GIDLとは
GIDL とは、ゲート電極とドレイン拡散層が重なった部分に残る強い電界によって、バンド間トンネルでドレインから基板へ流れる漏れ電流です。 チャネルの外を通る漏れなので、チャネルの電流を決めるしきい値電圧を上げても届かず、電界そのものを緩める対策が要ります。その対策には、それぞれ代償が付きます。
ゲートを閉じても、ゲートとドレインの重なり部には強い電界が残る
Section titled “ゲートを閉じても、ゲートとドレインの重なり部には強い電界が残る”MOSFETのゲート電極は、チャネルの上だけでなくソースとドレインの拡散層にも少し重なります。この重なりがあってはじめて、チャネルと拡散層の間に電流の通り道がつながります。
ゲートを0Vにして素子を閉じても、ドレインには高い電位がかかったままです。重なった部分ではこの電位差がそのまま拡散層の表面にかかり、ゲートとドレインの重なり部に非常に高い電界の空乏領域ができます1。
表面が深く空乏化すると帯が急に曲がり、帯の間でトンネルが起きる
Section titled “表面が深く空乏化すると帯が急に曲がり、帯の間でトンネルが起きる”表面が深く空乏化するとエネルギー帯の曲がりが急になり、空乏領域でバンド間トンネル電流が流れて、ドレインから基板へ漏れます1。これがGIDLです。チャネルを通るサブスレッショルドリークとは、通り道が違います。
SRAMでは、Vthの調整だけでスタンバイ電流を下げられなくなった
Section titled “SRAMでは、Vthの調整だけでスタンバイ電流を下げられなくなった”かつてSRAMの主なリーク成分はサブスレッショルドリーク電流で、これは主にVthで決まりました。その後、GIDL(Gate Induced Drain Leak)、ゲートトンネルリーク、ジャンクションリークの占める割合が増え、Vthの調整だけでは低スタンバイ電流化を実現できなくなっています2。Vthを上げて抑えられるのはチャネルを通る成分だけで、重なり部で起きるリークには別の対策が要ります。
接地電位を上げて電界を緩めると、SRAMはソフトエラーに弱くなる
Section titled “接地電位を上げて電界を緩めると、SRAMはソフトエラーに弱くなる”サブスレッショルドリークを減らすVthの設定に加えて、GIDL、ゲートリーク、ジャンクションリークを和らげるには電界の緩和が要ります2。その方法の一つが、スタンバイ時にメモリセル部の接地電位を上げ、セルにかかる電位差を小さくすることです。ただしこの場合ソフトエラー特性が悪化するので、ECCとの組み合わせが必要になります。リークを抑えた分、蓄えた電荷の余裕が減るからです。
SRAMの課題はソフトエラー耐量、低電圧動作、低スタンバイ電流、メモリセルサイズの4つです。GIDLはそのうち低スタンバイ電流とソフトエラー耐量の2つに同時に関係します。
NANDでは、選択ゲート直下のGIDL電子が隣のセルの浮遊ゲートへ入る
Section titled “NANDでは、選択ゲート直下のGIDL電子が隣のセルの浮遊ゲートへ入る”NAND型フラッシュメモリでソース線側の選択ゲートの隣のセルを書き込むとき、高電圧にブーストされた拡散層で、0Vに保たれた選択ゲートの直下にGIDL電流が生じます3。この電子が横方向の電界で加速されて浮遊ゲートに注入される問題が指摘されています。書き込むつもりのなかったセルの状態が変わります。
微細化が進んで横方向の寸法が縮むと、横方向の電界が高くなり、この問題が顕著になります3。対策として、選択ゲートとセルの間にダミーセルを入れ、その制御ゲートに書き込み電圧より低い電圧をかける案があります。
重なり・電位・接地電位のどれを動かしても代償がある
Section titled “重なり・電位・接地電位のどれを動かしても代償がある”ゲートとドレインの重なりを減らせばGIDLは小さくなりますが、チャネルと拡散層がつながりにくくなり、オン電流が落ちます。ドレインの電位を下げれば電界は緩みますが、動作速度と読み出しの余裕が減ります。スタンバイ時に接地電位を上げればリークは減りますが、セルの蓄積電荷が減ってソフトエラーに弱くなり、ECCの面積と遅延が増えます。GIDLの対策は、どの性能を差し出すかの選択です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”GIDL とは何ですか?
ゲート電極とドレイン拡散層が重なった部分に残る強い電界で、バンド間トンネルによりドレインから基板へ流れる漏れ電流です。重なり部の表面には非常に高い電界の空乏領域ができ、そこでトンネルが起きます。
チャネルを流れるリークとどう違いますか?
サブスレッショルドリークはチャネルを通り、主にVthで決まります。GIDL はチャネルの外、ゲートとドレインの重なり部で起きます。
なぜ近年問題になったのですか?
かつてSRAMの主なリーク成分はサブスレッショルドリークでした。その後、GIDL、ゲートトンネルリーク、ジャンクションリークの占める割合が増えたためです。
しきい値電圧を上げれば止まりますか?
止まりません。Vthの調整だけでは低スタンバイ電流化を実現できなくなり、Vthの設定に加えて電界を緩める対策が要ります。
どんな対策がありますか?
SRAMでは、スタンバイ時にメモリセル部の接地電位を上げ、セルにかかる電位差を小さくする方法があります。NANDでは、選択ゲートとセルの間にダミーセルを入れ、その制御ゲートに書き込み電圧より低い電圧をかける案があります。
その対策に副作用はありますか?
あります。接地電位を上げるとソフトエラー特性が悪化するので、ECCとの組み合わせが必要です。
NAND でも問題になりますか?
なります。選択ゲートの直下で生じたGIDL電流の電子が横方向の電界で加速され、隣のセルの浮遊ゲートに注入される問題があります。微細化で横方向の寸法が縮むほど目立ちます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- しきい値電圧とは── 調整しても効かない範囲がある電圧
- ゲート酸化膜とは── 重なり部を隔てる膜
- NANDフラッシュとは── 書き込みを乱される側
- SRAMとは── スタンバイ電流が問題になる回路
3件を表示
- 1ブリティッシュコロンビア大学:電気・計算機工学科 講義資料 第6回 リーク電力courses.ece.ubc.ca ab
- 2電子情報通信学会:知識ベース 10群(集積回路)4編(メモリLSI)2章 揮発性高速RAM(2010年)ieice-hbkb.org ab
- 3電子情報通信学会:知識ベース 10群(集積回路)4編(メモリLSI)4章 不揮発性大容量メモリ(2010年)ieice-hbkb.org ab