バーンインとは
バーンインとは、出荷前に温度と電圧のストレスをかけ、初期故障を起こす個体を先に壊して取り除くスクリーニングです。 弱いものを、こちら側で壊しておく工程です。どこまで強くかけるかは製品に許される市場故障率が決め、実際に進んだ時間は槽の中の温度のばらつきでも動きます。
初期故障は製造時の欠陥が原因なので、出荷前に前倒しで出せる
Section titled “初期故障は製造時の欠陥が原因なので、出荷前に前倒しで出せる”半導体の故障率は使い始めがいちばん高くなります。この初期故障のほとんどは製造工程で生じた欠陥や不良な材料に起因し、動作開始後の温度や電圧といったストレスのもとで短時間のうちに故障として出ます1。短時間で出るなら出荷前に済ませておけばよい、というのがバーンインの発想です。
初期故障期であれば、スクリーニング(いわゆるバーンイン、エージング、ヒートランなど)や工程改善によって故障率を減らせます2。初期故障の期間は一般に約1年とされ、ワイブル分布の形状パラメータは初期故障期で、偶発故障期で、摩耗故障期でです3。バーンインは、このの区間を工場の中で通過させます。
バーンインの考え方は単純で、部品に高い電圧と温度をかけます4。NASAのジェット推進研究所は、電圧を通常は最大定格動作電圧、温度を通常は125℃前後としています。スクリーニングは非ストレス法(外観検査、X線透視検査)、熱的(温度サイクル、熱衝撃)、機械的(落下衝撃、定加速度、PIND)、電気的(バーンイン、高電圧印加)の4区分に分かれ、バーンインは電気的ストレスの側に入ります。ねらう欠陥は、微細な異物や欠陥、薄膜中の汚染といったダイ内部の欠陥です。パッケージ側の欠陥は、温度サイクルや熱衝撃の担当です。
強さは、製品に許される市場故障率から逆算する
Section titled “強さは、製品に許される市場故障率から逆算する”選ぶのは、どれだけ強く、どれだけ長くかけるかです。強くすれば弱い個体をより確実に落とせますが、強すぎれば、本来なら十分に使えたはずの個体まで消耗させます。時間を延ばせば、それだけ設備と時間の費用がかかります。ルネサスも、スクリーニング自体は品質とコストの兼ね合いになるため、製品の用途と要求品質を考えて条件を設定するのが望ましいとしています3。
決め方は出口からの逆算です。ワイブルプロット解析を行い、スクリーニング後の残存故障率がその半導体製品の市場故障率を満足するようなスクリーニング条件を決定します2。出口の目標は、顧客の品質要求と用途から初期故障率をppmとFITで設定し、それを超える故障率を持つ場合にスクリーニングを行います。ストレスは良品を劣化や損傷から守りつつ加えるので、強さのつまみには最初から上限があります。
条件を検討するフローの例は、おおよそ次の順です。試験用のサンプルを集め、ストレス条件(ダイナミックかスタティックか、配線間や絶縁膜へのストレス条件)を決め、バスタブ曲線を取得します。故障解析で故障個所と故障原因を特定し、バスタブカーブと加速パラメータから偶発故障率を推定してから、スクリーニング条件を選びます。決めた条件は、スクリーニング後のEFR(Early Failure rate:初期故障率)を取得して検証します。
125℃・1,000時間は、40℃で約64年ぶんにあたる
Section titled “125℃・1,000時間は、40℃で約64年ぶんにあたる”バーンインは時間を先に進める操作なので、条件を選べるのは、どれだけ進んだことになるかがわかってからです。加速パラメータが未知の場合は、加速の度合いを求める検討を先に行います。その換算を担うのが加速試験です。
換算では、反応速度をで表します。は活性化エネルギー(eV)、はボルツマン定数8.6157×10のマイナス5乗eV/K、は絶対温度です。ルネサスは信頼性ハンドブックRev.2.50に、マイコン製品Aの高温動作試験をTa=125℃、VCC=5.5V、t=1,000時間で45個中0個の故障とし、実使用をTa=40℃、VCC=5.0V、Ea=0.80eVと仮定した推定例を載せています。この前提をアレニウスの式に当てはめて計算すると、温度加速係数は約561倍、125℃・1,000時間は40℃で約64年ぶんになります。
槽内の±3℃で、加速係数は約470倍から約668倍まで動く
Section titled “槽内の±3℃で、加速係数は約470倍から約668倍まで動く”レシピの数字と、装置が出せる数字は別です。エスペックはスタティックバーンインシステムを5、温度と種々の電気ストレスで異物や汚染や入力回路劣化のあるデバイスを取り除く装置とし、温度範囲を下限+70℃/+20℃/−30℃/−55℃、上限いずれも+150℃の4区分で揃えています。バーンインチャンバー6も同じ4区分です。
同社の車載センサーバーンインシステムは7、槽内の温度分布±3℃(有負荷 最大600Wまで)、高温槽の設定+70℃から150℃、昇温を40℃から125℃まで60分以内(無試料・無負荷)という仕様です。電圧は+5.5Vから7.0Vを精度±0.1V以内で印加し、連続通電とパワーサイクル(5秒から60秒単位のON/OFF)を選べます。出力モニターは1スロット300個、ボードは1チャンバー48枚で、センサーの出力電圧を全チャンネル個別に見て良否を判定します。
この±3℃は、加速の度合いそのものを動かします。同じ式と定数、Ea=0.80eV、実使用40℃でそろえて計算すると、122℃で約470倍、125℃で約561倍、128℃で約668倍です。槽の上下で1.42倍の開きになり、同じ時間を通しても、棚のどこに載ったかで進んだ時間がずれます。EFRは、槽内のどの位置で通したかとひも付けて読む必要があります。
48時間のバーンインに当てはめると、60分以内の昇温はその2.1%にあたり、そのあいだの加速係数は561倍より小さい値です。試験時間を短く設計するほど、この目減りの割合が上がります。
スタティックは入力を止め、ダイナミックは回路を動かす
Section titled “スタティックは入力を止め、ダイナミックは回路を動かす”スタティックバーンインは、すべての入力を高と低の決まった組み合わせで一定の電圧に保ちます4。ダイナミックバーンインは、バーンイン中にテストベクタなどの刺激を与えてできるだけ多くの節点を反転させ、実際の動作に近づけます。ASICにスキャン回路が入っていれば、試験技術者はその回路をダイナミックバーンインに使い、治具のピン数を抑えることが多いとされています。
切り替えると、ねらう欠陥が動きます。動作させれば内部配線にも電流が流れてエレクトロマイグレーション側の弱点まで届きますが、パターンを与える回路とボード配線が要ります。スタティックならボードは安く済む一方、動作時にだけ出る弱点が残ります。
どちらのかけ方でも、判定はバーンインの前後の電気試験で行います。試験とスクリーニングの仕様には、バーンイン前と各バーンイン試験の後の電気的パラメータ試験の要求を含め、合否の基準となるACとDCのパラメータ限界は、シミュレーションや特性評価で決めておきます。
温度・電圧・時間は、どれも良品の消耗と引き換え
Section titled “温度・電圧・時間は、どれも良品の消耗と引き換え”温度を上げると加速係数が上がり、同じ時間で多くの弱い個体を落とせますが、良品側の消耗も進み、装置の上限+150℃に当たります。下げると良品は守れる一方、同じ残存故障率へ届く時間が伸びます。
印加電圧を上げると、絶縁膜側の欠陥が短時間で出ます。代わりに良品側でもTDDBの寿命を削り、良品を劣化や損傷から守りつつという条件に当たります。下げると、絶縁膜の弱点が市場へ持ち越されます。時間を延ばすと残存故障率が下がりますが、チャンバーの占有が伸び、48枚のボードが埋まる間は次のロットが待ちます。
ウェーハのまま通せば、積層前に初期故障を落とせる
Section titled “ウェーハのまま通せば、積層前に初期故障を落とせる”バーンインはウェーハの状態でも通せます。東京エレクトロンはCellciaで8、300mm対応プラットフォームの用途をメモリとウェーハレベルバーンインとし、真空コンタクト、セル数12または25、荷重200kgを掲げています。積層後に1段が初期故障を起こすと良品の残り段まで捨てるため、良品ダイで渡す製品ではこの前倒しが直接の得です。代わりに、ウェーハ1枚ぶんの発熱と荷重をウェハプローバー側の構造で受けます。
選別より先に、欠陥を減らすのが筋
Section titled “選別より先に、欠陥を減らすのが筋”キオクシアは、初期故障率を下げるためにまず工程改善で欠陥自体を減らすとしています。低減に時間を要する場合は、欠陥低減施策と並行してスクリーニングで故障率を減らす対策をとることがあるとしています。選別は、欠陥が残っているあいだの手当てです。悪いものを見つけて捨てるより、初めから良いものを作るほうが安く済み、歩留まりの改善が結局は初期故障率まで下げます。
例外は車載です。自動車の安全性に関わる姿勢制御用ユニットなどに載るセンサーは極めて高い信頼性を要求され、その品質管理のために出荷全数へのスクリーニングが必要になる7とエスペックは説明しています。車載グレードでは、歩留まりが良くなっても全数という枠は続きます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 信頼性の工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- テストの工程ページ── 選別を実行する側
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- SLTだけが拾う不良、原因は3種類|最終テスト合格品でも実機動作で不良── バーンインを含む5段のテストの分担
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”バーンインとは何ですか?
出荷前に温度と電圧のストレスをかけ、初期故障を起こす個体を先に壊して取り除くスクリーニングです。初期故障期なら、スクリーニング(いわゆるバーンイン、エージング、ヒートランなど)や工程改善で故障率を減らせます。
何を取り除いているのですか?
微細な異物や欠陥、薄膜中の汚染といったダイ内部の欠陥です。バーンインは電気的ストレスによる試験方法に分類されます。
なぜ初期故障を落とせるのですか?
初期故障のほとんどは製造工程で生じた欠陥や不良材料に起因し、動作開始後の温度や電圧のストレスのもとで短時間のうちに故障として出るからです。高い電圧と温度で時間を先に進め、その分を出荷前に済ませます。
条件はどう選ぶのですか?
市場故障率から逆算します。ワイブルプロット解析を行い、スクリーニング後の残存故障率がその半導体製品の市場故障率を満足するように、スクリーニング条件を決定します。
決めた条件はどう確かめるのですか?
スクリーニング後のEFR(Early Failure rate:初期故障率)を取得して検証します。
加速の度合いが未知の場合はどうするのですか?
加速の度合いを求める検討を先に行います。温度を上げると実使用の何時間ぶんに相当するかがわかって初めて、条件を選べます。
初期故障期はどのくらい続くのですか?
一般に約1年とされ、この期間ではワイブル分布の形状パラメータがm<1になります。偶発故障期間はm≒1、摩耗故障期間はm>1です。
125℃で1,000時間の試験は、実使用の何年ぶんですか?
実使用40℃、活性化エネルギー0.80eVとしてアレニウスの式に入れると、温度加速係数は約561倍になり、1,000時間は約64年ぶんにあたる計算です。
バーンイン装置は何度まで出せるのですか?
エスペックのバーンインチャンバーとスタティックバーンインシステムは温度範囲が4区分で、上限はいずれも+150℃、下限はH形の+70℃からU形の−55℃までです。車載センサーバーンインシステムの槽内の温度分布は±3℃(有負荷 最大600Wまで)です。
全数にやるのですか?
製品によります。工程改善による欠陥低減には時間を要する場合があり、並行してスクリーニングで故障率を減らす対策をとることがあります。自動車の安全性に関わるセンサーでは、出荷全数へのスクリーニングが必要になります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 故障率とバスタブ曲線とは── バーンインが切り落としている領域
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- 2キオクシア:信頼性ハンドブックkioxia.com ab
- 3ルネサス エレクトロニクス:信頼性ハンドブック Rev.2.50renesas.com ab
- 4NASA ジェット推進研究所:ASIC Guide 第4部第3章 Flight Part Verificationparts.jpl.nasa.gov ab
- 5エスペック:スタティックバーンインシステムespec.co.jp ↩
- 6エスペック:バーンインチャンバーespec.co.jp ↩
- 7エスペック:車載センサーバーンインシステムespec.co.jp ab
- 8東京エレクトロン:Cellciatel.co.jp ↩