デジタル露光の9倍はパッケージ数の比Nikon DSP-100、毎時の枚数とは別の数字
NikonのDSP-100とは、フォトマスクを使わずに回路パターンを基板へ直接投影する、先端パッケージ向けの露光装置だ。Nikonは、100 mm角の大型パッケージなら600 mm角基板1枚あたりの生産性が300 mmウェーハの9倍になるとしている。基板1枚に載る個数を数えると、ウェーハに4個、600 mm角に36個で、比はちょうど9倍になる(Nikonの数値から計算)。この9倍は基板1枚あたりの個数の比として説明がつき、装置が1時間に処理する枚数の比とは別の数字だ。処理能力の公称値は、510×515 mm基板で毎時50枚だ。
36個は、600 mm角の基板を端まで使い切ったときの個数だ。600 mmは100 mmのちょうど6倍なので、基板の端に少しでも余白を取ると1列減る。毎時50枚の測定に使う510×515 mm基板に載る100 mm角は25個で、ウェーハ1枚の4個と比べると6.25倍になる。6.25倍はNikonが示した値ではなく、Nikonの数値からこの記事が計算した値だ。
DSP-100は、マスクの代わりに空間光変調器でパターンを描く
Section titled “DSP-100は、マスクの代わりに空間光変調器でパターンを描く”Nikonは2025年7月16日の発表で1、DSP-100を同社初の後工程向け露光装置とし、2025年7月に受注を始め、2026年度に発売する予定とした。仕様は次のとおりで、同社の製品一覧2にも同じ値が載っている。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 解像 | 1.0 µm L/S |
| 光源 | i線相当 |
| 重ね合わせ精度 | ±0.3 µm以下 |
| 基板寸法 | 600×600 mm角まで(ウェーハにも対応) |
| スループット | 毎時50枚(510×515 mm基板) |
L/S(ライン・アンド・スペース)は、配線の幅と隣の配線との間隔を指す。重ね合わせ精度は、前の層のパターンに次の層をどれだけ正確に重ねられるかを表す。
従来の先端パッケージ用の露光装置は、フォトマスクの回路パターンを基板へ1区画ずつ写すステップ・アンド・リピート方式が主流だった。Nikonの技術紹介記事によれば3、この方式では1回に写せる大きさがマスクの寸法で決まるので、パッケージが大きくなるほどマスクの枚数が増え、マスクを切り替えて何回にも分けて露光することになる。DSP-100は、光の振幅・位相・偏光を電気的に制御する空間光変調器(SLM)を使い、CADデータから作ったパターンを基板へ直接投影する。露光の全体像は露光とリソグラフィにまとめている。
マスクがなくなる代わりに、設計データをSLMの駆動データへ変換する処理が増える。Nikonは、パターンが細かくなるほどSLMの駆動データが増え、変換に時間がかかって生産性が下がることを開発で最大の難所に挙げ、解像度を保ったままSLMへ高速にデータを送る技術を開発したと説明している。マスクを使う露光と比べた得失は、マスクレス露光の代償の記事で掘り下げた。
大面積は、複数の投影レンズと高速ステージで描く
Section titled “大面積は、複数の投影レンズと高速ステージで描く”DSP-100は、半導体露光装置の高解像の光学技術に、FPD(フラットパネルディスプレイ)露光装置のマルチレンズ技術と高速ステージ技術を組み合わせている。マルチレンズ技術は、複数の投影レンズを並べて精密に制御し、1本の巨大なレンズを使ったのと同じ効果を出す。Nikonによれば、同じステージ技術はFPD露光装置で1,500×1,850 mmの基板を毎時86枚処理している。Nikonは発表で、DSP-100が基板の反りと変形を高精度に補正し、固体光源で保守の費用を抑えるとも説明している。
「9倍」は、基板1枚に載る100 mm角パッケージの数で説明がつく
Section titled “「9倍」は、基板1枚に載る100 mm角パッケージの数で説明がつく”Nikonの発表は、100 mm角の大型パッケージなら、600 mm角基板1枚あたりの生産性が300 mmウェーハを使う場合の9倍になるとしている。発表に添えた図はウェーハと角基板に並ぶパッケージを描き、実際の個数は条件によって異なると注記している。
基板1枚に載る個数を数えると、9倍が出てくる(以下はNikonの数値から計算)。300 mmウェーハには、100 mm角を2×2に並べた200 mm角のまとまりが載る。このまとまりの対角は約283 mmで、直径300 mmの円に収まる。3個を1列に並べると、両端の角が中心から約158 mm離れ、半径150 mmの円からはみ出すので、ウェーハに載るのは4個までだ。600 mm角の基板には6×6の36個が並び、36を4で割ると9になる。
端に余白を取ると、計算上の比は6.25倍に下がる
Section titled “端に余白を取ると、計算上の比は6.25倍に下がる”以下もNikonの数値からの計算だ。600 mm角に36個並ぶのは、基板の端に余白を1 mmも取らない場合だけだ。端に余白を取ると1辺に並ぶのは5個になり、基板1枚に25個、ウェーハとの比は6.25倍になる。ウェーハ側の2×2のまとまりは、対角283 mmと直径300 mmの差から計算すると、端の余白が片側8 mmほどまでなら4個のまま載る。
パネルレベルパッケージの基板には510×515 mmと600×600 mmの2つの寸法があり、SEMIの規格もこの2つを定めている。規格と材料各社が掲げる寸法はガラスコアのパネル寸法の記事にまとめた。DSP-100のスループットの測定に使う510×515 mm基板に載る100 mm角は5×5の25個で、計算するとここでも比は6.25倍だ。
毎時50枚は装置の処理能力で、9倍とは別の数字だ
Section titled “毎時50枚は装置の処理能力で、9倍とは別の数字だ”装置の処理能力は、Nikonの仕様では510×515 mm基板で毎時50枚だ。この基板に100 mm角が25個載るとすると、1層の露光で1時間に処理できるパッケージは1,250個になる(50枚×25個として計算)。ウェーハ用の露光装置と1時間あたりの個数で比べるには、その装置の毎時処理枚数が別に要る。9倍という比には、どちらの装置の速さも入っていない。
Nikonは2026年6月5日の発表で4、解像を1.5 µm L/Sとし、510×515 mm基板で毎時65枚以上を目標にする装置を開発し、2027年度に発売する予定とした。DSP-100の毎時50枚から30%以上の向上を狙う。光学系を交換すれば、DSP-100と同じ1.0 µm L/Sにも対応する。
Nikonは、大型インターポーザやFC-BGA基板の配線に要る解像は顧客の工程によって違うと説明している。2機種のどちらがどの配線に合うかは、各社の配線ルールと並べて1.0 µm機と1.5 µm機の比較で検討した。マスクを使わない後工程の露光装置には、チップごとの位置ずれを補正して描くSCREEN DW-3100もある。
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- 1Nikon:DSP-100の受注開始と仕様(2025年7月)nikon.com ↩
- 2Nikon:半導体露光装置の製品一覧(DSP-100)nikon.com ↩
- 3Nikon:デジタル露光装置の開発の技術紹介(2026年3月)nikon.com ↩
- 4Nikon:解像1.5 µmのデジタル露光装置の開発(2026年6月)nikon.com ↩