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ファウンドリとは

ファウンドリとは、半導体の前工程の製造受託に特化した企業です。 前工程の製造受託ビジネスそのもの1を指すこともあります。語があてはまるのは工場の建物ではなく、他社の製品を受託して前工程を担う事業のかたちです。専業ファウンドリという形は、TSMCの創業者が台湾の弱みを並べた消去法から選び取ったもので、始めた時点では市場の当てがありませんでした。

鋳型とマスクが似ているから、鋳物工場の名がついた

Section titled “鋳型とマスクが似ているから、鋳物工場の名がついた”

foundryを英語の辞書で引くと、意味は鋳造(業)、鋳物類、鋳造所、鋳物工場などに限られます1。鋳物は、溶かした金属を鋳型に流し込み、冷やして固めて取り出すので、鋳型さえあれば同じ形の金属製品を何個でも作れます。半導体でも、回路パターンが形成されたマスクがあればそれをウェーハに転写でき、繰り返せば同じ回路パターンのチップが多数載ったウェーハを何枚でも作れます。日清紡マイクロデバイスは、鋳型とマスクを対応させたこの比喩が語の由来だと推測しています。

シリコンファウンドリという用語は、インテルのムーアが作り、ミードが広めたと伝わっています。ミード教授らの業績を紹介する記事に、その記述があります。概念そのものは、1979年1月にカリフォルニア工科大学で開かれたVLSIに関する最初の会議で、カーバー・ミードが公に紹介しました1。このときシリコンファウンドリと並んで示されたのが、ファブレスデザインハウスの概念と、設計の製造からの分離です。

IDMの製造工場は、ファウンドリと呼ばない

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foundryをネットで検索すると半導体製造工場という意味が出てくることがありますが、ファウンドリと呼ぶ対象は他社からの製造受託に限られ、IDMの製造工場は含みません。そのため、IDMがファウンドリ事業を持つことは現在でも普通にあり、日清紡マイクロデバイス自身もファウンドリサービスを提供しています。事業をファウンドリビジネスだけに絞った企業はpure-play foundryやdedicated foundryと呼ばれ1、日本語では専業ファウンドリと訳されることが多い語です。

1つめの受託は、IDMのあふれた需要を変動費で受ける

Section titled “1つめの受託は、IDMのあふれた需要を変動費で受ける”

製造受託には大きく2つの形態があり、日清紡マイクロデバイスはこの2つを全く別のビジネスと言ってもいいとみています2。

需要と生産能力
数量時間自社の生産能力需要ファウンドリへ委託自社工場で生産
需要が自社の生産能力を超えた分だけをファウンドリへ出せば、設備投資を増やさずに、変動する需要を変動費で受けられます。

1つめは、IDMが自社工場で作っている製品の製造受託です。需要が生産能力を超えたとき、IDMは設備投資して自社の能力を上げる代わりに、ファウンドリなど他社への委託で対応します2。変動する需要を、固定費を増やさずに変動費に振り替えて受ける形です。委託先のプロセスをそのまま使えることも、微修正で済むこともありますが、IDMと同じウェーハプロセスを新たに立ち上げなければならない場合もあります2。

2つめの受託では、ファウンドリのプロセスが先にあり、顧客がその上で設計する

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プロセスの上に設計が載る
回路・システムトランジスタ等の素子ウェーハプロセス顧客が設計IDMの設計部門・ファブレスファウンドリが構築情報・データ・ツール・IP
ファウンドリがウェーハプロセスと素子を作り、顧客はその上で回路やシステムを設計します。設計に要る情報・データ・ツール・IPも、ファウンドリの側から顧客へ渡ります。

2つめは、ファウンドリの開発したプロセスをもとに顧客が製品を設計する形で、他の製造業とは順序が逆になります。組立産業ではまず製品があり、その後に製造工程を設計するのに対し、半導体、特に集積回路では、まず製造前工程すなわちウェーハプロセスがあります。ファウンドリがトランジスタなどの素子を作るウェーハプロセスを構築し、その素子を使って回路やシステムを設計するのが、IDMの設計部門やファブレス半導体企業といった顧客の仕事です2。

そのためファウンドリは、プロセスに加えて設計の道具までそろえ、製品の設計に必要な情報やデータやツールやIPを、関連企業とも連携して提供します。日清紡マイクロデバイスは、これを受け身の製造受託というより、製品の設計と製造に必要なプラットフォームを提供する能動的な意味合いの方が強いとみています。

この形の受託は大学にも届いています。EUROPRACTICE-ICを通じて、大学と民間の顧客がGlobalFoundriesのマルチプロジェクトウェーハ(MPW)と量産のサービスを使えます3。選べるノードは350 nmから12 nmまでで、GlobalFoundriesの22 nmと28 nmはドイツのドレスデンで製造されます3。

専業は台湾の弱みを並べた消去法で選ばれ、市場の当てはなかった

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専業ファウンドリは、産業の発展が自然に生んだものというより、誰かが選び取った結果です。TSMC創業者のモリス・チャン氏の回想では、台湾政府から事業計画を求められて数日で提出することになり、専業ファウンドリという考えはその数日のあいだに固まりました4。考えのもとになったのはカーバー・ミード氏の著作で、チャン氏の見方では、ミード氏が示したのは設計を製造技術から切り離せるという点です。同氏は、ミード氏の主張がその分離までにとどまるとも明言しています。

そのうえでチャン氏は、台湾に何があって何がなかったかを並べました。販売とマーケティングの力は乏しく、知的財産の面で持つ強みもわずかで、台湾が持ちうる唯一の強みは半導体の製造、ウェーハの製造でした。それも明白な強みというより可能性にとどまる、というのが同氏の見立てです。専業ファウンドリという選択を、同氏はいちばんましな選択と言ってもいい、という控えめな言い方で語っています。

弱いところは、要る場面そのものを減らせばよい、という組み立てです。設計の強みが薄い分、専業ファウンドリは設計を顧客に委ねます。販売力が弱くても、ファウンドリの販売は一般の半導体企業より単純で済みます。知的財産に弱くても、当時は製造プロセスが他社からの知財攻撃を最も受けにくい部分だった4と同氏は述べています。争いの多くは回路設計をめぐるものだったからです。

この選択には大きな穴がありました。チャン氏はそれを致命的な問題と呼び、その中身を、市場はどこにあるのか、と表現しています。聞き手から、その考えは業界であまり受け入れられなかったと振られると、同氏はきわめて評判が悪かったと繰り返し答えました。それでも踏み切れたのは、ファブレス産業の台頭を見通していたからというより、ただそうなることを願っていたからだと同氏は語ります。

独立を望む多くの設計者が、ウェーハ工場を建てるための巨額の資金を集められずに独立を諦めるのを、同氏は見てきました。専業ファウンドリがそれを解決すれば、彼らが会社を作り、自分たちの顧客になり、安定して成長する市場になると考えました。工場建設費の高騰は新規参入をふさいでいました。ファウンドリは、そのふさがった道の代わりとして設計されたものでした。

TSMCは2年の赤字のあと、1991年以降は赤字を出していない

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専業ファウンドリの年表
1979ミードが発表1991以降 赤字なし2022上位5社で約90%1987TSMC設立1995UMCが転換
1979年にミードが設計と製造の分離を公に紹介し、1987年にTSMCが設立されました。1995年にUMCが続き、2022年末には上位5社がファウンドリ市場の約90%を占めています。

チャン氏の提案は受け入れられ、半官半民のファウンドリ企業TSMCが1987年に設立されました1。民間の出資企業探しは難航し、日米の有力企業にはすべて断られ、欧州のフィリップスだけが出資に応じました1。TSMCは最初の年が赤字で、赤字はもう1年あり、1991年以降は赤字と無縁だとチャン氏は語っています。

最初の数年は、当時わずかにあったファブレスも日本企業へ仕事を出していました。理由を問われて同氏は技術と信頼を挙げ、それを証明する必要があったと続けています4。作った回路がそのまま製品になる以上、顧客が発注するには工場への信用が要ります。受け皿になるとは、先に信用を積むことでした。

TSMCの成功を見て、1995年にはIDMだったUMCがファウンドリに転換し、設計部門をファブレスとして分離しました1。そのファブレスの1社がMediaTekです。市場はその後大きく偏り、2022年末の時点で売上上位10社が95%以上、上位5社が約90%のシェアを占め1、6位以下を合計しても10%程度です。最先端のノードでは、TSMC、Samsung、IntelがGAA世代で量産を競っています。

ファウンドリとは何ですか?

半導体デバイスの前工程の製造受託に特化した企業です。前工程の製造受託ビジネスそのものを指す場合もあります。

なぜ鋳物を意味する言葉が使われているのですか?

foundryの英語の意味は、鋳造や鋳物工場などに限られます。鋳型があれば同じ形の金属製品を何個でも作れ、マスクがあれば同じ回路パターンを転写したウェーハを何枚でも作れるという類似から名付けられたと、日清紡マイクロデバイスは推測しています。

誰が言い始めた言葉ですか?

シリコンファウンドリという用語はインテルのムーアが作り、ミードが広めたと、ミード教授らの業績を紹介する記事に記されています。ミードは1979年1月、VLSIに関する最初のカリフォルニア工科大学の会議で、シリコンファウンドリの概念と設計の製造からの分離を公に紹介しました。

IDMの工場もファウンドリと呼ぶのですか?

呼びません。foundryをネットで検索すると半導体製造工場という意味が出てくることがありますが、ファウンドリと呼ぶ対象は他社から前工程を受託する事業で、IDMの製造工場は含みません。

専業ファウンドリはどこまでを指すのですか?

IDMがファウンドリビジネスも行うことは現在でも普通にあります。事業をファウンドリビジネスだけに絞った企業をpure-play foundryやdedicated foundryと呼ぶことがあり、日本語では専業ファウンドリと訳されることが多い語です。

製造受託には種類があるのですか?

大きく2つの形態があります。1つはIDMが自社工場で作っている製品の製造受託で、変動する需要を固定費を増やさずに変動費で受けるためのものです。もう1つは、ファウンドリが構築したウェーハプロセスをもとに顧客が製品を設計する形態です。

ファウンドリは下請けなのですか?

日清紡マイクロデバイスはこれを明確に否定しています。ファウンドリは製品設計に必要な情報・データ・ツール・IPを関連企業と連携して提供しており、同社は、受け身の製造受託というより、設計と製造に必要なプラットフォームを提供する能動的な意味合いの方が強いとみています。

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