コンテンツにスキップ

マスクレス露光とは

マスクレス露光とは、フォトマスクを使わず、微小ミラーなどの空間光変調器や電子ビームで回路パターンを基板へ直接描く露光方式です。 回路パターンはデータとして装置に渡り、露光の途中でも書き換えられます。マスクを使う露光では、マスクに描いた模様は変えられず、露光するパターンを変えるには新しいマスクを作る必要があります1。マスクレス露光はその手間とマスク代を省き、マスクの寸法の上限からも外れます。その代わり、模様をデータとして光変調器へ送り続けることが装置の制約になります。

DMDの数百万枚のミラーが、パルスごとに書き換わるマスクになる

Section titled “DMDの数百万枚のミラーが、パルスごとに書き換わるマスクになる”
DMD方式の光の経路
UV光源DMDオフ:外へそれる投影レンズレジスト付き基板基板を走査パターンデータパルスごとに書き換え
オンに傾いたミラーの光だけが投影レンズを通ってレジストに届き、ミラーの向きは光のパルスごとにデータで書き換わるので、DMDが書き換えられるマスクとして働きます。

Texas Instrumentsの資料によると、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)は、1枚ずつ向きを変えられる数百万枚の微小ミラーでできたMEMSの空間光変調器です1。紫外光をDMDに当て、ミラーをオンとオフに傾けて光を変調し、できた模様をレジストに投影します。ミラーを切り替えながら多数の光パルスを当て、モジュール全体が基板の上を走査します。パルスごとに模様を変えられるこの仕組みが、基板の反りなどに合わせた補正にも使われます。

Texas Instrumentsの露光向けDMDであるDLP991UUVは、ミラーのピッチが5.4μmで、対角0.99インチのパッケージに890万枚のミラーを並べています。343nmまでの波長に対応するため、g線やi線の装置に使えます。TIは、このデバイスで線幅を1μmのL/Sまで縮められるとしています。

代償は、模様をデータで送り続けること

Section titled “代償は、模様をデータで送り続けること”

マスクなら1回作れば済む模様を、マスクレス露光では光のパルスごとに光変調器へ送ります。DLP991UUVのデータ転送速度は最大110Gbpsで、TIはこの速度でその場の補正と高い露光速度を両立させるとしています。パターンが細かいほど駆動データの変換が増えることが、マスクの制約と引き換えに抱える負担です。

光変調器にはGLVという方式もあります。Silicon Light Machines社のGLV(Grating Light Valve)は2、シリコンチップ上に数千本の微小リボンを1列に並べた素子です。リボンのたわみを電気で変えて回折格子として働かせ、レーザー光を切り替えます。リボンの切り替えは300ns未満で、同社は紫外線直接描画向けに8192チャンネルの品を用意しています。

大きなパネルほど、マスクの寸法の上限から外れる利点が効く

Section titled “大きなパネルほど、マスクの寸法の上限から外れる利点が効く”
基板1枚に並ぶ大型パッケージ
600mm600mm角パネル300mm300mmウェーハ100mm角
100mm角の大型パッケージは、600mm角のパネルなら36個、300mmウェーハには4個しか並ばず、ニコンが示す基板1枚あたり9倍の生産性と同じ比になります。

ニコンのDSP-100は、空間光変調器で回路パターンを基板へ直接投影するので、フォトマスクの寸法の上限から解放され3、パネルレベルパッケージングのような大型の先端パッケージに柔軟に対応でき、開発工程のコストとリードタイムも短くなるとニコンは説明しています。対応する基板は最大600mm×600mmの角型で、同社は100mm角の大型パッケージなら300mmウェーハを使う場合と比べて基板1枚あたりの生産性が9倍になるとしています。600mm角に100mm角を並べると36個、300mmウェーハに入るのは4個で、この比に当てはめると9倍と一致します。

DSP-100は、ニコンの半導体露光装置の高解像技術とFPD露光装置のマルチレンズ技術を組み合わせた装置です。同社の公表仕様は、解像度1.0μm(L/S)、重ね合わせ精度±0.3μm以下、スループットは510mm×515mmの基板で最大毎時50枚です。光源には保守コストを抑えるため固体光源を使います。開発の背景としてニコンは、複数のチップを横並びで結ぶチップレットなどの先端パッケージで回路パターンが細かくなり、パッケージも大型化していることを挙げ、樹脂やガラスの基板を使うパネルレベルパッケージの需要が伸びるとみています。

反りは、露光中にデータ上で補正する

Section titled “反りは、露光中にデータ上で補正する”
反りと変形の補正
設計データデータ上で変形ゆがんだ基板基板の位置に合わせて露光
基板が反りや変形でゆがんでも、露光するパターンをデータ上で同じようにゆがめて、基板上の位置に合わせて描けます。

大きなパネルでは反りも問題になります。DSP-100は基板の反りと変形を高精度に補正する機能を持ちます。TIによると、DMD方式はマスク方式を大型化するときに生じるつなぎ合わせの誤差を抑え、反りを露光中にその場で補正します。マスクの模様は変えられませんが、データの模様は基板のゆがみに合わせて変形させられます。

プリント基板の露光から始まり、パッケージ基板・インターポーザ・RDLへ広がった

Section titled “プリント基板の露光から始まり、パッケージ基板・インターポーザ・RDLへ広がった”

TIによると、DMDはプリント基板の露光装置で使われ始め、配線、ビア、ソルダーマスクをマスクなしで描いてきました。その後、先端パッケージの製造に広がり、パッケージ基板、インターポーザ、再配線層(RDL)も同じ方法で描く対象になっています。インターポーザの材料は有機、ガラス、シリコンの3系統があり、DMD方式の装置は主に有機とガラスを対象にしています。

TIは、プリント基板の多くがすでにパネル単位で露光されていることを挙げ、プリント基板の露光から、基板・インターポーザ・RDLをパネル単位で描く工程へ移るのは自然な流れだと位置づけています。

電子ビーム直接描画は10nm未満の線を描き、試作から小〜中規模の生産までを受け持つ

Section titled “電子ビーム直接描画は10nm未満の線を描き、試作から小〜中規模の生産までを受け持つ”

光を使う方式とは別に、電子ビーム描画装置でウェーハに直接パターンを描く方法もあります。日本電子(JEOL)が2017年に発表したJBX-8100FSは、スポットビームでウェーハなどの基板に直接描く装置で4、最大走査速度を125MHzに高めています。

同社によると、電子ビーム直接描画では10nm未満の寸法を保証して集積回路パターンを描けます。JBX-8100FSは超微細加工向けの高分解能モードと、小〜中規模の生産向けの高スループットモードの2つを持ち、直径200mmのウェーハから小片まで載せられます。

マスクレス露光とは何ですか?

フォトマスクを使わず、微小ミラーなどの空間光変調器で作った光のパターンや電子ビームで、回路パターンを基板へ直接描く露光方式です。ダイレクト露光とも呼ばれます。

フォトマスクを使う露光と比べた利点は何ですか?

パターンを変えるとき、新しいマスクを作る代わりにデータを書き換えます。マスクの寸法の上限から解放されるので大型のパネル基板も露光でき、ニコンは開発のコストとリードタイムの短縮を利点に挙げています。

DMDはどのように露光に使われますか?

数百万枚の微小ミラーを1枚ずつオンとオフに傾け、当たった紫外光をレジストへ送るかどうかを切り替えます。ミラーを切り替えながら光をパルスで当て、モジュールごと基板を走査して描きます。

どんな製品の製造に使われていますか?

DMD方式はプリント基板の露光から始まり、パッケージ基板、インターポーザ、再配線層(RDL)といった先端パッケージの露光に広がっています。電子ビーム直接描画には10nm未満の微細パターンを描く装置があり、試作や小〜中規模の生産向けのモードを備えています。

基板の反りにはどう対応しますか?

パルスごとにパターンを変えられるので、基板の反りや変形に合わせて露光するパターンをデータ上で補正します。ニコンのDSP-100も、基板の反りと変形に対する高精度な補正機能を備えています。

4件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4

最終更新日: