電子シェーディングダメージとは
電子シェーディングダメージとは、パターン底部に溜まった電荷がゲート絶縁膜へ流れ、膜を静電破壊させる損傷です。 加工の最中に、素子が壊れます。プラズマの中は正負がつり合っているはずです。しかし深い溝の底では、垂直に入るイオンだけが届いて電子が側壁に遮られるため、つり合いが崩れます。根は正と負の粒子で入ってくる向きがそろっていないことにあり、溝が深くなるほど、また電流を多く供給する高電力のプラズマほど重くなる傾向があります。
イオンは真っ直ぐ、電子はばらばらに入るので、底が正に帯電する
Section titled “イオンは真っ直ぐ、電子はばらばらに入るので、底が正に帯電する”電子シェーディング効果は、イオンが試料に垂直入射するのに対して電子はランダムな方向から入射するため、レジストパターンに遮蔽される狭いスペースパターン底部の入射電子量が減少する現象です1。イオンはシースの電界で加速されるため、向きがそろいます。電子は熱運動のまま来るため、向きがばらばらです。原因は、通常の電子とイオンからなるプラズマで、負の粒子と正の粒子の速度の向きの分布が食い違う2ことにあります。
その結果、パターンの無い場合に比べてレジスト側壁が負に、高アスペクト比パターン底部が正にチャージアップします。深いほど、この偏りが強くなります。
底に溜まった電荷が、ゲート絶縁膜を静電破壊する
Section titled “底に溜まった電荷が、ゲート絶縁膜を静電破壊する”電子シェーディングダメージは、電子シェーディング効果によるプラズマ中の荷電粒子の蓄積によって、ゲート絶縁膜が静電破壊を起こすことです1。溜まった電荷は逃げ場を探し、配線を通ってゲートへ達すると、膜の両側に電位の差が立ちます。
酸化膜の絶縁破壊強度は10MV/cm以上と高電界です3。薄い膜では、わずかな電位差でもこの電界に届きます。
損傷の重さは、プラズマが流せる電流にも左右されます。損傷は高電力の工程ほどおおむね重く、プラズマ密度の高さと相関することが示されています4(Colonellら、1997年。Tabara、1996年)。Bell Labsの論文は、プラズマを電流に限りのある電源とみなせば、使える電流が多いぶん損傷が重くなると説明しています。
壊れなくても、トラップが残って寿命を削る
Section titled “壊れなくても、トラップが残って寿命を削る”温度および電圧のストレスにより、酸化膜中にトラップが生成されます3。トラップが増えると、トラップを介した電流がSILCとして観測され、さらに増えるとゲート電極からSi基板まで繋がって大電流が流れます。実使用状態のような低電界でも、時間の経過とともに破壊が起こる現象がTDDBです。加工で付いた傷は、後の寿命へ持ち越されます。
アスペクト比が上がるほど、底へ届く電子は減る
Section titled “アスペクト比が上がるほど、底へ届く電子は減る”溝が深く狭くなるほど、底へ届く電子の立体角が小さくなります。同じプラズマでも、パターンの形で受ける量が変わります。この現象は高アスペクト比パターンで起きるため、3次元構造が増えるほど相手にする場面も増えます。
ストリンガは、下地の段差に沿って残るエッチング残渣で、オーバーエッチングが不足すると起こりやすくなります1。残渣を消すために掘り増すと、帯電にさらす時間も伸びて損傷が積み上がります。
電子を除いたイオン・イオンプラズマで、向きの偏りそのものを消す
Section titled “電子を除いたイオン・イオンプラズマで、向きの偏りそのものを消す”偏りの原因が電子にあるなら、電子を除く手があります。電子のないプラズマは負イオンと正イオンからなるイオン・イオンプラズマとも呼ばれ、速度の向きの分布の食い違いを持たないようにできます2。グローの中心では負イオンと正イオンの質量も平均エネルギーも同程度なので、バイアスをかけたとき、両者の速度分布にほぼ同じ異方性が生まれます。
作り方も示されています。プラズマの電力を切って適切な時間だけ待つとイオン・イオンプラズマになり、基板へ低周波の交流バイアスをかけると、運動エネルギーの高い正イオンと負イオンを交互に入射させられます。この同期バイアスは、誘起する直流の自己バイアスが低いので、非同期のバイアスより負イオンを引き出しやすいとされます。研究チームは、その場の電荷モニタ回路で電子シェーディングによる電位が下がることを確かめ、限られた結果としながらも、最小線幅0.45 µmでエッチング形状が改善したとしています。
損傷を減らす手は、どれも別の何かを払う
Section titled “損傷を減らす手は、どれも別の何かを払う”垂直に入るイオンは深い加工を可能にしますが、その向きのそろいがそのまま底部の帯電を生みます。イオンのエネルギーを下げれば損傷は減るものの、底の反応が鈍って形が崩れます。保護のダイオードを設計へ入れれば逃げ道を作れますが、面積と寄生容量を払います。イオン・イオンプラズマは電子そのものを除きますが、電力を切って適切な時間待つ手順が加わります。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- プラズマダメージを電気特性で検出|アンテナ比を変えたTSMC特許のテスト構造── 配線経由でゲート酸化膜に入る損傷の測り方と、ダイオードによる緩和
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”電子シェーディング効果とは何ですか?
イオンが試料に垂直入射するのに対して電子はランダムな方向から入射するため、レジストパターンに遮蔽される狭いスペースパターン底部で入射電子量が減少する現象です。
どう帯電するのですか?
パターンの無い場合に比べて、レジスト側壁が負に、高アスペクト比パターン底部が正にチャージアップします。
なぜ電子の届く量が減るのですか?
イオンはシースの電界でほぼ垂直に加速されますが、電子は熱運動でばらばらの向きから来るためです。正と負の粒子で速度の向きの分布が違うことが原因で、深い溝ほど電子が側壁に遮られます。
ダメージとは何が起きることですか?
電子シェーディング効果によるプラズマ中の荷電粒子の蓄積で、ゲート絶縁膜が静電破壊を起こすことです。
どんなパターンで起きやすいですか?
高アスペクト比の狭いスペースです。深いほど底へ届く電子が減ります。高電力でプラズマ密度が高い工程ほど、損傷は重くなる傾向が報告されています。
膜はどのくらい丈夫ですか?
酸化膜の絶縁破壊強度は10MV/cm以上と高電界です。
壊れなければ無傷ですか?
温度や電圧のストレスで酸化膜中にトラップが生成され、SILCとして電流が観測されます。壊れる手前でも痕が残り続けます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- プラズマ誘起ダメージとは── 損傷の総称
- ゲート酸化膜とは── 壊れる相手
- TDDBとは── 後から立ち上がる寿命
- アスペクト比とは── 厳しさを左右する形
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