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パーコレーションモデルとは

パーコレーションモデルとは、電気的ストレスで絶縁膜の中にランダムに欠陥ができ、それが膜の厚さ方向につながって電流の通り道ができたときに絶縁破壊が起きる、と考えるモデルです。 絶縁破壊は確率的に起きるので、同じ条件で作った素子でも壊れる時間はばらつきます。このモデルが答えるのは、そのばらつきが膜厚でどう変わるかです。ゲート絶縁膜が薄いほど少ない欠陥で通り道がつながり、ばらつきが広がるので、薄い膜ほど早い時期の故障を見込んで寿命を見積もる必要があります。

欠陥が増えて距離が縮むと、膜を貫く電流パスができる

Section titled “欠陥が増えて距離が縮むと、膜を貫く電流パスができる”

OKIエンジニアリングは、TDDB劣化の発生メカニズムをこう整理しています。酸化膜に印加された電圧や膜中の電流で生じた欠陥が経時的に増え、欠陥間の距離が近くなると電子の移動が活発になり、酸化膜中に電流パスができて絶縁破壊に至ると考えられています1。膜中の欠陥の準位は酸化膜トラップと呼ばれ、欠陥が電極から基板までつながる前に欠陥を渡って流れる電流がSILCです。

モデルの出発点は、電界のストレスで欠陥が絶縁膜の中のランダムな位置にできるという仮定です2。膜厚が決まっていれば、欠陥による通り道(パーコレーションパス)ができる確率は、欠陥の密度と実効的な大きさだけで決まります。

膜厚と通り道に要る欠陥の数
約3 nm厚い膜多くの欠陥が要る薄い膜少ない欠陥で届く欠陥より薄い膜中央の1個で貫通ゲートつながった欠陥孤立した欠陥
Stathis氏の解析では欠陥の実効的な大きさが約3 nmで、膜が薄いほど少ない欠陥で電極から基板まで届き、欠陥より薄い膜では中央付近の1個で通り道ができます。

IBM ResearchのJ.H. Stathis氏は1999年の論文で3、有限の格子の上でパーコレーションパスができる計算で絶縁破壊を扱いました。古典的なパーコレーションの関係式は大きな系でしか成り立たないとされ、同論文は格子間隔と同程度の非常に小さい試料という逆の極限を調べています。破壊分布の膜厚依存性から求めた欠陥の実効的な大きさは約3nmで、膜厚が欠陥の大きさより薄くなると、膜の中央付近の欠陥1個で通り道ができます。1本のパーコレーションパスが破壊的な絶縁破壊を始める確率は約10⁻³です。

臨界欠陥密度は、膜厚5nm程度以下で急に下がり、3nm以下で一定になる

Section titled “臨界欠陥密度は、膜厚5nm程度以下で急に下がり、3nm以下で一定になる”

ある破壊確率には、それに対応する臨界欠陥密度があります。臨界欠陥密度は素子の面積と膜厚によって変わり、10²⁰ /cm³の半ばを超えると予測され、実験でも示されています。素子の面積が小さいほど、臨界欠陥密度は高くなります。

臨界欠陥密度と膜厚
3 nm5 nm膜厚(右ほど厚い)臨界欠陥密度一定大きく下がる
膜厚5 nm程度より薄くなると破壊に必要な欠陥の密度は大きく下がり、3 nm以下では一定になります。

Stathis氏は、臨界欠陥密度が膜厚5nm程度以下で大きく下がり、3nm以下で一定になるという2つの特徴を、有限格子上のパーコレーションで定量的に説明できるとしています。欠陥が最初から膜にあると、破壊に要る生成欠陥の量は実効的に少なくなります。筑波大学の藤井泉氏の博士論文は4、初期欠陥を持つ膜の破壊をこの考え方で説明しています。

膜が薄いほど、ワイブル分布の傾きは小さくなる

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パーコレーションモデルは、測定した絶縁破壊の分布のワイブル形状パラメータβ(ワイブルプロットの傾き)が膜厚によってどう変わるかを予測できます。NISTのKin P. Cheung氏は、このモデルがゲート絶縁膜の破壊の信頼性を使用条件に外挿するための最も重要な道具になっているとしています。

膜厚とワイブルの傾き
破壊時間(対数)累積故障(ワイブル目盛)厚い膜 βが大きい薄い膜 βが小さい早い時期の故障
薄い膜ほどワイブルプロットの傾きβが小さくなり、破壊時間が広くばらついて早い時期の故障が増えます。

藤井氏の博士論文は、ワイブル分布の傾きβが絶縁膜の膜厚に比例し、欠陥の大きさに反比例するという関係を使い、分布の形をワイブル分布で説明しています。同論文は、パーコレーションモデルがワイブル分布の傾きを説明でき、破壊分布の議論に広く使われていること、さらに簡略化したセルベースモデルも提案されていることにも触れています。薄い膜では通り道をつくるのに数個のトラップで足りるため、トラップ密度の統計的なばらつきが大きくなる5と説明されています。

厚い膜の側には予測とのずれがあります。NISTは、厚い酸化膜は低い水準の欠陥にも過敏で、薄い膜はそうではないとし6、厚い酸化膜の破壊がパーコレーションモデルの予測よりかなり小さいβを示す理由をこれで説明しています。

膜厚ごとのβが分かれば、試験の分布を製品の条件へ換算できる

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TDDB寿命は、ある電界を印加したときに酸化膜が破壊に至るまでの時間で、絶縁破壊の時間依存性を測る尺度です。測定には定電圧ストレス法と定電流ストレス法があります1。前者は定電圧ストレス(CVS)にあたります。OKIエンジニアリングは、面積4µm²のゲート酸化膜に10nAの定電流ストレスをかけて破壊までの時間を測る評価条件を示しています。寿命測定の例では、印加電圧3水準と周囲温度3水準の条件でTDDB測定を行い、結果をワイブルプロットして平均寿命を計算し、活性化エネルギーを求めて実使用での寿命を算出する手順です。

膜厚ごとのβが分かれば、試験で得た分布を、面積や故障率の目標が違う製品の条件に換算できます。TDDB(経時絶縁破壊)の寿命予測では、このモデルが換算の前提になります。

欠陥のでき方は議論が続いている

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欠陥のでき方については、電界と分子の双極子の相互作用で結合が直接切れるとする熱化学モデル(Eモデル)と、陽極に届いた電子が作るホットな正孔が膜に戻って欠陥を作るとする陽極正孔注入モデル(1/Eモデル)が提案されてきました。Cheung氏は、どちらにも実験と合わない点があるとし、正孔が移動するときの一時的な格子のひずみが通常のSi-O結合を弱めるという別のモデルを提案しています。

膜を薄くすると、早い時期の故障を見込む必要が出る

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膜を薄くすれば等価酸化膜厚(EOT)は下がりますが、Stathis氏の計算では、5nm程度以下で破壊に必要な欠陥の密度が下がります。藤井氏の関係では、薄い膜ほどワイブル分布の傾きβが小さくなり、破壊時間のばらつきが広がります。そのため、薄い膜では早い時期の故障を見込んで寿命を見積もる必要があります。通り道ができた直後の段階はソフトブレークダウンと呼ばれます。

パーコレーションモデルとは何ですか?

電気的ストレスで絶縁膜の中にランダムに欠陥ができ、それが膜を貫いてつながったときに絶縁破壊が起きる、と考えるモデルです。欠陥が経時的に増えて欠陥間の距離が近くなると、電子の移動が活発になって電流パスができます。

何を予測できますか?

絶縁破壊の時間のばらつきを表すワイブル分布の傾きが、膜厚によってどう変わるかを予測できます。使用条件での寿命を見積もる道具として使われます。

臨界欠陥密度とは何ですか?

ある破壊確率に対応する欠陥の密度です。素子の面積と膜厚によって、10²⁰ /cm³の半ば以上に達すると予測され、実験でも示されています。

膜厚が薄いとどうなりますか?

IBM Researchの論文は、臨界欠陥密度が膜厚5nm程度以下で大きく下がり、3nm以下で一定になることを説明しています。膜厚が欠陥の大きさより薄くなると、膜の中央付近の欠陥1個で通り道ができます。

欠陥の大きさはどれくらいですか?

IBM Researchの論文は、破壊分布の膜厚依存性から、欠陥の実効的な大きさを約3nmと求めています。

欠陥のでき方は分かっていますか?

分かっていない部分があります。電界で結合が切れるとするEモデルと、陽極からの正孔注入によるとする1/Eモデルが提案されていますが、NISTの論文はどちらにも実験と合わない点があるとしています。

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