OSATとは
OSATとは、半導体の後工程とテストを専門に請け負う企業です。 OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)は、ファウンドリから回路を作りこんだウェーハを受け取り、チップ(ダイ)に切り分け、その動作をテストし、合格品をパッケージに実装・封止して製品に仕上げます。
後工程は作業者を多く要する労働集約型で、人件費の安かったアジアに受託企業が集まりました。いまはチップレットの登場で、前工程を担うファウンドリとの分担が動いています。
水平分業の3つの担い手のうち、知名度がいちばん低い
Section titled “水平分業の3つの担い手のうち、知名度がいちばん低い”水平分業の3つの担い手のうち、知名度がいちばん低いのがOSATです。東京エレクトロンは、これほど重要な役割を担っているのに存在すら知られずにいる1と評しています。
主な顧客は、NVIDIAやAMD、Qualcommなど、製造を社外へ委ねるアメリカのファブレス半導体メーカーです。Intelのような自社工場を持つIDMも、後工程の生産能力の不足分を補うために委託することがあります。
ビジネスの形はファウンドリに似ています。不特定多数の顧客から受託し、集めた経営リソースで高度な製造技術を開発し、高効率・高品質な生産体制で競争力の高いサービスを提供するというコンセプトも同じです。ファウンドリが前工程技術の開発をリードしているように、OSATは後工程技術の開発をリードしています。
前工程は資本集約型、後工程は労働集約型で、受託はアジアに集まった
Section titled “前工程は資本集約型、後工程は労働集約型で、受託はアジアに集まった”前工程は、工程の多くをウェーハもしくはバッチの単位でまとめて流すプロセス型のものづくりで、加工と作業のほとんどが自動化されています。よりよい装置をたくさんそろえることが要になる、資本集約型の製造業です。
後工程は、ある程度の自動化が進んでいるものの、個別チップそれぞれを対象にする組み立て型のものづくりが中心です。多くの作業者が必要な労働集約型の製造業で、当時人件費が安かったアジア地域では後工程の受託ビジネスを立ち上げやすかったのです。後工程を受託するサブコンが既に存在していたことも、OSATがアジアに多い理由です。
「サブコン」から「OSAT」へ、下請けから能動的な存在へ
Section titled “「サブコン」から「OSAT」へ、下請けから能動的な存在へ”この業態は1960年代から続いています。Amkor Technologyの事業開始は1968年で、同社は現在に至るまで基本的に同じ事業内容を続けています。20世紀中はIDMを中心に後工程を受注しており、あくまでも後工程の下請け(サブコン)という位置付けでした。
サブコンは、下請けを意味する英語のサブコントラクター(subcontractor)を略した言い方です。日清紡マイクロデバイスのブログの筆者が初めてOSATという言葉に触れたのは2010年頃で2、それ以前はサブコンを使う人が多かったといいます。同社は、OSATという言葉が使われるようになったのは、後工程の製造受託企業が独自のサービスやソリューションを提供する能動的な存在になったことを意味する可能性があるとみています。委託者の仕事の一部を受ける受動的な立場から、自前のサービスで応える立場へ移ったという見立てです。
急成長の起点は、1987年のTSMC設立
Section titled “急成長の起点は、1987年のTSMC設立”OSATと呼ばれるようになりビジネスが急成長したのは、世界初のファウンドリであるTSMCが1987年に台湾で設立されて以降です1。
80年代当時の半導体業界では、IDMが唯一の事業形態でした。自社ブランドで販売するチップを設計すれば応用市場での需要変動リスクを抱え、それを自社で製造するには、投資の回収を一度読み違えるだけで会社経営が破綻するほど巨額な設備投資が必要でした。このジレンマを解消したのが水平分業で、OSATはこの潮流に乗って成長しました。ファウンドリ誕生の地で必要とされたため、台湾には強いOSATが多くあります。
OSAT側には、ファウンドリより古い歴史もあります。ASEはTSMCより早い1984年に設立され、IDMを顧客としてビジネスを始めました。
市場はトップ5が分け合い、日本企業は上位にいない
Section titled “市場はトップ5が分け合い、日本企業は上位にいない”フランスの調査会社Yole Développementは、半導体パッケージング市場が2026年までに960億USドルにまで成長すると予測しています1。成長をけん引するのは、AI・データセンター・自動車などに適用される3D実装やチップレットに向けた高度なパッケージの需要増です。
売り上げトップ5の代表的なOSATは、台湾のASE、アメリカのAmkor Technology、中国のJCETとTFME、台湾のPTIです。ファウンドリではTSMCが頭一つ抜けているのに対し、OSATは複数の企業が市場を分け合っています。2018年にASEと台湾のSPILが経営統合するなど、規模を拡大して競争力を高める動きもあります。
日本では、アオイ電子などがOSATビジネスを行い、大分デバイステクノロジー(ODT)のようにパワーデバイス領域で特色のあるビジネスを展開する企業もありますが、世界市場のシェア上位には入っていません。東京エレクトロンは、日本企業の後工程での競争力は材料や装置の面では確実に高い一方、製造ビジネスという観点では存在感が大きいとは言い難く、それは前工程と同じだとみています。
チップレットの中工程は、ファウンドリもOSATも名乗りを上げられる
Section titled “チップレットの中工程は、ファウンドリもOSATも名乗りを上げられる”チップレットには、前工程的な要素と後工程的な要素の両方があります。インターポーザ上に微細配線を形成する技術や、ウェーハの表裏を貫通させて電極を取り出す技術には前工程の蓄積が生きます。樹脂基板の多層積層、微細なバンプでチップ同士をつなぐ組み立て、熱膨張や振動に対する信頼性の確保には後工程の蓄積が要ります。つまり、ファウンドリもOSATも事業化に名乗りを上げることができ、現在ではチップレットの工程が中工程と呼ばれるようになりました。
東京エレクトロンは、設計元や製造元の異なるチップレットを集めてシステムレベルで1チップへ集積する、チップゼネコンと呼べるようなビジネスの余地も挙げています。協調の動きもあり、TSMCとASE、GlobalFoundriesとAmkorが協力関係を深めています。日本のRapidusは、前工程、中工程、後工程を一貫して請け負う新しい形のファウンドリビジネスを目指しています。
OSATは、半導体産業への新規参入の入り口になる
Section titled “OSATは、半導体産業への新規参入の入り口になる”OSATは重要性を増し、使う技術の高度化も進んでいますが、ファウンドリよりも新興企業の参入障壁が低いという、産業政策として重要な性質を持ちます。東京エレクトロンは、そのためOSATが半導体産業に新規参入する際の入り口になる面があるとみています。
インドでは、TATA GroupのTATA Semiconductor Assembly and Test(TSAT)が単独で、Murugappa GroupのCG Power and Industrial SolutionsがルネサスエレクトロニクスやタイのStars Microelectronicsとの合弁で、それぞれOSATサービスを提供する工場の建設に着手しました。TATA Groupは次の段階として、TATA Electronicsが台湾のPSMCと提携し、ファウンドリ向け工場の建設を進めています。後工程から入って前工程へ進むこの順序が、産業を興す一つの道筋になっています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”OSATとは何ですか?
ウェーハをファウンドリから受け取ってチップに切り分け、チップの動作をテストし、合格品をパッケージに実装・封止して製品に仕上げることを専門とする企業です。OSATはOutsourced Semiconductor Assembly and Testの略です。
主な顧客は誰ですか?
NVIDIAやAMD、Qualcommなど、製造を社外へ委ねるアメリカのファブレス半導体メーカーが中心です。Intelのような自社工場を持つIDMが、後工程の生産能力の不足分を補うために委託する場合もあります。
なぜアジア企業が多いのですか?
後工程を受託するサブコンが既に存在していたことと、後工程が多くの作業者を要する労働集約型で、当時人件費が安かったアジアで受託ビジネスを立ち上げやすかったことの2つです。前工程は資本集約型です。
サブコンとOSATはどこが違いますか?
指す業態は同じで、言葉が入れ替わりました。以前はsubcontractorを略したサブコンと呼ぶ人が多く、日清紡マイクロデバイスは、OSATという言葉への移行が、後工程の受託企業が独自のサービスやソリューションを提供する能動的な存在になったことを意味する可能性があるとみています。
いつから成長したのですか?
同様のビジネスモデルは古く、Amkor Technologyの事業開始は1968年です。OSATと呼ばれるようになり急成長したのは、1987年に台湾でTSMCが設立されて以降です。
市場はどのくらいの規模ですか?
Yole Développementは、半導体パッケージング市場が2026年までに960億USドルに成長すると予測しています。成長をけん引するのは、AIやデータセンター、自動車などに使う3D実装やチップレット向けの高度なパッケージの需要です。
いま何が変わりつつありますか?
ファウンドリとの分担です。チップレットには前工程的な要素と後工程的な要素の両方があり、ファウンドリもOSATも事業化に名乗りを上げられる領域で、この工程は中工程と呼ばれるようになりました。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”2件を表示
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- 2日清紡マイクロデバイス:半導体産業の水平分業化~ファウンドリは下請けか?~blog.nisshinbo-microdevices.co.jp ↩