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ラジカル表面再結合確率とは

ラジカル表面再結合確率とは、プラズマラジカルが成長表面へ衝突したとき、表面で再結合してラジカルとしての反応性を失う確率です。 記号rrで表し、成長表面への衝突1回を分母とする、単位のない量です。

プラズマを使うALDでは、入口付近の成膜反応が飽和しても、奥へ進むラジカルは壁面で失われ続けます。なぜ曝露を延ばしても深い溝の膜厚がそろいにくいのかを考えるには、膜を作る反応と、反応物を失う再結合を分けて見る必要があります。

成膜反応が飽和した表面でも、再結合は続く

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表面再結合の機構
壁面を進む間に、反応性ラジカルが失われる深い溝を進むH原子奥入口破線は1個のH原子の反射経路再結合する衝突を拡大衝突前H表面H再結合後H₂下地成長表面H原子2個のHがH₂になり離脱
Hラジカルを例にした模式図。破線と輪郭は、1個のH原子の経路と反射時の位置を示します。壁面で反射したHは輸送を続けますが、表面のHと再結合するとH₂として離脱し、ラジカルとしての成膜反応には寄与しなくなります。rは、このような表面衝突による再結合の確率です。

ラジカルは、壁面に衝突すると反射するほか、成膜に寄与する表面反応や、反応性を失う再結合を起こします。たとえばHラジカルが表面のHと結びついてH₂として離脱すると、そのHはラジカルとして成膜反応を続けられません。KnoopsらのプラズマALDモデルは1、成膜反応と、このような表面での損失を分けて扱っています。

成膜反応に寄与する付着確率は、未反応サイトの割合に応じて変わります。Artsらのモデルでは、未反応サイトの割合を1−θ1-\theta、初期の反応確率をs0s_0とすると、成膜側の消費はs0(1−θ)s_0(1-\theta)に比例します。被覆率θ\thetaが1に近づくとこの消費は減りますが、rrによる再結合は別の損失として残ります。rrを下げる操作と、成膜反応を速める操作を区別する理由です。

高アスペクト比では、小さな損失が積み重なる

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深い溝では、ラジカルは壁面衝突を繰り返して奥へ運ばれます。気体分子同士より壁面への衝突が主になるクヌーセン拡散の領域では、衝突ごとのrrが小さくても、長い経路で損失が積み重なります。入口で成膜反応が飽和すれば奥への供給がそのまま増える、という関係にはなりません。

Artsらの分子流モデルでは2、幅が十分広い長いスリットについて、溝の高さをhh、入口からの距離をzzと置きます。平均自由行程がhhより十分長く、準定常の拡散と一次の表面再結合が支配し、奥の端の影響を無視した1次元近似では、気相ラジカル密度はn(z)n0=exp⁡[−3r4⋅zh]\frac{n(z)}{n_0} = \exp\left[-\sqrt{\frac{3r}{4}}\cdot\frac{z}{h}\right]と表せます。n0n_0は入口の密度です。

構造の長さをLL、アスペクト比をAR=L/h\mathrm{AR}=L/hとすると、奥での密度比はexp⁡[−(34)⋅r⋅AR2]\exp\left[-\sqrt{\left(\frac{3}{4}\right)\cdot r\cdot\mathrm{AR}^2}\right]です。Artsらの2021年の解析では3、r⋅AR2r\cdot\mathrm{AR}^2が密度低下を比較する指標になります。r⋅AR2r\cdot\mathrm{AR}^2が大きくなるほど、再結合による供給の制限が強まります。この関係の係数は溝の形状と輸送モデルに由来するため、異なる断面や流れへ同じ式をそのまま使うことはできません。

侵入深さと曝露時間の傾きからrを推定する

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膜厚プロファイルからの推定
対数時間に対する侵入深さの傾きからrを求める半厚到達深さ PD₅₀/h0曝露時間 ln(t/t₅₀)rが低い:傾きが大きいrが高い:傾きが小さい
再結合律速の長いスリットを仮定し、入口が十分飽和した時間域の傾きを示した模式図。PD₅₀は入口側の飽和膜厚の50%になる位置、t₅₀は入口が半被覆される時間です。同じt/t₅₀で比べると、rが低いほど奥まで到達します。

衝突を1回ずつ数える代わりに、ALD飽和プロファイルからrrを推定できます。同じ材料とプラズマ条件で、入口側の飽和膜厚を基準にします。入口が十分に飽和する曝露時間ttの範囲で、膜厚がその50%になる深さPD50\mathrm{PD}_{50}を測ります。t50t_{50}を入口が半被覆される時間とすると、長いスリットの再結合律速モデルではPD50h=ln⁡(tt50)3r4\frac{\mathrm{PD}_{50}}{h} = \frac{\ln\left(\frac{t}{t_{50}}\right)}{\sqrt{\frac{3r}{4}}}です。

PD50/h\mathrm{PD}_{50}/hをln⁡(t/t50)\ln(t/t_{50})に対して描いた直線の傾きをmmとすると、r=43m2r = \frac{4}{3m^2}になります。同じ規格化時間t/t50t/t_{50}で比較すると、傾きが大きいほどrrが低く、奥へ到達します。2019年の研究では2、この関係を用いて酸化物の成長面でのO原子の再結合確率を求めています。

PD50\mathrm{PD}_{50}は入口側の飽和膜厚の半分になる位置です。その位置までの表面がすべて飽和したことは表しません。また、前駆体の供給が先に到達深さを制限すると、プラズマ曝露を増やしてもPD50\mathrm{PD}_{50}が動かず、傾きからrrを求める条件が崩れます。測定では、前駆体側が十分に供給され、プラズマ側の再結合を見ていることを確認します。

材料とプロセス条件をそろえて比較する

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成長面が変わると再結合の起こりやすさも変わります。Artsらの2019年の研究では2、SiO₂、TiO₂、Al₂O₃、HfO₂で異なるO原子の再結合確率が報告されています。rrは、ラジカル種と成長面の組合せに加えて、表面状態や測定条件と結びついた値です。

2021年のSiO₂とTiO₂の研究では3、両材料の温度系列とSiO₂のプラズマ圧力系列で、調べた条件に応じて推定rrが変わりました。ある条件で得た温度・圧力の傾向を別の材料や装置へ移すには、その成長面で再測定する必要があります。rr、形状、曝露時間をそろえて比較すると、コンフォーマリティの差が表面損失によるものか、供給条件によるものかを検討できます。

再結合律速では、曝露時間を増やすと到達深さは対数的に増えます。深さを同じ幅だけ増やすために必要な時間は、奥へ進むほど長くなります。深い被覆と処理速度を両立するには、長いプラズマ曝露だけでなく、成長面と条件に依存するrrの低減も検討します。その条件変更で成膜反応や膜質も変わるため、到達深さと膜の品質を同じ工程条件で評価します。

ラジカル表面再結合確率とは何ですか?

プラズマラジカルが成長表面へ1回衝突したとき、表面で再結合してラジカルとしての反応性を失う確率です。記号rで表し、単位はありません。

付着係数とはどう違いますか?

成膜反応に寄与する付着確率は、初期の反応確率s₀と、空いている反応サイトの割合で決まります。再結合確率rは、膜形成に使われずにラジカルが失われる割合で、表面の成膜反応が飽和した後も損失が続きます。

どのように測定しますか?

同じ材料とプラズマ条件で、入口側が十分飽和する曝露時間の範囲の膜厚プロファイルを測ります。入口側の飽和膜厚の半分になる深さを求め、分子流の長いスリットが再結合律速にある場合、その深さと曝露時間の対数の傾きからrを推定します。前駆体側で到達範囲が決まっている場合は、この方法でrを求める条件が崩れます。

半厚到達深さまでの表面は飽和していますか?

測定に用いる半厚到達深さは、膜厚が入口側の飽和膜厚の50%になる位置です。そこより手前の表面が一様に飽和したことや、構造全体が十分な膜厚になったことまでは表しません。

材料ごとに同じrを使えますか?

ラジカル種、成長面、温度、プラズマ圧力や表面状態に依存します。同じ酸化物でも測定条件をそろえて比較し、別の材料や工程へ値をそのまま移さないようにします。

  • 付着係数── 空いている反応サイトで成膜に寄与する確率。再結合による損失とは分けて扱います。
  • クヌーセン拡散── 壁面衝突が主になる輸送。rrは、その衝突時にラジカルが失われる確率です。
  • ALD飽和プロファイル── 深さ方向の成膜結果。曝露時間による変化から、再結合確率をモデルで推定できます。
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