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パッケージ基板の反り、コア材の低CTEで|低CTE化の代償は冷却時の割れ(レゾナック)

100 mm角級の有機パッケージ基板で反りを抑える材料として、コア材の供給元でもあるレゾナックとRapidusの技術者によるIEEE EPSのレビュー1はコア材を挙げる。レビューは、ビルドアップ基板全体の機械的な性質をコア材が主に決め、パッケージが大きくなるほどコアに低いCTEと高い弾性率が要るとしている。同じレビューが載せる各社のコアは、CTE 0.7〜6 ppm/℃、弾性率31〜41 GPaだ。レビューはあわせて、ビルドアップフィルムの物性も反りの制御に重要だと書いている。

コアのCTEを下げると、次の課題が出る。レゾナックは、コアの低CTE化が反りに効く一方で、基板を構成する他の材料との熱膨張差から温度サイクル試験の冷却時に割れが起きる2と説明している。同社は、割れやすいコア内の樹脂の局所応力を下げる物性を解析で絞り込み、温度サイクルの耐久性を従来品の4倍にした積層板を開発した。

有機パッケージ基板は、コアの表裏にビルドアップ層を積んだピッチ変換器だ

Section titled “有機パッケージ基板は、コアの表裏にビルドアップ層を積んだピッチ変換器だ”

有機パッケージ基板は、コア材、層間絶縁材、銅配線、マイクロビア、ソルダーレジストを積み上げた多層配線構造だ。フリップチップ実装するダイの下には細かいパッドが並び、マザーボード側のBGAボールは粗いピッチで並ぶ。基板は配線層を重ねながら信号を横へ広げ、レーザーマイクロビアとスルーホール(PTH)で上下をつなぐ。

図1基板断面の層順とピッチ変換
ダイ ダイ側:細かいピッチ ボード側:粗いピッチ スルーホール 銅配線 レーザービア マイクロバンプ ソルダーレジスト パッド開口・表面保護 ビルドアップ層(ABF系) 層間絶縁・ビア形成 コア(BT) 剛性・表裏の導通 ビルドアップ層(裏面) BGAボール
有機パッケージ基板は、BTコアの表裏にABFなどのビルドアップ層を積み、配線とビアでダイ側の細かいピッチをボード側の粗いピッチへ広げる。
層主な構成担う機能
コア積層板BT/エポキシ樹脂、ガラスクロス、銅箔剛性、厚さの基準、PTHによる表裏の導通
ビルドアップ絶縁層エポキシ系樹脂、硬化剤、無機フィラーレーザービアの形成、配線間の絶縁、層間の接着
銅配線・ビアシード銅、電解めっき銅信号・電源・グラウンドの電流経路
ソルダーレジスト感光性または熱硬化性の樹脂パッド開口、外層の絶縁、表面保護

コアの代表は、三菱ガス化学のBT積層板だ3。ビスマレイミド・トリアジン系の熱硬化樹脂をガラスクロスに含浸させたもので、同社は1985年に登場した最初のチップパッケージ用樹脂積層材料と位置づけている。コアの表裏に積む絶縁材の代表が、味の素のABF(味の素ビルドアップフィルム)だ。味の素の解説によると4、ABFはエポキシ樹脂、硬化剤、無機微粒子フィラーからなる熱硬化性のフィルムで、レーザーで穴をあけやすく、銅めっきとよく密着する。

微細さは、断面の場所ごとに別の数値で決まる。京セラのビルドアップFC-BGAは5、配線幅/間隔の最小値を9 µm/12 µm、ビアランド径の最小値を85 µm、フリップチップピッチの最小値を100 µm、層構成の最大値を10-n-10として、仕様表の別々の欄に載せている。パッドピッチを100 µmまで詰めても、ビアランドに85 µmが要れば、その層で配線を通せる面積は減る。

ビルドアップ層は、貼って硬化し、穴をあけ、銅をめっきする工程を層の数だけ繰り返す

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コアにドリルで穴をあけてPTHと表裏の回路を作った後、表裏に絶縁層と銅層を1層ずつ積む。Narahashiらの研究は6、ABFを使う基板の製法を、フィルムのラミネートと硬化、レーザービアの形成、表面の粗化を伴うデスミア、シード層の無電解銅めっき、電解めっきの順のセミアディティブ法(SAP)として記述している。めっきレジストを剥がした後、配線の間に残る薄いシード銅をエッチングで除く。

図2ビルドアップ1層の工程
ABFフィルム 銅ランド 残渣 レジスト ラミネート・硬化レーザービアデスミアシード層パターンめっき 凹凸を埋めて硬化ランドまで穴あけ残渣除去と表面粗化無電解銅で連続被覆開口へ銅めっき 剥離・エッチ後に次の層へ
ビルドアップ1層は、フィルムを貼って硬化し、レーザーで穴をあけて残渣を除き、シード層を付けて銅をめっきする。この1層を表裏の層数だけ繰り返す。

デスミアは、ビア底の残渣を除く工程と、フィルム表面を粗くして銅を密着させる工程を兼ねる。デスミアを強めるとビア底はきれいになるが、開口が広がり、表面も粗くなる。粗い表面は、高周波で導体の損失を増やす。IEEE EPSのレビューによると1、味の素はフィラーを1 µm未満のシリカまで小さくしたABFを開発し、平滑な表面で表皮効果の影響を抑え、平滑なビア壁でビア径を縮めている。

ABFは、同じフィルムの形で配合を変えたグレード群の総称だ。味の素ファインテクノの製品ページは7、GX-92を標準品、GX-T31を表面粗さとCTEを下げた品、GZ-41をそれに高Tgを加えた品、GL-102をさらに低誘電正接にした品として載せている。レビューはこの4品の代表的なDkを3.2〜3.4、Dfを5.8 GHzで0.017〜0.004としている。Dfの値で高周波の損失を比べるときに揃える条件は、ビルドアップ材のDfと測定周波数の記事で扱う。

ビアの断線は残渣とビア壁で、CAFは面内の絶縁で起きる

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ビルドアップ層の上下をつなぐレーザーマイクロビアでは、レーザーが絶縁材を除いて下層の銅ランドを露出させる。同時に樹脂とフィラーの分解物がビア底と壁に付く。この残渣を残したままシード層を付けると、ビア底の導通が細り、リフローや温度サイクルの後に抵抗が上がる。Narahashiらの研究6が記述するSAPでは、デスミアが残渣の除去と表面の粗化を兼ねるため、ビアの信頼性と銅の密着が同じ工程で決まる。

配線どうしの絶縁の劣化には、CAF(導電性陽極フィラメント)がある。IPC-TM-650 2.6.258(2016年4月、Revision B)は、65±2 ℃または85±2 ℃、相対湿度87 +3/−2 %の槽で96時間バイアスなしで安定させた絶縁抵抗を基準値とし、バイアス下で基準値から1桁を超えて下がったかで判定する。材料や工程の比較には10 VDCと100 VDCのバイアスを標準とする。試験法の名前の「X-Y Axis」は、PTH間やビア間の面内方向のフィラメント成長を対象にすることを表し、ビルドアップ層をまたぐ厚さ方向の絶縁劣化は別の試験で確かめる。

基板が大きくなるほど、コアのCTEと弾性率が反りを左右する

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味の素は2026年6月の電子材料事業の説明会で9、パッケージ基板の大きさと層数の推移を示した。HPC向けが2023年ごろに約70 mm角・9層、AI向け2.5Dパッケージが2026年に約100 mm角・11層、2031年以降の見通しが約120 mm角・13層だ。

IEEE EPSのレビュー1が各社の公開値として載せる数値を並べると、次のようになる。コアのCTEは引張で測った値で、ビルドアップ材の値はECTC 2021の発表に基づく。測定条件が揃っていない値どうしだが、この表を並べた筆者の比較では、コアとビルドアップ材のCTEは1桁以上離れている。

材料会社・品種CTE(ppm/℃)弾性率(GPa)
コアレゾナック E-795G系0.7(引張)から41
コアパナソニック インダストリー4〜632〜34
コア三菱ガス化学131
ビルドアップ従来品23〜395.0〜7.5
ビルドアップ味の素の新しい材料209.0〜13
ビルドアップ積水化学工業(100 mm角向け)2411.9

レゾナックはE-795G系のコアで100 mm角のBGA基板を試作し、コンソーシアムJOINT2で反りを実測して、ボードレベルの信頼性試験に合格したとレビューに書いている。レゾナック(当時は昭和電工マテリアルズ)は2021年に量産を始めたMCL-E-795Gで10、低CTE樹脂とフィラーの高充填によって従来品比15〜20%の反り低減を、低CTEガラスクロスと組み合わせたタイプLHでさらに20%の低減を挙げた。住友ベークライトのLαZも11、低CTE、高弾性率、高Tgをコア材の利点に掲げている。

ビルドアップフィルムの側も、CTEを下げて弾性率を上げている。レビューは、ビルドアップ基板の機械的性質はコア材が支配するものの、ビルドアップフィルムの物性も反りと積層全体の健全性に効くと書いている。

レゾナックは、コアのCTEを下げると温度サイクルで割れが出ると説明する

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レゾナックの2025年2月の発表は2、この関係を正面から扱っている。同社は、反りを抑えるにはコアである銅張積層板のCTEを下げるのが効くとしたうえで、他の材料との熱膨張差から温度サイクル試験の冷却時に割れが起きると説明する。そこで樹脂とガラスクロスの複合構造をマルチスケールのFEM解析にかけ、割れやすいコア内の樹脂の局所応力を下げる物性を絞り込んだ。開発した積層板は温度サイクル試験で従来品の4倍の耐久性を示し、100 mm×100 mmを超えるパッケージに適合するとして、2026年の量産開始を目指している。

ビルドアップ材では、積水化学工業がECTC 2021で、100 mm角の大型基板を狙った耐クラック性のビルドアップ材を発表した。レビューによると、CTEは24 ppm/℃、弾性率は11.9 GPaだ。

コア以外の層も、それぞれ別の方向から反りに作用する。レゾナックの反り対策材料の解説は12、フィルム型の感光性ソルダーレジストSR-F系が低CTEと低い硬化収縮で基板の反りを抑えるとしている。表裏の層構成も効く。Kurashinaらの低反りコアレス基板の研究は13、2種類の絶縁材を組み合わせた層構成を解析モデルで見積もり、剛性の高い材料を外層側に置く手順を示した。

基板が大きくなると、厚さのばらつきも効く。レビューは、微細なバンプ接続、微細配線、電気特性のために基板の厚さばらつきを減らすことが重要だとし、レゾナックが厚さばらつきを抑えたコア材Type Fを開発したと紹介している。住友ベークライトは14、プレス方式では作りにくい厚さ20 µm以下のコア材をリール・ツー・リールで連続生産している。

ガラスコアは平坦で弾性率が高いが、露光時の反り矯正とマイクロクラックが課題になる

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コア材の改良を続けても、有機基板には大型化の限界があるという見方がある。IEEE EPS eNewsの2025年11月の記事は15、有機基板は材料とフィラーの改良で熱膨張を抑えてきたが、大型化すると熱安定性、平坦度、寸法安定性で限界に当たると述べている。

ガラスコアは平坦で弾性率が高い。Mitsukura・Hisadaのレビューは1、その弾性率の高さのために露光時に反りを矯正しにくく、貫通ビア(TGV)の形成やガラスの切断で生じる微小クラックが、組立や信頼性試験での破損につながるおそれがあると書く。そのうえで、量産できれば革新的な進歩になると評価している。NISTの先端パッケージング製造プログラムも16、先端パッケージ基板を有機、ガラス、半導体系の3つに分けて公募の対象にしている。ガラスコアの工程と課題はガラスコア基板と先端パッケージングで扱う。

材料の供給は、コア、ビルドアップ材、表面処理、基板製造で分かれる

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ビルドアップ絶縁材では、味の素が2026年6月の説明会でABFのシェアを95%超としている。同社によると、基板が大きく層が多くなるほど、高性能半導体1個あたりのABFの使用量は増える。同社は岐阜県可児市に第3の生産拠点を設け、2032年の操業を予定している。この増産がAI向け基板の需要に間に合うかは、ABFの供給能力の記事で扱う。

コア積層板は三菱ガス化学、住友ベークライト、レゾナックが手がける。銅の表面処理薬品では、メックが銅表面に微細な粗さを作るCZシリーズと、粗さを作らずに同等の密着を得るとするFlatBOND17を分けて出している。基板の製造はイビデン、新光電気工業18、京セラ、サムスン電機19などが担う。イビデンは20、SAPによる微細配線と、レーザー・めっき・位置合わせを組み合わせたマイクロビアを主要技術に挙げている。

基板は、ダイアタッチ、アンダーフィル、モールド、ボード実装の流れの中で使われる。全体の流れは後工程とパッケージングに、基板の外側に加わる封止材は半導体封止材(EMC・MUF)にまとめている。

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