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STT-MRAMとは

STT-MRAMとは、スピンの向きをそろえた電流を流して磁化を反転させ、その向きを1ビットとして記憶する不揮発メモリです。 記憶素子は磁気トンネル接合です。フラッシュは電荷を厚い膜の向こうへ閉じ込めるため、書き込みに高い電圧と時間を要します。磁化の向きを反転させるだけなら低い電圧で10ナノ秒級に収まり、書き換えられる回数も桁違いに多くなります。ただしimecは、速く書こうとするほど薄い絶縁障壁を流れる電流が増え、書き換え耐久が下がるとしています。速さ、書き換え耐久、保持の配分が、どこに使えるかを決めます。

書き込み電流の向きが、自由層の磁化の向きを決める

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書き込みと読み出し
書き込み電流固定層MgO自由層スピン偏極トルクで反転読み出し平行低抵抗反平行高抵抗電流の向きで切り替え固定層(CoFeB)MgO 障壁自由層(CoFeB)
固定層を通った電流はスピンの向きがそろい、自由層へ入って磁化を反転させます。自由層が固定層と平行なら低抵抗、反平行なら高抵抗で、その差が1ビットです。

磁気トンネル接合は、向きが一定の固定層と、向きを反転できる自由層で絶縁層を挟んだ構造です。固定層を通した電流は、上向きか下向きのどちらかのスピンを持つ電子が多いスピン偏極電流になります1。この電流を自由層へ流し込むと角運動量が自由層へ移り、そのトルクが十分に強いと自由層の磁化が反転します。これがスピン移行トルクです。書き込みでどちらの向きになるかは、接合を流れる電流の向きで決まります2。

固定層と同じ向きなら低抵抗、逆向きなら高抵抗になり、その抵抗の差が論理の1と0にあたります。固定層と自由層に強磁性体のCoFeB、障壁にMgOを使うようになったことが、材料面での2つめの転機でした1。

読み出しでは抵抗の差を電圧の差に変えます。ルネサスは、セル電流と参照電流で放電の速さが違うことから生じる電圧差を、差動センスアンプで読み分けています3。セル電流が小さいときでも必要な電圧差を確保するため、放電中にセンスアンプの入力電圧を容量結合でブーストする回路を加えたとしています。

電荷を閉じ込める方式とは書き込みの物理が異なり、厚い膜を越えさせる動作を省けるため、低い電圧で速く書けます。

東北大学は、2.3 nmの素子で150℃保持と10ナノ秒動作を両立させた

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接合直径を同じ縮尺で
2020年の素子2.3 nm150℃で保持10 ns 動作2021年の Quad-MTJ18 nm10年以上の保持6×10¹¹回以上の書換10 ns 書き込み消費電力2割減
2020年の直径2.3 nmの素子は150℃の保持と10 ns動作を、2021年の直径18 nmのQuad-MTJは10年以上の保持と6×10¹¹回以上の書き換えを示しました。

東北大学は2020年12月に、直径がわずか原子10個程度の2.3ナノメートルという世界最小の磁気トンネル接合素子を作製しました4。この素子は、車載応用に要る150℃でのデータ保持特性を保ったまま、DRAM置き換えに要る10ナノ秒での高速低電圧動作を実証しました4。成果はIEEE国際電子デバイス会議で発表されました。

新しい構造では界面の磁気異方性を大きくして、薄い磁性層でも性能を出しています。2つの磁性層はMgOの挿入層を介して静磁気的に結合し、1つの磁性層のように振る舞います。小さくするほど熱でひっくり返りやすくなるため、寸法と保持は普通は逆を向きます。この報告の要点は、2つを同時に示したことです。

東北大学は2021年6月に、接合直径18 nmの素子で10年以上のデータ保持を実証しました5。素子は界面を4重にした強磁性トンネル接合(Quad-MTJ)で、同じ素子で6×10^11回以上の書き換え耐性、10ナノ秒の書き込み速度、消費電力の2割低減も示しています。東北大学は、18 nmへ微細加工したあとで10年以上の保持と1兆回に到達する書き換え耐性を同時に達成した5ことを世界初としています。対象は1Xナノメートル世代のプロセスで、成果は2021 Symposia on VLSI Technology and Circuitsで発表されました。

この3つが同時に立つことが、キャッシュや作業用メモリの置き換え候補として語られる根拠になっています。書き換え回数はフラッシュと桁が異なります。

imecは、速く書くほど障壁を流れる電流が書き換え耐久を下げるとみている

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imecは、STT-MRAMの書き込みはSRAMと比べてまだ効率が低く時間もかかり、切り替えの速さは5ナノ秒より速くならないとしています1。速さを上げるには磁気トンネル接合に流す電流を増やす必要があり、その電流は薄い絶縁障壁を通ります。imecは、これが障壁に強いストレスをかけ、書き換え耐久を下げるとしています。

熱に対する安定性を上げれば高温でも長く保ちますが、磁化の反転に要る電流が増え、書き込みに要る時間が伸びます。素子を小さくすれば集積度は上がるものの、体積が減って熱で反転しやすくなります。寸法・保持・書き込み電流の3つは、どれか2つを取ると残り1つが下がる関係です。

用途によって、要る特性が入れ替わります。車載では高温での保持が先に来て、150℃の環境で10年もつことが条件になるため、熱に対する安定性を厚く取ります。演算の近くで使う用途では書き込みの速さが先に来ます。用途ごとに、どれを先に取るかが設計の出発点です。東北大学は2024年の報告で、記録層に使う材料の膜厚や積層回数を変えることで、高温での保持にも高速な書き込みにも同じ素子で応じられるとしています。

混載メモリでは、配線工程で作れることが利点になる

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混載する位置
フラッシュ混載記憶セルMRAM混載MTJBEOLFEOL配線層トランジスタ層Si 基板フラッシュセルMTJ
フラッシュの記憶セルはFEOLで、MRAMの磁気トンネル接合はBEOLで作ります。

STT-MRAMを使った最初の製品は、2015年ごろに市場へ出ました1。はじめはDRAMやSSDの不揮発バッファとして、その後は混載フラッシュの置き換えとして使われています。imecは2018年のIEEE IEDMで、5nm世代でSTT-MRAMを最終段(L3)のキャッシュメモリに使える見通しを示しました。単体メモリでは、Everspinがデータセンターや企業向けストレージ向けに、DDR4に近いインターフェースを持ち不揮発のDRAMのように動く1Gbのデバイスを提供しているとしています2。

マイコンのようにロジックと同じチップへ載せる場合は、作る工程の位置が効きます。ルネサスは、混載する不揮発メモリとしては、FEOLで作るフラッシュより、BEOLで作るMRAMの方が構造上有利ですとしています3。ルネサスは22nmのロジック混載MRAMプロセスで32Mbitのセルアレイを載せたテストチップを試作し、最大接合温度150℃でランダムアクセス時間5.9ns、書き換えスループット5.8MB/sを確認したと発表しました。書き換え動作へ移るモード間の遷移時間は約30%短くしたとしています。

STT-MRAM とは何ですか?

スピンの向きをそろえた電流を流して磁化を反転させ、その向きを1ビットとして記憶する不揮発メモリです。記憶素子は磁気トンネル接合で、固定層と自由層の磁化が平行なら低抵抗、反平行なら高抵抗になります。

どこまで小さくなりますか?

東北大学は2020年12月に、直径がわずか原子10個程度の2.3ナノメートルという世界最小の磁気トンネル接合素子を作製しました。2つの磁性層をMgO挿入層で結合させ、薄い磁性層でも性能を保つ構造です。

速さはどのくらいですか?

2020年の素子で10ナノ秒の高速低電圧動作が実証され、2021年の報告も10ナノ秒の書き込み速度を挙げています。imecは、書き込みはSRAMより遅く、5ナノ秒より速くはできないとしています。

高温で保ちますか?

2020年の素子は、車載応用に要る150℃でのデータ保持特性を保ったまま動作しました。

何年もちますか?

東北大学は2021年6月に、接合直径18 nmの素子で10年以上のデータ保持を実証しました。

書き換え回数はどのくらいですか?

同じ2021年の報告で、6×10^11回以上の書き換え耐性が示されました。東北大学はこれを1兆回に到達する書き換え耐性と表現しています。

どの世代が対象ですか?

1Xナノメートル世代のプロセスです。この成果は2021 Symposia on VLSI Technology and Circuitsで発表されました。

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