じるおそれがあるほか、購入した側を知らぬまま違法行為へ巻き込む事態を招くとしています。そのうえで、同社の営業窓口、販売子会社、正規代理店からの購入を呼びかけています。
混じる割合の手がかりもあります。OKIエンジニアリングは2014年から2016年に、メモリ、マイコン、AD/DAコンバータなど約30品種の市場流通品をスクリーニングし、10品種で不具合を確認し、その中で模倣品を3品種確認したとしています6。
真贋は、正規品と並べて外側から内側へ調べる
Section titled “真贋は、正規品と並べて外側から内側へ調べる”真贋調査は、正規品との比較調査によって、対象品が模倣品や偽造品かどうかを確かめる調査です。OKIエンジニアリングは依頼者に、比較のための正規品を用意するよう求めています。偽造かどうかの答えは正規品との差異として得られ、手元の1個を精密に測る作業は、その比較の片側にあたります。比べる相手を用意できるかどうかが、調査の入口になります。
調査の手立ては4種類あります。目視と実体顕微鏡による外観検査では、捺印、パッケージ形状、リード形状、インデックスマークの差異のほか、クラックや腐食、組立構造の欠陥を調べます4。X線検査では、フレーム形状やボンディングワイヤといった内部組立構造と接続状態の差異、異物混入、破壊痕跡を調べます。カーブトレーサによるI-V特性の観測では、各端子間のI-Vカーブの差異や、開放・短絡といった特性異常を調べます。薬品でモールド樹脂を開封する内部検査では、内部のチップとワイヤボンディングを観察し、チップの大きさ、配線パターン、ロゴの差異まで届きます。あわせて、MIL-STD-1580に基づき、製造プロセス由来の不具合の有無も調べます。
LSIのようにテストパターンが要る部品では、OKIエンジニアリングはデバイスのデータシートからテストパターンとテストプログラムを作り、機能特性・DC特性・AC特性などの詳しい電気的特性を測るとしています6。
対象は半導体以外へも広がり、OKIエンジニアリングはLSI、パワーデバイス、抵抗、コンデンサ(積層セラミックコンデンサなど)、LEDを挙げています。セラミックコンデンサの事例では、断面構造検査で、内部電極の形成された領域、電極本数、電極間の幅に模倣品との差異が見られました。サンプルは新品以外でもよく、使用品や故障品の真贋調査も受け付けています。
JIS Q 9100:2016は、模倣品の防止を要求事項に加えた
Section titled “JIS Q 9100:2016は、模倣品の防止を要求事項に加えた”OKIエンジニアリングは、こうした問題を背景にJIS Q 9100:2016に「8.1.4 模倣品の防止」が要求事項として新たに追加されたとしています6。JIS Q 9100は航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムの規格で、ISO 9001をベースに同産業に特有の要求事項を追加したものです7。米国のAS 9100や欧州のEN 9100と技術的に同等です。
偽造半導体は、買う側の心がけの話にとどまらず、調達の仕組みとして文書に書かれるものになりました。JEITA半導体部会が呼びかける「購入の際に正規品であることを確かめる」という行為は、その仕組みの入口にあたります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”偽造半導体とは何ですか?
正規のメーカーが作った製品として売られながら、中身がその型番の正規品と別のものになっている半導体です。メーカーも流通業者も知らない欠陥を持つ不良品とは、だます意図があるかどうかで分かれます。
見た目で分かりますか?
買う側へ外から届く情報は、パッケージ表面の捺印と包装のラベルに限られます。テキサス・インスツルメンツは、多くの偽造品が正規品に似た捺印とラベルを付けているとしています。外観検査では、捺印・パッケージ形状・リード形状・インデックスマークを正規品と見比べて差異を探します。
どんな種類がありますか?
劣化品(保管が悪い部品)、使用済み品(リマーク品)、模倣品の3つで、OKIエンジニアリングはどれも市場流通品で急増しているとしています。由来は別ですが、型番の表示と中身がずれる点で共通します。
どのくらい見つかっているのですか?
OKIエンジニアリングは2014年から2016年に、メモリ・マイコン・AD/DAコンバータなど約30品種の市場流通品をスクリーニングし、10品種で不具合、その中で模倣品を3品種見つけています。欧米の税関当局の合同検査では、40万個を超える模倣半導体製品が検挙されました。
なぜ市場流通品に集まるのですか?
製造中止や品薄などで正規ルートから入手できず、半導体メーカーや正規代理店以外の仕入先から調達した市場流通品は、流通履歴が不明だからです。品質の裏づけを欠く製品や模倣品が混じる場合があります。
買う側は何をすればよいですか?
正規ルートから買い、正規品であることを確かめます。新電元工業は同社の営業窓口、販売子会社、正規代理店からの購入を呼びかけ、JEITA半導体部会も購入の際に模倣品へ注意を払うよう求めています。
規格の上ではどう書かれていますか?
JIS Q 9100:2016で「8.1.4 模倣品の防止」が要求事項に加わりました。JIS Q 9100は、ISO 9001をベースに航空宇宙・防衛産業に特有の要求事項を追加した品質マネジメントシステムの規格です。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 信頼性試験とは── 正規品が使用環境と時間に耐えるかを試験で示す側
- 吸湿レベル(MSL)とは── 保管の期限を超えた品が劣化品になる仕組み
7件を表示
- 1NASA:偽造部品の検出に関する資料nasa.gov ↩
- 2テキサス・インスツルメンツ:偽造品対策ti.com ↩
- 3JEITA半導体部会:半導体模倣品に対する注意のお願いsemicon.jeita.or.jp ↩
- 4OKIエンジニアリング:真贋判定 新規採用部品・市場流通品の検査oeg.co.jp ab
- 5新電元工業:模倣品注意喚起shindengen.co.jp ↩
- 6
- 7