マスク修正とは
マスク修正とは、フォトマスク上で見つかった欠陥を、余分な遮光膜を局所的に削り、欠けた部分に膜を足して直す工程です。 マスク検査で見つかった欠陥の座標を受け取り、その場所だけをナノメートル単位で加工します。直した跡は形が合っているだけでは足りず、光を通す量と、焦点がずれたときの写り方まで周囲と同じでなければなりません。日立評論の記事もBrukerも、この同等性を修正の性能として挙げています。
1つの欠陥が何千ものチップに写るので、使う前に直す
Section titled “1つの欠陥が何千ものチップに写るので、使う前に直す”ZEISSは、マスクの欠陥を直さずにおくと露光のたびにウェーハへ何度も投影され、そのチップが使えなくなるとしています1。1枚のフォトマスクで何千ものチップを作るため、こうした致命的な欠陥はマスクを再び使う前に修正しなければならない1というのが同社の説明です。しかも同社によればほぼすべてのマスクに欠陥があるので2、修正はマスク製造の標準工程の一つになっています。
難しさは、形に加えて光学特性もそろえる点にあります。日立評論の記事は、修正した領域の光透過率や、焦点ずれによる転写寸法の変動を、周囲の正常部と同等にそろえること3を要求として挙げています。イオンビームで加工すると、石英基板に打ち込まれたイオンがその部分の光透過率を下げることもあります。
余分な膜は削り、欠けた膜は足す
Section titled “余分な膜は削り、欠けた膜は足す”日立評論の記事は、フォトマスク欠陥を2種類に分けています。パターン膜が残った余剰欠陥は光を遮るので黒欠陥(Opaque Defect)、パターン膜が欠けた欠損欠陥は光が透過するので白欠陥(Clear Defect)3と呼びます。黒欠陥は余剰部分をエッチングで除去し、白欠陥は欠落部分に材料を成膜して直します。ZEISSも修正を、欠陥部分へ材料を局所的に付けるか、取り除くか1の2通りと説明しています。
同じ記事が示すFIB(集束イオンビーム)装置での手順は次の4段階です。
- 欠陥検査機から受け取った欠陥座標をもとに、欠陥の場所へ移動する。
- 欠陥を含む領域の走査イオン像を取得する。
- 欠陥の種類に応じて、修正する領域と方法を像の上で指定する。
- ガスを導入しながらイオンビームを局所的に照射し、欠陥を修正する。
FIBは1本のビームで走査イオン像の撮影、エッチング、成膜の3つを兼ね、これらを組み合わせて欠陥の計測と修正を行います。記事によれば、最先端デバイス用のマスクでは、20nm以下の線幅に対応するために10nm以下の最小修正寸法と、2〜3nm以下の再現性が求められます。
3つの方式は、何を当てて材料を動かすかが違う
Section titled “3つの方式は、何を当てて材料を動かすかが違う”材料を動かす手段は、イオン、電子とガス、探針の3つです。イオンは基板に入り込むおそれがあり、電子は表面に吸着した分子を反応させ、探針は物理的に削ります。
FIBは金属イオンから窒素・水素のイオンへ移り、石英の透過率低下を桁違いに抑えた
Section titled “FIBは金属イオンから窒素・水素のイオンへ移り、石英の透過率低下を桁違いに抑えた”FIBは1980年代初めに液体金属イオン源の開発で実用化され、マスク修正装置としては1985年の初号機から使われてきました。ZEISSは、ローエンド向けでマスク欠陥を修正する一般的な方法として、FIB技術に基づく装置1を挙げています。
日立ハイテクは、イオン源を替えてFIBの性能を引き上げました。同社の修正装置GR3000は、液体金属イオン源に代えて電界電離型ガスイオン源(GFIS)3を採用しています。原子レベルまで尖らせたエミッタチップに高電圧をかけ、先端の強い電界でガス分子をイオン化する方式です。記事によると、GFISの採用でビームのスポット径は従来の2分の1以下になり、4nmの欠陥が像に写り、修正加工の最小寸法は10nm以下に届きました。イオン種が金属イオンから窒素や水素のガス分子イオンに変わったことで、石英ガラスにイオンを打ち込んだときに起きる光透過率の低下も桁違いに改善しています。
使うガスはマスクの種類で変えます。開発チームは2016年の学会で、従来のフォトマスクには窒素イオン、EUVマスクには水素イオン4を使い、MoSi系の位相シフトマスクとEUVマスクで修正装置の性能を評価した4と報告しています。日立評論の記事では、MoSiON位相シフトマスクの黒欠陥を25keVの窒素イオンビームで、EUVマスクの欠陥を15keVの水素イオンビームで修正した例を示しています。
電子ビームはガス分子を吸着させて反応させ、EUVマスクの微小欠陥まで直す
Section titled “電子ビームはガス分子を吸着させて反応させ、EUVマスクの微小欠陥まで直す”ZEISSのMeRiTシリーズは、イオンの代わりに電子ビームを使います。ZEISSはMeRiTを、集束電子ビームで誘起する加工に基づく、ハイエンドのフォトマスク修正の最先端装置2と位置づけています。集束した電子ビームを当てて、表面に吸着した前駆体分子を反応させることで2、白欠陥と黒欠陥の両方を修正します。2012年の総説論文によると、この装置は電子ビームカラムとガス供給系を組み合わせたもので、使うガスによって材料をナノメートル単位でエッチングするか堆積するかが決まります5。
ZEISSによると、MeRiTはバイナリマスク、位相シフトマスク、EUVマスクのさまざまな形の白欠陥と黒欠陥を修正でき2、ナノインプリント用のテンプレートも対象です。最新のMeRiT LEはEUVマスクの修正を主な対象とし、最小修正寸法を小さくしたうえで、最も低い電子エネルギー向けに最適化した新しい電子ビームカラムを搭載しています。成熟ノード向けのMeRiT neXT BEは、MeRiT neXTの装置基盤に基づき、32nmノードまでのフォトマスク修正2を担い、DUVマスクの白欠陥と黒欠陥を修正します。
AFMの探針で削る方式は、真空もガスも使わずに深さを±1nm以内で合わせる
Section titled “AFMの探針で削る方式は、真空もガスも使わずに深さを±1nm以内で合わせる”Brukerのnm-VIは、ビームを使わずにAFM(原子間力顕微鏡)の探針で欠陥を物理的に削り取ります。Brukerは、この加工をAFMの位置制御と独自のハードウェア・ソフトウェアを組み合わせ、ナノメートル単位で材料を除去する技術6と説明しています。同社によると、エッジ位置は目標から±20Å(2nm)以内、深さは±10Å(1nm)以内6に収まります。
除去対象は、クロム、MoSi、不透明MoSi、SiN、石英、EUVマスクの材料、異物、正体不明の粒子です6。深さを基板表面と同じ高さに合わせるか、わずかに深く削るかを選べるので、位相シフトマスクの位相を合わせ込めるとしています。Brukerは、くり返し削れることと平らに除去できることで、修正部の「スルーフォーカス」の透過の窓がずっと広くなる6とも主張しています。
Brukerは、FIBやレーザー、電子ビームによる修正と比べた利点として、真空装置も薬液も不要で、ビームによる帯電と頻繁なドリフト補正の手間も省ける点を挙げています。nm-VIには、ペリクルを貼る前に、取れにくい異物を探針で局所的に取り除く機能も標準で付いています。
修正の合否は、露光装置と同じ照明で撮った空間像の線幅を正常部と比べて決まる
Section titled “修正の合否は、露光装置と同じ照明で撮った空間像の線幅を正常部と比べて決まる”修正の合格条件は、修正した箇所がウェーハ上で欠陥として転写されなくなることです5。修正したマスクで試しにウェーハを露光すれば確かめられますが、マスク工場はウェーハ工場と別に運営されており、露光装置とウェーハ加工ラインはウェーハ工場の側にあります。そこで、露光装置の照明条件を再現してマスクの空間像を撮る装置AIMS(Aerial Image Measurement System)が1990年代初めまでに開発されました。EUVマスク向けには、13.5nmの光で露光機と同じ結像条件を再現するAIMS EUVがあります。
総説論文によると、AIMSの視野はマスク上で10μm×10μm程度と小さく、欠陥1つ分か修正跡1つ分を写すのにちょうどよい大きさです。合否は、修正部の空間像をしきい値で切って測った線幅(CD)を、同じパターンの無欠陥部の線幅と比べて決めます。論文に示された流れは、欠陥座標のリスト、電子ビームでの修正、高分解能の電子ビーム像での詳しい解析、AIMSでの転写性テストを経て、修正済みマスクになるというものです。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”マスク修正とは何ですか?
フォトマスク上で見つかった欠陥を、余分な遮光膜を局所的に削り取るか、欠けた部分に膜を足して直す工程です。マスク製造の標準工程の一つで、1枚のマスクから何千ものチップを作るため、致命的な欠陥はマスクを再び使う前に直します。
黒欠陥と白欠陥はどう違いますか?
黒欠陥はパターン膜が余分に残って光を遮る欠陥で、エッチングで除去します。白欠陥はパターン膜が欠けて光が通る欠陥で、欠けた部分に材料を成膜して直します。
どんな装置で修正しますか?
集束イオンビーム(FIB)、電子ビームとガス分子の反応を使う装置、AFMの探針で削る装置の3系統があります。日立ハイテク、ZEISS、Brukerがそれぞれの方式の装置を製品化しています。
イオンビームで直すと何が問題になりますか?
マスク基板の石英ガラスにイオンが注入されると、その部分の光透過率が下がります。日立評論の記事によると、金属イオンから窒素や水素のガスイオンに変えたことで、この低下が桁違いに改善しました。
修正が成功したかはどう確かめますか?
露光装置と同じ照明条件でマスクの空間像を撮る装置(AIMS)で、修正部の像の線幅(CD)を、同じパターンの無欠陥部の線幅と比べます。ウェーハへの試し焼きを省けます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- マスク検査とは── 修正する欠陥の座標を見つける前の工程
- フォトマスク洗浄とは── 付着した異物を洗って落とす工程
- FIB(集束イオンビーム)とは── マスク修正にも使われるビーム加工の基本技術
- ペリクルとは── 修正と洗浄を終えたマスクに貼る防塵膜
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- 1ZEISS SMT:Photomask Solutionszeiss.com abcd
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- 3日立評論 2016年5月号:イオンビームによるフォトマスク欠陥修正技術(八坂行人ほか)hitachihyoron.com abc
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- 5
- 6Bruker:nm-VI Photomask Repairbruker.com abcd