TZDB(タイムゼロ絶縁破壊)とは
TZDB(タイムゼロ絶縁破壊)とは、ゲート絶縁膜に電圧を掃引したりランプ状に上げたりして測る絶縁破壊です。 短時間で測れ、耐圧の分布から膜の中のごみや弱い欠陥による不良の割合を読み取れるので、プロセスの評価に使われます。長い時間をかけて進むTDDB(経時絶縁破壊)とは、測っている現象が違います。TZDBが答えるのは膜の出来の良し悪しで、何年もつかには答えません。
多数キャリアを表面に集める向きに電圧を上げ、電流が急に増える電圧を測る
Section titled “多数キャリアを表面に集める向きに電圧を上げ、電流が急に増える電圧を測る”TZDBは、電圧スイープやランプ電圧で測るときの絶縁破壊です。厳密な定義はありませんが、通常は電流と電圧の特性を取ったときに急激な電流増加が起きる現象を指します1。測定では、電圧を掃引するか、ランプ状に上げながら電流を測り、電流が急に増えた電圧を絶縁破壊耐圧とします。一定の電圧や電流をかけ続けて破壊までの時間を測る定電圧ストレス(CVS)とは、かけ方が違います。
電圧の向きも決まっています。酸化膜の絶縁破壊耐圧は、シリコン表面に多数キャリアが蓄積するように電圧をかけて測ります2。p型Si基板なら、ゲート電極を負、Si基板を正にします。
1つの素子の測定は短時間で終わるので、ウェーハ上に素子を多数作って測り、結果を統計的に評価します2。ウェーハ面内の場所ごとに耐圧を比べれば、ごみや欠陥が多い場所を探せます。
電流が3桁以上跳ねればハードブレークダウン、その手前にソフトブレークダウンの域がある
Section titled “電流が3桁以上跳ねればハードブレークダウン、その手前にソフトブレークダウンの域がある”破壊が2段で現れる膜もあります。SiO2/SiC積層膜の典型的なTZDBでは、電界を毎秒0.1 MV/cmずつ上げたとき、ソフトブレークダウンとハードブレークダウンの2つが現れます3。一般に、ゲート電流が3桁を超えて急に跳ね上がればハードブレークダウンとみなします。ハードブレークダウンに至らないまま電流がはっきり増える域がソフトブレークダウンで、この例では酸化膜の電界が6 MV/cmから真性破壊電界Eintまでの範囲にあたります。
耐圧分布はA・B・Cの3つのモードに分かれる
Section titled “耐圧分布はA・B・Cの3つのモードに分かれる”絶縁破壊耐圧の評価には、耐圧分布のヒストグラムや、累積の絶縁破壊不良率と耐圧の関係1がよく使われます。耐圧分布は通常3つのモードに分かれます。0MV/cm付近の分布(Aモード)は酸化膜を作るときのごみなどによる不均一な酸化膜が原因で、数MV/cm付近に山を持つ分布(Bモード)は主に酸化膜の中の電気的に弱い欠陥が原因です。10MV/cm付近の分布(Cモード)は、均一な酸化膜の真性の絶縁破壊を表します。
MOSFETの耐圧では、酸化膜の真性破壊を表すCモードの頻度が高いほど、品質が高いと評価されます2。
モードの割合は、工程の条件で変わります。Al2O3/GaNのMOSキャパシタでは、高圧水蒸気アニール(HPWVA)を1.0 MPaで行うとTZDB特性が劣化しました4。表面にできた突起で局所的に電界が集中したためと考えられています。2 MPaを超えると、0MV/cm付近の初期不良であるAモードが現れました。SiO2/SiC積層膜でも、酸化後のアニールを800℃、900℃、1000℃で行った試料は、酸化したままの試料よりゲート電流が低く3、酸化後のアニールが膜の品質向上とリーク抑制に効くことを示しています。ただし800℃から1000℃へ上げるとゲート電流は増え、品質はアニール温度に敏感です。SiCのゲート酸化膜の工程を詰めるとき、TZDBは条件ごとの差を短時間で並べる道具になります。
耐圧分布から寿命を予測し、TDDBの電界も耐圧を目安に選ぶ
Section titled “耐圧分布から寿命を予測し、TDDBの電界も耐圧を目安に選ぶ”TZDBの耐圧分布は、TDDBと密接に関係しています1。耐圧分布を絶縁破壊時間の分布に換算して長期寿命を予測する方法も報告されており、信頼性を上げるためのプロセスを選ぶ評価を短くするのに有効とされています。
TDDBの試験条件を選ぶときも、TZDBの結果が目安になります。真性破壊電界Eintは、TDDBでかけるストレス電界Estrの範囲を決める目安になり、通常はEintの90%をEstrとします3。
耐圧は、使用条件での寿命を直接表さない
Section titled “耐圧は、使用条件での寿命を直接表さない”TZDBは短時間で多数の素子を測れますが、耐圧そのものは使用条件での寿命を直接表しません。寿命を知るには、TDDBの試験で時間をかけて測るか、TZDBの分布を破壊時間に換算するモデルを使う必要があります。換算のモデルが合っていなければ、寿命の予測もずれます。TZDBの強みは工程の選別と試験条件の目安にあり、寿命の数字はTDDBの試験か換算モデルを通して得ます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”TZDBとは何ですか?
ゲート絶縁膜に電圧を掃引したりランプ状に上げたりして測る絶縁破壊です。電流と電圧の特性を取ったときに、急に電流が増える現象を指します。
何が分かりますか?
絶縁破壊の耐圧です。多数の素子の耐圧をヒストグラムにすると、膜の欠陥の種類ごとにモードが分かれます。
A・B・Cモードとは何ですか?
0MV/cm近くのAモードは膜を作るときのごみなどによる不均一な膜、数MV/cmのBモードは電気的に弱い欠陥、10MV/cm付近のCモードは均一な膜の真性破壊を表します。
良い膜はどのモードが多いですか?
真性破壊を表すCモードの割合が高いほど、品質の高い膜です。Al2O3/GaNの例では、高圧水蒸気アニールを2 MPa超で行うとAモードが現れています。
TDDBとの違いは何ですか?
TZDBは電圧を上げながら短時間で測る破壊で、TDDBは一定のストレスをかけ続けて時間がたってから起きる破壊です。TDDBのストレス電界は、TZDBで測った真性破壊の電界の90%に置くのが通例です。
TZDBから寿命は分かりますか?
TZDBの耐圧分布を破壊時間の分布に換算して長期寿命を予測する方法も報告されており、プロセスを選ぶための評価を短くするのに有効とされています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- TDDB(経時絶縁破壊)とは── 時間をかけて進む絶縁破壊
- 定電圧ストレス(CVS)とは── 一定の電圧をかけ続けて破壊時間を測る方法
- ワイブル分布とは── 破壊の分布をまとめる統計
4件を表示
- 1筑波大学:藤井泉「CMOS向け高誘電率ゲート絶縁膜の長期信頼性」博士論文(2013年2月)tsukuba.repo.nii.ac.jp abc
- 2Semi journal:MOSFETのゲート絶縁膜信頼性評価、TZDBとTDDBの違いsemi-journal.jp abc
- 3Chinese Physics B:SiO2/SiC積層膜のTZDBとアニール温度の評価cpb.iphy.ac.cn abc
- 4奈良先端科学技術大学院大学:Al2O3/GaN MOSキャパシタの評価を含む博士論文naist.repo.nii.ac.jp ↩