車載グレードとは
車載グレードとは、車に載せる用途に向けて、試験の条件・工程の管理・記録の残し方をそろえた製品の区分です。 試験に受かることは入口にあたり、そのあとに「4Mを同じ組み合わせのまま保つ」という約束と「証拠を残す」という約束が続きます。
車載グレードは、同じ部品を高い温度で試験して選別したもの、と受け取られがちです。試験の条件が厳しくなるのは事実ですが、区分がまたいでいるのは製品そのものより、製品を作り続ける体制のほうです。部品を選ぶ側が比べるべきなのも、温度の数字より、その数字を作り続ける仕組みです。
入口は、温度グレードに沿って高温でも測る試験
Section titled “入口は、温度グレードに沿って高温でも測る試験”テキサス・インスツルメンツは、車載デバイスを主にAEC(Automotive Electronics Council)Q100の趣旨に沿った業界標準の試験方法で認定しているとしています1。AEC-Q100は、新製品と大きな変更のときに推奨される認定の要件と手順を定めた、自動車業界の規格です。最初の認定だけでなく、作り方を大きく変えたときにも同じ関門をくぐり直す前提が、規格の側に入っています。
Q100品はその製品の温度グレードに沿って認定されます。温度グレードはGrade 0が-40〜150℃、Grade 1が-40〜125℃、Grade 2が-40〜105℃、Grade 3が-40〜85℃で、グレードごとにストレスの条件が違います。どのグレードを使うかは、車の中のどこで使うかでおおむね決まり、エンジンルームの中ならとても高い温度に耐えるためにGrade 0を使うとしています。
違いは測り方にも出ます。テキサス・インスツルメンツは、Q100品ではグレードに沿って信頼性ストレスの前と後に室温と高温で測り、民生品はストレスのあとに室温で測るだけだとしています。テキサス・インスツルメンツの区分では、高温で測るかどうかが車載品と民生品を分けています。
問われるのは、同じものを作り続けられるか
Section titled “問われるのは、同じものを作り続けられるか”ロームは、常に同じ製品を作るために製造の4M(Man:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法)を同じ組み合わせのまま保っています2。作業者にはライセンス制度を採り、人による作業方法や判断のばらつきをなくします。量産へ移す際は初期流動期間を設け、4Mの組み合わせパターンを検証しながら、量産規格よりも厳しい規格で流します。変更が起きたときは申請し、通知します。
4Mをそろえても、ばらつきは生じます。そこでふだんと異なる状態を異常とみなし、管理基準の内側であっても、ふだんと異なることを検出したらアクションを取ります。設備のゲージは、規格内を緑、規格内でもふだんと異なる状態を黄、規格外を赤で表示します(GYR管理)。規格に収まっているかどうかより、いつもと同じかどうかを見張る管理です。
出荷の線は、製品規格より内側に引かれる
Section titled “出荷の線は、製品規格より内側に引かれる”車載グレードでは、良否判定で良品とする範囲そのものが狭くなります。PATは特性値の分布を実績値から求め、製品規格よりも厳しいテスト規格を設けます2。実績値の分布から厳しいテスト規格を設けるのがStatic PAT、ロットやウェハごとに分布の実力値を都度求めて規格を引き直すのがDynamic PATです。製品規格の内側に入っていても、ふだんの分布の外にある値は異常値(Outlier)として不良品とみなし、出荷対象から除きます。
車載基準は統計の取り方まで指定します。車載品信頼性ガイドラインであるAEC Q001は、異常値によって平均値と標準偏差(シグマ値)が影響を受けない統計処理の方法を推奨しています2。ふつうの正規分布の当てはめでは、異常値そのものが平均と標準偏差を動かし、規格値が実力から離れるためです。
ウェハ上の位置も判定材料に入ります。Graphic-PATは不良品の位置の傾向に応じて不良品を除く手法で、主な観点は4つあります。不良品に囲まれた良品(GDBC:Good Die in Bad Cluster)、不良品が固まっている周辺領域、マスクショット位置に依存する傾向、複数ウェハの不良品マップを重ね合わせた傾向です。電気的に測って合格していても、周りが不良だらけなら外します。
測った値は、国家標準までさかのぼれるようにする
Section titled “測った値は、国家標準までさかのぼれるようにする”車載グレードでは、試験の結果だけでなく、その結果を出した試験装置と計測器の正しさまで問われます。ロームは車載用途の製品の開発・評価・信頼性試験に、ISO/IEC 17025に準じた校正を適用し、校正結果を証明できるよう管理しています2。
校正は、国家標準またはメーカー標準へのトレーサビリティを確保できる方法で行います。外部に委託する場合は認定校正機関などを選び、校正証明書を入手して保管します。社内で行う場合も、トレーサビリティを確保できる基準器を用い、記録を保管します。測定器ごとに一般校正とISO/IEC 17025校正の区分を管理して表示し、試験の目的に応じて使い分けます。車載グレードで増える仕事は、数値そのものより、その数値がどの基準器と校正記録に由来するかを示せる状態を作ることです。
車載の基準は、業界が合意して作った目安
Section titled “車載の基準は、業界が合意して作った目安”試験規格の間ではハーモナイズが進み、JEDECやJEITAから国際規格として提案されたIEC規格も増えています。一方で、AECやVDA(Verband der Automobilindustrie)などの車載基準は工業団体のガイドラインで、厳密には公的規格の外にあります2。ロームはこれらのガイドラインへの準拠に積極的に取り組んでいます。
AEC-Q100に代表される車載の基準は、法令や公的規格とは別に業界が合意して作った目安です。それでも実務で通用するのは、買う側と売る側が共通の物差しとして使っているためです。ソニーセミコンダクタソリューションズは、車載品質規格への準拠を最低条件と考えているとし3、最新の規格を監視して準拠を取り込み、IATF16949に準拠したイメージセンサー製品をすでに出荷しているとしています。車載製品に関わる全員が、不具合が人命に関わることを理解してゼロディフェクトを目指すのが、同社の方針です。
供給する側も、用途で線を引いている
Section titled “供給する側も、用途で線を引いている”区分には、買う側の選択と、売る側の線引きの両方が入ります。ソニーセミコンダクタソリューションズは、同社製品を用いた製品が航空・宇宙機器、医療機器、車載機器、鉄道機器など、特別に高い品質・信頼性が要求され、生命・身体に危害をおよぼす恐れがある場合、または多大な物的損害を発生させる恐れの強い製品になると想定される場合には、必ず事前に販売窓口へ相談するよう求めています。
同社は、どれほど注意してもある確率で故障が発生するとし、人身事故や火災などの損害を防ぐため、冗長設計・延焼対策設計・誤動作防止設計といった安全設計を求めています。部品の側に一定の確率で故障が残ることを前提に、装置の側にも備えを求める考え方で、これが機能安全の出発点にあたります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”車載グレードとは何ですか?
車に載せる用途に向けて、試験の条件や工程の管理、記録の残し方をそろえた製品の区分です。ロームは車載用途の製品に、開発・評価・信頼性試験の段階から一般の製品とは別の基準を当てています。
試験に受かれば車載グレードになりますか?
試験は入口です。量産では4M(人・設備・材料・方法)を同じ組み合わせのまま保ち、変更管理も品質保証体制の一部として続きます。
車載の基準は法律ですか?
法律とは別です。AEC(Automotive Electronics Council)やVDA(Verband der Automobilindustrie)などの車載基準は工業団体のガイドラインで、厳密には公的規格の外にあります。
出荷判定は変わりますか?
厳しくなります。製品規格の中に入っていても分布の外にある値を異常値とみなして除くPATを使い、車載品信頼性ガイドラインのAEC Q001は、異常値によって平均値と標準偏差が影響を受けない統計処理を推奨しています。
測定器の校正も変わりますか?
変わります。ロームは車載用途の製品の開発・評価・信頼性試験でISO/IEC 17025に準じた校正を適用し、校正結果を証明できるよう管理しています。
メーカーはどんな用途に事前の相談を求めていますか?
ソニーセミコンダクタソリューションズは、航空・宇宙機器、医療機器、車載機器、鉄道機器など、特別に高い品質・信頼性が要求され、生命・身体に危害をおよぼす恐れがある用途で事前の相談を求めています。
民生グレードの部品を車に使えますか?
使う前に販売窓口への相談が要ります。テキサス・インスツルメンツは、民生品は信頼性試験のあとに室温で測るだけで、車載品は温度グレードに沿って高温でも測るとしています。区分は部品の性能だけでなく、供給する側との合意の問題でもあります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- AEC-Q100とは── 試験条件を定めている側のガイドライン
- 認定試験とは── 設計と工程に合否を付ける関門
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- 1テキサス・インスツルメンツ:品質・信頼性FAQti.com ↩
- 2
- 3ソニーセミコンダクタソリューションズ:半導体データブック ハンドブック編sony-semicon.com ↩
- 4ローム:品質保証体制rohm.co.jp
- 5ルネサス エレクトロニクス:半導体信頼性ハンドブックrenesas.com
- 6キオクシア:信頼性ハンドブックkioxia.com