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動的オン抵抗とは

動的オン抵抗とは、スイッチングの直後に測ったオン抵抗です。 静止した状態で測る静的オン抵抗とは値が異なり、実機での損失にはこちらが影響します。

データシートのオン抵抗は、素子をオンにしたまま測った値です。スイッチング電源の中の素子は、高い電圧のオフ状態を経てからオンへ移るため、実機では大きく出ます。高い周波数で動かすと静的な値の数倍に達することもあり、データシートの値だけで損失を見積もると外れます。

オフの間に捕まった電子が、切り替え直後の抵抗を上げる

Section titled “オフの間に捕まった電子が、切り替え直後の抵抗を上げる”

静的オン抵抗は、素子をオンにしたまま測ります。電子が捕まる前の、素子そのものの抵抗に近い値です。動的オン抵抗は、オフからオンへ切り替えた直後に測ります。オフの間に捕まった電子はオンへ移った直後もまだ捕まったままで、二次元電子ガスの電子が減った状態で測ることになります。この上昇を物理の側から見たものが電流コラプスです。

ロームは、動的オン抵抗は一般にオフからオンへ切り替わった直後に最も顕著とされ、GaN HEMT特有の課題と考えられてきたとしています1。ドレイン電圧が高くなるほどホットエレクトロンが多くのエネルギーを得て密度も増え、電子トラップがより顕著に表れます。

値は、切り替えてから何秒後に測るかで決まる

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測るタイミング
オフオンゲート電圧ドレイン電圧オン抵抗動的オン抵抗静的オン抵抗500 ns
オン抵抗は切り替えた直後ほど高いので、ゲート電圧をかけてから何秒後に読むかを決めておきます。ロームはこの間隔を500 nsにしています。

ロームは、ゲート電圧をかけてからオン抵抗を測るまでの時間を500 nsに設定しています1。imecは10 μsオン・90 μsオフのスイッチングで測り、650 Vまで、25℃から150℃の全温度域で分散が20%未満だったとしています2。オフからオンへ切り替えた後も、オン状態がほぼ保たれるということです。

実際の電源に近い条件で測る方法も出ています。MITの研究は、高周波の電源で素子が受けるのと同じような電圧と電流の波形をかけながら動的オン抵抗を測る手法3を提案しました。出力容量で失われる損失と切り分けたうえで、周波数・温度・オフ時の電圧を振って測れ、結果は素子モデルにそのまま組み込める1つの抵抗値になります。

MITの測定では、3 MHzで静的な値の約4〜6倍になった

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静的な値に対する倍率
データシートの静的な値3 MHzで動かしたときの動的な値1倍4倍6倍
データシートにある室温の静的な値を1とすると、3 MHzで動かした市販品の動的な値は約4〜6倍の範囲に入りました。

MITの研究は、この手法で市販のGaNトランジスタを3 MHzで評価し、動的オン抵抗がデータシートに通常載っている室温の静的な値の約4〜6倍になった3と報告しています。温度とオフ時の電圧に対する依存の仕方は素子ごとに違いました。同じ研究は、高い周波数で動かすとGaNトランジスタの動的オン抵抗は大きくなり、素子に不利に働くうえに測るのも難しいとしています。

導通損失は電流の二乗にオン抵抗を掛けた形で出るので、オン抵抗に比例します。動的オン抵抗が静的な値より20%高ければ、その期間の導通損失も20%増えます。この比例をMITの約4〜6倍に当てはめると、同じ電流での導通損失はデータシートの値で見積もった4〜6倍になります。設計の段階で静的な値だけを使うと、実機の発熱を低く見積もることになります。

ロームは、初期値の2倍を故障として加速試験で寿命を見積もる

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故障の判定
初期値に対する比加速試験の時間1倍2倍故障の判定故障
ロームの試験では、試験開始時の動的オン抵抗を1として追い、2倍に達した時点を故障と判定します。

ロームは、寿命の要点は動的オン抵抗が長期に渡り安定していることだとして、その変化をデバイス単体とアプリケーション動作の両面から測り、DHTOL(Dynamic High Temperature Operating Life)とSALT(Switching Accelerated Life Test)の2つの試験を使います。試験開始時点で測った初期の動的オン抵抗の2倍を故障と定義し1、SALTから加速係数を導いて寿命を推定します。対象はソフトスイッチングで、LLC共振型コンバータとTotem-pole PFCの臨界モードがその代表例です。

同社は、通常使うVDS=400 V、VGS=5 Vに対してマージンを持たせた電圧で信頼性試験を行い、動的オン抵抗と静的オン抵抗の比に変化は見られなかったとしています。長期の確認が要るのは、動的オン抵抗が高電圧などの大きなストレス下での動作中に増加し、導通損失が大きくなることで故障につながる可能性が大きくなるためで1、電子トラップは経年劣化により増加する可能性もあります。

比べられるのは、電圧・温度・周期がそろった値どうし

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動的オン抵抗はドレイン電圧・温度・スイッチングの周期で動き、同じ素子でも条件が異なれば別の値が出ます。素子の優劣を決められるのは、電圧・温度・周期の3つがそろった値どうしです。測り方をそろえる規格として、JEDECのJEP182がGaN HEMT向けに動的オン抵抗試験法の指針を示しています1。

下げる手段は、どれも別の所で払う

Section titled “下げる手段は、どれも別の所で払う”

動的オン抵抗を下げるには、電子が捕まる場所そのものを減らします。imecは20%未満の分散を出すにあたり、洗浄と絶縁膜の成膜条件を最適化し、フィールドプレートの設計を詳しく検討しました2。膜の質を上げる工程は許容幅が狭く、歩留まりで払うことになります。素子を厚く作れば電界が緩んで捕まる電子は減りますが、静的なオン抵抗が上がります。設計側で電圧を下げれば分散は小さくなるものの、同じ電力を流すのに電流が増えます。

動的オン抵抗とは何ですか?

スイッチングの直後に測ったオン抵抗です。静止した状態で測る静的オン抵抗とは値が異なり、一般にオフからオンへ切り替わった直後に最も大きく出るとされています。

なぜ静的な値と異なりますか?

オフの間に捕まった電子が、オンへ移った直後もまだ捕まったままだからです。二次元電子ガスの電子が減っている状態で測ることになります。

どうやって測りますか?

imecは10 μsオン・90 μsオフのスイッチングで測りました。ロームはゲート電圧をかけてから500 ns後に測っています。GaN HEMT向けの試験法の指針は、JEDECのJEP182が示しています。

どのくらいの分散ですか?

imecの素子では、650 Vまで、25℃から150℃の全温度域で分散が20%未満でした。

分散が小さいと何が得ですか?

オフからオンへ切り替えた後も、トランジスタのオン状態がほぼ保たれます。設計時の見積もりが実機と合います。

損失にどう影響しますか?

導通損失はオン抵抗に比例します。動的オン抵抗が20%上がれば、導通損失も20%増えます。

寿命とどう関係しますか?

ロームは、動的オン抵抗が長期に渡り安定していることを寿命の要点としています。初期値の2倍を故障と定義し、加速試験で寿命を推定する方法も示しています。

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