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チャネルリリースとは

チャネルリリースとは、Si/SiGe積層のうちSiGeだけを選んで抜き、Siシートを宙に浮かせる工程です。 抜いた隙間にゲートが入り込み、ゲートがシートの4面を囲むGAA構造になります。

削る相手も残す相手もSi系の結晶で、違いはGeが30%入っているかどうかだけです。しかもエッチングが進める経路は、幅数十nm、高さ10nm前後の隙間しかありません。選択比とシートの機械的な支えを同時に満たす必要があり、ナノシートGAAの中でも難しい工程の1つです。

ダミーゲートを外したゲート溝の中で抜く

Section titled “ダミーゲートを外したゲート溝の中で抜く”
ゲート溝の中の工程順
ダミーゲート除去SiGe 選択エッチメタルゲート埋め込み溝の底に積層が露出Siの橋だけが残る跡地をゲートが囲むSi ナノシートSiGe 犠牲層メタルゲート
ダミーゲートを外すと積層の断面が溝の底に出ます。SiGeを抜いた後、同じ溝から金属を入れるので、置換メタルゲートが前提になります。

ナノシートGAAのプロセスフローでは1、ダミーゲートのエッチバック除去でゲート溝内にFin-Si/SiGeが露出し、そこでSiGe選択エッチングを行ってゲート溝内にナノシートSiの橋を作ります。最後にMetal-GateとHigh-k膜を溝内へ埋め込みます。

抜いた跡に金属を入れる経路はこのゲート溝しかないため、ナノシートGAAでは置換メタルゲートが前提になります。同じ理由で、ソース・ドレイン側へエッチングが進まないよう、先にインナースペーサを入れます。インナースペーサを作る理由の1つは、チャネルリリースのSiGeエッチングをPMOSのソース・ドレインのSiGe手前で止めることです。

結合エネルギーの差を使い、168対1で削り分ける

Section titled “結合エネルギーの差を使い、168対1で削り分ける”
選択比とシートの変形
SiGe 横方向 41.93 nmSi 側壁 0.25 nm選択比 168 : 1一段で抜くとシートが接近して押し合う多段で抜くと層間の間隔がそろう
同じ尺度で比べると、選択比168対1はこの長さの比です。一段で抜くとシートがたわんで接近し、多段で抜くと残った犠牲層が支えになって間隔がそろいます。

復旦大学マイクロエレクトロニクス学院のグループは2023年、リモートプラズマのフッ素中性種を使うドライエッチングで、Si-Si結合(2.31eV)とSi-Ge結合(2.12eV)のエネルギー差を利用して両者を削り分けました2。試作では、RPCVDで積んだ約9nm厚のSi0.7Ge0.3とSiを3周期重ね、Si0.7Ge0.3対Siで168対1の選択比を得ています。選択比はSiGeの横方向の除去深さをSi損失の片側量で割った値で、SiGeを41.93nm削る間にSi側壁の損失は0.25nmでした。

選択比を押し上げたのは、最終段の前に入れた、プラズマを止めたままの酸化ステップです。リモートプラズマ源を止めたまま酸素とアルゴンの混合ガスを反応室に入れると、Si表面には保護的な酸化層ができてエッチングが遅くなり、SiGe表面では除去が速く進みます。ガスの種類だけでなく表面の状態を変えてエッチ選択比を上げる方法です。

一段で抜くとシートが変形し、多段なら残った犠牲層が支える

Section titled “一段で抜くとシートが変形し、多段なら残った犠牲層が支える”

この試作の一段エッチではナノシートが大きく変形し、隣り合うシートが接近して押し合いました。多段エッチでは犠牲層を少しずつ除くので、残った犠牲層がナノシートを支え続け、変形が抑えられます。

支えが要るのは、抜く前後で応力の釣り合いが変わるためです。幅60nmのナノシートでの計算値は、最上段が下向きに1.42MPa、中段が上向きに3.86MPa、最下段が上向きに9.1MPaで、下の段ほど大きくなります。リリース後のチャネルは約0.8GPaの圧縮応力を保ちます。この論文では、幅30nm、40nm、60nm、80nmのナノシートで、Si損失を抑えたまま層間の間隔をほぼ均一にできました。

imecは、この工程には高い選択比が必要で、ナノシート間のGe残渣を減らし、Siの粗さを抑えることが理想3だとしています。極小のナノシート同士が貼り付かないようにするスティクション制御も必要です。抜いた直後はシートを支えるものがなくなり、表面張力や静電気でシート同士が引き合うからです。

同じ削り分けは、Si以外のチャネルにも広がる

Section titled “同じ削り分けは、Si以外のチャネルにも広がる”

フィン加工では深さ方向の異方性が、SiGe層除去では側壁方向からの等方性と材料選択性が必要です。産業技術総合研究所の300mmの共用パイロットラインでは、GAAの試作が進められています4。同じ削り分けの考え方が、2D材料チャネルの層間除去や置換酸化膜の形成にも広がります。

抜く側のGe濃度や残す側の材料が変われば、選択比の作り方も考え直しになります。SiGeのGe濃度を30%前後にそろえるのは、ひずみを加える力よりも、この削り分けの余裕を優先するためです。

隙間と引き換えに、選択比・変形・スループットを同じレシピで満たす

Section titled “隙間と引き換えに、選択比・変形・スループットを同じレシピで満たす”

チャネルリリースによって、ゲートがシートの4面を囲むための隙間と、エピタキシャル膜厚で決まるシート間隔が得られます。代わりに、168対1級の選択比を量産で毎回再現すること、多段化で増えるステップ数、支えがなくなる瞬間のスティクションとGe残渣という課題を抱えます。プロセス担当は、選択比、シートの変形量、スループットの3つを同じレシピの中で満たす条件を探すことになります。

チャネルリリースとは何ですか?

Si/SiGe積層のうちSiGeだけを選んで抜き、Siシートを宙に浮かせる工程です。多層膜のSiGe部分を選択的にエッチングして、シートをリリースします。

なぜ抜く必要があるのですか?

ゲートがシートの4面を囲むための隙間を作るためです。SiGeが抜けた跡にゲート絶縁膜とメタルゲートが入り込み、GAA構造になります。

いつ抜くのですか?

ダミーゲートを除去したあと、ゲート溝の中です。ダミーゲートのエッチバック除去でゲート溝内にSi/SiGeが露出し、そこでSiGe選択エッチングを行って、ゲート溝内にナノシートSiの橋を作ります。

選択比はどのくらい必要ですか?

復旦大学のグループが2023年に公開した論文では、プラズマを止めたまま行う酸化ステップを多段エッチに組み込み、Si0.7Ge0.3対Siで168対1の選択比を得ました。SiGeの横方向消費41.93nmに対し、Si側壁の損失は0.25nmです。

なぜSiとSiGeを削り分けられるのですか?

結合の強さが違うためです。Si-Si結合は2.31eV、Si-Ge結合は2.12eVで、この差がフッ素の中性種に対する反応しやすさの差になります。

一気に抜くとどうなりますか?

一段エッチではナノシートが大きく変形し、隣り合うシートが接近して押し合いました。多段エッチでは残っている犠牲層がシートを支え続けるので、層間の間隔がそろいます。

どのくらいの応力がかかりますか?

この論文の計算では、幅60nmのナノシートで最上段が下向きに1.42MPa、中段が上向きに3.86MPa、最下段が上向きに9.1MPaでした。下の段ほど大きくなります。

SiGeを抜くとき、ソース・ドレインのSiGeまで削れる心配はありますか?

インナースペーサがエッチストッパーになります。インナースペーサを作る理由の1つが、チャネルリリースのSiGeエッチ時に、PMOSのソース・ドレインのSiGe手前でエッチを遮ることです。

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