活性化エネルギーとは
活性化エネルギーとは、正常な状態から劣化した状態へ進む途中にあるエネルギーの壁の高さです。 記号ではと書き、単位はeVです。温度が高いほど壁を越えられる原子や分子の割合が増えるので、温度を上げるだけで劣化が速まります。高温の短い加速試験から実使用の寿命を読むとき、結論の大きさを決めるのはこの値をいくつと置くかです。
劣化は原子や分子の変化で、壁を越えるエネルギーは環境から来る
Section titled “劣化は原子や分子の変化で、壁を越えるエネルギーは環境から来る”ものの破壊や劣化は原子や分子レベルでの変化に起因し1、拡散・酸化・吸着・転位・電解・腐食クラック成長といった仕組みがあります。どの仕組みでも、正常状態から劣化状態へ進む途中にはエネルギーの壁があり、壁を越えるのに要るエネルギーは環境から供給する必要があります。この壁の高さが活性化エネルギーです。
温度による反応の依存性はアレニウスが見い出したため、はアレニウスの式と呼ばれます。式の中のボルツマン定数は8.6157×10⁻⁵ eV/Kです。
寿命の対数を温度の逆数に対して描くと、傾きがEaになる
Section titled “寿命の対数を温度の逆数に対して描くと、傾きがEaになる”寿命をと書き、両辺の対数を取るとになります。寿命の対数と温度の逆数は直線になり、その傾きが活性化エネルギーにあたります1。は通常、温度条件を何通りか振った評価で求めます。傾きを決めるには測る温度が2点以上要り、加速試験を複数の温度で組む理由はここにあります。
温度とでの寿命を、とすると、となります1。11606はボルツマン定数8.6157×10⁻⁵ eV/Kの逆数を取った値です。2点の寿命を測ればが求まり、を決めれば同じ式から2点間の加速係数が出ます。
Eaを0.6 eVと置くか1.0 eVと置くかで、加速係数は約12倍違う
Section titled “Eaを0.6 eVと置くか1.0 eVと置くかで、加速係数は約12倍違う”が大きい値であれば温度加速性が大きく、小さければ温度加速性が小さくなります1。前の節の式に試験温度125℃、使用温度55℃を当てはめると、加速係数は eVで約42倍、1.0 eVで約500倍になり、約12倍の開きが出ます。製造工程の反応にも同じ関係があり、CMPでは活性化エネルギーの大きいCu膜ほど、パッド温度で研磨速度が動きます。
活性化エネルギーを大きく仮定すれば加速係数が大きく出て、短い試験で長い寿命を主張する形になります。その代わり実際の値が小さければ、実使用での故障を見落とします。小さく仮定すれば安全側ですが、試験時間が延びて日程と費用で払います。値を誤れば、実使用での故障率の見積もりも同じ倍率でずれます。高温の結果を使用条件へ伸ばす寿命外挿では、の仮定の置き方がそのまま結論の向きを左右します。
値は故障の仕組みごとに違い、エレクトロマイグレーションでは0.6〜1.0 eV
Section titled “値は故障の仕組みごとに違い、エレクトロマイグレーションでは0.6〜1.0 eV”エレクトロマイグレーションの故障モデルは一般にブラックの式で表され、J.R. Blackはとしています。この式のには0.6〜1.0 eVの値が確認されています1。データ保持では保持時間が温度と強く相関し、データ保持特性のは一般に1 eV以上と考えられています1。耐湿性の計算例では、故障数がゼロで特定を保留した状況として、従来の実績から eVを仮定しています。
代表的な値はそれぞれの故障メカニズムに対して求められるので、活性化エネルギーは故障の仕組みを特定して初めて選べる値です。どの仕組みで壊れるかを保留したまま代表値を入れると、見積もりの根拠が薄くなります。
湿度や電圧まで含めると、係数が増える
Section titled “湿度や電圧まで含めると、係数が増える”アレニウスのモデルは温度依存性に着目したもので、温度以外の依存性も含めて一般化したのがアイリングのモデルです。耐湿性の寿命はと書かれ、相対湿度係数と印加電圧係数が加わります。
GaN HEMTのような新しい材料では、標準の試験に加えて専用の試験が要ります2。を含む係数は、材料ごとに測り直しになります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”活性化エネルギーとは何ですか?
正常な状態から劣化した状態へ進む途中にあるエネルギーの壁の高さです。壁を越えるためのエネルギーは環境から供給する必要があり、温度が高いほど越えやすくなります。
単位は何ですか?
eV(電子ボルト)です。アレニウスの式ではボルツマン定数8.6157×10⁻⁵ eV/Kと組み合わせて使います。
なぜ温度で加速しますか?
温度が高いほど、壁を越えるだけのエネルギーを持つ原子や分子の割合が増えるためです。Eaが大きいほど、温度を上げたときの加速も大きくなります。
どのくらいの値ですか?
エレクトロマイグレーションでは0.6〜1.0 eVの値が確認されており、データ保持では1 eV以上と考えられています。耐湿性の計算例では1.0 eVを仮定しています。
故障の仕組みで変わりますか?
変わります。代表的な値は故障メカニズムごとに求められているので、先に故障の仕組みを特定してから値を選びます。
どうやって求めますか?
複数の温度で寿命を測り、寿命の対数を温度の逆数に対してプロットします。その直線の傾きが活性化エネルギーで、2点の温度ならln(L1/L2)=11606(1/T1−1/T2)Eaから求まります。
値を誤るとどうなりますか?
加速係数が誤り、実使用での故障率の見積もりが同じ倍率でずれます。125℃の試験を55℃の使用条件へ換算する例では、0.6 eVと置くか1.0 eVと置くかで加速係数が約42倍と約500倍に分かれます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 加速係数とは── Ea から計算する当の倍率
- ブラックの式とは── Ea が入る具体的な寿命の式
- 電圧加速とは── 温度以外の係数を足す拡張
- エレクトロマイグレーションとは── 0.6〜1.0 eV が報告された故障の仕組み
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- 2ローム:EcoGaNのソフトスイッチング動作に対する寿命の考え方 Rev.001(2024年6月)fscdn.rohm.com ↩