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NBTI(負バイアス温度不安定性)とは

NBTIとは、pチャネルMOSFETのゲートへ負電圧をかけた状態で温度が上がると、しきい値電圧の絶対値が時間とともに大きくなる現象です。 日本語では負バイアス温度不安定性と呼び、正のゲート電圧で起きるPBTIとともにBTIの一つです。

出荷時に測ったしきい値電圧は、使っているうちに動きます。10年使ったときの値で回路が動くように設計するには、動く量をあらかじめ見積もって余裕を持たせる必要があります。見積もりを難しくしているのは、応力を止めると劣化の一部が戻り、測定までの待ち時間で値が変わることです。

負電圧と高温が重なると、ホールがSi-H結合を切る

Section titled “負電圧と高温が重なると、ホールがSi-H結合を切る”
NBTI の素過程
応力前負電圧と高温の後ゲート酸化膜SiSi-HHホール未結合手=界面準位HSi 原子
界面へ集まったホールがSi-H結合を切ると、Si側に未結合手が界面準位として残り、抜けた水素は酸化膜の側へ拡散します。

ゲートへ負電圧をかけると、Siと酸化膜の界面へホールが集まります。界面には、製造の最後の水素アニールで埋めたSi-H結合が並んでいます。ホールはこの結合を弱め、温度が高いほど切れやすくなります。そのためNBTIは主にpチャネルのMOSデバイスで起きます1。

負のゲート電圧だけでも、高温だけでもNBTIは起きます。ただし両方が重なったときに、より強く速い効果が出ます1。この過程は、酸化膜電界がおよそ6 MV/cm以下、応力温度が100〜250℃の条件で進みます。

切れた跡に残る未結合手が界面準位で、その密度は10^10から10^12 cm^-2 eV^-1へ増えます。抜けた水素は酸化膜の側へ拡散します。界面準位と酸化膜中の正電荷はほぼ同じ速さで生まれ1、界面と膜中の両方で、しきい値電圧を動かす変化が同時に起きます。負ゲートバイアスで固定電荷と界面準位が生まれる現象は、1967年にDealらが観測していました。

劣化には速く戻る成分とほとんど戻らない成分があり、待ち時間で値が変わる

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応力と読み出しの繰り返し
ゲート電圧応力読み出ししきい値電圧の変化全体ほぼ戻らない成分待つほど戻る
応力を止めると速く戻る成分が下がり、ほとんど戻らない成分が残ります。読み出しまでの待ち時間が違えば、同じ素子でも読む値が変わります。

NBTIの見積もりを難しくしているのは、止めた瞬間から回復が始まる点です。切れた結合のところへ水素が戻り、界面準位が埋め直されます。回復は速く、マイクロ秒の領域から始まります。マイクロ秒水準の短時間測定技術が使えるようになった結果、それまで観測できなかった速い劣化と回復が観測され、従来の劣化メカニズムの見直しが進んでいます2。

Infineonの資料は、直流のBTIによるしきい値電圧の変動を速く回復する成分と、ほぼ永続的な(回復がとても遅い)成分の2つ3に分けています。従来の測り方は、ゲート電圧と温度の応力をかけては読み出す測定・応力・測定(MSM)の繰り返しです。読み出しの前に素子を前処理しておくと、測定の再現性が上がり、読み出しの遅れや素子の履歴に左右されにくくなり、ヒステリシスとドリフトを正しく区別できるとしています。

結論ははっきりしています。応力を止めてから測るまでの待ち時間1を添えた劣化量だけが、比較の対象になります。Siで広く研究されてきた直流のBTIでも、一般に認められた物理的なドリフトのモデルはまだありません3。

交流応力は劣化が小さいが、NBTIの状態に留まるトランジスタがタイミングを散らす

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直流では界面準位が増え続けます。交流では電圧が反転している間に水素が戻って埋め直しが進み、交流応力のほうが劣化は小さくなります1。

回路の中のトランジスタは、それぞれ異なる頻度で切り替わります。NBTIの状態に留まったままのトランジスタがあると、経路ごとに劣化の量が食い違い、タイミングの散らばりが広がります。インバータの静的応力ではpチャネルのNBTIが劣化の主因で、しきい値電圧の変化だけを入れた模型で、デジタル回路の劣化の6割程度までを再現できます1。動くのはしきい値電圧だけでなく、相互コンダクタンス、サブスレッショルド傾き、移動度、ドレイン電流も動き、回路では遅延時間とゲート・ドレイン間容量に出ます。

水分とホウ素は悪化させ、フッ素と重水素は改善し、窒素は報告が割れる

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水分の侵入と遮り方
覆いなし窒化シリコンで覆う水分水分コンタクト・ビアゲートゲート絶縁膜窒化シリコンSi界面
コンタクトやビアの形成で持ち込まれた水分は、そのままでは界面まで届きます。窒化シリコンで覆うと、水分を界面の手前で止められます。

水分はNBTIを悪化させます。酸化膜中の水はNBTIを強め、湿った酸化膜や湿式の酸化膜では界面準位と酸化膜電荷の増加が観測されています。拡散する種は水です1。湿式で成長させた酸化膜は乾式よりNBTIが悪く、コンタクトやビアの形成で持ち込まれた水分は界面まで届きます。窒化シリコンで覆って水分を遮る方法が有効です。対策の基本は、界面の電気的に活性な欠陥を最初から少なくし、酸化膜に水を入れないことです1。

フッ素と重水素は改善します。フッ素は界面のひずみを解き、重水素は水素より重いぶん結合が切れにくくなります。重水素はホットキャリア応力とNBTIの両方を改善します1。効かせるには、重水素がSiO2/Siの界面まで届き、未結合手を終端するか、既存のSi-H結合の水素と置き換わる必要があります。ホウ素はゲートやソース・ドレインの注入から酸化膜へ拡散し、欠陥を増やす向きに働きます。

窒素の効果は報告が割れています。NBTIが改善したとする報告と、悪化を観測した報告があります1。ゲートリークを下げる目的で酸化膜へ入れますが、NBTIの活性化エネルギーを下げる方向にも働きます。界面の窒素濃度は低く抑えるほうが有利で、窒化の方法ではプラズマ窒化の影響が最も小さくなります。

SiCのパワーMOSFETでも、BTIは工程で桁が変わる

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BTIはSiに限りません。Infineonの資料は、BTIの原因をSiC/SiO2またはSi/SiO2の界面やその近くでの電荷トラップとし、デバイスの工程を最適化すれば小さくできるとしています。正のゲート電圧の応力(PBTI)ではしきい値電圧が一般に高い側へずれ、負のゲート電圧(NBTI)ではその反対の向きにずれます3。

Infineonは、200℃で-25 Vの応力をかけて自社のSiC MOSFETのNBTIドリフトを調べ、いくつかの工程改善でドリフトを1桁減らせたとしています3。同時に、オン抵抗と面積の積(RON×A)を良くする工程条件が、NBTIやPBTIにとって最良とは限らないので、慎重に条件を選ぶ必要があるとも述べています。

薄い膜も窒素も低い電圧も、NBTIと引き換えになる

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薄いゲート絶縁膜は駆動力を上げますが、同じしきい値電圧の変化を生む界面準位の量が減るため、NBTIの影響は強くなります。窒素はゲートリークを下げる一方で、NBTIの活性化エネルギーを下げます。設計側の対処は動作電圧を下げて余裕を持たせることですが、そのぶん速度が落ちます。パワーデバイスでも、オン抵抗を下げる工程条件とBTIに最良の条件がずれることがあります。どの性能を取ってどれだけBTIの余裕を払うかが、材料と工程を選ぶときの判断になります。

NBTI とは何ですか?

pチャネルMOSFETのゲートへ負電圧をかけた状態で温度が上がると、しきい値電圧の絶対値が時間とともに大きくなる現象です。酸化膜電界がおよそ6 MV/cm以下、応力温度が100〜250℃の条件で進みます。

なぜ p チャネルだけで問題になりますか?

ゲートへ負電圧をかけたとき、界面へ集まるのがホールだからです。ホールがSi-H結合を弱めて切り、その跡が界面準位になります。NBTIは主にpチャネルのMOSデバイスで起きます。

いつから知られていますか?

負ゲートバイアスによる固定電荷と界面準位の生成は、1967年にDealらが観測していました。

何が変わりますか?

しきい値電圧、相互コンダクタンス、サブスレッショルド傾き、移動度、ドレイン電流が動きます。回路では遅延時間とゲート・ドレイン間容量に出ます。

応力を止めた後はどうなりますか?

劣化の一部が戻ります。劣化には速く戻る成分と、ほとんど戻らない成分があるので、応力を止めてから測るまでの待ち時間を書き添えたときだけ、劣化量どうしを比べられます。

交流で使うと変わりますか?

交流応力では界面準位の生成と埋め直しが交互に起きるため、直流より劣化が小さくなります。

プロセスで影響する要素は何ですか?

水・ホウ素は悪化させ、フッ素と重水素は改善します。窒素は悪化させるという報告と改善するという報告が分かれます。水素アニールの条件と、酸化膜の作り方が影響します。

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