SILC(ストレス誘起リーク電流)とは
SILC(ストレス誘起リーク電流)とは、ゲート絶縁膜に電気的ストレスを加えた後に増える、低い電圧でのリーク電流です。 ストレス印加の初期に、リーク電流が1〜2桁程度増えます1。SILCは絶縁破壊そのものではありません。膜の中にできた欠陥を通って流れる電流なので、破壊に向かう欠陥の量を、素子を壊す前に電気的に測る手がかりになります。測れるのは欠陥の量までで、寿命そのものではない点がこの指標の限界です。
膜の中にできた欠陥を踏み台にして、電子が低い電圧でも膜を抜ける
Section titled “膜の中にできた欠陥を踏み台にして、電子が低い電圧でも膜を抜ける”SILCは膜中の欠陥を介して流れる電流です。欠陥を踏み台にして電子が膜を抜ける仕組みがトラップ支援トンネルです。そのため、SILCの量の違いは膜中の欠陥の量の違いを表す2と考えられています。
SILCが測るのは膜の内部の欠陥で、界面の状態とは別に動く
Section titled “SILCが測るのは膜の内部の欠陥で、界面の状態とは別に動く”高誘電率膜のHfSiON膜に正電圧ストレスを加えて意図的に欠陥を作り、注入した電荷量を変えて欠陥の量が違う4つの試料を作った実験があります。注入した電荷が多い試料ほどSILCは増えましたが、界面準位密度はほとんど変わりませんでした。膜の内部の欠陥は増えても、界面の状態は変わっていないと考えられます。
劣化はSILC、ソフトブレークダウン、ハードブレークダウンの順に進む
Section titled “劣化はSILC、ソフトブレークダウン、ハードブレークダウンの順に進む”TDDBによる絶縁の劣化は3つに分かれます。ストレス印加の初期に現れるSILC、SILCとハードブレークダウンの中間のソフトブレークダウン、絶縁性が完全に失われてオーミックな特性を示すハードブレークダウンです。SILCは、この中で最も早い段階にあたります。SILCの段階なら、まだ壊れていない膜で欠陥の増え方を追えます。
SILCの増え方は、欠陥のでき方を破壊寿命の分布と分けて示す
Section titled “SILCの増え方は、欠陥のでき方を破壊寿命の分布と分けて示す”欠陥の生成率は、SILCの時間依存性に比例すると報告されています。膜厚4nmの試料で直流、ユニポーラ、バイポーラのストレスを比べると、破壊寿命のワイブル分布の傾きβは直流とユニポーラで約1.0、バイポーラで約2.1と違いました。これに対し、SILCの時間依存性のべき(約0.86)はどのストレスでもほぼ同じでした。SILCの増え方を測れば、欠陥のでき方と破壊寿命の分布を分けて調べられます。欠陥がつながって破壊に至る確率はパーコレーションモデルで扱います。
SILCは欠陥の量を測る物差しで、寿命は決めない
Section titled “SILCは欠陥の量を測る物差しで、寿命は決めない”SILCは素子を壊さずに測れるので、欠陥の量を追うのに便利です。ただし、同じ量のSILCでも、破壊に至るまでの時間は膜厚や欠陥の大きさで変わるので、SILCだけで寿命は決まりません。欠陥の量を追うには、ストレスを止めて同じ電圧で繰り返し測る手順も必要です。破壊寿命のモデルには、SILCの増え方から求めた欠陥の生成の速さを使います。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”SILCとは何ですか?
ゲート絶縁膜に電気的ストレスを加えた後に増える、低い電圧でのリーク電流です。膜の中にできた欠陥を通って流れます。
どれくらい増えますか?
ストレス印加の初期に、リーク電流が1〜2桁程度増えます。
何が原因ですか?
SILCは膜中の欠陥を介して流れる電流です。そのため、SILCの量の違いは膜中の欠陥の量の違いを表すと考えられています。
界面準位とは何が違いますか?
HfSiON膜の実験では、正電圧ストレスで注入した電荷が多い試料ほどSILCは増えましたが、界面準位密度はほとんど変わりませんでした。SILCは膜の内部の欠陥を反映します。
絶縁破壊とはどういう関係ですか?
SILCは破壊より前の段階です。劣化が進むとソフトブレークダウン、ハードブレークダウンへと進みます。
寿命予測にどう使いますか?
欠陥の生成率はSILCの時間依存性に比例すると報告されており、SILCの増え方から欠陥の生成の速さを求めて破壊寿命のモデルに使います。ただし同じ量のSILCでも、破壊までの時間は膜厚や欠陥の大きさで変わります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ソフトブレークダウン(SBD)とは── SILCの次の段階の破壊
- トラップ支援トンネルとは── SILCが流れる仕組み
- 界面準位とは── SILCとは別に測る、界面の欠陥
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- 1電子情報通信学会:知識ベース 10群2編4章 プロセスモジュール技術(2010年)ieice-hbkb.org ↩
- 2藤井泉:CMOS向け高誘電率ゲート絶縁膜の長期信頼性(筑波大学博士論文、2013年2月)tsukuba.repo.nii.ac.jp ↩