再配線層(RDL)とは
RDL(Redistribution Layer、再配線層)とは、チップ上の電極の位置を組み替えるためにチップの上へ作る配線層です。 細かく密に並んだ電極を、外部とつなぎやすい配置へ引き直します。チップの設計を変えずに、外側の要求へ合わせられる点が利点です。
チップの外側まで配線を引き出せば、パッケージの寸法がチップの寸法から独立します。
チップと外部の電極間隔の差を、チップの上の配線で埋める
Section titled “チップと外部の電極間隔の差を、チップの上の配線で埋める”チップ上の電極は前工程の微細な技術で作るため、非常に細かく並びます。基板やパッケージの端子は、もっと粗い間隔で作ります。再配線層はこの差を吸収する層で、チップの上へ絶縁層と配線層を追加し、細かい電極から配線を引き出して、外部と合う間隔と位置へ並べ直します。
チップの面積を超えて外側の領域まで配線を引き出す構成を、ファンアウトと呼びます。チップそのものが小さくても、必要な端子数を確保する構成になります。
再配線層は、チップのパッド上に金属配線と絶縁層を形成し、パッドを他の場所に再配置して実装性を高めます1。用途には、周辺に並んだパッドの再配置に加えて、パッドサイズを大きくすることも含まれます。位置だけでなく、1つの電極の大きさも作り直せる層です。
L/Sの数字は、どこを測ったかで意味が変わる
Section titled “L/Sの数字は、どこを測ったかで意味が変わる”再配線層の細かさは、L/S(Line/Space、線幅/線間)で表します。L/S=2/2μmなら、銅の線の幅が2μm、線と線のすき間が2μmで、線の中心から次の線の中心までは4μmです。この4μmが、その層に何本の配線を通せるかの基本の数字になります。
試験用には、L/Sが10μmから1μmレベルまでのTEG(試験用に作るパターン)2が各種そろっており、具体的な寸法はL/S=2/2、1/1、0.7/0.7です。これらのTEGは、絶縁樹脂の絶縁抵抗をbHASTで調べたり、ビアの導通を高温放置で調べたりするためのパターンで、量産の実力値とは別の数字です。いま業界が詰めている寸法帯の目安にあたります。
めっきで実際に立ち上がった銅の線については、NEDOと株式会社オーク製作所が2025年8月27日に数字を示しました。半導体後工程で先端パッケージの微細な配線を形成する工程へ向けたダイレクト露光装置で、回路基板上の感光性材料への線幅1μmの回路形成に成功し、有機材料上で線幅2μmの銅めっき配線形成が実現可能であることを確かめています3。有機材料の上へ銅をめっきで立ち上げる手順は、再配線層の作り方と同じです。
この1μmと2μmは、別の場所を測った数字です。1μmはフォトレジスト(感光性材料)へ光で描いた線の幅、2μmはそのレジストの隙間へめっきで立ち上げた銅の線の幅です。光で描ける細さと、銅配線として仕上がる細さは、別々の数字になります。
2μmという値には「有機材料上で」という条件も付きます。樹脂の基材は温度や湿度で伸び縮みするため、シリコンウェーハの上に作る場合とは前提が別で、同じ2μmでも下が何かによって難しさが移ります。
銅は削らずに、要る場所へめっきで育てる
Section titled “銅は削らずに、要る場所へめっきで育てる”再配線層は、絶縁層を作り、開口し、金属を付け、パターンを形成する工程の繰り返しで作ります。前工程と同じ種類の技術を使いますが、寸法は前工程より緩く、面積は広くなります。
前工程の銅配線は、絶縁膜に溝を掘ってから銅で埋め、はみ出した分をCMPで磨き取ります(ダマシン法)。再配線層の作り方は、これとは向きが逆です。後工程で広く採用されるセミアディティブ・プロセス(SAP)では、基板上に薄いシード層を形成し、フォトレジストで配線パターンを作成した後、電気めっきによって銅配線を成長させます4。銅を全面に付けてから削り込むかわりに、要る場所にだけ銅を育てます。三ツ矢は、不要なレジストとシード層を除去して配線を完成させるため数マイクロメートル程度の配線形成に適し、工程コストを抑えやすく、設計自由度が高い点を魅力としています。数μm級が、この作り方の得意な範囲です。
手順は次の6段です。
- 絶縁層を塗り、露光と現像で、下の電極へ届く穴(ビア)を開ける
- 全面に薄い金属のシード層をスパッタで付ける
- フォトレジストを塗り、配線になる場所だけ開口する
- 開口部へ電解めっきで銅を積み上げる
- レジストを剥がす
- 露出したシード層を軽いエッチングで削り取る
電解めっきは液の中で電気を流して銅を析出させるため、下地に電気の通り道があらかじめ要ります。絶縁層は絶縁体ですから、その上へ薄い金属をPVDで敷いてから、めっきに入ります。この薄い金属は、めっきが済んだあとも配線と配線の間に敷かれたままで、そのままでは配線どうしが導通するため、最後に軽く削り取ります。削りすぎれば銅の配線まで細り、足りなければシード層が残って配線どうしが導通します。線を細くするほど、この削り量の幅が狭くなります。
装置は、樹脂からの脱ガスとパネルの反りに備える
Section titled “装置は、樹脂からの脱ガスとパネルの反りに備える”金属の下地を付けるPVDでは、EvatecがCLUSTERLINE 3005を先進パッケージング向けのPVDおよびエッチング装置、CLUSTERLINE 6006をパネルレベルパッケージング向けとして出しています。ウェーハ単位に加えて、角型のパネル単位で流す構成も広がっており、面積あたりの費用を下げる方向にあります。
EvatecはCLUSTERLINE 300の装置系列HEXAGONを、UBM、RDL、Fanoutの量産プラットフォームとし、300mmまたは200mmの基板を業界最小のRcで流せるとしています。Rcは接触抵抗(contact resistance)を指す一般的な表記で、下の電極と再配線層の界面でどれだけ電気を失うかを表す量です。再配線層の良し悪しは、線の細さだけでなく界面の抵抗でも測られます。UBMとRDLが同じ装置に並ぶのは、どちらもPVDの下地づくりを通るためです。
同機の搭載モジュールはPVD、highly ionized PVD、Soft Etchで、WLP用途で強くアウトガスを出す有機基板を扱うために、新しいDegasとArtic dome etchの技術を備えるとしています。樹脂の絶縁層は真空中で水分やガスを放つため、金属を付ける前に脱ガスと軽いエッチング(Soft Etch)を挟む構成です。前工程のシリコンウェーハを流す装置とは、ここで求める機能が別になります。
CLUSTERLINE 600の用途は、Fan-Out Panel Level Processing(FOPLP)と先端IC基板の製造で、650 x 650mmまでの基板に対応するとしています。パネルの制御オプションにwarpage detection(反りの検出)が入っている点に、丸いウェーハと角型パネルの差がそのまま出ています。
ファンアウトでは、チップのずれと基材の伸縮を露光で補正する
Section titled “ファンアウトでは、チップのずれと基材の伸縮を露光で補正する”ファンアウトの構成では、ウェーハから切り出したチップを間隔を空けて並べ直し、樹脂で固めて1枚の板に作り直してから、その上へ再配線層を作ります。樹脂が固まるときにチップが少し動くため、設計上の位置と実際の位置がずれます。このずれをダイシフトと呼びます。
NEDOとオーク製作所は、ダイシフトに合わせた露光位置の補正が要るとして、リアルタイム位置補正技術を応用した「ダイバイダイ・アライメント技術」を開発しました。チップ1個ずつ位置を測り、その位置へ露光を合わせる手当てです。板全体へ設計データを一様に焼く方式から、チップごとに露光位置を振り直す方式へ移ったことになります。
ずれの原因は、チップの動きのほかに、基材そのものの伸び縮みがあります。有機材を用いる先端パッケージでは、基材の伸縮に応じて露光データを補正する技術が要ります。樹脂の板は温度や湿度で寸法が動くため、設計データをそのまま焼き付けると、板の端へ行くほどずれが積み上がります。
位置合わせ精度は、設計座標値に対してどこまで正確に回路パターンを配置できるかの指標です。NEDOとオーク製作所は、開発した装置で510×515mmの露光サイズ全面に対して0.5μmの精度で回路パターンを配置できるとしています。51cm角ほどの板の端から端まで、0.5μmで合うという値です。この値は、基材上のアライメントマークを高精度カメラで読み取ってリアルタイムで位置を補正する仕組みとセットの数字で、装置単体の性能表というより、補正まで含めた実力を示しています。
再配線層の実力を表す3つの数字は、返ってくる先がそれぞれ別です。位置合わせ精度は、装置がパターンをどこへ焼くかの数字です。線幅は、焼いて、めっきして、仕上がった線の太さの数字です。絶縁樹脂のbHASTやビアの高温放置は、仕上がった配線が時間と温度に耐えるかどうかの数字です。3つを一緒にすると、どこで失敗したのかが追えなくなります。
再配線層は層の名前で、ファンアウトやWLPとは階層が違う
Section titled “再配線層は層の名前で、ファンアウトやWLPとは階層が違う”インターポーザとは、別部品かどうかで分かれ、重なる領域もある
Section titled “インターポーザとは、別部品かどうかで分かれ、重なる領域もある”インターポーザはチップとは別の土台を用意し、その上へチップを載せます。再配線層はチップやウェーハ、あるいは樹脂で固め直した板の上へ直接作ります。ただし、2つは重なる領域を持ちます。RDLインターポーザーは、樹脂材料などを用いた基材上に銅配線と絶縁層からなるRDL層を形成する、2.5D実装向けのインターポーザー技術です4。土台の上にRDLを作れば、それはインターポーザでもあり再配線層でもあります。三ツ矢は、Siインターポーザーが数マイクロメートル(µm)以下の極めて微細な配線を形成できるのに対し、RDLインターポーザーは配線幅がやや広いぶんコスト効率が高く、大型パッケージへ展開しやすいとしています。細さと大きさは、ここで取引の関係になります。
ファンアウトは使い方の一つで、面積の中で組み替えるだけの使い方もある
Section titled “ファンアウトは使い方の一つで、面積の中で組み替えるだけの使い方もある”再配線層とファンアウトを同じ意味で使うのは、範囲が狭すぎます。ファンアウトは半導体チップの外側まで端子を広げることで7、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)は、半導体チップとプリント配線基板の間をつなぐ再配線層を半導体工程で作る「ウェーハレベルパッケージ」の一種です。一方でRDLは、WLCSP(Wafer Level Chip Scale Package)でチップ側の配線とボード側の端子までの配線を作る際にも用いられます。WLCSPはチップの面積内に収まるパッケージなので、外へ広げる用途とは別に、面積の中で位置を組み替えるだけの使い方もあります。
WLPは作り方の呼び方で、再配線層はその中で作る層
Section titled “WLPは作り方の呼び方で、再配線層はその中で作る層”WLP(Wafer Level Packaging)は、ウェーハの状態でパッケージングを行い、最終的に切断してパッケージにする工程上の技術です。WLPはパッケージの作り方の呼び方、再配線層はその中で作る層の名前で、階層が1つ違います。
バンプは、再配線層の先端に立てる上下方向の端子
Section titled “バンプは、再配線層の先端に立てる上下方向の端子”再配線層はチップの面の上を横方向へ引き回す層、バンプは上下方向へ立ち上げる端子です。はんだバンプは、チップや配線用リードに作った突起状の電極ではんだを使ったものです。再配線層で位置を組み替えたその先端にバンプを立てて、外部へ渡します。バンプの土台にあたる金属をUBM(Under Bump Metallization)と呼び、再配線層と同じくPVDの下地づくりを共有します。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- バンプ・RDL形成の工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- パッケージ基板・インターポーザの工程ページ── 別の土台を使う構成
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”再配線層とは何ですか?
RDL(Redistribution Layer、再配線層)は、チップ上の電極の位置を組み替えるためにチップの上へ作る配線層です。細かく密に並んだ電極を、外部とつなぎやすい間隔と配置へ引き直します。
なぜ位置を組み替えるのですか?
チップ側と外部側で、都合の良い間隔が別だからです。チップ上の電極は微細な工程で作るため非常に細かく並び、基板側の端子はもっと粗い間隔で作ります。この差を埋めるのが再配線層です。
ファンアウトとは何ですか?
電極をチップの外側の領域まで広げて配置することです。チップの面積を超えて配線を引き出せるため、チップが小さくても必要な端子数を確保する構成になります。パッケージはチップより広い面積を使います。
インターポーザと何が違いますか?
作る場所が違います。インターポーザはチップとは別の土台を用意してその上へチップを載せ、再配線層はチップやウェーハの上へ直接作ります。別部品を挟まずに済むぶん、薄く仕上がります。
どうやって作りますか?
絶縁層を作り、開口し、金属を付け、パターンを形成する工程の繰り返しです。銅の配線はセミアディティブ・プロセスで作り、薄いシード層を全面に付け、フォトレジストで配線の場所だけ開口し、電解めっきで銅を積み上げてから、レジストと余ったシード層を取り除きます。金属の下地にはPVDが使われ、EvatecはCLUSTERLINE 300を先進パッケージング向け、CLUSTERLINE 600をパネルレベルパッケージング向けのPVDおよびエッチング装置として出しています。
「L/S=2/2μm」とはどういう意味ですか?
線幅2μm、線と線のすき間2μmという意味です。LはLine(線幅)、SはSpace(線間)を指します。線の中心から次の線の中心までの間隔は、この場合4μmになります。
再配線層はどこまで細かい線を引けますか?
NEDOと株式会社オーク製作所は2025年8月27日、感光性材料へ線幅1μmの回路を形成し、有機材料上で線幅2μmの銅めっき配線形成が実現可能であることを確かめたと発表しました。試験用パターンでは、L/S=2/2、1/1、0.7/0.7がそろっています。
ダイシフトとは何ですか?
樹脂で固め直した板の上で、チップの実際の位置が設計上の位置に対してずれることです。NEDOとオーク製作所は、このずれに合わせて露光位置を補正するため、チップ1個ずつ位置を合わせるダイバイダイ・アライメント技術を開発しました。
再配線層とバンプはどう違いますか?
向きが違います。再配線層はチップの面の上を横方向へ引き回す配線層で、バンプは上下方向へ立ち上げる端子です。バンプの土台にあたる金属をUBM(Under Bump Metallization)と呼び、再配線層と同じくPVDで下地を作ります。
再配線層の装置メーカーはどこですか?
装置カタログDBでは、先進パッケージングとPVDに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。Evatec、ACM Research、Camtekなどが該当します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 先端パッケージング── 工程としての先進パッケージング
- 有機パッケージ基板とABFビルドアップフィルム── 基板側の材料
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- 1PacTech:再配線層(RDL)サービスpactech.com ↩
- 2福岡県産業・科学技術振興財団:Fan-Out/2.xD実装をささえる微細再配線RDL形成プロセス改善活動jiss.ist.or.jp ↩
- 3
- 4三ツ矢:RDL(再配線層)とは?mitsuyanet.co.jp ab
- 5Evatec:CLUSTERLINE 300evatecnet.com ↩
- 6Evatec:CLUSTERLINE 600evatecnet.com ↩
- 7日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集(組立)seaj.or.jp ↩