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ラジカルとは

ラジカルとは、プラズマの中で分子の結合が切れてできた、電気的に中性でありながら反応する力の強い粒子です。 中性のまま表面へ届き、膜と化学反応して気体へ変えます。削る量を稼ぐのはラジカルで、垂直な形を作るのはイオンです。どちらへ厚く配分するかが、そのまま形とダメージの取引になり、どの装置でその工程を流せるかまで決めます。

削れるかどうかは、気体になれるかで決まる

Section titled “削れるかどうかは、気体になれるかで決まる”
ラジカルが膜を気体へ変えるまで
削る膜1 表面へ届く2 膜の原子と結合3 揮発性の化合物SiF4・AlCl3真空ポンプ4 排気蒸気圧温度が高い固体のまま堆積し反応を阻害壁にもパーティクル源
ラジカルが表面へ届き、膜の原子と結びつき、揮発性の化合物になって排気されるまでが一続きです。蒸気圧温度が高い生成物は固体のまま積もって反応を止め、壁にも付いてパーティクルの発生要因になります。

ドライエッチングは削り取る作業と呼ばれますが、中身は化学反応です。プラズマエッチングは、反応性ガスの低温プラズマに生まれた活性化原子、つまりラジカルが試料と化学反応を起こし、揮発しやすい化合物へ変えて加工する技術です1。削るという言葉の実体は、固体の膜を気体へ移し替えて運び去ることです。

ラジカルの役目は、膜の原子と結びついて、装置の温度でも気体になる化合物へ変えることです。反応してできた化合物が気体になり、真空ポンプが運び去ったところで一区切りです。この最後の一歩が滞ると、加工は途中で止まります。反応生成物の蒸気圧温度が高いと、削り取ったものが気化せずに固体のまま積もって反応を邪魔し2、処理室の壁やICP石英板へも付着してパーティクルの発生要因になります。

ガスと反応副生成物の組み合わせは、SiにCF4やSF6を当ててSiF4を作る、AlにCl2やBCl3を当ててAlCl3を作るというように、気体になる相手を軸にエッチングガスが並びます。Oxford Instrumentsも、同社の深いシリコンエッチング技術について、ボッシュプロセスと同じくSF6がシリコンを削るフッ素ラジカルを供給し、シリコンは揮発性のSiF4として除かれるとしています3。

同じ電子の衝突から、電荷を持つイオンと中性のラジカルが生まれる

Section titled “同じ電子の衝突から、電荷を持つイオンと中性のラジカルが生まれる”
届く向きと削れた形
ラジカルだけイオンと合わせるあらゆる向きマスクの下がえぐれるイオンは縦へまっすぐな溝マスク削る膜ラジカルイオン
中性のラジカルはあらゆる向きから届き、マスクの下まで横に削ります。シースで縦へ加速されたイオンを合わせると、進む向きがそろって溝がまっすぐになります。

プラズマの中では、電子が原子や分子へぶつかって相手が電荷を帯び、また電子が分子へぶつかると分子の結合が切れて、反応する力の強い粒子である活性種、すなわちラジカルができます4。原料ガスのうち電子との衝突で割れた割合を解離度と呼びます。プラズマからシリコンウェーハの表面へ飛んでくる活性種とイオンが、化学反応と物理的な衝撃の両面から同じ表面へ作用することで、微細加工が成り立ちます。

この電荷の差が、そのまま届き方の差になります。ウェーハの手前にはシースと呼ばれる電位の落差があり、電荷を帯びたイオンはここで縦へ加速されます。中性のラジカルはこの落差の影響を受けず、気体の分子と衝突しながら、あらゆる向きから表面へ届きます。

入り込む深さにも差が出ます。産総研(産業技術総合研究所)は2024年8月28日に発表した実験で、四フッ化炭素(CF4)プラズマでシリコン酸化膜を加工し、イオンと活性種はウエハへの入射エネルギーが違うので、CF3+イオンの酸化膜への侵入長は数ナノメートル程度、CF3活性種は数原子層程度だとしています。活性種は酸化膜への侵入が限られるため、酸化膜加工の終端付近でのみシリコン表面にダメージを作ります4。CF3+イオンやCF3活性種は酸化膜やシリコンにとって不純物で、その混入がダメージとして捉えられます。

現場で動かすつまみは、ガスと圧力と電力

Section titled “現場で動かすつまみは、ガスと圧力と電力”

ラジカルの量と種類は、ガス分子がどれだけ解離したかで決まります。手元にあるつまみは、ガスの種類、流量、圧力、投入する高周波の電力です。エッチング速度は、反応性ガスの種類、基板へのイオン衝撃の強さ、圧力、プラズマ密度といった条件で変わります。速度を上げると形や選択比といった他の項目も一緒に動くため、条件は全体を通して最適化します。

測るほうで使うのは、プラズマそのものの光です。産総研は、加工中のプラズマの発光スペクトルから、フッ化炭素活性種(CF3)とフッ素活性種(F)の存在を確かめました。装置の窓から届く光を波長ごとの強さへ分ければ、どの活性種がどれだけ居るかの手がかりになります。エッチングの終点検出にプラズマ発光が使われるのも同じ理屈で、終点検出の手段にはプラズマ発光、イオン質量分析、レーザー膜厚計があります2。

速さはラジカルとイオンを合わせて稼ぎ、形はイオンでそろえる

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中性のラジカルはあらゆる向きから届くため、そのままではマスクの下へも回り込みます。横も縦も似た速さで進むので、線幅が痩せ、寸法が設計から離れます。活性種であるフリーラジカルが対象の材料と反応して進むケミカルエッチング、イオンが自己バイアスなどの電場で加速されて衝突する物理エッチングやスパッタエッチング、その両方を合わせたイオンアシストエッチングがあり、合わせたほうが単独のエッチングより高速になります2。オプトランは、電極とプラズマの間のシースで加速された陽イオンが、ラジカルの起こす化学反応や反応生成物の脱離を促し、またスパッタエッチングを起こすと説明しています。

削る量を稼ぐ側はラジカルが担い、垂直な形を作る側はイオンエネルギーで叩くイオンが担います。イオンを強めれば縦方向がそろい速さも上がりますが、引き換えにマスクの目減りと下地のダメージを受け取ります。産総研は、シリコン上の膜がおおむね10 nm以下の場面ではイオンや活性種に由来する不純物を低くすることが重要だとし、今後、プラズマ加工で使うイオンエネルギーを下げる技術と、活性種の反応性を制御する技術を研究開発する予定です。

配分は装置の選び方まで決めます。Oxford Instrumentsは、同社の深いシリコンエッチング技術について、RIE装置ではイオンとフリーラジカルのバランスが合わないので実施できず、高密度プラズマ装置ならそのバランスを取れるとしています3。

アッシングは、ラジカルだけを届けてレジストを気体にする

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ダウンフロー型アッシャー
マイクロ波酸素プラズマ届くイオンは絞られるラジカルを下流へウェーハCO2・H2O・O2として排気レジストウェーハ
ダウンフロー型は、マイクロ波で作ったプラズマとウェーハを離し、中性のラジカルを下流へ流し、届くイオンを絞ってレジストを気体に変えます。イオンの衝撃が小さいかわりに、縦方向をそろえる力は手放します。

フォトレジストを剥がすアッシングは、ラジカルの化学反応をほぼそのまま使う工程です。プラズマアッシャは、プラズマ化したガス(一般には酸素)とレジストを反応させ、炭素と酸素と水素からできたレジストをCO2、H2O、O2という気体へ変えて取り除きます5。SCREENは、この方法をレジスト剥離で最もポピュラーな方法としています。

アッシャーは、有機物のフォトレジストを酸素のプラズマで灰にし、炭酸ガスと水蒸気の形で排気します6。ウェーハが受けるプラズマダメージを抑えるために、マイクロ波で励起するダウンフロー型や、RIEと組み合わせた型も使われます。ダウンフロー型は、プラズマを作る場所とウェーハを離し、寿命の続く中性のラジカルを下流へ流す構えです。届くイオンの量が絞られるぶん、下地への衝撃も小さくなります。代わりに縦方向をそろえる力を手放すため、垂直な溝を彫る場面はICPのようにイオンの衝撃を強める装置の側へ回します。

高周波をかけてガスをプラズマにし、そこで生まれたイオンとラジカルで半導体を加工する方式は、RIE(反応性イオンエッチング)と呼ばれます7。削る工程も剥がす工程も、同じプラズマから生まれた二種類の粒子をどう配分するかという話に行き着きます。

ラジカルとは何ですか?

プラズマの中で電子が分子に衝突し、分子の結合が切れてできる、電気的に中性で反応する力の強い粒子です。活性種とも呼ばれます。

イオンとの違いは何ですか?

電荷の有無と、届く向きです。イオンは電荷を持つため、ウェーハ手前のシースの電界で縦へ加速されます。ラジカルは中性のため電界の影響を受けず、あらゆる向きから表面へ届きます。活性種による化学反応とイオンによる物理的な衝撃が重なって、微細加工が成り立ちます。

ラジカルはどうやって膜を削りますか?

固体の膜を気体へ移し替えます。低温プラズマに生まれたラジカルが試料と化学反応を起こし、揮発しやすい化合物へ変えます。できた化合物が気体になり、真空ポンプが運び去ったところで一区切りです。

ラジカルが多いと形はどうなりますか?

横へ広がります。中性のラジカルはあらゆる向きから届くため、マスクの下へも回り込み、線幅が痩せます。垂直な溝を彫る場面では、縦へ加速されたイオンを足して進む向きをそろえます。

ラジカルの量は何で測りますか?

プラズマそのものの光です。産総研は、加工中のプラズマの発光スペクトルから、フッ化炭素活性種(CF3)とフッ素活性種(F)の存在を確かめました。ドライエッチングの終点検出には、プラズマ発光、イオン質量分析、レーザー膜厚計が使われます。

アッシングもラジカルの反応ですか?

そうです。プラズマアッシャは、プラズマ化した酸素とレジストを反応させ、CO2、H2O、O2という気体へ変えて取り除きます。酸素プラズマで灰にし、炭酸ガスと水蒸気として排気する工程です。

ダウンフロー型とは何ですか?

プラズマを作る場所とウェーハを離し、中性のラジカルを下流へ流す構えです。ウェーハが受けるプラズマダメージを抑えるために、マイクロ波で励起するダウンフロー型や、RIEと組み合わせた型が使われます。イオンの衝撃が小さくなる代わりに、縦方向をそろえる力は手薄になります。

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