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イオン・ラジカル相乗効果とは

イオン・ラジカル相乗効果とは、イオンと活性種が同時に表面へ当たったときだけ、エッチング速度が両者の単独より大きく跳ねる現象です。 ドライエッチングの土台で、RIEが縦に掘れる理由もここにあります。イオンで削りガスで溶かせば足し算になりそうですが、両方をそろえたときだけXeF2だけの場合の8倍に跳ね、どちらか一方では小さいままです。速さを決めるのは、イオンの入射フラックスと表面に吸着した活性種の密度の組み合わせです。

両方を同時に当てると、単独どうしの和を大きく超えて8倍になる

Section titled “両方を同時に当てると、単独どうしの和を大きく超えて8倍になる”
足し算と実測
XeF2だけ1倍Arイオンだけ約0.6倍単独どうしの和2倍未満同時に当てる8倍18Siのエッチング速度(XeF2だけを1とした比)
XeF2だけを1とすると、Arイオンだけは約0.6倍、単独どうしを足しても2倍に届きません。同時に当てたときだけ8倍になります。

Siの表面にXeF2を導入すると、表面で解離吸着してFまたはF2という活性種が発生し、Siと化学反応を起こしてエッチングされます。ただし、その化学的エッチング速度は非常に小さいままです。Arイオンを加速してXeF2と同時にSi表面へ衝突させると、エッチング速度はXeF2だけのときの8倍に増えます1。高速のArイオンだけを衝突させてスパッタリングで削った場合は、XeF2ガスだけのときより遅く、約0.6倍です。

この数字に当てはめると、単独どうしを足しても2倍に届きません。同時に当てたときの8倍は、足し算ではなく、2つの作用が互いを強めた結果です。

活性種が反応を用意し、イオンが結合を壊して生成物を飛ばす

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表面で起きる順序
1 吸着2 イオンが助ける3 生成物が離れる活性種イオン垂直に入射揮発性の分子化学の担当物理の担当Si活性種
吸着した活性種が材料と結びつき、垂直に入るイオンが結合を壊して反応を助け、できた揮発性の分子を弾き飛ばします。

活性種は表面に吸着し、材料と結びついて揮発しやすい分子を作ります。ここまでが化学の担当です。イオンは垂直に打ち込まれ、表面の結合を壊して反応を助け、できた分子を弾き飛ばします。ここからが物理の担当です。

Siのエッチング反応は、高速Arイオンの入射フラックス(密度とエネルギー)と、Si表面に吸着する活性種の密度で決まります1。この組み合わせを使うイオン支援化学的エッチングがRIEです。

表面の様子は、塩素で削る場合の測定にも表れています。ヒューストン大学のEconomouらは、イオン支援エッチングの条件ではSiClに加えて、Siのダングリングボンド、SiCl2、SiCl3が表面に見つかり、存在比はSiCl、SiCl2、SiCl3の順だった2と報告しています。同じ論文では、直流バイアスと違い、高周波バイアスで削った場合はイオンエネルギーの分布が広いため、しきいのイオンエネルギーが現れませんでした。

イオンが当たるのは底だけなので、縦に掘れる

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底と側壁の差
イオン底は速い側壁は遅いマスクSi活性種
イオンがほぼ垂直に入るので、イオンと活性種がそろう底だけが速く進み、活性種しか届かない側壁はほとんど進みません。

イオンは電界で加速され、ほぼ垂直に入るので、当たるのは主にパターンの底です。側壁へ届くのは活性種だけで、化学反応だけの速度は小さいため、横方向の進みはごくわずかに留まります。この差が、縦に深く横に細い形を作ります。

イオンの届き方は、形の出来も左右します。異方性エッチングでは、オーバーエッチングが不足すると段差に沿った残渣が残りやすくなります3。

高密度プラズマは両方を増やすが、ガスの組成が崩れる

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高密度プラズマプロセスでは、通常のプラズマよりも二桁以上、電子密度が高くなります。高い密度のイオンとラジカルが基板に入射するため、基板上の反応を劇的に高くでき、エッチング速度や堆積速度を一桁から二桁高くできます1。その一方で、原料ガスが過剰に解離して活性種の組成や密度が大きく動きます。両方を増やせば速くなる一方、組成の目標は崩れます。

光とイオンを重ねると、相乗が逆向きに働く例もある

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相乗は正の方向だけに働くわけではありません。Economouらは塩素でSiを削る系で、光が支えるエッチングとイオンが支えるエッチングを重ねた条件を調べました。パルス状の直流バイアスのデューティ比を変えると、イオン支援エッチングの速度は、デューティ比が低いときに限って高エネルギーイオンの照射量に比例しました。

デューティ比が高くなると、表面の塩素の被覆が増えるにつれて見かけの収率が下がり、著者らは光支援エッチングとイオン支援エッチングの負の相乗2で説明しています。パルスの周期を長くすると全体のエッチング速度も下がりました。周期を長くすると表面近くの損傷が増えて再結合中心が増え、電子と正孔の対が失われて光支援エッチングが遅くなる、という機構が考えられるとしています。

イオンを強めても弱めても、代償が残る

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イオンと活性種をそろえれば、どちらか一方の何倍もの速度が出ます。その代わり、イオンを強くするほどパターン底部の帯電と絶縁膜の損傷が増えます。活性種を増やすために密度を上げれば速くなるものの、原料ガスが過剰に解離して組成が目標から離れます。イオンを弱めれば損傷は減る一方、底の反応が鈍って残渣が残りやすくなります。

同時に当てずに時間で分ける使い方もあります。Oxford Instrumentsは、プラズマを使うALEを、ガスの供給とイオン照射を周期的に繰り返して材料を1層ずつ除き、単原子層の除去を少ない損傷で実現する4工程としています。各段だけでどれだけ削れてしまうかは、ALEシナジーという指標で表します。

イオン・ラジカル相乗効果とは何ですか?

イオンと活性種が同時に表面へ当たったときだけ、エッチング速度が両者の単独より大きく跳ねる現象です。活性種が反応を用意し、イオンがそれを助けて生成物を飛ばすという分担で起こります。

どのくらい跳ねるのですか?

ArイオンをXeF2と同時にSi表面へ衝突させると、エッチング速度はXeF2だけのときの8倍に増えます。Arイオンだけの速度はXeF2だけより小さいので、単独どうしを足しても2倍に届きません。

イオン単独ではどうなりますか?

高速のArイオンだけでは、XeF2ガスだけのときより遅くなります。このときはスパッタリングで物理的に削るだけです。

ガス単独ではどうなりますか?

XeF2だけでもSi表面はエッチングされますが、その化学的エッチング速度は非常に小さいです。XeF2は表面で解離吸着してFまたはF2という活性種になり、Siと反応します。

何が速さを左右するのですか?

高速イオンの入射フラックス(密度とエネルギー)と、表面に吸着する活性種の密度で決まります。

この仕組みを使う手法は何ですか?

RIEです。イオンと反応性の活性種との相互作用を用いたイオン支援化学的エッチングをRIEと呼びます。

なぜ形が縦に揃うのですか?

イオンが垂直に入るためです。底だけが速く掘れ、側壁は化学反応だけで済むので横へ広がりにくくなります。

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