コンテンツにスキップ

ダイシフトとは

ダイシフトとは、基板の上に並べ直したダイの実際の位置が、設計上の位置に対してずれる現象です。 ずれた分だけ、後で形成する配線とダイのパッドの位置が合わなくなります。

前工程のリソグラフィでは位置の基準がウェーハ1枚でしたが、ファンアウトでは個片化したダイを並べ直して樹脂で固めるため、基準が1つ1つのダイになります。打てる手は2つで、ダイを動かさないようにするか、動いたダイに合わせて描くかです。どちらも、パネルが大きくなるほど負担が増えます。

ダイを並べ直して樹脂で固めると、シリコンの位置精度が失われる

Section titled “ダイを並べ直して樹脂で固めると、シリコンの位置精度が失われる”
ずれが入る2つの工程
① キャリアへ並べ直す置くときの誤差② 樹脂で固めるモールド中のずれ③ 再配線層を形成実際の位置へ配線設計上の位置ダイキャリア封止樹脂再配線
ダイはキャリアに置く時点で設計上の位置からずれ、樹脂で固める間にも動きます。再配線層は、そのずれたダイの実際の位置に合わせて描く必要があります。

Deca Technologiesは、ファンアウトでは個片化したデバイスを組み直してプラスチックの300mmウェーハを作り直すため、一体のシリコンが持っていた位置精度が失われるとしています1。同社は位置ばらつきの主な源として、ダイを置くときの誤差と、モールド中のダイシフトの2つを挙げています。

FOWLPは、チップと配線基板をつなぐ再配線層を半導体工程で作るウェーハレベルパッケージ2の一種で、パッケージはチップより広い面積を持ち、端子をチップの外側まで引き出せます。FOPLPは、FOWLPの一括製造の考え方をウェーハより大きなパネルに広げたもので、パネルの材料にはプリント基板やガラス基板が使われます。工程は、ウェーハを個片化し、ダイをキャリアの上に間隔を空けて配置し、樹脂で固めて1枚の基板にし、その上に再配線層を形成する順に進みます。ダイが動いていれば、設計座標どおりの配線はパッドの縁にずれます。ファンアウトパッケージやチップレットの歩留まりは、この位置合わせに大きく左右されます。

先端パッケージには、配線用の小さなチップを中間基板であるインターポーザの中に埋め込み、その上に載せる半導体チップどうしを電気的につなぐ構造もあります。この場合も、埋め込んだチップの実際の位置と設計上の位置とのズレ3がダイシフトで、それに応じた露光位置の補正が必要です。

樹脂封止でダイが動き、モールド方式で差がつく

Section titled “樹脂封止でダイが動き、モールド方式で差がつく”

TOWAは半導体の樹脂封止を2方式に分けています。トランスファ方式は4、プランジャの中でいったん溶かした樹脂をキャビティへ送り込んで固めます。コンプレッション方式は、液状または顆粒状の封止樹脂をキャビティへ先に入れて溶かし、そこへワークを浸して形をつくります。

TOWAによると、コンプレッション方式は樹脂の流動がほとんどなく、チップやワイヤへの影響を最小限に抑えられます4。ゲートやランナが不要なため樹脂の使用効率はほぼ100%になり、ワークにかかる圧力も下げられます。流動の少なさが利点になることから、樹脂の流れはチップを動かす要因になると考えられます。

TOWAはフェイスダウン方式とフェイスアップ方式を、樹脂流動性、チップシフト、真空度、SIP製品、フィラー分離(反りの要因)の5項目で比べ、チップシフトをフェイスダウンが◯、フェイスアップが△としています。フェイスダウン方式は成形時の反りもフェイスアップ方式より小さく、優位性があるとしています。

ダイを動かさず、露光パターンをダイの実測位置に合わせる

Section titled “ダイを動かさず、露光パターンをダイの実測位置に合わせる”
設計座標で描くか、実測位置で描くか
設計の座標で描く設計上の位置実際のダイ配線がパッドを外れる実測の位置で描く再配線パッド配線がパッドに当たる
設計上の座標のまま描くと、配線の端がずれたダイのパッドを外れます。ダイごとに実際の位置を測ってパターンを合わせれば、配線はパッドに当たります。

ずれたダイを1つずつ動かして設計座標に揃えるのは、量産の速度では困難です。そこで露光するパターンの方を補正します。オーク製作所はリアルタイム位置補正技術を応用して、ダイシフトに対応するダイバイダイ・アライメント技術を開発しました3。基板上に並べ直した個別のダイの実際の位置を検出し、焼き付けるパターンをその位置に合うように補正する技術です。有機材を使う先端パッケージでは、基材の伸び縮みに応じて露光するデータを補正する技術も求められます。

補正には、フォトマスクを使わずに回路パターンを直接焼き付けるダイレクト露光を使います。オーク製作所は空間光変調素子を高速で制御する技術と高解像光学系で、回路基板上の感光性材料に線幅1μmの回路を形成し、有機材料上で線幅2μmの銅めっき配線を実現できることも確認しました。繰り返し再現性を高めた本体ステージと、基材のアライメントマークを高精度カメラで読み取るリアルタイム位置補正で、510×515mmの露光サイズ全面で0.5μmの精度でパターンを配置できるとしています3。510×515mmは、SEMI規格SEMI3D20がパネルレベルパッケージ向けに定めた標準寸法の1つです。NEDOとオーク製作所はこの成果を2025年8月27日に発表しました。

マスクを使わない露光なら、基板ごとに描く内容を変えられる

Section titled “マスクを使わない露光なら、基板ごとに描く内容を変えられる”

ニコンは2025年7月16日、アドバンストパッケージング向けのデジタル露光装置DSP-100の受注を始めました5。解像度は1.0μm(L/S)、光源はi線相当、重ね合わせ精度は±0.3μm以下、対応基板は角型で600×600mmまで、スループットは510×515mm基板で1時間あたり50パネルです。受注開始は2025年7月、上市予定は2026年度中です。

DSP-100は、回路パターンを表示したSLM(空間光変調器)に光源の光を当て、投影レンズを通して基板に転写します。ニコンによると、フォトマスクの寸法に縛られずに大型のアドバンストパッケージングに対応でき、フォトマスクを作る分のコストとリードタイムも抑えられます。ニコンは、角型基板では100mm角の大型パッケージで300mmウェハ比9倍の生産性を実現し、基板の反りや変形も高い精度で補正するとしています。

パターンがデータとして与えられる方式なら、描く内容を基板ごとに変えられます。ダイシフトの補正を露光工程で行えるのは、この性質があるためです。

保持力を切り替えるフィルムなら、再配置の工程を省ける

Section titled “保持力を切り替えるフィルムなら、再配置の工程を省ける”
UV照射前後のピール強度
ピール強度(N、幅25mm)エキスパンドフィルム従来のダイシングフィルム6.0 N1.0 N0.2 N(両方)UV照射前(拡げる)UV照射後(転写する)
エキスパンドフィルムはUV照射前に6.0 Nでダイを強く保持して間隔を広げ、照射後は0.2 Nまで下がって転写できます。従来のダイシングフィルムは照射前でも1.0 Nです。

ずれの入り口である再配置の工程に手を入れた例もあります。WLPの組立工程では、ダイシング後にマウンター装置でダイをキャリアへ再配置してきました。日立化成は、ダイの小型化や薄型化に伴い、1つ1つの配置に時間がかかり、ハンドリングの際にダイクラックが生じる課題があると報告しています。

日立化成(現レゾナック)が報告した方法は6、エキスパンドフィルム上でダイ間隔を広げてからキャリアへ一括転写し、再配置の工程そのものを省きます。ピール強度は、従来のダイシングフィルムがUV照射前1.0N、エキスパンドフィルムが6.0Nで、UV照射後はどちらも0.2Nです(ピール強度の幅25mm)。ダイ間隔は、ダイシング後の約0.05mmからエキスパンド後に1.5mmまで広がります。8インチウェーハ、ダイサイズ5mm×5mmを、温度50℃、突き上げ速度5mm/s、突き上げ高さ100mmで拡げ、拡幅後とモールド後に外観を観察してダイ間隔を測った結果、一連の工程でダイ剥離とダイシフトはどちらも0件でした。

このフィルムには相反する要求があります。ダイを大きく広げる間は強く保持し、キャリアへ転写するときには保持力を弱くする必要があります。UV照射前の6.0Nと照射後の0.2Nは、この2つの要求を1枚のフィルムで両立させた値です。

パネルを大きくすると、取り数とともに位置合わせの範囲も広がる

Section titled “パネルを大きくすると、取り数とともに位置合わせの範囲も広がる”

TOWAのCPM10807は12インチ(φ300mm)のFOWLP/FIWLPや320mm×320mmのFOPLP/FIPLPの樹脂成形に向き、1台で顆粒樹脂と液状樹脂の両方に対応します。離型フィルムのプリカット方式で、1成形あたりのフィルム使用量を約25%削減するとしています(同社比)。CPM1080-HPはHBM、2.5D、3D、チップレットおよびFOWLP/PLPなどの先端パッケージに向き、モールド厚み平坦度と到達真空度を高めました。CPM1180は最大625mm×620mmの超大判パネルを自動成形できます。

パネルが大きくなるほど1枚あたりの取り数は増え、100mm角パッケージでの9倍はその差です。一方で、面が広がるほど、端から端まで0.5μmや±0.3μmの精度で位置を合わせる範囲も広がります。TOWAが反りとフィラー分離を比較の項目に入れているとおり、パネルが大きくなるほど平坦さを保つことも難しくなります。

対策は2種類です。樹脂の流れと収縮でダイが動く量を小さくする方法はモールドの方式と保持材で、動いた後の位置を測って描くパターンを合わせる方法は露光装置の計測とデータ補正で対応します。どちらも、パネルが大きくなるほど負担が増えます。

ダイシフトとは何ですか?

基板の上に並べ直したダイの実際の位置が、設計上の位置に対してずれる現象です。インターポーザ内へ埋め込んだチップでは、実際の位置と設計上の位置とのズレをダイシフトと呼びます。

なぜダイシフトが起きるのですか?

個片化したダイを並べ直し、樹脂で固める工程が挟まるためです。Deca Technologiesは位置ばらつきの主な源を、ダイを置くときの誤差とモールド中のずれの2つに挙げています。TOWAは、樹脂の流動が少ないコンプレッション方式はチップやワイヤへの影響を最小限に抑えられるとし、比較ではチップシフトの項目をフェイスダウンが◯、フェイスアップが△としています。

ダイシフトがあると何が困るのですか?

後で形成する再配線層が、ダイのパッドの中心からずれます。FOWLPは端子をチップの外側まで広げるために再配線層を半導体工程で作るパッケージで、位置の基準がウェーハ1枚ではなく1つ1つのダイになります。

どうやって直すのですか?

描くパターンの側を合わせます。オーク製作所が開発したダイバイダイ・アライメント技術は、並べ直したダイの現在地を1つずつ測り、焼き付けるパターンをその現在地へ合わせ込みます。

どのくらいの精度が要りますか?

NEDOとオーク製作所は、510×515mmの露光サイズ全面で0.5μmの精度でパターンを配置できるとしています。ニコンはデジタル露光装置DSP-100の重ね合わせ精度を±0.3μm以下としています。

並べ直す工程そのものを減らせますか?

日立化成は、マウンター装置による1つずつの再配置に代えて、エキスパンドフィルム上でダイ間隔を広げてからキャリアへ一括転写する工程を報告しています。8インチウェーハ・ダイサイズ5mm角の条件で、ダイシング後の約0.05mmの間隔を1.5mmまで広げられます。

パネルを大きくすると何が起きますか?

1枚あたりの取り数が増える一方、位置を合わせる仕事の量も増えます。TOWAのCPM1180は最大625mm×620mmの超大判パネルを自動成形でき、ニコンは100mm角の大型パッケージで300mmウェハ比9倍の生産性としています。

7件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7