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二次元電子ガスとは

二次元電子ガスとは、異なる2つの結晶の界面に、厚みが数nmという薄い層として集まる電子の集団です。 電流はこの薄い層の中を走ります。トランジスタの電流を運ぶのは、普通は不純物が放した電子です。二次元電子ガスでは不純物を入れず、2種類の結晶を重ねたときに材料そのものが持つ分極が、界面へ電子を呼び込みます。そのため電子は散らされずに速く走れますが、数は不純物の量では調整できず、界面に近いぶん欠陥にも捕まります。

分極が、AlGaNとGaNの界面の井戸に数nmの電子の層を作る

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界面の伝導帯
AlGaN バリア層GaN チャネル層伝導帯フェルミ準位 EF2DEG数nmエネルギー深さ
界面で伝導帯が落ち込み、GaN側に三角形の井戸ができます。井戸のうちフェルミ準位より下の数nmの部分に電子が溜まり、二次元電子ガスになります。

GaNのチャネル層とAlGaNのバリア層の界面には、自発分極とピエゾ分極によってキャリアが走行する層が生成されます1。電子が溜まるのは、AlGaN/GaN界面の下側にできる三角形の量子井戸のうち、フェルミ準位EFより下の部分です2。この層の厚みは数nmです。電子は厚み方向へほとんど広がらず、界面に沿った面の中だけを動きます。二次元という語はここから来ています。

AlGaN/GaN HEMTで2DEGが初めて示されたのは1992年です。同じグループが1993年と1994年に、AlGaN/GaN HEMTの直流と高周波の初の測定を行いました。

電子の数は約1×10¹³ cm⁻²で、バリア層の厚みとゲート電圧で変わる

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バリア層の厚みと2DEGの密度
10nm6×10¹² cm⁻²40nm1.5×10¹³ cm⁻²AlGaN バリア層GaN チャネル層2DEG の電子
バリア層を10nmから40nmへ厚くすると、2DEGの密度は6×10¹² cm⁻²から1.5×10¹³ cm⁻²へ上がります。その代わり電子移動度は大きく下がります。

通常のAlGaN/GaNヘテロ構造では、2DEGのシート電子密度は約1×10¹³ cm⁻²、電子移動度は約2000 cm²/V·sです2。ソースからドレインへ流れる電流は、すべてこの薄い層を通ります。したがって層の中の電子の数が、そのままオン抵抗を左右します。

電子の数を決めるのは層の作りです。バリア層を10 nmから40 nmへ厚くすると、2DEGの密度は6×10¹² cm⁻²から1.5×10¹³ cm⁻²へ上がり、同時に電子移動度は大きく下がります。厚さ5 nm未満の極薄のAlN/GaN構造では、2×10¹³ cm⁻²を超える密度と約1000 cm²/V·sの移動度2が得られます。

実際のAlGaN/GaN素子では、ゲート電極がAlGaN側でショットキー接触を作り、外から加えるゲート電圧で2DEGのシート電子密度を変えます。密度、電子移動度、シート抵抗は、ホール測定用のパターンで取り出します。

不純物を入れないので、電子が散らされずに速く走る

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普通のトランジスタは、チャネルへ不純物を入れて電子を供給します。ところが供給した不純物は原子としてそこに残り、走る電子を散らします。2DEGでは、不純物によるキャリアの散乱を避けて高速なキャリア走行を達成できます1。電子を呼ぶのが分極なので、界面には散らす相手が残らずに済みます。

この差が、同じ電圧で流せる電流の量に直結します。GaNの素子が低いオン抵抗を出せる根拠の一つがここにあります。高い密度と高い移動度を両立した例では、1.9×10¹³ cm⁻²のシート電子密度で、室温1800 cm²/V·s、4 Kで7340 cm²/V·sの移動度2が得られています。

界面に近いため、欠陥に電子が捕まる

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電子のトラップ
AlGaN バリア層GaN チャネル層2DEG表面近傍のトラップ電子濃度が減るホットエレクトロンチャネル層下部のトラップ
エネルギーを得た電子の一部が、バリア層の表面近傍とチャネル層の下部に捕まり、固定された負電荷になります。その分だけ2DEGの電子濃度が減り、オン抵抗が上がります。

2DEGは界面から数nmのところを走るので、近い位置に欠陥があれば、走っている電子がそこへ捕まります。ドレイン・ソース間に高い電圧が加わるとホットエレクトロンが発生しやすくなり、その一部がポテンシャル障壁を越えてAlGaNバリア層の表面近傍やGaNチャネル層の下部にトラップされます1。

捕まった電子は固定された負電荷になり、2DEGの中の電子濃度を減らします。その結果は動的オン抵抗dRDS(ON)の増加として観察されます。VDSが高くなるほどホットエレクトロンはより多くのエネルギーを得て密度も増えるので、電子のトラップはより顕著に表れます。この現象が電流コラプスです。速さの根拠と課題の根拠が、同じ構造から出ています。

ゲートの下だけ2DEGを空乏化させれば、ノーマリオフになる

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パナソニックは、p-AlGaNからAlGaN/GaNヘテロ接合へホールを注入することで、空乏化したチャネルの電子濃度を上げる原理3を報告しています。裏を返せば、ゲートの下だけ2DEGを空乏化させておけば、ゲート電圧0Vで電流が止まります。ノーマリオフ型はこの形で作られます。

同社は、このホール注入による伝導度変調によってドレイン電流が大きく増えるとしています。切ることと増やすことが、同じ層の操作として組み合わされています。

分極で呼ぶ電子は速く、数は材料で決まる

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分極で電子を呼ぶ方式は、不純物散乱を避けられるぶん速い一方、電子の数を不純物の量で調整する手が使えず、材料の組成と層の厚みで決まってしまいます。バリア層を厚くして密度を上げれば移動度が下がるように、速さと数も同じ層の設計の中で引き合います。2DEGを使う代表はGaN HEMTで、パワー素子にはシリコン基板の上にGaNの層を成長させて作るものがあります。

二次元電子ガスとは何ですか?

異なる2つの結晶の界面に、厚みが数nmという薄い層として集まる電子の集団です。電流はこの薄い層の中を走ります。

どうやって生まれますか?

AlGaNとGaNの界面に、自発分極とピエゾ分極によってキャリアが走行する層が生成されます。電子は界面のGaN側にできる三角形の量子井戸に溜まります。

なぜ「二次元」と呼びますか?

厚み方向の広がりが数nmにとどまり、電子が面の中だけを動くためです。

なぜ速いのですか?

2DEGでは不純物によるキャリアの散乱を避けるため、高速なキャリア走行を達成できます。通常のAlGaN/GaNで電子移動度は約2000 cm²/V·sです。

不純物を入れる方式と何が異なりますか?

電子の出どころです。普通のトランジスタは不純物を入れて電子を供給するため、その不純物自身が電子を散らします。2DEGは分極で電子を呼ぶため、界面には散らす相手が残らずに済みます。

弱点はありますか?

界面から近い位置を走るため、バリア層表面やチャネル下の欠陥に電子が捕まりやすくなります。これが電流コラプスの原因で、ドレイン電圧が高いほど顕著になります。

どこで使われますか?

GaNのHEMTが代表です。パナソニックも、AlGaN/GaNヘテロ接合を使うパワートランジスタを報告しています。

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