ALE(原子層エッチング)とは
ALE(Atomic Layer Etching、原子層エッチング)とは、表面を化学的に改質する段と、その改質層だけを取り除く段を交互に繰り返すエッチング方法です。 各段が自己停止するので、除去量がサイクル数で決まります。薄い層を加工するほど、削りすぎて下地に届くことが難しさになります。ALEは、止まる位置と下地の損傷を握る手法です。成否を分けるのは、2つの段がどちらも本当に自己停止するかどうかです。
改質と除去を時間で分け、それぞれを自己停止させる
Section titled “改質と除去を時間で分け、それぞれを自己停止させる”通常のRIEでは化学反応とイオン衝撃が同時に働き続け、除去は時間とともに進み続けます。ALEは2つの作業を時間で分け、それぞれを自己停止させます。応用物理学会誌の解説は、ALEを吸着反応と活性化反応を別々の段に分けて、原子層の精度でエッチング反応を制御するために開発された技術とし1、1原子層を取り切ったところで反応が止まる自己停止が決定的に重要だとしています。
Oxford Instruments Plasma Technologyは、プラズマを使うALEを、ガスの供給とイオン衝撃を周期的に繰り返して材料を1層ずつ除去する方法と説明し、1原子層ずつの除去を最小限のダメージで行えるとしています2。
方向性プラズマALEの1サイクルは4段で、深さは繰り返し回数で決まる
Section titled “方向性プラズマALEの1サイクルは4段で、深さは繰り返し回数で決まる”Oxford Instrumentsが示す方向性プラズマALEの1サイクルは4段で、必要なエッチング深さに届くまで何回でも繰り返します2。同社が例に挙げるのは、Cl₂/Arを使うAlGaNのALEです。
第1段では、反応ガスを表面に吸着させて改質層を作ります。吸着を速めるために、エッチングガスをプラズマで解離させることが多いとしています。供給ガスとパラメータを正しく選べば、1原子層を吸着したところで化学種の供給が止まり、この段は自己停止します。第2段で、残留反応物をパージします。第3段で低エネルギーの不活性イオンが表面を叩き、反応した表面層を取り除きます。第4段で生成物をパージして、次の改質に進みます。
深さを決めるのは時間ではなく、繰り返した回数です。1サイクルで取れる量がそろっていれば、目標の深さはサイクル数の掛け算で決まります。
除去の段が止まるのは、イオンエネルギーが改質層だけを取れる範囲にあるとき
Section titled “除去の段が止まるのは、イオンエネルギーが改質層だけを取れる範囲にあるとき”第3段も、イオンエネルギーが化学的に改質された層を取り除くには十分で、その下の材料を取り除くには不十分であれば自己停止します。改質層が無くなった時点で除去が止まり、1サイクルあたりの除去量がそろいます。この条件を深く調べる用語がALEエネルギーウィンドウとALEシナジーです。
ALDの逆向きの手法で、熱反応だけで進むALEもある
Section titled “ALDの逆向きの手法で、熱反応だけで進むALEもある”ALDは前駆体と反応剤を交互に供給して膜を積み上げ3、ALEは改質と除去を交互に繰り返して薄い改質層を取り除きます。どちらも両段が十分飽和すると、追加の供給時間に依存しにくくなり、成長量・除去量をサイクル数で制御できます。そのため、両者を同じ装置プラットフォーム上で組み合わせる設計も登場します。
コロラド大学のGeorgeグループは、ALEはALDの逆であり、逐次的で自己停止する熱反応で実現できるとしています4。HFとSn(acac)₂を反応剤に使う例では、HFが金属酸化物を金属フッ化物に変えます。続いてSn(acac)₂が金属フッ化物からフッ素を受け取り、同時にacac配位子を金属に渡して、揮発する反応生成物を作ります。同グループは2015年にACS NanoでAl₂O₃のこの熱ALEを報告しています。熱ALEは、金属の反応生成物の安定性と揮発性によって選択性も示すとしています。
Oxford Instrumentsの例では、ALE後の面は平らになり、損傷も小さい
Section titled “Oxford Instrumentsの例では、ALE後の面は平らになり、損傷も小さい”Oxford Instrumentsは、AlGaNのリセスに使うALEを、低いエッチングレートと低ダメージで制御する工程と説明しています。
形については、幅25nmのSiトレンチを深さ110nmまでALEで掘った2例を、HSQマスクを残した状態で示しています。面については、AlGaNに200サイクルのALEをかけると、表面粗さRaがエッチング前の600pmからエッチング後の300pmに下がり、表面が平滑になったとしています。損傷については、MoS₂のALEのあとにラマン分光で欠陥のピークが出ないことを、低ダメージの根拠に挙げています。下地へのダメージを抑えたい場面が、ALEの出番です。
GaN系HEMTでは、ゲート下のAlGaNを5nm±0.5nmで残す
Section titled “GaN系HEMTでは、ゲート下のAlGaNを5nm±0.5nmで残す”ALEが向くのは、除去量を原子層の単位で制御したい場面です。用途にはGaN系HEMTの品質改善があります2。Oxford Instruments Plasma Technologyは、PlasmaPro 100 ALEを次世代半導体デバイス向けの精密なプロセス制御に、PlasmaPro 100 ALEとEtchpointの組み合わせをp-GaNのエッチング深さの制御用に位置づけています。
AlGaN/GaNヘテロ構造のリセスゲートでは、厚さ25nm未満のAlGaN層を掘り、ゲート部に通常0〜5nmのAlGaNを残すと同社は説明しています。同社は3つの試料をTEMで確かめ、ALE後のAlGaN残り厚さの目標5nm±0.5nmを達成し、その値がEtchpointのエッチング信号の記録と対応したとしています。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 2社/2family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-21
- Oxford Instruments Plasma Technology
- PlasmaPro etch familyドライエッチング
- Samco
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
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よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ALEとは何ですか?
ALE(Atomic Layer Etching、原子層エッチング)は、表面を化学的に改質する段と、その改質層だけを取り除く段を交互に繰り返すエッチング方法です。改質・除去の両段が十分飽和すると、追加の供給時間に依存しにくくなり、全体の除去量をサイクル数で制御できます。
ALEの1サイクルはどうなっていますか?
方向性プラズマALEでは、表面改質、残留反応物のパージ、改質層の除去、生成物のパージの4段です。改質ガスが1原子層だけ吸着したところで止まり、改質層を取り切ると除去も止まるように条件を選び、必要な深さに届くまで繰り返します。
なぜ第3段も自己停止するのですか?
方向性プラズマALEでは、イオンのエネルギーを、化学的に改質された層を取り除くには十分で、その下の材料を取り除くには不十分な範囲に収めるためです。改質層が無くなった時点で除去が止まります。
ALEとALDの関係は何ですか?
ALDは前駆体と反応剤を交互に供給して膜を積み上げ、ALEは改質と除去を交互に繰り返して薄い改質層を取り除きます。コロラド大学のGeorgeグループはALEをALDの逆と位置づけ、熱反応だけで進むALEも示しています。両段が十分飽和した条件では、成長量・除去量をサイクル数で制御できます。
ALEはどこで使われますか?
除去量を原子層のスケールで制御したい場面と、下地へのダメージを抑えたい場面です。Oxford Instruments Plasma TechnologyはPlasmaPro 100 ALEとEtchpointの組み合わせをp-GaNのエッチング深さの制御用に位置づけ、GaN系HEMTのゲート下にAlGaNを5nm±0.5nmで残した結果を示しています。
ALE装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBで、ALEに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。SAMCOはICP-RIE / ALE / DRIEのエッチングシステムを製品として掲載しています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 主要メーカーのエッチング装置分類── メーカー別の装置分類
- エッチング工程── 工程としてのエッチングの全体像
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- 1応用物理学会:Plasma enhanced atomic layer etchingjstage.jst.go.jp ↩
- 2Oxford Instruments Plasma Technology:Atomic layer etching (ALE)plasma.oxinst.com abcd
- 3Oxford Instruments Plasma Technology:Atomic Layer Depositionplasma.oxinst.com ↩
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