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フラッシュメモリとは

フラッシュメモリとは、電源を切っても内容が残り、しかも書き換えられるメモリです。 記憶している情報を全ビットあるいはブロック単位で電気的に一括消去し1、細かく消す便利さを手放したかわりに、セル構成を簡略にして大容量と低いビット当たりコストを得ました。その後の歴史も同じ向きの選択の連続です。セルを直列に詰めるNAND型、1つのセルに目盛りを多く刻む多値化、セルを縦に積む3D NANDと、容量を増やす側の選択が続き、多値化では速さと寿命を差し出しました。

電源を切っても残るROMなのに、書き換えられる

Section titled “電源を切っても残るROMなのに、書き換えられる”

メモリは、ふつう2つに分けられます。データの読み書きは自由でも電源を切ると内容が消えるのがRAM(Random Access Memory)で、電源を切っても内容が保たれるのがROMです。ROMは、元々は読み出し専用という意味でした。

フラッシュメモリは、この二分法をまたぎます。電源を切っても中身が残るROMでありながら、データ内容を書き換えられます。電気的に消去・再書き込みができる読み出し専用メモリ2という言い回しは矛盾して聞こえますが、分類上の名称がROM系のまま残っているだけで、実際には書き換えられます。

絶縁体に囲まれた膜へ、高電圧で電子を出し入れする

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書き込み・消去・読み出し
書き込み制御ゲートに高電圧基板から膜へ入る消去基板側に高電圧膜から基板へ出る読み出し制御ゲートに読み出し電圧横に電流が流れるか制御ゲート絶縁体電荷蓄積膜シリコン基板
制御ゲートに高電圧を加えると電子が基板から電荷蓄積膜へ入り、基板側に高電圧を加えると膜から出ていきます。読み出しは制御ゲートに一定の電圧を加え、横方向に電流が流れるかどうかで0と1を判定します。

メモリセル3はデータを記憶する最小単位で、近年のフラッシュメモリは数千億個ものメモリセルでできています。セルは、絶縁体に囲まれた電荷蓄積膜に電子を出し入れしてデータを記憶します。

出し入れの手段は高電圧です。キオクシアによると、制御ゲートに高電圧を加えると、電子が絶縁体を通過してシリコン基板から電荷蓄積膜へ入り3、電圧を切るとそのまま電子が蓄えられた状態になります。消すときは逆に、シリコン基板側に高電圧を加え、電子を電荷蓄積膜から基板側へ出します。読み出しでは制御ゲートに一定の読み出し電圧を加え、セルの横方向に電流が流れるか流れないかで「0」「1」を判定します。

まわりが絶縁体なので、電気を切っても電子は膜の中にとどまり、「0」「1」の状態は電源を切っても保持されます。これが、電源を切ってもデータが残る理由です。

NAND型の単位メモリセルは4、電荷をためる浮遊ゲートと、その電荷を制御する制御ゲートからなります。ためる場所と、それを操作する電極の2つでできています。

名前は一括消去から来て、消去の粒度と引き換えに安さと大きさを得た

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キオクシアは1984年に、一度に大量のデータを消去できる不揮発性メモリを“Flash” EEPROM(“Flash” Memory)と命名しました5。名前の由来は一括消去です。キオクシアは、同じ年にフラッシュメモリを世界で初めて発表したとしています。

比較の相手のEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)は、バイト単位で記憶情報を消去します。細かく消せるほうが便利に見えますが、そうするにはセル1つ1つに消去用の仕掛けが要ります。フラッシュメモリはまとめて消すことでセル構成を簡略にし、大容量化を可能にして、ビット当たりのコストを低く抑えました。細かく消す便利さを手放し、安さと大きさを取った設計です。

さらに前の世代のUVEPROMは、紫外線を当てて消していました。フラッシュメモリは紫外線消去のような物理的な方法を使わずに済むぶんUVEPROMより便利で、電気だけで消せるようになったこと自体が大きな前進でした。

読み書きと消去でも単位が違います。NAND型では、書き込みと読み出しを同一の制御ゲートにつながる複数のセル、すなわちページと呼ばれる単位で行い、消去はブロックと呼ばれる単位で行います。

直列に詰めるNAND型、並列で個別に届くNOR型

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セルのつなぎ方とセル面積
NAND型(直列)ビット線直列でつながるNOR型(並列)ビット線1つずつ線に届くF約4F²ほぼ10F²集積度を取るランダムアクセスを取るNANDのセルNORのセル
平面型のNAND型はセルをビット線に対して直列に並べて約4F²まで詰め、NOR型はセルを並列につないで1つずつ届く代わりに、ほぼ10F²の面積を使います。

フラッシュメモリは、セルのつなぎ方でNAND型とNOR型に分かれます。NAND型はメモリセルがビット線に対して直列の単純な構造なので、NOR型より集積度を上げやすく、データ格納用の大容量メモリとしての用途が多くなります1。NOR型はメモリセルがDRAMと同じように並列なので、ランダムアクセスができます。直列にして詰め込むか、並列にして個別に届くようにするかの一点が、用途を分けます。

面積の差は大きく、平面型のフラッシュメモリでゲート長の最小寸法をFとすると、NAND型のセル面積は約4 F²です。DRAMやNOR型など他のメモリデバイスと比べて最少で、これがNAND型の大容量化を可能にしています。NOR型は、セルサイズがほぼ10 F²の関係を保ってスケーリングされています。同じ面積へ詰め込めるセルの数が、およそ2倍以上違います。

NOR型の取り分は速さです。NOR型はNAND型に比べて読み出し速度やランダムアクセス性は高いが集積率は劣り、書き込みが遅いなどの欠点もあります6。

電子の入れ方も別物です。NAND型は浮遊ゲートへの電荷の注入にFowler-Nordheimトンネル電流を使うため、NOR型より書き込み電流が小さくなります。NOR型は、ドレイン端でChannel-Hot-Electronをフローティングゲートへ注入して書き込みます。

NOR型は1984年に舛岡富士雄氏(当時東芝勤務)が発明し6、1988年にインテルが商用のNOR型フラッシュメモリを発売しました。NAND型は1987年に同じ舛岡富士雄氏(当時東芝勤務)が発明したもので、NOR型より回線規模が小さく、安価で大容量化ができます。

1つのセルに、2のN乗個の目盛りを刻む

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しきい値電圧分布の数
1ビット2個102ビット MLC4個111001004ビット QLC16個しきい値電圧
しきい値電圧の分布を、1ビットなら2個、2ビットなら4個、4ビットなら16個作ります。数が増えるほど分布は細く、間隔は狭くなります。

容量を増やす道は、セルを小さくする道と、1つのセルに入れる情報量を増やす道の2つです。後者が多値化技術で7、一つ一つのメモリセルに記憶できるデータの量を増やせます。

仕組みはしきい値電圧の刻み方です。1つのセルに1ビットを記憶する従来のセルでは、「1」と「0」の2つのパターンを記憶させていました。これを細かく分け、1つのセルのデータ量がNビットなら、しきい値電圧分布の数やパターンの種類は2のN乗個になります。4個の分布を作れれば「11」「10」「01」「00」の4種類を記憶でき、16個の分布を作れれば1つのセルで4ビット分を記憶できます7。

代価は速さと寿命です。Nが大きくなるほどしきい値電圧分布を細くしなければならず、そのために書き込みをゆっくり行う必要があります。分布の間隔も狭くなるので読み出しもゆっくり行う必要があり、Nが小さい場合と比べて寿命が短くなります。そのためNが大きいほど容量やコストを重視する用途に、Nが小さいほど性能や寿命の長さを重視する用途に向きます。詰め込むほど安く大きくなり、そのぶん速さと寿命を差し出す点で、消去の粒度と同じ形の取引です。

平面の微細化は電子の減少とリークで限界に達し、セルは縦へ積まれた

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セルを小さくする道は、微細化の限界8に突き当たりました。メモリセルどうしが近いことで意図せぬ電流が流れ、1つのセルに蓄積される電子の個数も微細化で減り、ごくわずかな電子のリークがデータの安定性に影響を与えるようになりました。ためられる電子が少なくなれば、わずかな漏れが致命的になります。

そこから先は、平面を離れてセルを縦に積み上げる3D NANDへ移りました。キオクシアのBiCS FLASHでは、制御ゲートの役割を果たす板状の電極と絶縁体を交互に積み上げ、面に対して垂直に一気にたくさんの穴を開けます。同社は2007年にこの一括加工技術のコンセプトを学会で発表し、2015年に48層、2018年に96層、2020年に112層、2022年に162層8のBiCS FLASHを製品化したとしています。この値に当てはめると、2015年から2022年の7年で層数は約3.4倍になりました。

フラッシュメモリとは何ですか?

記憶情報を全ビットあるいはブロック単位で電気的に一括消去できるメモリです。セル構成が簡略なため大容量化でき、ビット当たりのコストを低く抑えられます。

なぜ電源を切っても内容が残るのですか?

絶縁体に囲まれた電荷蓄積膜に電子を出し入れしてデータを記憶するためです。制御ゲートへの高電圧で入れた電子は、電圧を切ってもそのまま膜の中にとどまるので、「0」「1」の状態は電源を切っても保持されます。

名前の由来は何ですか?

一括消去です。1984年、一度に大量のデータを消去できる不揮発性メモリが“Flash” EEPROM(“Flash” Memory)と命名されました。

EEPROMとの違いは何ですか?

消せる単位です。EEPROMはバイト単位で記憶情報を消去し、フラッシュメモリはブロック単位でまとめて消します。まとめて消すぶんセル構成が簡略になり、大容量化できます。

NAND型とNOR型の違いは何ですか?

セルのつなぎ方です。NAND型はセルがビット線に対して直列の単純な構造のため、NOR型より集積度を上げやすくなります。NOR型はDRAMと同じように並列のため、ランダムアクセスができ、読み出しも速い一方、書き込みは遅くなります。

読み書きと消去の単位は同じですか?

違います。NAND型では書き込みと読み出しをページと呼ばれる単位で行い、消去はブロックと呼ばれる単位で行います。

1つのセルに何ビット入りますか?

複数入れられます。1つのセルのデータ量がNビットなら、しきい値電圧分布の数やパターンの種類は2のN乗個になり、16個の分布を作れば1セルで4ビットを記憶できます。Nを大きくするほど書き込みと読み出しを遅くする必要があり、寿命も短くなります。

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