酸化膜トラップとは
酸化膜トラップとは、ゲート絶縁膜の中にある欠陥で、電子や正孔を捕まえたまま保つ準位のことです。 捕まった電荷は、素子の特性を外から動かします。絶縁膜は電流を遮る膜ですが、欠陥が増えるとそれを経由して電流が流れ始め、その先に絶縁破壊があります。絶縁破壊強度が10MV/cm以上ある膜でも実使用の低電界で時間とともに壊れるのはこのためで、寿命を決めるのは膜の真性の強度より欠陥のできやすさです。
トラップは、膜中の欠陥に電荷が捕まってできる
Section titled “トラップは、膜中の欠陥に電荷が捕まってできる”ゲート酸化膜に温度と電圧のストレスがかかると、酸化膜中にトラップが生成されます1。トラップのもとになる欠陥は、不純物、膜の放射線損傷、ホットキャリアの注入で生まれます2。その欠陥にキャリアが捕まった結果が酸化膜トラップです。注入の側はホットキャリアで扱います。
NBTIの場合は、生成の道筋まで追えます。界面に残ったSiのダングリングボンドは界面準位になり、水素は酸化膜中へ拡散していきます1。拡散する水素の一部が膜中の欠陥と結びつき、トラップを作ります。界面準位の増加と酸化膜中のトラップに起因したチャージが、Ids/Vthの劣化に結びついていると考えられています。界面準位は境目に、酸化膜トラップは膜の中にあり、NBTIではその両方が増えます。
トラップが増えると、SILCを経て絶縁破壊に至る
Section titled “トラップが増えると、SILCを経て絶縁破壊に至る”トラップが増えると、ホッピングやトンネルでトラップを介した電流が流れ、SILC(Stress Induced Leakage Current)として観測されます。さらにトラップが増えてゲート電極からSi基板までつながると、大電流が流れてゲート酸化膜が破壊されます。膜の中にランダムにできた欠陥が膜を貫いてつながったときに破壊が起きると考えるのが、パーコレーションモデルです。
寿命を決めるのは、真性の強度より欠陥のできやすさ
Section titled “寿命を決めるのは、真性の強度より欠陥のできやすさ”酸化膜の絶縁破壊強度は10MV/cm以上の高電界です。それでも実使用状態のような低電界で、時間の経過とともに破壊が起こります。これがTDDBで、酸化膜中に形成されるトラップ準位、すなわち欠陥と関係しています。弱い電界でも時間が欠陥を積み上げるので、実使用での寿命を左右するのは膜の真性の強度より欠陥のできやすさです。
膜を厚くすればトラップを介した電流も破壊も起きにくくなりますが、ゲートがチャネルを制御する力が落ちます。high-k材料に替えれば物理的な厚みを保ったまま容量を稼げる一方、電子トラップが増えてPBTIが目立ちます。
捕まるのが正孔ならNBTI、電子ならPBTIとして現れる
Section titled “捕まるのが正孔ならNBTI、電子ならPBTIとして現れる”酸化膜トラップは正の固定電荷として現れ、その生成はNBTIの機構の一つです3。high-k膜には電子トラップが存在し、PBTIを起こします。同じトラップでも、捕まるのが正孔か電子かで劣化の現れ方が変わります。NBTIとPBTIはhigh-k膜厚との関係で論じられており、膜の材料と厚みによって、どちらの劣化が現れるかが変わります。
捕まった電荷は抜けもするので、測り方で劣化量が変わる
Section titled “捕まった電荷は抜けもするので、測り方で劣化量が変わる”NBTIによるIds/Vthの劣化は、ストレスバイアスの除去や逆バイアスの印加で回復します1。トラップに捕まった電荷には、速いトラッピングとデトラッピングの現象があり、遅い現象とは分けて扱います。μ秒レベルの短時間測定技術の開発により、それまで観測できなかった速い劣化と回復の現象が見つかりました3。その結果、従来の劣化メカニズムの見直しが進み、測定法による回復の影響と寿命予測も個別に検討されています。測定を速くすれば回復に隠れていた劣化まで捉えられますが、装置と手順の負担が増え、過去のデータと直接比べられなくなります。
抜けにくい電荷もあります。放射線で生まれて酸化膜に捕まった正孔は比較的安定で、再結合が数時間から数年に及ぶことがあり2、時間・温度・印加電界に複雑に依存します。
測る側では、界面準位密度にチャージポンピング法・On-the-Fly Interface Trap法・DCIV法があります。界面近くの酸化膜トラップと可動電荷がデバイスの電気特性に及ぼす影響を時間とともに見るには、バイアスストレス不安定性(BSI)の測定が要ります。ストレスに伴うサブスレッショルド電流の変化から、チャネル領域の界面近くのトラップを検出することもできます。どの方法で測ったかを添えてはじめて、劣化量が比べられます。捕獲と放出の扱い全般は電荷トラップにまとまっています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”酸化膜トラップとは何ですか?
ゲート絶縁膜の中にある欠陥で、電子や正孔を捕まえたまま保つ準位のことです。不純物、放射線による損傷、ホットキャリアの注入で生まれた欠陥にキャリアが捕まってできます。
どうやって生まれるのですか?
酸化膜に温度と電圧のストレスがかかると生成されます。NBTIでは、酸化膜中へ拡散した水素の一部が膜中の欠陥と結びついてトラップを作ります。
増えると何が起きますか?
トラップを介した電流がSILCとして観測され、トラップがさらに増えてゲート電極からSi基板までつながると、大電流が流れて破壊に至ります。
界面準位とはどう違いますか?
界面準位はシリコンと絶縁膜の境目にあります。酸化膜トラップは膜の中にあります。NBTIではどちらも増え、両方の電荷がIds/Vthの劣化に結びつくと考えられています。
NBTI とはどう関わりますか?
酸化膜トラップは正の固定電荷として現れ、その生成はNBTIの機構の一つです。NBTIによる劣化は、ストレスバイアスを外すか逆バイアスをかけると回復します。
high-k 膜でも同じですか?
異なります。high-k膜では電子トラップが存在し、PBTIとして現れます。
捕まった電荷は離れることがありますか?
あります。速いトラッピングとデトラッピングの現象があり、遅い現象とは分けて扱います。一方、放射線で生まれて膜に捕まった正孔は比較的安定で、再結合に数時間から数年かかることがあります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- TDDBとは── トラップの蓄積の先にある絶縁破壊
- NBTIとは── 正の固定電荷が出る側
- 界面準位とは── 境目にある別の準位
- high-k材料とは── 電子トラップが増える材料
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- 1ルネサス エレクトロニクス:半導体信頼性ハンドブック(R51ZZ0001JJ0250)renesas.com abc
- 2カタルーニャ工科大学:UPCommons掲載論文(MOSFETの酸化膜トラップと評価法)upcommons.upc.edu ab
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