フローティングゲート(浮遊ゲート)とは
フローティングゲート(浮遊ゲート)とは、フラッシュメモリのセルの中で、周りを絶縁膜で囲まれた導電層です。 ここに電荷を蓄えてデータを記憶します。NAND型フラッシュメモリは、一般的にメモリセルにあるフローティングゲートという電荷保持領域を使ってデータを格納します1。電子が出入りするのはチャネルとの間の薄いトンネル酸化膜で、書き換えのたびにこの膜が傷み、やがて電子を保持できなくなります。セルを縮めると、隣の浮遊ゲートへ電子が流れ込む問題も加わります。フローティングゲートは長くNANDフラッシュの標準でしたが、3D NANDでは、多くのメーカーが電荷を絶縁膜の中に捕まえるチャージトラップ方式を選びました。どちらの方式のセルかで、書き込みや劣化の議論が変わります。
絶縁膜で囲んだ多結晶シリコンに電子を出し入れし、しきい値電圧の差で読む
Section titled “絶縁膜で囲んだ多結晶シリコンに電子を出し入れし、しきい値電圧の差で読む”フローティングゲート型ではMOSトランジスタ構造のゲート電極とシリコンチャネルの間に、電気的に絶縁した浮遊ゲートを置き2、そこに電子か正孔の電荷を蓄えてデータを記憶します。フローティングゲートは、上の制御ゲートとも、下のチャネルとも絶縁膜で隔てられていて、通常はメモリセル1個につき1個を含みます。材料は一般に多結晶シリコンです。
電子の出し入れは、チャネルとの間の薄いトンネル絶縁膜を通して行います。電気的な書き換えには、浮遊ゲートとシリコンチャネルを隔てるトンネル酸化膜に高い電界を掛けたときに起こるFowler-Nordheim(FN)トンネル現象2を使います。制御ゲートに電圧を加えてドレインを接地すると、生じた電界で電子が基板から浮遊ゲートへ移り3、電圧を逆にすると電子は反対向きに動きます。書き込みでは電子を浮遊ゲートに蓄え、消去では浮遊ゲートから電子を排出します。
蓄えた電荷の量でトランジスタのしきい値電圧が変わります。読み出しでは制御ゲートに一定のバイアス電圧を加え、浮遊ゲートの電荷によってトランジスタが電流を流すかどうかが決まるので、その違いでデータを判定します。1個のセルで1ビットを持つSLCでは、浮遊ゲートに電子を蓄えた状態を「0」、そうでない状態を「1」と見なします。
書き換えるたびにトンネル酸化膜が傷み、セルを縮めると隣へ漏れる
Section titled “書き換えるたびにトンネル酸化膜が傷み、セルを縮めると隣へ漏れる”書き換えの回数には限りがあります。NAND型フラッシュメモリでは、書き込みと消去のP/Eサイクルを繰り返すたびにトンネル酸化膜がわずかに損傷します1。ある程度繰り返すと膜が劣化して電子を保持できなくなり、電子が浮遊ゲートから漏れ出して、メモリセルは使用不能になります。
微細化には別の壁があります。フローティングゲート方式では、メモリセルが小さくなるにつれて、ある浮遊ゲートから別の浮遊ゲートへ誤って電子が流れ込む現象が起きやすくなり、不良データの発生につながりかねません。
耐久性と拡張性を高めるために、フローティングゲートとは別の方法で電荷を保持するチャージトラップ(電荷捕獲)方式に切り替えるベンダーもあります1。フローティングゲート方式が一般に多結晶シリコンの浮遊ゲートに電荷を蓄えるのに対し、チャージトラップ方式は一般にシリコン窒化物の層に電荷を蓄えます。チャージトラップ方式は、メモリセルの物理的な損傷や電子漏れの影響を受けにくい一方、特に信頼性に関する課題が指摘されています。
3D NANDで浮遊ゲートを使っていたのは、IntelとMicronだけだった
Section titled “3D NANDで浮遊ゲートを使っていたのは、IntelとMicronだけだった”2018年時点で、3D NANDフラッシュのメモリセル技術では、電荷捕獲技術と浮遊ゲート技術の2つが併存してきました4。電荷捕獲技術を採用していたのはSamsung Electronics、東芝とWestern Digitalの企業連合、SK Hynixで、浮遊ゲート技術を採用していたのはIntelとMicronの企業連合だけでした。
そのMicronも、2018年8月7日のFlash Memory Summitの基調講演で、第4世代の3D NANDでは第1〜第3世代で使ってきた浮遊ゲートセルをやめ、新しい電荷捕獲セル技術と「CMOS under Array」技術を組み合わせると発表しました。3D NANDの積層構造では、セルの作りやすさが重要になります。
浮遊ゲートは信頼性、電荷捕獲は作りやすさ
Section titled “浮遊ゲートは信頼性、電荷捕獲は作りやすさ”電荷捕獲技術と浮遊ゲート技術を比べると、メモリセルの構造は電荷捕獲技術のほうが比較的単純で作りやすく、長期信頼性、とくに高温特性は浮遊ゲート技術が有利だとよく言われます4。電荷捕獲方式の陣営は実用上問題のない信頼性を確保していると表明し、浮遊ゲート方式の陣営はコストの競争力は十分にあると主張してきました。
3D NANDでは、フローティングゲート方式はセルの構造が複雑になり、作りにくくなります。チャージトラップ方式は作りやすく、物理的な損傷や電子漏れの影響を受けにくいものの、信頼性の課題が指摘されています。3D NANDの主流は、作りやすさを重視してチャージトラップ方式に移りました。記憶を保つ期間の比較は、データ保持の論点です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”フローティングゲートとは何ですか?
フラッシュメモリのセルの中で、周りを絶縁膜で囲まれた導電層です。ここに電荷を蓄えてデータを記憶し、通常はメモリセル1個につき1個を含みます。
チャージトラップ方式との違いは何ですか?
チャージトラップ方式は、多結晶シリコンの導電層の代わりに、シリコン窒化物の層の捕獲準位に電荷を保持します。メモリセルの物理的な損傷や電子漏れの影響を受けにくい一方、信頼性の課題も指摘されています。
3D NANDではどちらが使われていますか?
2018年時点で、Samsung、東芝とWestern Digitalの企業連合、SK Hynixは電荷捕獲方式、IntelとMicronの企業連合だけが浮遊ゲート方式でした。Micronは第4世代から電荷捕獲方式に移ると発表しています。
フローティングゲートの利点は何ですか?
一般に、長期信頼性、とくに高温特性は浮遊ゲート方式が有利で、メモリセルの構造は電荷捕獲方式のほうが比較的単純で作りやすいと言われています。
論文ではどう略されますか?
FGと略され、チャージトラップ方式はCTやCTFと略されます。
どこで電荷が出入りしますか?
チャネルとの間の薄いトンネル絶縁膜を通って電子が出入りします。トンネル酸化膜に高い電界を掛けたときのFowler-Nordheimトンネル現象を使い、上の制御ゲートとの間には別の絶縁膜があります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- NANDフラッシュとは── フローティングゲートを使ってきたメモリ
- 電荷トラップとは── 絶縁膜の中に電荷を捕まえる仕組み
- 3D NANDとは── チャージトラップ方式が主流になった積層メモリ
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- 1TechTargetジャパン:NAND型フラッシュメモリの「チャージトラップ」と「フローティングゲート」の違い(2018年7月)techtarget.itmedia.co.jp abc
- 2キオクシア:信頼性ハンドブック(英語版)kioxia.com ab
- 3Microchip:MicroSolutions(2013年7月)ww1.microchip.com ↩
- 4PC Watch 福田昭のセミコン業界最前線:Micronが浮遊ゲート技術の3D NANDフラッシュ開発から撤退へ(2018年8月)pc.watch.impress.co.jp ab