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誘電正接Dfの比べ方、周波数と試験法|線路損失は銅箔の粗さで最大5割差

ビルドアップ材のDf(誘電正接)は、試験法と測定周波数が揃って初めて比べられる。揃えた後も、配線の損失は比べきれない。線路の損失は絶縁材の誘電損失と銅の導体損失の和で、導体損失は銅の表面の粗さで大きく変わるからだ。IPC 2.5.5.15が銅を除いた基材を測る方法であることと、後述のCisco Systemsの試験結果から、材料はDfで、配線は実際の銅で作った線路の損失で比べるのが筋になる。

IPC-TM-650の2.5.5.91は1 MHz〜1.5 GHzの試験法で、低損失材料には別の試験法を使うよう案内している。一方、学会で発表された味の素・積水化学工業・パナソニックのDfは、5.8 GHzや10 GHzで測った値だ。Cisco Systemsとミズーリ工科大学が、パナソニックのMegtron-6積層板で作ったプリント基板の試験では2、同じ積層板でも銅箔と表面処理の組み合わせだけで、10 GHzの損失が最大5割違った。ビルドアップ材そのものの試験ではなく、SAPでめっきした銅とは銅の作り方も異なるため、ビルドアップ配線への当てはめは類推になる。

IPC 2.5.5.9は1.5 GHzまでの方法で、低損失材料を対象にしない

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Dfとは、交流の電界の中で絶縁材が蓄えるエネルギーに対する、熱として失うエネルギーの比を指す。2.5.5.9は、材料アナライザーの静電容量法で1 MHz〜1.5 GHzの誘電率とDfを測る平行平板法で、1998年11月の版だ。試験法の適用範囲の項は、この方法を低損失材料に向けたものとはせず、低損失材料は別のIPC試験法で固定周波数で測るよう案内している。

同じ項は、強化積層板を含むすべての材料とほとんどのフィルムが水分の影響を受けるとして、試験前に23℃・相対湿度50%で24時間以上の状態調整を求めている。IPCがこの状態調整を定めるのは、含水状態が測定値に影響するためだ。

GHz帯のDfは共振器法で測り、試験法ごとに周波数の範囲が決まる

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GHz帯の低損失材料には、共振器を使う試験法がある。2022年の2.5.5.15は3、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)でプリント基板の基材の誘電率とDfを1〜20 GHzで測る方法だ。試験片は金属箔をエッチングなどで除いた基材で、23℃・相対湿度50%で24時間以上の状態調整をしてから測る。IPCの試験法一覧には4、X帯のストリップライン法(2.5.5.5C)、14 GHzまでのストリップライン法(2.5.5.5.1)、スプリットシリンダー共振器法(2.5.5.13)も載っている。

周波数を対数で並べた図。IPC-TM-650 2.5.5.9の平行平板法は1 MHzから1.5 GHz、2.5.5.15のスプリットポスト誘電体共振器法は1 GHzから20 GHzを測る。ビルドアップ材のDfの公開値は、味の素と積水化学工業が5.8 GHz、パナソニックが10 GHz。
ビルドアップ材のDfの公開値は5.8 GHzと10 GHzで測られ、2.5.5.9の範囲より上にある。この帯域を測るのはSPDR法などの共振器法だ。

共振器法で測るDfは、銅を除いた絶縁材そのものの値だ。材料どうしを比べるには向いているが、銅配線を含む線路の損失はこの値に含まれない。

学会で発表された3社のDfは、5.8 GHzと10 GHzの値が混在する

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レゾナックとRapidusの技術者によるIEEE EPSのレビューは5、味の素、積水化学工業、パナソニックがECTCで発表した値をまとめている。

会社材料の種類DkDf測定周波数
味の素ビルドアップフィルム(GX92、GX-T31、GZ-41、GL102)3.2〜3.40.017〜0.0045.8 GHz
積水化学工業ビルドアップ材3.30.00235.8 GHz
パナソニックプリプレグ(ポリフェニレンエーテル系)3.4または3.50.00210 GHz

味の素はナノフィラーを使う新材料でDk 3.2〜3.3、Df 0.001未満も報告している。レビューは、新しい材料のDkは旧世代とほぼ同じで、Dfが大きく下がったとまとめている。積水化学工業の0.0023とパナソニックの0.002は、測定周波数が5.8 GHzと10 GHzで異なるため、この表の値だけでは優劣は付かない。

同じことは、インターポーザの再配線層に使う感光性絶縁材にも当てはまる。レビューは、レゾナックの材料をDk 2.6・Df 0.0027(10 GHz)、東レの材料をDk 2.8・Df 0.006(20 GHz)と、異なる周波数の値で紹介している。HBMとGPUを並べる先端パッケージでは、こうした再配線層を持つインターポーザがダイどうしの接続を担う。

線路の損失は、Dfが同じでも銅の粗さで最大5割変わる

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Cisco Systemsとミズーリ工科大学の試験は2、ガラスクロスと樹脂量、配線寸法、絶縁層厚を揃え、内層の銅箔3種と表面処理3種の組み合わせだけを変えた9種類のストリップラインを作った。試験線路は長さ406 mmの6層基板のストリップラインで、論文によると一般的なプリント基板の配線より幅が広い。10 GHzの損失は、最も滑らかな組み合わせで1.807 Np/m、最も粗い組み合わせで2.707 Np/mだった。絶縁材が同じでも、損失は5割違ったことになる。

この試験は、測った損失からDfを逆算するときの誤差も示した。業界標準の抽出法は銅を滑らかと仮定する。粗さを考慮すると9種類の試料のDfのばらつきは5%未満に収まり、粗さを無視すると約35%に広がった。論文は、周波数が10 GHzに近づくと表皮効果で電流が表面の凹凸へ集まり、導体損失が滑らかな銅の計算より大きくなると説明している。

ビルドアップ基板でも、銅の粗さは材料開発の主題になっている。上の試験はプリント基板のものなので、ここからは類推になるが、IEEE EPSのレビュー5によると味の素は1 µm未満のシリカフィラーで表面を平滑にし、表皮効果の影響を抑えた。パナソニックはRa 0.3 µmから0.15 µmへ粗さを下げた銅箔を示し、粗さが下がるほど銅のピール強度が課題になるとしている。メックも6、高周波基板では金属表面が粗いと信号の伝送が遅れやすいとして、粗さを作らずに密着を得る処理を出している。基板の層構成と、粗さを作るデスミア工程は有機パッケージ基板の記事で扱っている。

材料はDfで、配線は実際の線路の損失で比べる

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材料の比較では、同じ試験法、同じ周波数、同じ前処理で測ったDfを並べる。配線の比較では、実際の銅、表面処理、線路形状で作った試験線路の損失を測る。IPCの試験法一覧には4、プリント基板の信号損失を測る2.5.5.12Aと、周波数領域の方法で高周波の信号損失と伝搬を測る2.5.5.14がある。

積層体のTgも、単層フィルムの値とは別の量になる

Section titled “積層体のTgも、単層フィルムの値とは別の量になる”

2.4.24.4は7、ビルドアップ構造にDMAをかけると、得られる結果は複合した弾性率と複合したTgの曲線になると書いている。単層フィルムのTgと積層体のTgは別の量だ。

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